税理士試験「科目合格者」や「受験生」の就職先はどうやって決める?

税理士試験合格を目指している人の中には、現在定職に就かず、受験に専念している人もいるかと思います。

その立場や環境も様々で、例えば現在大学生や専門学校生の場合もあるでしょうし、学校を卒業したものの、無職で試験勉強を続けている人もいるかと思います。

1科目も合格していないのであれば受験に専念するのも良いでしょうが、これが「2科目合格」「3科目合格」となると、「そろそろ、就職も考えなくちゃな」と思い始める人も多い事でしょう。

というのも、税理士試験は5科目の試験に合格する事で登録する事が可能となるのですが、ただ試験に合格さえすれば良いという訳ではなく、「2年以上の実務経験」が登録の要件となるからです。

仮に、5科目合格した後に就職したとしても、税理士として名乗るにはそれから2年後になってしまうという事ですね。

誰しも、5科目合格(官報合格)後すぐに税理士として登録したいと考えるでしょうから、多くの人が5科目すべてに合格する前に就職活動を始めようとします。

また、生活面の事を考えても、いつまでも受験に専念していてばかりはいられないでしょう。

そこでこの記事では、そうした税理士試験科目合格者や受験生の方が、就職する際のタイミングや就職先の決定方法などについてお伝えしようと思います。

目次

全科目合格前までの就職のパターン

様々サイトなどを覗いてみると、「税理士試験は、5科目合格するまで就職しないほうが良い」などと書いている事もあるようです。もちろん最終合格(官報合格)してからの就職の方が、あらゆる面で有利なことは分かりきっていますが、現実はそう簡単ではありませんよね。

中には、学生時代に5科目合格してしまうという人もいるようですが、こういったケースはほとんど稀と言って良いでしょう。

つまり、ほとんどの方の場合、学校を卒業してもそのまま受験勉強を継続しなくてはならないという事が当たり前という事なのです。

そうした「卒業後も受験を続ける人達」の就職パターンとしては大きく分けて4つとなり、以下の通りとなります。

全科目合格前までの就職のパターン
  1. 就職はせずに、無職で勉強を続ける
  2. 正社員にはならず、アルバイトをしながら受験する
  3. 会計事務所や税理士事務所に就職する
  4. 一般企業に就職する

多くの場合、上記の2~4のいずれかを選択する事になり、1を選択するには、よほど経済的に余裕が無ければ難しいと言えるでしょう。

それぞれの就職パターンにおけるメリット・デメリット

それでは、上記4つの就職パターンのメリット・デメリットについても見ていきましょう。

就職はせずに、無職で勉強を続ける

まずは「就職はせずに、無職で勉強を続ける」パターンから。

こちらのメリットは、何と言っても「勉強時間を確実に確保できる」という点にあるでしょう。

働かずに勉強に専念できるのですから、受験生にとっては理想的な方法と言えますね。

しかし、生活費の事などを考えれば、よほど経済的に余裕が無くてはいけませんから、あまり現実的な方法とは言えないでしょう。

正社員にはならず、アルバイトをしながら受験する

次が「正社員にはならず、アルバイトをしながら受験する」という方法。

これも、正社員として就職するよりは勉強時間を確保しやすい方法だと言えます。

無職の場合よりは多少の時間的制約は生じますが、正社員として働く場合に避けて通れない「残業」というものがほぼなく、学習スケジュールを立てやすいという利点があります。

ただし、収入的にはさほど多くありませんから、最低限の生活しか出来ないというデメリットはあります。また、短期勝負には向いていますが、いつまでもアルバイト生活というのも不安の残るところでしょう。

ですから、この方法を選択するのであれば、「大学卒業後、数年で5科目合格を目指す」といった確固たる目標がないと、ダラダラと受験生活が伸びてしまいかねません。

この方法を選択するのであれば、「少なくとも、20代半ばまでには合格しよう」などといった決意を持つことが重要となります。

会計事務所や税理士事務所に就職する

そして次が「会計事務所や税理士事務所に就職する」という方法。

これが科目合格者の選択する一番多い方法でしょう。

メリットとしては、特に税法において実務と試験内容とがリンクする場合が多く、働きながら成長できるという面があります。また、5科目合格後、同時に2年以上の実務経験があれば、すぐに税理士登録できるという利点があります。

