
簿記検定試験の中でも最高峰の難易度と言われる「全経上級試験」ですが、同じく同程度の難易度と言われる「日商簿記検定1級」に比べると、認知度ではやや劣ります。
やはり世間的には、「簿記と言えば日商簿記」というイメージが定着しているのかもしれませんね。
しかし、全経上級試験に合格すれば税理士試験の受験資格を得る事が出来ますから、世間一般とは異なり、会計業界内においてはかなり認知度が高い試験だと言えるでしょう。
ですから、あなたが会計業界や経理などで働こうと考えているのであれば、全経上級に合格することで一定の評価を得る事が出来ると言えます。
そこでこの記事では、これから全経上級試験にチャレンジしようと考えている人などの為に、全経上級の受験者数や合格率の推移などについてお伝えしようと思います。
目次
全経上級試験の概要
まず、全経上級試験の概要についてから。
運営主体や試験スケジュールなどについて、それぞれ見ていきましょう。
運営主体
日商簿記検定を運営する団体は、各地商工会議所とそれを束ねる日本商工会議所となりますが、全経上級試験は「公益社団法人 全国経理教育協会」が運営主体となっています。
日商簿記と全経簿記の運営主体の違いは以下の通り。
全経簿記 | 日商簿記 | |
---|---|---|
運営主体 | 公益社団法人 全国経理教育協会 | 日本商工会議所、および各地商工会議所 |
加盟企業 | 全国の専門学校が中心 | 全国の中小企業が中心 |
試験種類 | 5種類 | 5種類 |
上記を見ると、日本商工会議所などの加盟企業が中小企業である事に対し、全国経理教育協会の加盟企業が専門学校が中心であることから、「日商簿記は実務向け」「全経簿記は教育向け」という事が分かるかと思います。
試験スケジュール
全経簿記全体としては、「上級」「1級」「2級」「3級」「基礎」の5種類の試験から構成され、試験開催日は毎年「5月」「7月」「11月」「2月」の計4回となります。
この内、全経上級試験は「7月」と「2月」の年2回のみの開催となります。
試験開催場所は、前述した加盟専門学校のいずれかで行われる事になりますから、詳しくは公式HPで確認してみて下さい。
合格基準
各級とも1科目の満点を100点とし、7割以上の得点で合格となります。
上級の試験科目は、「商業簿記」「会計学」「工業簿記」「原価計算」の4科目ですから、合計の満点が400点となり、その7割である280点以上の得点で合格となります。
しかし、上級のみの制限として、仮に合計280点以上を取得したとしても、1科目でも40点未満の科目があれば合格とはなりません。
要は、「足切り」があるという事ですね。
つまり、全経上級に合格するためには、全ての科目において「幅広い理解力を求められる」という事になります。
全経上級試験の受験者数の推移
それでは次に、全経上級試験の受験者数の推移について見ていきましょう。
一覧表はこちら。
試験日 | 受験申込人数 | 実受験者数 | 試験参加率 | |
---|---|---|---|---|
第197回 | 2020年2月16日 | 2,496人 | 2,082人 | 83.4% |
第195回 | 2019年7月14日 | 2,229人 | 1,929人 | 86.5% |
第193回 | 2019年2月17日 | 2,562人 | 2,171人 | 84.7% |
第191回 | 2018年7月8日 | 2,262人 | 1,935人 | 85.5% |
第189回 | 2018年2月18日 | 2,596人 | 2,210人 | 85.1% |
第187回 | 2017年7月9日 | 2,236人 | 1,920人 | 85.9% |
第185回 | 2017年2月19日 | 2,648人 | 2,220人 | 83.8% |
第183回 | 2016年7月10日 | 2,500人 | 2,133人 | 85.3% |
第181回 | 2016年2月21日 | 3,091人 | 2,482人 | 80.3% |
第179回 | 2015年7月12日 | 2,642人 | 2,238人 | 84.7% |
出典:全国経理教育協会
上記を見ると、受験者数は毎回2,000人前後となっており、日商簿記1級の7,000~8,000人と比べれば、およそ1/4程度の規模となっています。
しかし、願書を提出した人数(受験申込人数)における実際の受験者数(実受験者数)で見ると、平均で85%前後となっていますから、全経上級試験に応募する人は、そのほとんどが必ず受験するという事も分かります。
日商簿記1級の「試験参加率」は、毎回80%未満となりますから、全経上級を受験する人の方が真剣度が高いと言えるかもしれません。
上記をグラフにしたものがこちら。
全経上級試験の合格率の推移
それでは次に、全経上級試験の合格率の推移についても見ていきましょう。
一覧表はこちら。
試験日 | 実受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|---|
第197回 | 2020年2月16日 | 2,082人 | 318人 | 15.27% |
第195回 | 2019年7月14日 | 1,929人 | 314人 | 16.28% |
第193回 | 2019年2月17日 | 2,171人 | 351人 | 16.17% |
第191回 | 2018年7月8日 | 1,935人 | 321人 | 16.59% |
第189回 | 2018年2月18日 | 2,210人 | 335人 | 15.16% |
第187回 | 2017年7月9日 | 1,920人 | 305人 | 15.89% |
第185回 | 2017年2月19日 | 2,220人 | 417人 | 18.78% |
第183回 | 2016年7月10日 | 2,133人 | 379人 | 17.77% |
第181回 | 2016年2月21日 | 2,482人 | 446人 | 17.97% |
第179回 | 2015年7月12日 | 2,238人 | 479人 | 21.40% |
出典:全国経理教育協会
上記を見ると、合格率は毎回15%~20%の間で推移している事が分かります。日商簿記1級の合格率が10%程度であることを考えれば、比較的合格しやすい試験だという事も分かりますね。
ただし、全経上級試験の受験者は、公認会計士試験の腕試しに受験している人も多いですから、そもそも受験者自体のレベルが高いという事も影響しているのかもしれません。
上記をグラフにしたものはこちら。
全経上級の勉強方法
前述しましたが、日商簿記1級試験に比べ合格率が高いとはいえ、全経上級試験はやはり難易度の高い試験となっています。
完全な簿記初学者が受験しても、一発で合格する事は難しいと言えますから、最低でも、日商簿記2級合格程度の実力をつけてから挑戦する事をおススメします。
全経上級試験の特徴として、「出題内容が毎年似たような傾向がある」というものがありますから、日商簿記2級合格程度の実力があれば、あとは過去問を繰り返し学習するだけで合格しやすい試験であるともいえます。
ですから、独学でも十分合格可能な試験とも考えられますね。
全経上級試験を独学で目指す方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。
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もちろん、資格のスクールで学習すれば、講師に質問しながら知識を深める事が出来るので、確実に合格を狙っているのなら、専門のスクールに通う事をおススメします。
ただし、全経上級の講座を開設しているスクールは非常に少ないですから、そうしたスクールを探している人は、こちらの記事を参考にしてみて下さい。
簿記検定試験の合格を目指す場合、多くの人がまず「独学での合格」を考えるかと思います。 もちろん、独学でも十分合格可能な試験ですし、費用的な面で考えれば、独学で勉強しようと思うのは自然な流れだと言えるでしょう。 当サイトに …
また、全経上級試験は教育訓練給付金制度を利用して、講座費用を安く済ませることも出来ますから、この制度に対応しているスクールについて知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみて下さい。
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次回の「全経上級」試験日
次回の全経上級の試験日は、第199回試験で、期日は2020年7月12日(日)となります。
申込期間は2020年5月18日~6月15日までとなっていますが、詳しくは公式HPにてご確認ください。