【税理士試験】教育訓練給付制度を活用して、講座費用を安く済ませよう

資格試験に合格するためには、独学で学習するよりも専門のスクール講座を受講する方が効果的であることは誰もが理解していると思いますが、全般的に費用が高額となるため、なかなか受講へと足を踏み出せない人も多いかと思います。

また、税理士試験となると5科目の試験に合格しなくてはならず、他の資格試験に比べて更に講座費用が高額となります(科目ごとに受講しなくてはいけないため)。

一般的に大手の資格専門学校となると、1科目平均20万円程度の費用が必要となり、それが5科目ですから単純に合計100万円程度は必要となります。これは全ての科目を一発で合格した場合ですから、複数年の受講となると更に費用がかかります。出来る事なら、少しでも費用を抑えて全ての科目に合格したいですよね。

そこで知っておきたいのが「教育訓練給付金」という制度。

この制度を利用する事により、スクールに支払った入学金や受講料の何割かを国が負担してくれますから、とても有難い制度だと言えます。

学生の方は利用できませんが、ある一定の要件をクリアした社会人向けの制度となっており、働きながら学習する方には是非利用していただきたい制度です。

そこでこの記事では、税理士試験の講座費用を少しでも安く済ませるために、教育訓練給付金の有効的な活用方法、お勧めのスクールなどについてお伝えします。

目次

教育訓練給付金制度とは?

まずは、教育訓練給付金制度の仕組みなどについて。

この制度は国(厚生労働省)が、「労働者のキャリアアップを支援するため」に創設した制度であり、「労働者の資格取得費用の補助」を主な目的としています。

こちらについて詳しく知りたい方は、下の記事もご覧になってみて下さい。

 

 

この制度は現在、「一般教育訓練給付金」「専門実践教育訓練給付金」「特定一般教育訓練給付金」の3種類から成り立っています。

内容としては以下の通り。

給付金制度
  • 一般教育訓練給付金 - 従来からある給付金制度で、幅広い資格が対象となっている。
  • 専門実践教育訓練給付金 - 2014年の法改正から新設された制度で、「専門的な」資格が対象となっている。
  • 特定一般教育訓練給付金 - 2019年10月から新設。一般教育訓練給付金の中でも、特に早期のキャリア形成に役立つ資格を対象としている。

支給割合は?

この3種類の給付金すべてが、労働者のキャリアアップを支援するものですが、それぞれの給付金ごとに支給割合も異なっています。

支給割合は以下の通り。

一般教育訓練給付金
費用の20%を支給。ただし、上限は10万円まで、下限は4千円となっている。
専門実践教育訓練給付金
費用の50%を支給。ただし上限は年間40万円。また、この給付金の特徴として「①資格に合格し、1年以内に就職した場合は70%まで支給、②最大4年の講座にも対応」というものがあり、一番手厚い内容となっている。
特定一般教育訓練給付金
費用の40%を支給。ただし、上限は20万円まで下限は4千円となっている。

出来る事なら少しでも支給金額を増やしたいところですが、多くの資格において、対象となる教育訓練給付金は「一般教育訓練給付金」がメインとなっています。

それでも、20%も支給して貰えるのですから有難い制度ですよね。

ただ、税理士試験に関しては、他の資格と異なる特徴があります。

税理士試験は給付金対象講座が多い

その特徴とは、「税理士試験は給付金対象講座が多い」という事。

実は、上記の「一般教育訓練給付金」「専門実践教育訓練給付金」「特定一般教育訓練給付金」の全てにおいて、税理士試験の講座は対象となっています。ですから、例えば「専門実践教育訓練給付金」を利用すれば、最大で70%もの支給を受ける事が出来るのです。

これはかなりお得ですよね。

税理士試験講座の専門実践教育訓練給付金における受講期間は、大抵2年間ですから、仮に年間50万円の講座を受講すれば2年間で100万円となりますが、様々な条件を満たせば2年間合計で70万円も国が支給してくれるという事です。

また、2019年10月に新設されたばかりの「特定一般教育訓練給付金」は現在対象講座数が限られているのですが、その少ないなかでも税理士講座がかなり多くを占めているため、教育訓練給付制度は、税理士試験受験生にとって「必ず知っておくべき制度」だという事がお分かりいただけるかと思います。