ただし、特に法人税などにおいては、一般的な税理士事務所で扱う内容は試験範囲の3~4割程度しかリンクしませんので、学習内容全てに効果があるとは言い切れません。

また、税理士事務所や会計事務所は慢性的な「長時間労働」の事務所が多いですから、勉強に時間を割けないというデメリットも生じます。

一般企業に就職する

そして最後が「一般企業に就職する」という方法。

近年は、税理士事務所に就職することなく、一般企業の経理部門で勤務しながら受験を続ける人も増えているようです。

また同様に、一般企業において税理士資格取得者が活躍している場合があり、そのため最近では、企業の税理士受験に対する理解度は高まっていると言えます。

企業側からしても、税法がわかっている社員がいれば会社にとってプラス要因となりますから、重宝がられる事になります。

また、税理士に登録する要件として「2年以上の実務経験」を求められますが、この実務経験は仕事内容によっては一般企業における実務経験を算入できますから、登録においてもさほど心配はないでしょう(もちろん、就職先や税理士会にはちゃんと確認する必要はあります)。

ただし、この一般企業に就職するデメリットとしては、税理士事務所などに比べて取り扱う会計業務が狭まるため、将来的に独立開業を考えている人にはあまり向いていない方法だと言えるでしょう。

就職先選択のポイント

前述したように、多くの場合、学校卒業後はいずれかの形で働く事になるのですが、就職先を決める際に必ず考えておくべきポイントというものがあります。

以下においてそれぞれの内容について見ていきましょう。

残業時間が少ないか

まずは「残業時間が少ないか」という事。

これは一番のポイントかもしれません。

税理士試験に限らず、試験勉強というのは何を置いても「勉強時間の確保」が重要となってきます。就業時間中は試験勉強が出来ませんから、少なくとも就業時間後は確実に勉強時間を確保したいところです。

しかし、一部の企業では残業をする事が常態化している場合があり、このような企業に就職してしまうと、試験勉強どころではなくなってしまいます。

特に会計事務所や税理士事務所はこの傾向が強く、終業時間が17時であったとしても、日常的に20時、21時まで仕事をしなければならないところもあります。

出来る事なら、こうした企業は避けておきたいところです。

税理士事務所の中でもスタッフ数15名未満の場合であれば、所長次第では残業の少ない事務所もありますから、そういった事務所を狙うのもひとつかもしれません。

 

就職先が税理士試験の受験に理解があるか

次が、「就職先が税理士試験の受験に理解があるか」という事。

これも就職先を決める上で、重要なポイントとなります。

どこの会計事務所においても、必ず数人程度の科目合格者がいると思いますが、事務所によってはこうした科目合格者に対し、税理士試験直前の1ヶ月間「有給休暇」を与える事務所などもあります。

こうした事務所の場合、所長が税理士試験を受験する事に理解があると言えるでしょう。

傾向としては、所長自身が税理士試験を5科目合格しているという場合が多いようです(全てではありませんが)。

このように受験に対して寛容な企業で働くのがベストですが、これを簡単に見抜く方法というのはありません。ですから、就職時の面談において率直に「私は受験を続けますが、それに対してご理解頂けますでしょうか?」と聞くようにしましょう。

ただし、仮に所長自身が寛容であったとしても、その事務所で働いている人の中には既に受験を諦めたような人もおり、往々にしてそういった人というのは受験に対して否定的な態度で接する場合があります。

ですから、就職時の面接においては、そういった事も含め事務所全体の雰囲気も確認しておくようにしておきましょう。

自宅や学校へのアクセス

そして次が「自宅や学校へのアクセス」について。

意外と見落としがちですが、これもちゃんと確認しておいた方が良いでしょう。仮に残業がなく仕事が終わったとしても、その後スクール等に通学するとすれば、このアクセスというのはとても重要になります。

せっかく勉強時間の確保が出来たとしても、移動に時間を取られてしまってはもったいないですよね。

もちろん、「移動時間で勉強できる」という考え方もありますが、資格のスクールに通うとなると開講時間などの兼ね合いから、出来るだけ移動時間は少なくしたいところです。

極論を言えば、自宅の場所は後で何とでもなりますから、「ここは」という企業を見つけたならば、引越しをするなどして対応すれば良いでしょう。

とにかく合格するまでは、如何にして勉強時間を確保するかについて考えましょう。

雇用保険が適用となるか否か

そして最後が「雇用保険が適用となるか否か」について。

基本的に、正社員として働くのであれば、雇用保険の被保険者として扱われる事になります。しかしアルバイトの場合ですと、労働時間によっては雇用保険の対象とならない場合もあります。

