
日本には数多くの「士業」が存在しますが、現在、一体どれだけの人数が登録されているかご存知でしょうか?
近年の司法試験の改正により、弁護士数が急激に増加しているなどと、耳にしたことがあるかもしれませんね。しかし、どの士業も「難関国家資格」ですから、基本的には毎年急激に増加するわけではありません。
法改正があった時などの例外を除けば、基本的には「毎年少しずつ増加している」といったところです。
そこでこの記事では、税理士の登録者数やその推移、年齢構成などを、他士業と比較しながらお伝えしようと思います。
目次
士業で一番多いのは税理士
まず、現在における各士業の登録者数から。
現時点では、2020年3月時点でのデータが揃っておらず、社会保険労務士についてのみ2019年9月時点の数値となります(2020年4月更新)。
そこで結論から言うと、士業の中で登録者数が一番多いのが税理士となっています。
士業名 | 登録者数(各年3月時点) |
---|---|
税理士 | 78,795人(2020年) |
弁護士 | 42,200人(2020年) |
司法書士 | 22,724人(2020年) |
社会保険労務士 | 42,537人(2019年9月) |
行政書士 | 48,639人(2020年) |
実に、司法書士に比べると約3倍以上、弁護士と比べても2倍近くの人数が登録している事になります。
ただし、医師を士業に含めると、医師の方が断然多いですから、いわゆる「師業」は含めていません。
税理士登録者数の推移
では次に、過去10年間の税理士登録者数の推移について見てみましょう。
上の表を見ると、税理士登録者数は毎年着実に増加している事が分かります。
10年間で約6,700人増加している事を考えると、毎年平均して670人程度の増加があるという事ですね。そう考えると、登録者数が80,000人を超えるのも時間の問題でしょう。
現状においても税理士業界というのは「顧客獲得争い」が激しくなっているというのに、今後は更に熾烈化していくことが容易に想像できますね。
何故、税理士は毎年増え続けているのか?
それでは次に、「なぜ、税理士は毎年増え続けているのか?」という事について。
現在の日本は少子高齢化の影響もあり、年々、労働人口が減少しています。そしてこれに伴い、税理士のメイン顧客である中小企業の数も減少しています。
しかし、それに反比例するように税理士の数が増えている訳ですから、競争が激化してしまうのは当たり前だといえますよね。
実際、数年前に比べ、税理士の報酬(年収も)は減少傾向にあるのですが、にもかかわらず税理士登録数が増えるには理由があります。
その一番の理由が「高齢税理士が、なかなか引退しない」という事。
世間のイメージとして、税理士は年寄りが多いというものがあるようです。
実際のデータとして、日本税理士連合会が平成26年に実施した調査において、60歳以上の税理士が、実に54%も占めていたようです。
60歳と言えば一般的には定年の年齢ですが、税理士には定年がないことから、言葉は悪いですが「死ぬまで」税理士を続ける人が多いようですね。
80歳代だけでも全体の10.4%に上るそうですから、他の業種にはない特殊性が税理士業界にはあると言えるでしょう。
また、税理士登録者数が増え続けるもう一つの理由として、「税務署退官者の税理士登録」が挙げられます。
一定期間、税務署などで勤務した公務員は、税理士となる資格を有しますので、退官後の職業として選ぶ方が多いのです。
これも税理士の平均年齢を押し上げる一因ともなっています。
各士業の年齢構成
「税理士は年寄りが多い」と言われても、いまいちピンとこない人もいるかもしれませんね。それではここで、如何に税理士の平均年齢が高いかが分かるように、他の士業と税理士とでの年齢構成を比較してみたいと思います。
データのある士業が少ないため、弁護士、医師との比較となります。
20歳代 | 30歳代 | 40歳代 | 50歳代 | 60歳代 | 70歳以上 | |
---|---|---|---|---|---|---|
税理士 | 0.6% | 10.3% | 17.1% | 17.8% | 30.1% | 24.1% |
医師 | 9.1% | 21.3% | 22.4% | 22.1% | 16.3% | 8.8% |
弁護士 | 7.1% | 32.9% | 24.8% | 11.2% | 10.7% | 13.3% |
上記データは、弁護士が2018年、医師が2016年の数値となっています。税理士に関しては、2014年の実態調査をもとにしていますので、大まかな数値になりますが、実情との差異はそれほどないでしょう。
これを見ると、医師に関して言えば医学部卒業者にしか医師免許を取得することは出来ませんので、各世代とも同じような比率になるのがわかります。
また、弁護士に関しては、30代から40代が最も多く、近年の司法試験改正が影響している結果だと言えるでしょう。
それに比べ、税理士においては高齢になればなるほど人数が増えているのがお分かりになるかと思います。
どの職種も、常に新しい知識を吸収し続けなければいけませんので、日々の勉強が必要となります。高齢になればなるほど、記憶力の低下も著しく、「引退」の文字が浮かびそうなものです。
その結果、医師も弁護士もある一定の年齢になると登録者数が減っていることが分かりますが、税理士だけは異常な数値となっています。
悪くとらえれば、古い体質の業種とも言えますが、良くとらえれば、若い税理士にとってやり方次第ではいくらでもチャンスはあると捉えることも出来ます。
ここは、考え方ひとつといったところですね。
ちなみに、税理士などの士業における「女性比率」について知りたい方は、こちらの記事もご覧になってみて下さい。
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