
税理士を探す場合、意外と税理士事務所の規模を選考基準として考えている人もいるかもしれません。
もちろんそういった方法で探すのも有効かもしれませんが、必ずしも「大きければ安心」とか、「大きければ有能」とはならないのが税理士事務所選びの難しいところ。
実際、小規模でも業界内では有名な事務所もありますから、あまり規模で税理士事務所を決めるのはおススメしません。
更に言うと、日本国内にある税理士事務所の事業規模というのは、せいぜいスタッフ数が所長を含めても15名以下というところがほとんどですから、規模で選ぶというのは馴染まない方法でしょう。
そこでこの記事では、全国的にもかなり多いとされる事務所規模である「スタッフ数5名未満」の零細税理士事務所の特徴や、依頼する際のメリット・デメリットなどについてお伝えしようと思います。
目次
当サイトにおける「税理士事務所の規模」の定義
一般的に、税理士事務所を規模ごとに分ける指標というものはありませんから、当サイトでは簡易的に「在籍しているスタッフ数」で事務所規模を定義しています。
この辺について詳しくは、こちらの記事を参考にしてみて下さい。
一般的にあまりよく知られていない税理士業界ですが、事務所ごとの「規模」や「特徴」などについても同様にあまり知られていないと思います。 税理士に依頼しようと考えている人からすると、「大規模事務所のほうが安心なのかな?それと …
上記の記事で書かれている内容は以下の通り。
- 一人税理士事務所 - 従業員を一人も雇わず、税理士1人で運営
- 零細事務所 - 所長含め、スタッフ数5名未満
- 小規模事務所 - スタッフ数5名~15名程度
- 中規模事務所 - スタッフ数15名~40名程度
- 中堅事務所 - スタッフ数40名~100名程度
- 大規模事務所 - スタッフ数100名超
中には、上記の振り分けに異論がある人もいるかもしれませんが、概ね税理士業界においては、上記のいずれかの枠に入る事で似たような傾向が出てくると言えます。
そこで今回説明するのが、上から2番目の「零細事務所」に関する内容です。
零細事務所(5名未満)の特徴
まずは「零細事務所(5名未満)」の特徴について。
こうした零細事務所の特徴は、まず税理士資格を持つ所長が一人いて、資格を持たないスタッフがそのサポートをしているという形態がほとんどです(税理士が2人以上というのは、ほとんど稀)。
ただし、この規模の事務所は数がかなり多いため、一律に「こうした傾向がある」と断定できませんから、特徴を説明するのは少し難しい部分があります。
例えば、基本的に税理士資格を持っているのが所長しかいませんから、顧問先への訪問は所長が直接が行う事が多くなります。ただし、中には数件のクライアントをスタッフに任せる所長もいるようです。
また、全般的にオフィスもそれほど大きくはなく、所長の「自宅兼事務所」という場合も多く見受けられますが、一方で都心のオフィスビルに事務所を開設している場合もあります。
どちらも傾向としては「前者」が多く、例外として「後者」が少しあるというイメージでしょうか。
これは、従業員の給与などに関しても同様に言えます。
よく税理士のブログなどで、「5名以下の事務所は給与が安すぎる」とか、「所長とその身内が事務所を牛耳っているため、意見が通りにくい」などと書いている税理士がいますが、あくまでもこういった情報は、「その税理士が経験した内容」を語っているだけに過ぎませんから、すべての事務所がこの通りとはなりません。
確かにそうした傾向もあるにはありますが、こうした零細事務所でも「給与が高い」事もありますし、「アットホームで、仕事がやりやすい」という事務所も多くあります。
結局どこまでいっても「所長次第」となりますから、その所長の性質が、そのまま事務所のカラーとなっているだけの話です。
これは、中堅や大規模事務所でも同じことで、やはり所長の性質というのはその事務所の社風を形作ります。ただし、中堅や大規模事務所の場合、組織化されている分、多少その度合いが薄まるという傾向はあります。
零細税理士事務所へ依頼するメリット・デメリット
それでは、こうした「零細事務所」へ依頼するメリット・デメリットについて。
この規模の事務所の場合、所長の年齢によってメリット・デメリットが変わってきますので、所長の年齢を「40代以下」「50代以上」に分けてご説明しようと思います。
【所長が40代以下の場合】
- 成長する意識が高く、新しい分野でも積極的に挑戦する
- 外部との連携に前向きで、他士業のネットワークも充実している事務所もある
- フットワークが軽く、レスポンスが良い
【所長が50代以上の場合】
- アットホームな雰囲気で、とても身近に感じる
- 専門性に特化している場合があり、特に相続などで有力な税理士も存在する
- 地域密着型で、その地域の税務署対応に慣れている
よく「スタッフが5名未満の税理士事務所はアットホーム」などという話を目にしますが、これは所長の年齢が「50代以上」の場合には当てはまります(もちろん、全てではありませんが)。
所長が40代以下の場合ですと、「これから事務所をもっと大きくしたい」とギラギラしている税理士が多いですから、必ずしもアットホームとはなりません。
また、規模が小さいとフットワークが軽いようにも思えますが、所長が高齢の場合、良くも悪くも「のんびりしている」という事務所も存在します。
それでは続いてデメリットについて。
【所長が40代以下の場合】
- とにかく所長が営業で忙しく、なかなかつかまらない事が多い
- 人の入れ替わりが激しいため、年に数回担当者が変更になる事も
- 所長によっては、経験の乏しさから難しい案件は対応できない事も
