
基本的に当サイトでは、税理士試験の独学での合格は難しいとお伝えしています。「絶対に無理」とまでは言いませんが、「ほとんど無理に近い」と考えたほうが良いでしょう。
しかし、「簿記論」「財務諸表論」の会計2科目合格までなら、なんとか独学で合格できる可能性は残ります。
これについて詳しくは、下記の記事を参考にしてみて下さい。
費用的に考えれば、専門学校に通学するより、出来るところまで独学で合格したいというのが本音でしょう。そこでこの記事では、完全初学者が、税理士試験科目の「簿記論」「財務諸表論」の2科目まで独学で合格する方法についてお伝えします。
ここに書かれている内容は、当サイト管理人の知人である税理士や、元大手専門学校講師にインタビューした内容を基にしていますが、必ずしも合格を保証するものではありませんので、予めご了承ください。
目次
まずは、「受験資格の取得」から
税理士試験を受験するにあたり、一番に考えなくてはいけないのが「受験資格の取得」です。
受験資格の取得方法について、詳しくは下記の記事をご覧になってみて下さい。
税理士になることを目指すのであれば、まず、税理士試験について知らなければいけません。 ここでは、税理士試験の申し込みから受験までの流れや、受験資格、試験科目についてお伝えします。 目次1 税理士試験の日程2 受験資格3 …
税理士試験の受験資格の種類は様々ありますが、当サイトでは、独学で「簿記論」「財務諸表論」に合格するためには、「日商簿記1級」もしくは、「全経上級」の合格による受験資格の取得をお勧めしています。
というのもまず、税理士試験というのは、何を置いても「簿記」の知識が基礎となる試験だからです。簿記の知識がしっかりと身に付いていなければ、5科目合格は、まず難しいと考えるべきでしょう。
また、日商簿記1級に合格すれば、その時点で簿記論・財務諸表論受験生の「上位30%」に入っていると言われますので、あと少し勉強するだけで、合格圏内に入りやすいという利点があります。
しかし、特に日商簿記1級は、税理士試験合格者でも合格できるかどうかという難関試験でもあるので、多くの人が「回り道だ」「時間の無駄だ」と、敬遠する傾向があります。
人それぞれ考えがありますので、そういった考え方も否定はしませんが、「急がば回れ」という言葉があるように、回り道に見えて、実は一番の近道なのがこの「日商簿記1級合格」だと言えます。
ちなみに、全経上級でも一定の知識を得られますが、やはり日商簿記1級に合格する方が、「簿記論」「財務諸表論」の独学合格の近道となります。
ですから全経上級に関しては、あくまで日商簿記1級に不合格だった場合の「受験資格取得のため」という位置付けで考えて頂けたらと思います。
要は、如何に日商簿記1級の試験内容を理解するかがカギとなっているのです。
初回税理士試験受験までのスケジュール
では以下において、税理士試験の受験資格取得方法は、あくまでも「日商簿記1級合格」もしくは「全経上級合格」を前提として話を進めていきます。
まず日商簿記検定は、大きく分けて3級から1級までに構成され、2級と3級は年3回の試験開催、1級は年2回開催となっています。
2級と3級は、2月、6月、11月開催で、1級は6月、11月のそれぞれ同日の試験日となります。
大抵、1級と3級が午前中、2級が午後からの試験開始となるので、3級と2級、2級と1級といった具合で、同日に受験する事も可能となります。
片や、全経においては様々な試験区分があり、日商簿記に比べて難易度が下がるため、上級のみについてだけ勉強すれば十分です。
全経上級は年2回開催され、毎年7月と2月となっています。
それではここで、日商簿記1級、もしくは全経上級の受験合格を経て、初回の税理士試験を受験するまでのスケジュールの一例をご紹介します。
仮に、11月の日商簿記1級に合格すれば、翌年の税理士試験までに半年間あるので、この間、「簿記論」「財務諸表論」の勉強を効率的にすることにより、十分に合格できる可能性があります(元大手専門学校講師談)。
ここで、完全初学者となると、簿記自体を理解していない事が多いため、出来れば日商簿記3級から勉強する事をお勧めします。
