税理士と公認会計士は、「本業以外」で何をして稼いでいる?

一般的に税理士の本業と言えば、「税務代理」といった税理士事務となりますし、公認会計士の本業となれば「監査業務」を中心とした公認会計士事務となります。

多くの税理士や公認会計士がこうした事務を本業としていますが、中にはそれ以外の業務で稼いでいる人もいるようです。

要は、「副業・複業」という事ですね。

そこでこの記事では、税理士や公認会計士が本業以外で副収入を得るために、どのような業務を行っているのかなどについてお伝えします。

目次

税理士の副業

まずは「税理士の副業」について。

経済産業省と総務省は、国内の経済構造を把握するため、「経済センサスー活動調査」というものを5年毎に行っています。

その中で、「事業活動別収入」というものを調査しており、この調査結果から、税理士事務所が一体どのような事業から収入を得ているかを知ることが出来ます。

ちなみに、この調査は2016年に行われた際のデータとなっています。

収入の内容合計に占める割合
第1位税理士事務99.1%
第2位貸家0.1%
第3位公認会計士事務0.1%
第4位事務所等賃貸0.1%
第5位行政書士事務0.1%

出典:経済センサスー活動調査

上記を見ると、税理士の本業である「税理士事務」が99.1%と、実に多くの税理士が本業を主体に活動している事が分かります。

それ以外の業務に関しては、全てが0.1%程度の比率しかありませんから、税理士として活動している人の副業・複業を行う比率は極めて低いという事ですね。

ただし上記の「収入の内容」から、税理士の副業における特徴というものも見えてきます。

税理士の副業の特徴

では、その特徴についても考えてみましょう。

まず、2位の「貸家」と4位の「事務所等賃貸」についてですが、やはり不動産貸付事業というのは、副業であってもあまり手間がかからないという点から、簡単に始めやすいという利点があります。

これは最近流行っている「サラリーマン大家さん」などを見ればよく分かりますね。

ここで更に税理士の利点としては、不動産関連の税金や法改正に詳しいという事もありますから、税理士の副業としては一番馴染みやすいのかもしれません。

また、それなりの規模の税理士事務所となれば、自社でビルを建設してそこにオフィスかまえ、余ったスペースをテナントとして貸し出している事もありますから、資金的に余裕のある事務所などは手を出しやすい分野だと言えるでしょう。

 

 

クライアント先に不動産会社などがあれば、市場へと不動産情報が出る前に良質な情報を手に入れる事も出来ますから、こうした人であれば一度検討してみるのも良いかもしれません。

次に、3位の「公認会計士事務」と5位の「行政書士事務」についてですが、こちらも税理士特有の内容だと言えるでしょう。

公認会計士事務に関しては、そもそも公認会計士であれば税理士業務を行える事から、双方の業務を行っている人も存在します。

こうした「公認会計士に登録後、税理士にも登録している人」の中には、いつの間にか税理士業が本業となり、たまに公認会計士の事務を行う程度といった人もいるようです。

また行政書士事務に関しては、税理士であれば行政書士として登録する事が可能となりますから、クライアントに建設業者や許可を必要とする企業がある税理士であれば、片手間に行政書士事務を行う事もあるようです。

いずれにしても、税理士の副業の特徴としては世間的に目新しいものは無く、あくまで「本業の延長線上にある業務」というイメージが強いと言えますね。

公認会計士の副業

それでは次に「公認会計士の副業」について。

こちらも先ほどと同じように、経済産業省と総務省が行っている「経済センサス-活動調査」からのデータをもとに見ていきましょう。

以下は、2016年における調査結果。

収入の内容合計に占める割合
第1位公認会計士事務95.4%
第2位経営コンサルタント3.7%
第3位税理士事務0.7%
第4位その他専門サービス0.1%
第5位貸家0.1%

