
一般的にあまり知られていない税理士業界ですが、事業規模としては全体的に小さく、スタッフ数15名以下の規模の事務所だけで全体の9割を占めると言われています。
ですから、この記事でご紹介する「スタッフ数15名~40名程度」の中規模税理士事務所というのは、税理士が運営する事務所の中でも規模が大きい部類に入ります。
これより大きな事務所としては、スタッフ数40名~100名程度の「中堅事務所」、スタッフ数100名超の「大規模事務所」となりますが、このクラスになるとほとんど数える程度しか存在しなくなります。
中堅事務所、大規模事務所について知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみて下さい。
日本国内においては、様々な規模の税理士事務所がありますが、スタッフ数が40名~100名程度の中堅税理士事務所や、スタッフ数が100名超の大規模税理士事務所となると、その合計数は全体の1%にも及びません。 スタッフ数15名 …
このため、一般企業で従業員数が15名~40名程度であればかなり小規模な事業者と見なされますが、税理士業界では「中規模クラス」となってきます(実際に、世間から中規模税理士事務所と呼ばれるわけではありませんが)。
この記事においては、こうした中規模税理士事務所の特徴や、依頼する場合のメリット・デメリットなどについてお伝えしようと思います。
目次
当サイトにおける「税理士事務所の規模」の定義
一般的に、税理士事務所を規模ごとに分ける指標というものはありませんから、当サイトでは簡易的に「在籍しているスタッフ数」で事務所規模を定義しています。
この区分けについては、こちらの記事を参考にしてみて下さい。
一般的にあまりよく知られていない税理士業界ですが、事務所ごとの「規模」や「特徴」などについても同様にあまり知られていないと思います。 税理士に依頼しようと考えている人からすると、「大規模事務所のほうが安心なのかな?それと …
その内容は以下の通り。
- 一人税理士事務所 - 従業員を一人も雇わず、税理士1人で運営
- 零細事務所 - 所長含め、スタッフ数5名未満
- 小規模事務所 - スタッフ数5名~15名程度
- 中規模事務所 - スタッフ数15名~40名程度
- 中堅事務所 - スタッフ数40名~100名程度
- 大規模事務所 - スタッフ数100名超
中には、上記の振り分けに異論がある人もいるかもしれませんが、概ね税理士業界においては、上記のいずれかの枠に入る事で似たような傾向が出てくると言えます。
そこで今回説明するのが、上から4番目の「中規模事務所」に関する内容です。
中規模事務所(15名~40名程度)の特徴
まずは、「中規模事務所(15名~40名程度)」の特徴についてから。
この規模になると、地方都市などではその地域でトップクラスの事務所であることが多くなります。このため、税理士業界では成功している事務所であると言って良いでしょう。
法人としてではなく個人事業のまま営業を続けている事務所もありますが、この事業規模になると大半が法人化を検討し始めるか、もしくは既に法人化している事務所が多くなってきます。
中規模税理士事務所は、古くからその地域で税理士業を行っている事も多く、現在の所長が2代目、3代目などという事務所も結構あります。こうした長年運営している事務所の場合は、先代の所長と後継ぎの所長の「連名」で法人化している事が多いかもしれません。
よく「税理士法人 〇〇会計(〇〇の部分は苗字)」などといった法人名を目にする事があるかもしれませんが、こうした事務所は親子で代表税理士を名乗り、その他の税理士は「所属税理士」として登録しているケースが多くなります。
「所属税理士」には経営権がありませんから、要は、経営権は身内に残したまま法人化したようなものです。
この他、税理士業務は個人事業のままにしておいて、グループ企業として「コンサル会社」とか「記帳代行会社」を設立し、従業員の一部をそうしたグループ会社の所属としている事務所も見受けられます。
この辺について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧になってみて下さい。
一般的な士業の事務所名というのは、弁護士であれば「〇〇弁護士事務所」であったり、司法書士であれば「〇△司法書士事務所」となりますが、税理士の事務所となると「〇〇税理士事務所」の場合もあれば、「△〇会計事務所」の場合もあり …
また、これらの事務所は「特化型事務所」であることが多く、「相続専門」「医業専門」「不動産・建設専門」など、それらの分野に特化して事務所運営をした結果、事務所を大きくしたという所長もいます。
全般的に経営も安定していますから、所長が直接業務に携わる事はほとんど稀かもしれません。
中規模事務所へ依頼するメリット・デメリット
それでは、これら中規模事務所に依頼するメリット・デメリットについても見ていきましょう。
これだけの規模になるという事は、それなりに突出した能力が有る結果ですから、総じてレベルが高い事務所であることが多くなります。しかし、その拡大した理由が「マーケティング」なのか、「税務知識なのか」などによっても、事務所の風土が変わってきます。
- 優秀なスタッフも多く、所長以外の税理士も数名在籍している
- このため、誰が対応してもそれなりのサービスを受ける事が出来る
- 特化型事務所の場合、その分野においては幅広い知識を持っている
- 地域のトップ事務所である場合、税務調査対応にも慣れている
- 国税OB税理士を顧問としている事務所も有り、その場合も税務調査対応力が高い
- 特化型事務所の場合、報酬額が高くなる傾向がある
- 事務所によっては、保険などの商品を頻繁に勧めてくる
- 更なる拡大を目指している事務所の場合、新卒採用もあり、未経験の新人が担当になる事も
- マーケティングで急拡大した事務所の場合、総じてスキルが低く、特に相続の申告において不安
- それなりの社内派閥が出来る事もあり、その場合、社内がギスギスしている
近年、相続税の改正によって、多くの税理士事務所が「相続税申告専門」などと謳って集客をしているのを目にしますが、こうしたマーケティングのみで拡大してきた事務所の場合、職員全体のスキルが低い事があり、中には基本的な事も理解しておらず、様々な問題(特例を知らずに税額が増えてしまうなど)に発展する事もありますから注意が必要です。
やはり「相続専門」と謳うからには長年の経験と知識が必要となりますので、広告内容だけを鵜呑みにせず、実際に事務所の雰囲気などをしっかり見極める必要があります。