というのも、例えば日商簿記2級合格後、1級の勉強するよりは、簿記知識ゼロの段階から日商簿記3級の勉強をするほうが、はるかに難しいと言えるからです。
要は、1の力を2に持っていくよりも、0の力を1にするほうが難しいからです。
初めは苦しいかもしれませんが、初学者の方は、日商簿記3級さえクリアしてしまえば、あとは意外とスムーズに進みますから、ここを何とか頑張って乗り越えましょう。
なお、3級の勉強から始めたとしても、受験自体は2級から始めて構いません。
簿記のテキスト選びのコツ
まずは簿記の勉強から始める事になりますが、日商簿記や税理士試験の勉強を独学で始める上で、頭を悩ませるのが、「どのテキストを使ったら良いかわからない」という事かと思います。
書店に行けば、簿記のテキストはたくさん並べられているので、これを選ぶだけでも時間がかかります。
結論から言うと、「どのテキストを利用しても合格できる」のですが、テキスト選びのポイントを一つだけお伝えするとすれば、「全て、同じ出版社で統一したほうが良い」という事が言えます。
簿記のテキストに特化した出版社と言えば、TAC出版、大原出版、LECだと言えるでしょう。このどれもが資格の専門学校の出版部門ですから、内容的にはそんなに優劣の差はありません。
ただ、「テキストはTAC出版、問題集は大原」などといった方法を取ると、統一性が取れず、かえって頭の整理が出来なくなってしまいます。
ですから、「TACで始めたら、最後までTAC」といった形で、出版社は統一させることが重要です。
それでは次に、3級合格から1級合格までと全経上級合格において、それぞれおススメのテキストについてご紹介します。
日商簿記3級~1級、全経上級お勧めテキスト
それぞれの勉強方法、お勧めのテキストについては、下記の記事ごとに分けているので、詳しくはそちらをご覧ください。
税理士試験に合格したいと考えるならば、まず日商簿記の知識が最低限必要となります。 仮に、税理士試験合格を目指していないとしても、日商簿記検定に合格しておけば、仕事にも活用できますし、就職時にも有利となります。 ほとんどの …
税理士試験合格を目指すのであれば、出来れば日商簿記1級に合格したいところですが、1級は難易度が高いため、現実的にはかなりの努力が必要となります。 しかし、仮に日商簿記1級に合格出来なかったとしても、最低限、日商簿記2級に …
完全初学者であれば、まずは日商簿記3級から理解し、順に2級、1級へとレベルを上げていきましょう。
当サイトにおいて独学合格で推奨しているテキストは、「TAC出版」で統一していますが、もちろん自分の使いやすいテキストがあれば、そちらを利用するのも良いでしょう。
しかし、TAC出版の利点として、ウェブサイトの会員登録をすれば、書店やAmazonなどで購入するより安く購入できるという事が挙げられます。
通常でも10%offで、時期によっては15%offという事もありますので、総額で考えればかなりお得になりますね。
それぞれのテキストにかかる費用としては、下記の通り。
テキスト冊数 | 定価 | TAC出版(変動あり) | |
---|---|---|---|
日商簿記3級 | 3冊 | 3,300円 | 2,970円 |
日商簿記2級 | 4冊 | 6,380円 | 5,742円 |
日商簿記1級 | 12冊 | 26,720円 | 22,341円 |
全経上級 | 11冊 | 24,310円 | 20,163円 |
簿記論・財務諸表論お勧め問題集
それでは次に簿記論・財務諸表論の勉強におけるお勧め問題集について。
ここで、「お勧めテキスト」と言わず、「お勧め問題集」というのには理由があります。
通常、税理士試験の勉強をするとなると、教科書(テキスト)や個別問題集を揃えようと考えるはずです。しかし、この記事の前提は「日商簿記1級に合格」または、「全経上級に合格」している事が条件であり、このレベルに達して入れば、テキストや個別問題集はあまり必要としません。
むしろ、効率よく勉強するためには、教科書(テキスト)や個別問題集は時間の無駄であり、出来るだけ「過去問題集」「総合問題集」を繰り返し解いたほうが効率的だと言えます(多くの独学合格者談)。
ですから、「どうしても不安だ」という人はもちろんテキストを購入したほうが良いですが、この記事においては「お勧めの問題集」のみについてお伝えします。