もちろん、この雇用保険の被保険者となる事にこだわる必要は無いのですが、雇用保険の被保険者となれば何かとメリットがあるのも事実です。

その一つが、「大学院進学時、社会人枠として受験できる」という事。

税理士試験を受験している人ならご存知かと思いますが、一定の大学院に進学する事により、試験の科目免除を受ける事が出来ます。

科目免除について詳しく知りたい方は、こちらをご覧になってみて下さい。

 

 

この大学院へ進学するためには大学院の試験に合格する必要がありますが、その試験内容はそれぞれの大学院によって異なります。

一般的に、現在大学生の人が受験するとなると「外国語」の試験が必須となりますが、社会人であればこれが無く、事前提出の「研究計画書」と面接のみという場合もあります。

大抵どこの大学院も、社会人枠として受験するには「企業において2年以上の実務経験」を求めますから、「常勤性」という観点で見れば、この雇用保険の被保険者か否かというのは最低限の判断基準になるかと思います。

もちろん、各大学院によって判断基準も異なると思いますから、それぞれ自分が目指している大学院の条件をよく確認しておきましょう。

大学院進学において試験科目を減らせるのであれば、かなりの負担減となりますよね。

そしてもう一つ、この雇用保険の被保険者である事のメリットというのが、「教育訓練給付制度の対象となる」という事。

資格試験はとにかくお金がかかりますが、この教育訓練給付制度を利用すれば、スクールなどに支払った費用の何割かを国が負担してくれます。しかし、この制度を利用するためには、雇用保険の被保険者として数年間の実績がなくてはいけません(最低1年から)。

ですから、例えアルバイトで働くとしても、この「雇用保険の被保険者となるか否か」はよく確認しておいた方が良いでしょう。

また、大学院進学においてもこの教育訓練給付制度を利用できる場合もありますから、この辺は上手に活用したいところです。

教育訓練給付制度について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。

 

税理士試験受験生の就職先の探し方

それでは以上を参考にしてもらった上で、税理士受験生の就職先の探し方についてもお伝えしていきましょう。

資格のスクール開催の就職説明会など

まずは、「資格のスクールが開催する就職説明会など」から就職先を探す方法。

税理士試験は毎年8月に行われますが、試験が終了した翌週あたりから、各スクールにおいて一斉に就職説明会が開催されます。また、スクールにもよりますが、税理士試験の合格発表が12月にあることから、これに合わせて就職説明会を開催するところもあるようです。

こうしたスクール主催の就職説明会に参加する企業には、中小の会計事務所や税理士法人などが多いという特徴があります。

基本的に会計事務所というのは12月から繁忙期に突入しますから、それより前に優秀な人に入社してほしいと考えます。スクール側からしても就職実績を上げたいと考えますから、受験生も含め、全員にとって何かと都合の良いタイミング・方法だと言えるでしょう。

この方法で就職先を探すメリットとしては、募集企業における会計事務所の比率が高い点にありますから、「すぐにでも実務を身に付けたい」と考えている人には都合がいい方法だと言えます。

また、敢えてこうしたスクールに求人を出すのですから、税理士試験の受験に対する理解がある企業が多いと考える事も出来ます(全てではありませんが)。

この就職説明会以外でも、資格のスクールにおいては常時求人情報が張り出されていますから、スクールの講師や事務局に質問するのも有効かと思います。

税理士事務所の規模や特徴などについて知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。

 

 

メリット
  • 税理士事務所や会計事務所の求人が、かなり多い
  • 募集企業の規模も様々ある
  • 募集企業が、受験勉強に寛容な企業である可能性が高い
デメリット
  • 一般企業は比率として少ない
  • 講師と企業が裏で繋がっている場合、入社後に「騙された」と思う事も (※1)
  • 地域が限定してしまう事があり、他府県への就職は難しい事も

※1 これは実際、当サイト管理人の知人である税理士が経験したことです。スクールの講師から「この企業は残業がほぼ無いよ」と教えられていましたが、実際に入社してみると毎日遅くまでの残業が当たり前の企業だったようです。よくよく調べてみると、このスクール講師は企業の経営者と同級生だったため、毎回優秀な人材を囲い込むために企業にとって良い事ばかりしか言っていなかったようですね。

ハローワーク

次が「ハローワーク」で探す方法。

税理士試験受験者に限らず、就職先を探す方法としては、このハローワークで探す方法が最もメジャーだと言えるでしょう。税理士事務所にこだわらず、幅広い業種から探したいという人にも便利な方法です。