出典:経済センサスー活動調査

上記を見ると、やはり本業である「公認会計士事務」が1位となっていますが、税理士と比べると合計に占める割合は低く、95.4%にとどまっています。

これは他の士業と比べても低い傾向にあり、弁護士の「法律事務」99.4%、社労士の「社会保険労務士事務」97.9%と比べても、突出した数値となっています。

公認会計士の人は、本業以外の業務に積極的な印象が強いですね。

そこで公認会計士の副業の特徴についても考えてみましょう。

公認会計士の副業の特徴

まず、収入の内容の第2位を見ると、「経営コンサルタント」という業務が挙がってきます。第4位の「その他専門サービス」に関しても、その派生と考えて良いでしょう。

公認会計士の本業は監査業務となりますが、ここ数年の傾向としては、どの監査法人も経営コンサルタント業務を増やす傾向にあります。これは公認会計士側から積極的に働きかけた結果というよりも、企業側からの強い要請の結果であり、今後はますますこの「経営コンサルタント業務」が増えていく事でしょう。

その他の副業の内容を見ると、「税理士業務」「貸家」とありますから、コンサルタント業務以外は特に目立った特徴も無いと言えます。

ただし、一般的に副業とまでいかなくとも副収入を得るために「株式投資」を行う人もいると思いますが、公認会計士の場合は大企業の監査を行うという業務の特性上、インサイダーとなる可能性がありますから、こうした株式投資に手を出しにくいという特徴があります。

ですから、公認会計士が「投資をする」となると、不動産投資の比重が大きくなるのかもしれません。

全般的に考えるとこれからの公認会計士は、監査能力よりもコンサルタント能力を求められることが多くなるのかもしれませんね。

税理士と公認会計士が取り掛かりやすい副業

以上から、税理士・公認会計士ともに多くの人が本業を中心に事業活動を行っている事が分かりましたが、仮に副業を行っているにしても、その本業の「延長線上」で活動している事がわかります。

やはり、本業から大きく離れると、上手く行きにくい傾向が強くなりますよね。

そこで以下において、税理士と公認会計士が取り掛かりやすい副業について整理してみます。

難易度低:不動産貸付事業

まずは難易度が低いものとして、「不動産貸付事業」が考えられます。

どちらも会計のプロですから、税務知識を活用してこうした不動産貸付事業に参加すれば、他の事業者よりも成功する確率は高まると言えるでしょう。

もちろん、現在(2021年)の不動産市況は不確定要素が多いですから、参入時期は慎重に検討しなくてはいけません。

実際にこうした不動産貸付事業に参入している税理士の中には、「消費税還付スキーム」などをフルに利用している強者(つわもの)もいますから、事業的にも馴染みやすいのでしょう(現在は、様々なスキーム封じがあるため注意が必要)。

一度事業が軌道に乗ってしまえば、あまり手間もかかりませんし、金融機関も税理士や公認会計士に対する貸付にはまだまだ積極的ですから、参入する難易度はかなり低いと言えるでしょう。

また最近は、わざわざビルやマンションを購入しなくとも、現在あるスペースの一部を賃貸する「スペース賃貸」というサービスもありますから、例えば事務所の駐車場スペースに余裕があれば、一部そうしたサービスなどに貸し出すという方法も考えられます(サブリースとは少し考え方が異なるサービスです)。

この「スペース賃貸」について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。

 

 

また、税理士の中には住宅ローン控除をフルに活用して、返済し終わった住宅を借家として貸し出す人などもいるようです(ただし、住宅ローン控除の改正があるため、今後は注意が必要)。

 

難易度高:経営コンサルタント

次に、難易度が高い事業についてですが、代表的なものとして「経営コンサルタント」が挙げられます。

近年、大企業が公認会計士にコンサルタント業務を求めるように、中小企業も税理士にこれを求める傾向が高まっています。

しかし、前述した「経済センサス」の調査結果を見ると、税理士の多くがこの経営コンサルタント業務を行っておらず、世間の要望に応えきれていないというのが実情のようです。

確かに、このコンサルタント業務に関しては、税務知識以外の能力が必要となるという理由もあるでしょうし、何より税理士は、毎月クライアントから「顧問料」を頂いていますから、会計顧問とコンサルタント業務の垣根が曖昧となっているという事も考えられます。

「それも含めた顧問料だろ」と言ってくるクライアントもいるかもしれませんが、自身のコンサルタント能力に自信があるのであれば、むしろ「そこは別でお支払いください」と、堂々と言っても良いのではないでしょうか。