という事で、まずは「簿記論」のお勧め過去問題集から。
まずは、この過去問題集を何回転か解きましょう。回数をこなす毎に、少しずつ知識が身に付いていきます。
そして次が、「簿記論」の総合問題集。
この総合問題集には、「応用編」もありますが、この基礎編をしっかりと学習すれば、応用編まで購入する必要はないでしょう。ただし、「やっぱり不安だ」という方で、時間に余裕がある方であれば、購入しても良いかもしれません。
そして次が、「財務諸表論」のお勧め過去問題集。
こちらも簿記論と同じく、最初は内容を理解しなくとも何回転か学習していれば、傾向が徐々に理解できるようになります。
次が、「財務諸表論」の総合問題集。
こちらも簿記論と同じく、「応用編」が販売されていますが、これさえきちんと解ければ問題無いといえます。
以上を整理すると、
テキスト名 | 定価 | TAC出版(変動あり) |
---|---|---|
税理士4 簿記論 過去問題集 | 3,850円 | 3,465円 |
税理士2 簿記論 総合問題集(基礎) | 2,200円 | 1,980円 |
税理士10 財務諸表論 過去問題集 | 3,850円 | 3,465円 |
税理士6 財務諸表論 総合問題集(基礎) | 2,750円 | 2,475円 |
合計 | 12,650円 | 11,385円 |
となり、日商簿記3級の勉強から始めたとしても、テキスト代は合計で6万円程度で済む事になります。
財務諸表論は、「理論」の勉強も必要
とは言え、財務諸表論においては、税理士試験特有の「理論問題」が出題されるので、こちらの対策も怠れません。ただし理論対策となると、残念ながら市販のテキストでは十分といえるほどのものは販売されていないのが現状です。
やはりこの理論対策においては、資格の専門学校に通学し、そこで配布されるテキストを利用するのが一番だといえます。
ただ、通学する以外の方法も無くはないので、ここでいくつかその方法をご紹介しようと思います。
メルカリやヤフオク!での購入
まず一番が、メルカリやヤフオク!などのサイトで購入するという事。
毎年、税理士資格の取得のため、多くの人が資格の専門学校へ入学しますが、ある一定の人は早々に資格取得を断念する傾向があります。
その理由も「自分には向いていない」とか「家庭の事情で」などと様々ですが、こういった人の多くは、資格の専門学校で購入したテキストをメルカリなどのサイトで販売しています。
狙い目の時期としては、専門学校の入学シーズンである9月頃から12月頃が良いでしょう。
早々に諦めた人は、テキストを利用していない事が多いですので、ほぼ新品同様のテキストを手に入れる事が出来ます。時期的にも、年末までに取得できれば、翌年8月にある税理士試験には十分間に合います。
ここで注意が必要なのが、ヤフオク!はそうでもないのですが、メルカリは出品後に即完売する事が多いという事。
毎日出品を確認する事も難しいでしょうから、オークファンというサイトを利用すれば、目当ての商品が出品されたことを通知してくれるので便利です。
この辺は、様々なツールを上手に利用しましょう。
通信制大学のテキストを利用
次の方法が「通信制大学のテキストを利用する」という事。
いくつかの通信制大学において、税理士試験のテキストを販売しており、金額的にも比較的安く購入する事が出来ます。
その中でも一番お勧めなのが、「学校法人 産業能率大学」が運営する「産業能率大学 総合研究所 プロカレッジ」という通信講座です。
この講座は、資格の専門学校であるTACと提携し、各科目毎に、TACが作成したテキストを使用する事ができ、TACに通学するのと同等の知識を得る事が出来ます。また、添削も4回まで行われるので、「完全独学じゃ不安」という人にも心強いといえるでしょう。
テキストの内容は、理論テキスト以外も含まれているので、少しもったいない気もしますが、他の受験生と同等のテキストを安く利用できると思えば、お得だと言えるでしょう。
申し込みは、産業能率大学の公式HP上の「税理士本格受験(財務諸表論)」のページとなっています。
受講料は、49,500円(税込)となっており、翌年の税理士試験対策の申し込みは、毎年9月からとなっています(価格は変動する場合がありますのでご注意ください)。