専門実践教育訓練給付金は更に便利

「一般教育訓練給付金」と「特定一般教育訓練給付金」は、早期のキャリア形成を目的としているため、基本的に1年未満の講座を対象としています。

しかし、これに対し「専門実践教育訓練給付金」は「中長期的なキャリア形成」を目的としているため、最低でも2年程度の講座が中心となります。ですから、この専門実践教育訓練給付金の税理士試験講座は、その多くが昼間通学の講座が対象となっており、働きながらの通学はほとんど無理だと考えたほうが良さそうです。

これだけ聞くと、「どこが便利な制度なんだ?」と疑問に思われる方もいる事でしょう。いくら資格の学習に専念できるとは言え、日々の生活費を得る術がなければどうにもなりませんからね。

しかしこの専門実践教育訓練給付金には「教育訓練支援給付金」という制度が別に設けられています。

似たような名前ばかりで混乱しそうですが、この「教育訓練支援給付金」とは、要は「仕事を辞めて講座を受講している人に対し、一定額の生活費を支給する」制度となっています。

税理士講座費用とは別に「生活費」まで受給できるのですから、かなり手厚い制度だと言えるでしょう。

ただし、この教育訓練支援給付金の受給要件は厳格に決まっており、主な内容としては以下の通りとなっています。

教育訓練支援給付金の支給対象者
  1. 専門実践教育訓練の受給資格があること
  2. 専門実践教育訓練を修了する見込みがあること
  3. 受講開始時に「45歳未満」であること
  4. 受給資格確認時に雇用保険の被保険者でない事(簡単に言えば働いていない事)
  5. 会社などの役員に就任していない事
  6. 自治体の長に就任していない事
  7. その他
支給額
  • 教育訓練支援給付金の日額は、原則として離職される直前の6か月間に支払われた賃金額から算出された、基本手当の日額に相当する額の80%。
  • 基本手当の日額は、原則として、離職される直前の6か月間に支払われた賃金の合計額を、180で割った金額(賃金日額)のおよそ80%~45%(別途上限有り)。

詳しくは、厚生労働省のHP若しくは、ハローワークのHPにてご確認ください。

教育訓練給付金の受給資格

このように何かと便利な教育訓練給付金制度ですが、残念ながら誰でも利用できるわけではありません。

それぞれの給付金ごとに受給資格が異なりますので、詳しくは下記の記事または、厚生労働省のHPハローワークのHPをご確認ください。

 

 

基本的な考え方としては、どの給付金制度も「〇年以上、雇用保険の被保険者期間を必要とする」とありますから、簡単に言えば「会社員として数年の在職期間があること」が要件となります。

ですから、学生の方や新入社員の方は対象となりませんのでご注意ください。

また、「一般教育訓練給付金」においては事前申請を必要としませんが、「専門実践教育訓練給付金」と「特定一般教育訓練給付金」については、事前の申請や「訓練前キャリアコンサルティング」を受ける必要がありますので、そちらについてもハローワークなどで事前によく確認するようにしましょう。

給付金対象のスクール

それでは次に、税理士試験講座における給付金対象となっているスクールをご紹介します。

それぞれのスクールによって開講科目が異なりますから、各スクールの公式HPにて確認するようにして下さい。

また、現時点(2021年1月)では給付金の対象講座であったとしても、数年後には対象となっていない事もありますから、その辺もよく注意しましょう。

一般教育訓練給付金

資格の大原


資格の大原 税理士講座

税理士試験講座を探すなら、何と言ってもこの「資格の大原」がお勧めです。大手だけに講座費用は高額となりますが、教育訓練給付金の対象講座も多いため、組み合わせ方によってはかなり費用を抑える事が可能となります。合格者数の実績が多いだけに、一度検討してみる価値はあるでしょう。

講座期間学習方法対象科目講座
7ヶ月~通学、通信、eラーニングから選択会計科目、税法科目ともに全てあり
講座費用(例:簿記論・財務諸表論セットWeb講座)割引き等-
税理士講座「簿記・財表初学者一発合格パック」Web

382,000円~

有り。キャッシュレス還元等、内容が豊富

 

ネットスクール


このネットスクールは、税理士講座だけでなく簿記講座やファイナンシャルプランナーの講座も開設していることから、「会計に特化したスクール」として有名です。また、eラーニング専門の学校ですから、講座費用も安く抑えられるという点も魅力的です。教育訓練給付金に対応している講座数としては、大原に次ぐ多さだと言えます。

