国際税務のキホン、「T.T.S」「T.T.M」「T.T.B」レートの違いとは?

近年、インターネット環境や物流システムの向上に伴い、個人でも輸入や輸出事業を営む人が増えてきています。

Amazonなどのシステムを利用するだけで、日本に居ながら海外へ簡単に商品を販売できる時代となったのですから、とても便利な時代になったと言えますよね。

こうした貿易事業を行うとなれば、為替や消費税の取扱いなど、国内取引では通常考える事の無い会計処理も発生する事になりますので、ある程度の事は自分で出来たとしても、細かい部分についてはやはり専門家(税理士)に任せた方が良い場合もあります。

しかし、意外とこうした国際税務や貿易実務を苦手としている税理士の方も多くいらっしゃいますから、納税者の中には「誰に依頼したら良いのか分からない」という人もいらっしゃるようです。

特に、国際取引は通貨の違いから「為替レート」について考えなくてはならず、「T.T.S」「T.T.M」「T.T.B」などといった聞き慣れない言葉もあるため、そもそもここから理解していない税理士もいるので注意が必要です。

更に決算の申告においては、税法上、この各種レートの使い分けについても厳格なルールがあるため、ここを間違えると納税額も大きく変わってしまいます。

そこでこの記事では国際税務のキホンとして、「T.T.S」「T.T.M」「T.T.B」の3種類のレートの違いや、会計処理を行う際のこれらの使い分けの方法などについてお伝えしようと思います。

基本はまず、「T.T.M」を基準に考えよう

まず為替レートについてからご説明しようと思いますが、似たような記号ばかりですので覚えにくいでしょうから、基本は「T.T.M」を基準に考えれば簡単であると覚えておきましょう。

「T.T.M」とは、「Telegraphic Transfer Middle Rate」の略で、直訳すると「電信 送金 中間 レート」となります。これを一般的には「電信仲値相場」とも呼び、簡単に言えば「その日の基準レート」という事になります。

例えば仮に、2020年9月1日の「T.T.M」が1ドル=100円だとしましょう。この場合、この日の基準レートは全て1ドル=100円として取り扱われ、翌日に為替が変動すれば、再度「T.T.M」も変わってくることになります。

ここで、「そうは言っても、為替って日中に頻繁に変動しているよね?」と思う人もいるでしょう。

一般的に、「円をドルに替える」「ドルを円に替える」というのは、銀行などの金融機関が業務を行っています。銀行側からしても秒単位で刻々と変わる為替相場に対応していたら大変ですよね。そこでどこの銀行も、この「T.T.M」を「午前9時55分時点」での為替レートを基準として決定しているのです。

つまり、その日の午前9時55分時点で1ドルが100円であれば、「T.T.M」は100円となりますし、110円であれば同様にその日一日「T.T.M」は110円になるという事です。

 

 

しかし、世界的な経済問題などが発生すれば、為替レートも一日で大きく変化する事もありますよね。そのような場合には「例外」として改めて「T.T.M」が設定される事となります(基本は、1円以上の変動があった場合)。

ポイント

  • 「T.T.M」とは、為替レートの基準値であると覚えておこう(ミドル=中間と考えれば覚えやすい)。
  • 各金融機関とも、午前9時55分時点の為替レートをもとに「T.T.M」を設定する。
  • 仮に「T.T.M」が決定したとしても、1円以上の変動があれば再設定する事もある。

「T.T.S」と「T.T.B」は、手数料を取られているだけの話

次に「T.T.S」「T.T.B」についてですが、これは単純な話、銀行から手数料を取られた後のレートであるというだけの事です。

まず「T.T.S」とは、「Telegraphic Transfer Selling Rate」の略で、金融機関が顧客に外貨を「売る(sell)」際のレートを言います。例えば前述したように2020年9月1日の為替レート仲値(T.T.M)が仮に100円だったとして、100万円分のドルを購入しようとすれば、1万ドルを手にすることが出来るはずですよね。

しかし銀行はここで手数料を徴収し、その差額が「T.T.S」レートとして表示されます。例えばメガバンクなどではこの手数料を「1ドル当たり1円」とすることが多く、仮に「T.T.M」が1ドル=100円だったとすれば、「T.T.S」は1ドル=101円となり、100万円を支払っても約9,900ドルしか手にすることが出来ないという事になります。

 

 

これだけで約1万円もの手数料を手にすることが出来るのですから、銀行側としてはおいしい商売ですね(ドルの手数料はこれでも安い方で、他の通貨となると更に手数料が上がる事もあります)。