ちなみに、資格の専門学校で財務諸表論のみを受講すると、最低でも200,000円以上はかかります。
その他、知っておいた方が良い事など
日商簿記1級合格、または全経上級合格後、上記のテキスト等で勉強すれば、税理士試験の簿記論・財務諸表論に合格できる実力は十分つけることが出来るはずです。
ただし、「更に完璧に仕上げたい」「少しでも不安を取り除きたい」という方のために、「その他、知っておいた方が良い事」についてお伝えしておきます。
雑誌「会計人コース」の定期購読
まずは、雑誌「会計人コース」を定期購読すべきだという事。
資格の専門学校に通っていると、各学校が予想問題をそれぞれ作成します。これは、各学校共に特色があり、その年の出題傾向を予想した内容となっているので、「この問題がバッチリ出た!」なんて事も時としてあります。
独学者からすると、この傾向を知ることが出来ないというハンデが少なからずあります。しかしこの「会計人コース」は、本試験が近くなってくると、こうした予想問題が掲載されるようになります。
税法は毎年改正されるので、こうした情報は重宝します。
※2020年8月をもって、会計人コースは休刊となりました。残念ではありますが、引き続きWebサイトは開設していますので、そちらをご確認ください。
全国公開模試の受験
日商簿記1級に合格すれば「簿記論・財務諸表論受験生の上位30%に入っている」とはいえ、いきなり本試験に臨むのは不安が残りますよね。
各科目に合格するには、上位10%に入らなくてはいけませんから、日商簿記1級合格後、自分はどれだけ実力がついたのか確かめておきたいところです。
そこで有効なのが、各資格の専門学校が主催している「全国公開模試」を受験することだと言えるでしょう。どこの専門学校も、この「全国公開模試」を開催していますが、出来れば学生の人数が多い専門学校を選ぶことをお勧めします。
そうなると、やはり「資格の大原」か「TAC」を選んだほうが良いでしょう。
ちなみに、1科目当たりの費用は税込3,000円~4,000円程度となっています(増税後の金額にご注意ください)。どちらも直前模試の場合は6月~7月の開催となり、締め切り日には注意が必要です。
必ず受験する必要はありませんが、初めて受験する人などは、本試験前のウォーミングアップ程度で捉えるのも良いかもしれません。
まとめ
学習方法に関しては、各人好みの方法があると思いますが、こうした試験においては、とりあえず過去問を繰り返し解くことがコツだといえます。
そこで傾向を掴み、出題者の意図を読み取れるまでになれば、もう合格は近いと言えるでしょう。
当記事は、合格を保証するものではありませんので、その辺はご了承いただきたいと思いますが、実際、上記の方法で合格出来ている人もいます。
そもそも、こうした難関試験を独学でクリアするのは難しいといえますので、当サイトでは基本的に資格の専門学校等に通う事をお勧めしますが、金銭的な問題もあるかと思います。
そこで最低限、簿記論・財務諸表論を独学で合格するための方法をお伝えしましたが、当記事を読んで「私には無理」と思うのであれば、すぐにでも学校に通った方が良いですし、「何とか出来そう」と思えば、とりあえず一歩踏み出してみましょう。
何事も、まずは行動しない事には始まりませんからね。
もちろん、教育訓練給付金などを利用して、少しでも安くスクールに通う方法もありますから、そういった方法を選択したいと考えている方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。
資格試験に合格するためには、独学で学習するよりも専門のスクール講座を受講する方が効果的であることは誰もが理解していると思いますが、全般的に費用が高額となるため、中々受講へと足を踏み出せない人も多いかと思います。 また、税 …
また、税法の学習に関しては、こちらの記事も参考にしてみて下さい。
税理士試験合格を目指す人の中には、「出来るだけ独学で合格したい」と考えている人もいるでしょうが、当サイトでは「簿記論」「財務諸表論」の独学合格は可能性があるとお伝えしていますが、税法科目の独学合格は「100%ムリ」とまで …