相続税の税理士選びを考えている人は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。
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この規模の事務所は全般的に有資格者も多く、優秀なスタッフが多い反面、新卒採用の社員も担当になる事がありますから、こうした担当者に当たった場合、依頼者側としては不安の残るところかもしれません。
また、どの規模の税理士事務所であれ、トップである所長のカラーが出てくるものですが、この中規模税理士事務所も同様に、所長の性格が事務所の気質に影響を与えます。
ですから、大まかな特徴としては上記のようになりますが、何処まで行っても結局は「所長次第」と言ったところでしょう。
中規模事務所へ依頼する事が向いている人・向いていない人
それでは次に、こうした中規模事務所へ依頼する事が、向いている人と向いていない人についてもお伝えします。
まずは「向いている人」から。
- 個人事業主(業種や事務所による)
- 医業関連
- 中小企業
- 中堅企業
- 相続税の申告を考えている人(事務所による)
この規模になると、全ての事務所ではありませんが、稀にフリーランスや個人事業主の依頼を敬遠する事務所もあります。
確定申告というのはどうしても時期が集中して多忙となりますから、現状でもクライアント先の経営者の確定申告だけで限界という事もあり、新規の個人に対応できないという理由があるからなのかもしれません。
ただし、医師などの場合は受け入れる事がほとんどですから、ここは「業種による」と言ったところでしょう。
また、相続専門として古くから運営している事務所の場合、社内でチーム制で対応する事務所もありますから、大規模な相続税申告においても対応できる規模だとも言えます。
続いて「向いていない人」について。
- 副業・複業の申告
- 大企業
- 特殊な業種
前述したように、この規模の税理士事務所の中には個人事業主を敬遠する事務所もありますから、そうした事務所の場合、副業や複業の確定申告も断られる可能性が高くなります。
もちろん事務所の運営方針にもよりますが、副業などの申告で税理士に依頼しようと考えているのならば、小規模以下の事務所で探すことをお勧めします。
また逆に、大企業のように大きすぎる企業にしてみると、この規模の事務所では物足りなく感じる事が多いでしょう。中堅規模の企業であったり、上場企業の子会社程度であれば対応できる事務所もありますが、基本的には難しいと考えて下さい。
また、「特殊な業種」とありますが、こうした中規模税理士事務所の中には、「〇〇の業種の依頼は受け付けない」と決めている事務所もあります。
これは自社の専門性を高めるためであったり、単に所長がその業種が苦手だったりという事もありますから、事前に確認する必要があります。
中規模事務所を探す方法
それでは続いて、こうした中規模事務所を探す方法について。
この規模となると、圧倒的に「紹介」が多くなり、以前は「座っていても顧客がやってくる」などと言っている税理士もいましたが、近年は税理士業界の競争が激化しているため、そうもいっていられない状況となっています。
ですから、危機意識の高い所長などは、実に様々な方法を利用して集客に励んでいるようです。
一般的に知られる税理士の探し方については、こちらの記事も参考にしてみて下さい。
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上記の記事にも書かれていますが、概ねは以下の通り。
- 知人の紹介
- セミナーや無料の相談会など
- 税理士紹介サイト
- 会計ソフト会社の税理士紹介ツール
この他にも「税理士事務所のホームページやブログから依頼する」方法などもありますが、この規模の事務所の傾向としては、あまりこうした経路からの顧客流入を好みません。
ですから、あまりホームページやブログに力を入れている事は少なく、こうした方法で事務所を探すのであれば規模の小さい事務所が主体となるでしょう。
ただし、相続申告を専門に取り扱っている場合は、顧客の紹介などはあまり望めませんから、逆にホームページなどに力を入れている事務所もあります。
上記それぞれの方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。
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また、相続専門の税理士を探している方は、こちらの記事も参考になると思います。
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中規模事務所への就職
そして最後が、中規模税理士事務所への就職について。
この規模の事務所の場合、所長の年齢によって内容が少し異なってきます。
所長が若い場合、更なる拡大を目指している事が多いので、いつも人手不足の印象があります。ですから、頻繁に人材を募集している事が多く、ある程度の経験や資格さえあれば比較的簡単に雇い入れてもらえる傾向があります。
しかしその分、いつも忙しく残業が多くなりますから、税理士試験を受験しながら働くのは難しいかもしれません。
また、所長が高齢の場合でも全般的に仕事量が多いので、よほどの事が無い限り残業は避けられない傾向にあるでしょう(もちろん、残業の少ない事務所も存在します)。
給与の傾向としては、そこそこ高額の給与を支払う事務所と、平均的な給与を支払う事務所が「半々」と言ったところでしょうか。
ただし、小規模税理士事務所以下の規模であれば社会保険未加入という事務所もありますが、この規模以上となればほとんどが加入済みとなりますから、そうした面においては安心だと言えるでしょう。
また今後、士業事務所は厚生年金が強制適用となるようですから、この辺はあまり心配しなくても良いと思います。
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こうした中規模事務所でも「ハローワーク」に求人を出している事がありますが、求人サイトへ登録している事務所もたくさんありますから、一概に「ここで探せる」という方法は無いように思います。
中規模事務所の就職を希望するのであれば、以下の記事を参考にしてみて下さい。
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