さて、これと同様に「T.T.B」についても同じことが言え、こちらは「Telegraphic Transfer Buying Rate」、つまり金融機関が顧客から外貨を「買う(buy)」際のレートとなります。

ドルを日本円に替える場合にも金融機関に手数料を支払わなくてはならず、この場合にも「T.T.M」を基準として金融機関の手数料を差し引いたレートが「「T.T.B」レートとなります。

仮に、T.T,Mが1ドル=100円のレートだった場合、金融機関にもよりますが「T.T.B」は1ドル=99円となる場合が多いですから、1万ドルを換金すれば99万円しか手元に残らないという事になります。

 

 

要は、仲値(T.T.M)を基準として、顧客側からしたら日本円をドルに換金する場合が「T.TS」、逆にドルを日本円に換金する場合が「T.T.B」となるという訳です。

ポイント

  • 円をドル(外貨)に替える場合のレートが「T.T.S」
  • ドル(外貨)を円に替える場合のレートが「T.T.B」
  • やはり仲値「T.T.M」を基準にすると分かり易い

外貨建取引をする場合、どのレートを使用するのか?

レートについては理解できたと思いますが、では実際に、輸入ビジネスや輸出ビジネスを行う際、商品を仕入れた時や商品を販売した時の「レートはどれを使用するのか?」と悩んでしまいますよね。

これも「原則として、その取引日の仲値(T.T.M)を使用する」と覚えておけば大丈夫です。

ただし、個人の輸入ビジネスであれば所得税法が適用され、法人の場合には法人税法が適用されますから、この辺は多少条文も変わってきますから、そこは税理士にきちんと確認しましょう。

※ 外貨建取引の条文は、所得税法では「第57条の3」、法人税法では「第61条の8」となっています。

とは言え、どちらも原則は取引日の仲値を使用する事になっていますからご安心ください。

しかし、ビジネスを行う上で取引というのは頻繁に発生し、その度に当日のT.T.Mを確認するのはかなり負担が重いと言えますよね。

これに関して、それぞれの税法において「特例」を設けており、どちらも「継続適用」を前提としていますが、例えば以下のような例外も認められています。

外貨取引の特例
  1. 使用する仲値(T.T.M)は、原則として事業で使用している金融機関のレートを使用する事となるが、新聞等で公表されている合理的な為替レートを使用する事も可能。
  2. 前月や前週の為替レートの平均値を使用する事も可能。
  3. 前月末や前週末等の一定時点の為替レートを使用する事も可能。

これ以外にも様々な特例がありますが、これ以上書くと複雑となりかえって混乱しますし、税法の解釈にも繋がりかねませんから省略しますが、仮にアナタが輸出ビジネスもしくは輸入ビジネスを行っているとして、アナタの顧問税理士が「取引日当日の仲値を覚えておいて下さいね」などと言ったとすれば、その方は少し国際税務に疎い可能性がありますので、一度「外貨取引の特例ってありますよね?」と尋ねるようにしましょう。

この反応次第では、税理士を変更する事も検討すべきだと言えます。

売掛金、買掛金も要注意

外貨建て取引にどのレートを使用するかについては、原則としてその取引日の仲値であることはご理解頂けたかと思いますが、ここで更に「決算日時点の売掛金や買掛金はどうなるの?」と疑問に思う人もいるかと思います。

ここで、「いや、もうすでに取引日で換算しているんだから、そこは考えなくて良いんじゃないの」と考えてしまいそうですが、売掛金や買掛金は少し取り扱いが異なります。

税務署に対して届出をしている場合の例外など細かい取り決めはありますが、原則として「期末時換算法」を選択しなくてはならず、要は、売掛金や買掛金は「決算日のレート」に換算する必要があるという事です。

この場合、一旦換算したレートと決算日のレートに差額があれば、その事業年度の損金又は益金に算入する事になります。

ここについても慣れている税理士であれば当たり前のように処理しますが、不慣れな税理士の場合ですと見過ごす事もありますから十分注意しましょう。

会計ソフトの外貨設定は慎重に

では、こうした日々の海外取引を会計ソフトに入力する場合、最近ではクラウド会計ソフトなどが自動的にレートを取込んでくれたりもするようですが、この取り扱いは少し慎重にした方が良いでしょう。

今後、それぞれのソフト会社ごとに様々な開発を行っていくと思いますが、出来れば外貨レート・外貨取引に関しては「別口座で管理する」「エクセルなどで帳票を別途作成する」などの工夫をした方が良いという場合もあります。