【所長が50代以上の場合】
- 現状でキャパシティーが限界である事が多く、新規顧客の受け入れが出来ない事も
- 昔ながらの職人気質の所長が多く、新しい情報の収集などに消極的なことも
- 専門性の高い事務所は、その分報酬が高額になり易い
所長が40代以下の場合、「これから事務所を大きくするぞ」と考えている事が多く、報酬額を抑えたりして積極的な営業活動をしていることが多いのですが、その分所長自身が営業に専念してしまっているので、既存顧客への対応が疎かになる場合があります。
また、組織として出来上がっていないので、従業員の入れ替わりが激しく、担当者がコロコロ変わるという事もザラです。
この点、50代以上の税理士が所長の場合、従業員の定着率は安定していますが、そもそもこれ以上事務所を大きくすることを考えていない事もあり、新規顧客を受け付けないという事務所も存在します。
また、事務所規模が小さいため「報酬は安いだろう」と考えるかもしれませんが、例えば相続税などで有名な税理士事務所の場合、有能な分、かなり報酬が高くなることもあります。
零細税理士事務所に依頼する事が向いている人・向かない人
では上記のメリット・デメリットを考慮した上で、こうした零細税理士事務所に依頼する事が向いている人と向いていない人についてお伝えします。
まずは「向いている人」から。
- フリーランス
- 中小企業
- 税理士に直接担当してもらいたい人
- 「記帳代行」も依頼したい人
- 相続税申告を考えている人の一部
まず、フリーランスや中小企業の経営者であれば、この規模の事務所に依頼すればサービス内容に不満を抱くことは少ないかもしれません。
一部を除いて、ほとんどの場合において税理士である所長が直接対応してくれますから、経験や知識において安心感があります。
また、一人税理士事務所の場合は「記帳代行」に対応していない事がほとんどですが、この零細規模の事務所であれば対応してくれることが多いですから、こうした記帳代行も依頼したいと考えている経営者であれば、何かと便利な事務所です。
ただし、TKCのソフトを利用している事務所の場合は少し勝手が違いますから、その辺はよく確認しましょう。
続いて、「向かない人」について。
- 中堅企業、大企業
- スタートアップ
- 遺産額の大きい相続人
やはりこの規模の事務所だと、どうしてもキャパシティーの限界がありますから、一定規模以上の中堅企業や大企業には向かない選択肢だと言えます。
仮にデータ入力を自計化しているとしても、仕訳数が膨大な量ですから、スタッフ数が5名未満では対応が難しいと言えるでしょう。
またスタートアップ企業の場合、将来の上場を見据え「内部統制」など、一般的な企業とは異なる対応を求めらることになります。もちろんこれらに対応する税理士も存在しますが、あまり多くないのが現実でしょう。
総じて「一定規模以上の法人」「特殊案件」には馴染まない事務所だと言えます。
零細税理士事務所を探す方法
そして次が、こうした零細税理士事務所を探す方法について。
これも所長が40代以下の場合と50代以上の場合では、少し方法が異なってきます。
そもそも、所長が高齢の場合「これ以上顧客を増やすつもりは無い」と考えている事もありますから、ここも一律に「こういった方法がありますよ」と説明するのは難しいところなのです。
税理士を探すための一般的な方法について知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。
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全てこの通りとはなりませんが、傾向として多いのは「所長が50代以上の場合は紹介がメイン」「所長が40代以下の場合は、様々な方法から選択」といったところでしょうか。
全般的な傾向としては以下の通り。
- 知人の紹介
- セミナー、無料の相談会などで探す
- 税理士紹介サイトで探す
- 会計ソフト会社から探す
40代以下の税理士全てではありませんが、彼らは全般的に営業に積極的な傾向がありますから、セミナーの講師を引き受けたり、税理士紹介サイトや会計ソフト会社の税理士紹介サービスに登録したりして、顧客獲得に励んでいます。
上記の方法で税理士を探すのであれば、以下の記事も参考にしてみて下さい。
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零細税理士事務所への就職
そして最後に、こうした零細事務所への就職ですが、この場合も所長が40代以下と50代以上では少し内容が異なります。
まず40代以下の所長の場合、ドンドン新規顧客を増やしていますから、常に人手不足となり、頻繁に求人をかけている印象が強いです。こうした事務所に就職すれば、すぐにでも顧客を担当させてもらえますから、「現場での経験を積みたい」と考えている人には向いているでしょう。
しかし、その分仕事はいつも忙しく、「就職しながら税理士試験の勉強をしたい」と考えている人には不向きだと言えます。
その点、所長が50代以上の事務所の場合は、基本的に残業が少なく、ゆったりとした環境であることが多いですから、税理士試験の受験勉強を考えている人にとっては都合が良いのかもしれません。
ただしこれは事務所によりますから、その辺は面接時などによく確認しましょう。
どちらにしても、これら事務所の求人は転職サイトに載せることは少なく、ほとんどが「ハローワーク」での求人となります。
ハローワーク以外で探す方法は、以下の記事を参考にしてみて下さい。
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