ただし、このハローワークで税理士事務所や会計事務所を探すとなると、少し注意が必要となります。

基本的に中規模から大規模の税理士法人などになれば、ハローワークに求人を出しているという事はほとんど稀です。ハローワークに求人を出している事務所のほとんどは小規模事務所ばかりとなります。

もちろん、「こうした小規模事務所で経験を積みたい」というのなら便利なツールとなりますが、一定の規模を目指すならおススメは出来ません。

メリット
  • 幅広い業種から選べる
  • 広い地域から選択できる
  • 小規模会計事務所の情報量が一番多い
デメリット
  • 大規模会計事務所はほとんど掲載されていない
  • 広い地域から選択できると言っても、結局土地勘が無ければ地元企業での就職となる
  • 求人サイトに比べ、求人企業の情報量が少ない

会計職に特化した求人サイト

そして最後が「会計職に特化した求人サイト」で探す方法。

この方法の一番のメリットは、大手税理士法人や大手一般企業からの求人が多いという点です。

大手企業となれば給与面においてもかなり期待が持てますし、また、大手税理士法人に就職するとなれば、小規模税理士事務所では経験できないような仕事に携わる事も可能となります。

こうした求人サイトのほとんどは、エージェント制を導入しており、求職者が希望する「仕事内容」「勤務時間」「勤務地」などをエージェントに伝える事により、それぞれに合った就職先を紹介してくれるのもポイントです。

また、ハローワークでは得られない情報も提供してくれますから、求職者にとっては便利なツールだと言えます。

更に、会計事務所以外の一般事業会社などの求人も多い事から、「会計事務所か一般企業か」で迷っている人にも便利な方法だと言えるでしょう。

ただし、大手の税理士法人の一部には異常なほどの残業を強いるところもありますから、求人内容をよく確認した上で応募するようにしましょう。

 

 

ここで注意しておきたい点としては、世の中にはたくさんの求人サイトがありますが、税理士試験の科目合格者や受験生であるならば、必ず「会計職に特化したサイト」を利用しておきたいという事。

こうした特化サイトを利用する事により、企業側、求職者側双方にとってミスマッチが起こりにくくなります。

メリット
  • 大手税理士法人、大手企業の求人が多い
  • エージェント制度が便利
  • 一般企業の経理職の求人も豊富
デメリット
  • 大手税理士法人の場合、残業時間が多い事も
  • 求人企業が都心に集中している

 

それではここで、会計職に特化した求人サイトを幾つかご紹介しておきます。

 

ジャスネットキャリア


豊富な転職情報【ジャスネットキャリア】

ジャスネットキャリアは、「経理の転職に特化したサイト」として有名で、求人数も他のサイトに比べて豊富な内容となっています。既に5科目合格されている方や、公認会計士の方であれば必ずチェックしておきたい転職サイトだと言えるでしょう。
また、求人欄も見やすく、「どういった企業が、どういった人材を求めているか」ということが一目でわかるので、とても便利です。

主な特徴求人企業雇用形態
科目合格者の求人数が多い

会計職に特化した専門サイト

大規模企業がメイン

大手税理士法人の求人多数

正社員

 

doda


転職サイトはdoda

経理の仕事を幅広く探したいのであれば、この「dodaエージェントサービス」で求人企業を確認する事をお勧めします。数ある転職サイトの中でもトップクラスの掲載数を誇り、尚且つ経理の求人が多い事でも有名。
税理士事務所や公認会計士事務所の求人も多数あるので、税理士を目指す人にもお勧めです。

主な特徴求人企業雇用形態

求人件数が一番多い

幅広く経理の仕事を探したい人にもおススメ

大規模企業の事業会社がメイン

中規模税理士法人の求人も有り

正社員

 

MS-Japan


この「MS-Japan」は管理部門特化型求人サイトとして有名で、税理士事務所に限らず、大手企業の経営管理者などの求人も数多く掲載しています。税理士事務所に就職するのも良いですが、大手上場企業の経理部門管理職、CFOなどとして転職するのも良いですね。
ちなみに、科目合格者の求人も数多くありますから、官報合格者でなくとも収入アップを期待できます。

主な対象求人企業雇用形態

科目合格者の求人が多い

税理士法人の求人も多いが、どちらかというと一般企業の管理職の求人が多い

大規模企業がメイン

上場企業、スタートアップ企業など多数

正社員

 

まとめ

このように、税理士試験合格前の就職先については様々な選択肢がありますが、「自分は将来どのような形で税理士業務に携わりたいのか?」という事について考えれば、あまり迷う事もなくなるでしょう。

上記で説明したポイントについてよく考え、自分に合った就職先を見つけて下さい。