扶養を外れない為の「〇〇〇万円の壁」、本当の意味って理解してる?

主婦や学生の方などが仕事を始める際、まず最初に気にすることと言えばやはり「夫(親)の扶養から外れないかな?」という事かと思います。

そこで注目されるのが「〇〇〇万円の壁」と呼ばれるものですが、いわゆる「103万円の壁」や「130万円の壁」などは、誰でも一度は耳にした事があるかもしれませんね。最近では「106万円の壁」なんて言葉も出てきていますから、少し混乱している人も多い事でしょう。

この「〇〇〇万円の壁」とは、簡単に言えば「扶養を外れるライン」の事を指しているのですが、扶養と一口に言っても様々な種類があり、その種類ごとにこの「壁」の金額が変わってくるのです。

実はこの扶養ごとの「壁」について、専門家である税理士でさえもしっかりと理解していない事があり、インターネット上でも間違った情報が書かれている事もありますから、十分注意が必要となります。

そこでこの記事において、この「〇〇〇万円の壁」には一体どのような種類があり、扶養を外れない為にはどのような事に気を付けたらいいのかなどについてお伝えしようと思います。

ただしご注意頂きたい点として、これら税金などにおける法律は頻繁に改正される事が多いですから、あくまで現時点(2020年8月)における情報をもとにしているという事だけご理解頂ければと思います(法改正などあれば、出来るだけ最新の情報に更新していくつもりです)。

扶養とは大きく分けて「3つ」ある

まず扶養の種類についてから説明していこうと思いますが、いわゆる主婦や学生の方が気にすべき扶養の種類とは、大きく分けて「3種類」あるという事。

それが以下の内容となります。

扶養の種類
  1. 税金上の扶養
  2. 社会保険上の扶養
  3. 家族手当上の扶養

上記1、2については多くの方がすぐに思いつくと思いますが、意外と3の「家族手当上の扶養」については見過ごしている方も多いようです。

特に税理士などはここについてあまり考えない人が多いのですが、何気に月数万円の家族手当などが貰えなくなると、家計的には厳しいですよね。

そこで次に、それぞれの扶養の意味について少し詳しく見ていきましょう。

税金上の扶養

まずは「税金上の扶養」から。

これについては、「配偶者控除」と聞けばピンと来る人もいるかもしれませんね。会社員である夫がいて、その妻が一定金額以内の収入であれば「夫の支払う税金が安くなる」というものです。

よく勘違いされる人が多いのですが、この配偶者控除は妻が得する訳ではなく、夫が得するという内容となっています。しかし、家計全体で考えればどちらも一緒の事ですから、あまり深く考える必要もないのかもしれません。

この配偶者控除において、パートで働いている主婦の所得税で考えた場合「基礎控除48万円」+「給与所得控除55万円」=103万円までであれば所得税はかかりませんので、妻の所得税は0円で、しかも夫の扶養に入る事が出来るので、夫の税金も安くなるという仕組みですね。これがいわゆる「103万円の壁」という事になります。

 

 

 

ちなみに、2019年までは「基礎控除38万円」「給与所得控除65万円」となっていましたが、2020年に税制改正が行われ、「基礎控除48万円」「給与所得控除55万円」に変更になりましたが、合計では103万円と変わりはありませんので、ここはそんなに気にする必要はありません。

 

 

これに対し、妻がフリーランスとして働いていた場合、税金がかからないラインが「基礎控除48万円」のみとなってしまい、一見するとパートで働いている方がお得のようにも見えてしまいます。

しかし、フリーランスとして働いていても確定申告を「青色申告」で行っていれば、青色申告特別控除の55万円が利用できますから、「基礎控除48万円」+「青色申告特別控除55万円」=103万円までは所得税がかからず、しかも夫の扶養に入る事が出来るので夫の税金も安くなるという事になります。

 

 

 

ここだけ見ると、パートで働いてもフリーランスで働いてもどちらも103万円まで妻の税金はかからず、しかも夫の税金が安くなるので「パートでも個人事業でも大差ないな」と考えてしまいますが、フリーランスの場合には家賃の一部や水道光熱費の一部などを経費として計上できるため、キャッシュフロー(実際に手元に残るお金)としては、フリーランスの方がお得になる事もあるのです(また、青色申告特別控除の65万円控除を利用する事で、更にお得となってきます)。

この他、税金上の扶養には様々なものがあり、「配偶者特別控除」や「扶養控除」などといったものもありますが、詳しくは後ほど解説していこうと思います。ただし、ここで注意すべき点として、「所得税と住民税の控除額は違う」という事があり、所得税の場合は103万円まで妻本人には税金がかかりませんが、住民税においては地域にもよりますが概ね「100万円以上」から税金がかかる事になります。