というのも、先ほど「外貨取引に使用するレートには特例がある」とお伝えしましたが、仮にこうしたクラウド会計ソフトで自動的にレートを取込めるとなれば、その特例が利用しづらくなるという事なのです。

自動で為替のレートを取込んでくれるのであれば、取り引きの度にレートを確認しなくて良いというメリットはありますが、為替相場が乱高下していれば、決算にもそれが反映される事になります。

現在、国内におけるクラウド会計ソフトとしては「マネーフォワード」「freee」「弥生会計」などが有名ですが、この中で外貨建て取引に向いているのは「マネーフォワード」と「freee」だけかもしれません(現在のところ、弥生は少し遅れている印象)。

例えばマネーフォワードなどは、外貨レートを事業所ごとに設定する事ができ、期間ごとにレートを登録する事ができる機能もあるのでかなり便利です。これに対してfreeeは、会計ソフト内で処理も出来ますが、外部アプリなどを併用して外貨建ての設定ができるので、これに関しては「好みによる」と言ったところでしょうか。

使い方はそれほど難しくありませんので、外貨建て取引をされるなら「マネーフォワード」か「freee」のどちらかを選択するべきでしょう。

国際税務に強い税理士はどこで探す?

これまでの内容をある程度理解できるのであれば、外貨建て取引というのはそれほど難しい事ではないとお分かり頂けたかと思います。

とは言え、輸出入ビジネスをするとなれば、細かい規定や税務が絡んできますので、出来れば「国際税務や貿易実務に強い税理士」に依頼したいところですよね。

ただ、基本的に国際税務に強い税理士というのはそれほど多くなく、探すには少し苦労するかもしれません。

国際税務に強い税理士を探す方法としては、「会計ソフト会社の税理士紹介サービスを利用する方法」「税理士紹介会社を通じて探す方法」の二つがおススメで、どちらも無料で利用できますから安心です。

ちなみに、こうした国際税務に強い税理士の特徴として、「公認会計士が税理士にも登録している」という場合と、「公認会計士ではないが、税理士としてBig4などの国際税務に強い事務所での経験がある」というものがありますので、参考程度にしてみて下さい(もちろん、全てではありませんが)。

それでは、それぞれで探す方法についても見ていきましょう。

クラウド会計ソフト会社で探す

まずは、クラウド会計ソフト会社で探す方法から。

詳しくは以下の記事を読んでいただければと思いますが、各社ともホームページにおいて、自社の会計ソフトを利用している税理士を紹介するサービスを行っています。

 

 

利用料は無料となっており、またその会計ソフトを購入する必要もありませんから、どなたでもこのサービスを利用する事が可能となります。

まずマネーフォワードですが、ホームページ内の「税理士・社労士検索サービス」をクリックすると、以下のような画面が出てきます。

そこで、上記の赤丸部分「輸出入」のチェックボックスをクリックし、検索をかけると「輸出入を得意とする税理士」が一覧として表示されます。

 

 

次にfreee(フリー)ですが、こちらもホームページ内の「税理士検索freee」というページに行くと、以下のような画面が表示されます。

ここで上記のように「国際税務・海外税務」のチェックボックスをクリックして検索すると、国際税務に強い税理士が一覧として表示されます。

 

 

どちらも地域ごとに検索できますから、ご自身の住んでいる地域近辺の税理士を簡単に探すことが可能となっています。

税理士紹介会社に依頼して探す

次が、税理士紹介会社に依頼して探す方法について。

こちらも別の記事でお伝えしていますから、詳しくはそちらを確認してみて下さい。

 

 

現在、世の中には数多くの税理士紹介会社があり、どれを選んだら良いのか迷ってしまうかと思いますが、この「国際税務に強い税理士」を探すのであれば、何と言っても税理士紹介センター【ビスカス】 をお勧めします。

一般的な税理士であれば、他の税理士紹介会社でも十分ですが、国際税務となると専門性が高くなりますので、出来れば業界内でも実績のあるビスカスを利用したほうが良いでしょう。

ビスカスのコーディネーターに依頼すれば、「英語対応の税理士」や「ITに強い税理士」なども探してくれますから、実際に会ってみて「ちょっと違うんだよなぁ~・・・」といったミスマッチも起こりにくいと言えるでしょう。

何回紹介をお願いしても、依頼者側は契約が確定するまでは無料で利用できますから、一度検討してみては如何でしょうか?