もちろん、様々な勉強が必要となりますが、他の人間がやっていないからこそ参入する価値があると言えるでしょう。

だからと言って、いきなり「財務分析」を経営者にみせつけても、「だから、何?」となることもありますし、「管理会計」を推奨しても「面倒だ」ともなり得ますから、そこはクライアントが何を求めているか考えながら、提案していく必要があります。

その他

最後にその他として考えられる事業は以下の通り。

副業の種類
  • セミナー講師
  • 資格の学校講師
  • 不動産の仲介業
  • 社労士事業

まず「セミナー講師」についてですが、こちらはやはりトークに自身のある人以外にはおススメ出来ない方法となります。

また、セミナーとは「集客」がメインの目的となりますから、あまりこれだけで収入を増やすというのは現実的ではないかもしれません。

もちろん、ある知識に特化したセミナーを行う事で、多くの収入を得ている税理士・公認会計士もいますから、自信のある人はチャレンジする価値はあるでしょう。

「資格の学校講師」に関しては、こちらもトークに自信が無ければ出来ませんし、あまりこれで儲かるというイメージもありませんから、「独立開業後の収入の足しに」という感覚で選択している人が多いように思います。

また次に「不動産仲介業」とありますが、こちらは宅建士の資格を取った上で、一般的な不動産売買の仲介を行うという事。

「なんで税理士や公認会計士がそんなことを・・・」と考える人もいるかもしれませんが、税理士などがこうした不動産仲介業を行うメリットは結構あります。

まず、顧客の遊休資産というのは、税理士が一番その価値を知っていますから、「市場で売れば、今だったらいくらぐらいで売れますよ」なんて事を簡単に経営者に提案する事が出来ます。

また、近年の不動産情報の検索などは、インターネットを利用する事がほとんどですが、自社のクライアント間で売買すれば「インターネットに情報を載せたくない」という人にとっても便利な方法となります。

一般的に「両手取引」であれば、合計で6%の手数料が得られますが、双方が自社のクライアントであればこの手数料を下げても良いですし、「利益相反」というコンプライアンス上の問題が気になるのであれば、他の不動産会社を介入させて「片手取引」にするのも良いでしょう。

意外とこれを喜んでくれるクライアントもいますから、一度検討してみては如何でしょうか。

そして最後の「社労士事業」ですが、これは「助成金・補助金」などがメインとなってくるかもしれません。

助成金の多くは厚生労働省所管の事業がほとんどですから、社労士の資格がなければ、たとえ税理士であったとしてもなかなか受け付けてくれません。

急激な経済危機の際などは、この助成金事業の問い合わせが税理士事務所にも殺到するでしょうから、こうした分野に明るいのであればクライアントからも喜ばれるでしょう。

 

近年の新しい傾向

上記はあくまで「本業の延長線上」の業務となりますが、最近では全く新しい副業にチャレンジする税理士や公認会計士も増えています。

その一例がこちら。

新しい副業
  1. ユーチューバー
  2. ブログアフィリエイト、アドセンス

まず「ユーチューバー」ですが、最近ですと「弁護士」「司法書士」「税理士」など、様々な士業の人間がYouTube事業に参加しています。

人気ユーチューバーともなれば、それだけで月収数十万円から数百万円にもなりますから、上手く行けば本業よりも稼げるかもしれません。しかし既に参入している人が多く、これから後発として参入し収益化するまでには、数年単位で頑張る覚悟が必要となるでしょう。

また、撮影の仕方や編集方法も考えなくてはいけませんから、素人には少しハードルが高いかもしれません。

しかし、それでも自信があるというのであれば、やってみる価値はあるかもしれませんね。

その点、ブログアフィリエイトやアドセンスであれば、自分のブログを作り、そこに広告を貼って収入を得る方法となり、そこまで高度な知識は必要となりません。やり方次第では、まだまだ参入の余地はあります。

税理士や公認会計士として専門的な知識を発信するのも良いですし、自分の趣味をネタにするのも良いですから、文章力に自信があるのであれば検討してみる価値はあります。

まとめ

「本業だけで頑張りたい」と考えるのも良いですが、これからの時代、何が起こるか分かりませんから収入の柱は少しでも多いほうが安心できますよね。

特に、税理士業界は競争が激化していますから、以前のように「座っていれば顧客がやってくる」などという事は期待できません。

まずは、本業の延長線上からでも良いですから、一度、新しい事業を検討してみては如何でしょうか?