「一人税理士事務所」の特徴と、依頼する場合のメリット・デメリット

世の中には数多くの税理士事務所が存在しますが、近年増えているのがこの「一人税理士事務所」という形態。

これまでの税理士事務所と言えば、所長である税理士が事務所を開設し、そこに数名のスタッフを雇い入れて業務を行うというスタンスがほとんどでした。しかしこうした一人税理士事務所というのは、スタッフを一人も雇わず、税理士1人で全ての業務に対応する方法をとっています。

依頼者側からすると、「一人で大丈夫かな?」と不安に思う人もいるかもしれませんね。

そこでこの記事では、これら一人税理士事務所の特徴や、依頼する際の「メリット・デメリット」などについてお伝えしようと思います。税理士事務所の規模などについて知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。

 

目次

一人税理士事務所の特徴

それではまず「一人税理士事務所」特徴から。

一昔前であれば、こうした事務所は「国税OB税理士」が運営する事務所に多く、自宅に看板を掲げるだけで積極的な集客をしていない印象が強かったといえます。

あなたの家の近所でも、こうした事務所を何件か見かける事があるのではないでしょうか。

こうした「国税OB税理士」の場合、直接的に顧客の依頼を受ける事は少なく、他の税理士事務所から「先生、特殊な案件があるので、助けてもらえないでしょうか?」という案件に関与する事が多かったかもしれません(少なくとも、以前は)。

また、国税OB税理士に限らず、「顧客を持つのは面倒だから」という事で、税務申告のハンコだけついている税理士事務所なんてのも以前はあったようです。

もちろん、申告書の中身も確認せず税理士印を押印するだけですと「名義貸し」となり、懲戒処分の対象となりますから昔よりは減ったと思いますが、相変わらずこのような税理士が存在するのも事実です。

 

 

しかし、近年の傾向としては、「若手の税理士」がこの一人税理士事務所を運営する事が増えているように感じます。

こうした税理士の場合、営業活動に対して積極的なことが多く、ホームページやブログを活用して顧客獲得に励んでいる傾向があります。

現在「一人税理士事務所」と呼ぶ場合、こうした若手税理士を指すことが多くなっています。

一人税理士事務所へ依頼するメリット・デメリット

それでは、こうした一人税理士事務所に依頼する「メリット・デメリット」についてもお伝えしておきましょう。

この記事においては「国税OB税理士」ではなく、若手の税理士を対象として話を進めていきます。

まずはメリットから。

メリット
  • フットワークが軽い
  • 連絡に対するレスポンスが早い
  • PCスキルが高い傾向があり、会計ソフトなどの利用に長けている
  • ペーパーレス化が徹底している
  • 所長(税理士)に直接対応してもらえる

一人税理士の良いところは、何と言っても「所長(税理士)に直接対応してもらえる」という点でしょう。

そこそこの規模の税理士事務所になると、資格を持たないスタッフが担当になる事が多く、所長自ら担当する事はほとんど稀です。

ただし、資格を持たないスタッフでもその辺の税理士よりも優秀なことがありますから、これが一概に「良い・悪い」と判断できない部分ではあります。

続いてデメリットについても見ていきましょう。

デメリット
  • 一人で対応するため、忙しい税理士だと時間の融通が利きにくい
  • 基本的に記帳代行に対応しない事が多く、「全てお任せ」は難しい
  • 相続などの大規模な案件は対応しづらい
  • クラウドなどの先進技術を使う事が多く、顧客側がPCに不慣れだと扱いづらい
  • 報酬はそれほど安くない(事務所による)
  • 何かあった場合のリスクが高い(税理士の事故など)

基本的にすべて一人で業務をこなすため、フットワークが軽い反面、忙しい税理士だとなかなか時間の融通が利きにくいというデメリットが生じます。

独立したてなどで時間も余裕のある税理士なら問題ありませんが、どこまでいっても「時間を売っている」感は否定できず、キャパシティーの問題が露呈しやすくなります。

これを解消するため、ほとんどの一人税理士は顧客にデータの入力を自らしてもらい(自計化)、自分はその内容のチェックをするという方針の事務所が多いようですから、「入力もお任せ」と考えている人にはあまり相性がいいとは言えないでしょう。

また、万が一税理士が事故などで入院してしまった場合、それをカバーできる職員がいませんから、顧客側からすれば少しリスクが高い選択肢だといえるかもしれません。

一人税理士に依頼する事が向いている人・向かない人

では、上記の「メリット・デメリット」を踏まえ、一人税理士に依頼する事が向いている人・向かない人についても考えてみましょう。

まず、「向いている人」として考えられる属性としては以下の通り。

向いている人
  • フリーランス
  • 小規模事業者
  • インターネットビジネスを運営している人
  • ある程度のPCスキルのある人
  • ある程度の簿記知識のある人