講座期間学習方法対象科目講座
7か月~eラーニングのみ

会計科目は全てあり、税法は「法人税法」「相続税法」「消費税法」「国税徴収法」

講座費用(例:簿記論・財務諸表論セットWeb講座)割引き等-

税理士「簿記論・財務諸表論」標準コース

198,000円~

受講生割引、複数科目割引あり

 

クレアール


資格★合格クレアール

資格試験のeラーニング講座において一番有名なのは、このクレアールかもしれません。他の大手専門学校もeラーニング講座の取り扱いがありますが、クレアールはeラーニング講座の専業という事もあり、かなりのノウハウがあります。Web講座でありながら、「担任制」という珍しいシステムを導入しており、電話やファックス等でいつでも相談に応じてもらえます。また、各種割引や延長サービスなどもあるため、使い勝手の良いスクールだと言えるでしょう。

講座期間学習方法対象科目講座
7ヶ月~通信、eラーニングから選択

会計科目は全てあり、税法科目は「相続税」「消費税」のみ対象

講座費用(例:簿記論・財務諸表論セットWeb講座)割引き等-

税理士簿財アドバンスレギュラー通信

240,000円~

毎月、各種割引キャンペーン開催

 

専門実践教育訓練給付金

資格の大原


資格の大原 税理士講座

税理士試験講座における「専門実践訓練給付金」対象の講座はかなり少ないのですが、その中でもこの資格の大原が、そのほとんどを占めているという点に注目したいところです。開催地域が東京と福岡限定とはなりますが、近隣地域にお住まいの方は一度検討してみては如何でしょうか。

講座期間学習方法開催地域
24ヶ月昼間・通学のみ東京・福岡のみ
講座費用--
概ね、2年間で200万円程度を目安

 

特定一般教育訓練給付金

資格の大原


資格の大原 税理士講座

特定一般教育訓練給付金は、制度自体が2019年10月にスタートしたばかりですので、その対象となる講座数も少ないのですが、注目すべきは「税理士講座における対象スクールが全て資格の大原である」という事。やはり長年の実績などから、資格の大原は教育訓練給付金に強い事が分かります。

講座期間学習方法対象科目講座
7ヶ月~通学のみ「事業税」以外は全てあり
開催地域--
東京・埼玉・大阪・兵庫

 

お勧めは、何と言っても「資格の大原」

以上からわかるように、税理士試験講座において教育訓練給付金を利用するなら、おススメは何と言っても「資格の大原」となります。

ただし、ご自身のお住まいの地域や、現在合格を目指している科目によっても選択肢が変わると思いますので、その辺は慎重に検討しましょう。

例えば、既に4科目合格しており「あと1科目」という方であれば、資格の大原の「特定一般教育訓練給付金」を利用すればお得ですし、「いや、これから簿記論と財務諸表論から始めたい」という方であれば、「専門実践訓練給付金」を活用するか、または元々の費用が安いネットスクールクレアールの「簿記・財務諸表セット」を選択するという手段も考えられます。

いずれにしても、まずは「自分は給付金制度の対象になるのか?」について知っておく必要がありますから、厚生労働省ハローワークのHPで確認する事をお勧めしますし、詳しい講座内容に関しては、各スクールに資料請求をお願いしましょう。

ちょっとした「裏技」もご紹介

それでは最後に、この教育訓練給付制度を利用した「ちょっとした裏技」についてもご紹介しておきます。

通常、税理士試験は5科目に合格する事で最終合格となりますが、一定の大学院に進学する事で「科目免除」を受ける事が出来ます。例えば税法科目であれば、大学院進学で2科目が免除されますので、税理士試験受験者からすれば便利な制度だと言えます。

しかし、大学院進学は学費が高額となり、これを利用するのは少しハードルが高いと考えている人も多い事でしょう。そこで活用したいのが、やはり教育訓練給付制度なのです。

実はこの教育訓練給付制度は、こうした大学院進学にも利用する事が可能となっていますので、「科目免除を受けたいけど、大学院は学費が高いしなぁ~」と悩んでいる人には是非検討して頂きたい制度なのです。

もちろん、全ての大学院がこの制度の対象となっている訳ではありませんので、詳しくは、以下の記事も参考にしてみて下さい。

 

まとめ

如何でしたでしょうか?

巷では「税理士試験のスクールは高額だから、目指すだけムダ」なんて考えている人もいるようですが、この給付金制度を利用すれば、かなり費用を抑える事が出来るとご理解頂けたかと思います。

こうした制度を上手に活用して、少しでも早く5科目合格を目指しましょう。