前述したメリット・デメリットから考えると、レスポンスが早いという部分では、フリーランスや小規模事業者にとってはとても馴染みやすいと言えるでしょう。

お互い、時間にはシビアですから、会話をしていても共感できる部分が多いと思います。

また、フリーランスの方々の多くはPCスキルが高い傾向にありますから、例えば「チャットでの相談」や「Web会議」などといった新しい試みにも抵抗感はほとんどないため、先進技術を多用する一人税理士に依頼するほうがむしろピッタリくるかもしれません。

特に一部の税理士においては、自分でHPやブログを作成している事もありますから、インターネットビジネスを運営している人などにすれば「話が早い、とても助かる」という印象を持つかもしれません。

むしろ最近では、従業員を雇わないというスタンスの経営者も増えていますから、その辺でも共感できるかもしれませんね。

 

 

それでは続いて「向いていない人」の属性について。

向いていない人
  • そこそこの規模の事業者
  • 簿記知識の乏しい人
  • 社内で自計化できていない事業者
  • PCスキルの低い人
  • 相続税の申告を考えている人

そもそもこうした一人税理士というのは、顧客からレシートなどを預かって会計ソフトにデータを入力するという「記帳代行」は受け付けていない事が多いですから、「全てお任せ」という人や、「簿記知識の乏しい人」というのは向いていないと言えるでしょう。

もちろん、中には記帳代行を受け付けている一人税理士もいるでしょうが、事業規模が大きい会社となるとデータの入力数が膨大となるため、一人で対応するのにもある程度の限界が生じてしまいます。

ですから、こうした人は一人税理士に顧問依頼する事は避けたほうが良いでしょう。

最低限、「エクセルで売上と経費の管理が出来る」とか、「会計ソフトの簡単な操作ならできる」という人でないと、あまりお勧めは出来ません。こういった方の場合、それなりの規模の税理士事務所に依頼する事をお勧めします。

 

 

ただし、一人税理士の中にも「これからスタッフを雇い入れて、事務所規模を大きくしよう」と考えている税理士もいますから、その辺は事前によく相談しておく必要があります。

一人税理士を探す方法

それでは続いて、こうした一人税理士を探す方法についてもお伝えしようと思います。税理士を探す基本的な方法については、こちらの記事をご覧になってみて下さい。

 

 

上記の記事の中でも様々な方法が紹介されていますが、基本的に一人税理士を探す方法は以下の方法がメインになると思います。

一人税理士を探す方法
  1. 知人などの紹介で税理士を探す
  2. セミナーや無料の申告会などで税理士を探す
  3. 【税理士紹介サイト】で税理士を探す
  4. 税理士事務所のHPやブログなどで税理士を探す

一番多い方法は「知人などの紹介で税理士を探す」方法かと思いますが、一人税理士の場合、HPやブログなどで集客している事が多いですから、インターネットで検索をして「あっ、この人なら信頼できるな」という方法で探すのも有効かと思います。

また、独立したての税理士の場合、「税理士紹介サイト」を利用している事も多いですから、こうしたサービスを活用するのも良いでしょう。

それぞれの内容については、以下の記事も参考にしてみて下さい。

 

一人税理士事務所への就職

それでは最後に、こうした一人税理士事務所へ就職する方法などについても触れておきましょう。

ほとんどの場合、彼らは人を雇う事が念頭にありませんから、就職を希望しても雇い入れてもらう事は難しいと言えます。

彼ら一人税理士からすれば、仮に自分の業務を振り分けるにしても配偶者などの身内のみに依頼する事が多く、よほどの事が無い限りは、求人の募集をかける事はありません。

仮にあったとしても、「外注」であることが多く、会計事務所経験者の主婦などに入力を依頼する程度かと思います。

この場合、クラウドなどを通じて入力業務を任される事になり、自宅で仕事を受ける事になりますから、通勤などがない分、「むしろこの方が良い」と考える人もいるかもしれませんね。

こういった「在宅ワーク」を望むのであれば、下記の記事も参考にしてみて下さい。

 

 

ただし、独立したてで「これから事務所を大きくしていきたい」と考えている税理士もいますから、全ての一人税理士が「このまま従業員を雇わない」と考えている訳ではありません。

その場合の求人方法としては「ハローワーク」や「知人の紹介」がメインとなりますから、こうした事務所を就職先として探すのは少し難しいかもしれません。