ですから稀に、「103万円ギリギリの収入にしたのに、住民税の請求が来た」なんて事が起こるのはここに原因があるからなのです。という事は厳密に言うと、所得税は「103万円の壁」住民税は「100万円の壁」というのが正しい表現となります。

社会保険上の扶養

次が「社会保険上の扶養」についてですが、この扶養が認められれば、会社員として働いている夫の保険に妻が無料で加入できるというものですから、実はこちらの方が重要視するべきだと言えます。

しかし社会保険と言ってもその加入先は様々あり、例えば夫の勤務先が大企業であれば、その企業が運営している「健康保険組合」となりますし、中小企業などであれば「協会けんぽ」ということになります。

それぞれの組合によって基準は異なりますが、概ねどこの組合においてもこの社会保険の扶養として認められるには、妻の収入が「130万円未満」でかつ「夫の収入の1/2未満」であることが求められます。

これがいわゆる「130万円の壁」という事になります。

ただ現在、この社会保険上の扶養には例外が設けられており、妻自身が一定規模の企業(例えば、従業員数501名以上など)でパートとして働いていたり、ある程度の要件を上回ってしまうと、その妻の勤務先の会社で強制的に社会保険に加入しなくてはならず、この場合の妻の収入の上限が「106万円以上」とされることになりました。

これが「106万円の壁」と呼ばれるものです。

ですから、130万円の壁とは夫の扶養に入れるかどうかの問題であり、106万円の壁とは妻自身の勤務先や収入の問題ということになります。

もちろん、そうした企業でパートなどで働かなければ、この106万円の壁は問題となりませんし、妻がフリーランスとして働いているのであれば収入ではなく、経費を引いた後の「所得」を基準に考えるのでこれを回避する方法はあります。

ただし、保険組合によっては、税金を支払う上で認められる経費であっても、社会保険の扶養の判定を行う場合には「一部を経費として認めない」なんて事もありますから注意が必要となります。

家族手当上の扶養

そして最後が「家族手当上の扶養」について。

これは夫の勤めている企業にもよるでしょうが、所得の少ない家族がいる場合、各種手当の一部として「家族手当」を支払っている事があります。その支払額はまちまちで、例えば「配偶者は10,000円、子供一人当たり5,000円」としているところもあれば、「配偶者にはないが、子供一人当たり10,000円」などとしている場合もあります。

こうした手当てがそもそもない企業に勤めているのであれば、ここはそれほど気にする必要もありませんが、仮に月あたり10,000円も貰っているのであれば、この家族手当がなくなる事で年間12万円も夫の収入が減る事になります。

この家族手当上の扶養においては、各社とも様々な基準を設けており、「配偶者の収入が103万円を超えたら支給しません」としているところもあれば、「配偶者の収入が130万円以上となった段階で支給を停止します」としている企業もあるようです。

こちらに関しては、夫の勤めている会社の就業規則を確認したり、総務などに直接問い合わせるなどして確認するようにしましょう。

税務上の扶養で注意すべき事

それでは上記を踏まえ、それぞれの扶養について考える際、どのような点において注意すべきかについてお伝えしようと思います。まずは「税務上の扶養」についてから。

所得税と住民税では「〇〇〇万円の壁の金額」が違う

まずは、所得税と住民税とでは「〇〇〇万円の壁の金額」が違うという事について。

前述したように、一口に「税金」といっても様々なものがあり、主婦などが扶養について考える場合には「所得税」と「住民税」を切り離して考えなくてはいけません。

例えば、パートで働いている妻の場合、所得税の基礎控除は「48万円」となり、給与所得控除は「55万円」となりますから、この合計103万円を越えなければ、妻本人に所得税は掛からない事になります。

これに対し住民税は、住んでいる地域にもよりますが、概ね「45万円」+「給与所得控除55万円」の100万円を超えれば、働いている主婦本人に課税される事になります。

 

 

ですから、仮に103万円ギリギリの収入であったとしても、「所得税は掛からないけど、住民税は掛かってしまう」なんて事になっていまいます。

ちなみに、自治体によっては100万円以下であっても住民税がかかる事もありますから、詳しくはお住まいの自治体に問い合わせるようにして下さい。

扶養について、夫と妻のどちらに税金がかかるのかを混同しないこと

次が、扶養について、夫と妻のどちらに税金がかかるのかを混同しないということについて。

ここが多くに人が勘違いしている部分なのですが、前述した「100万円の壁」「103万円の壁」というのは、あくまで「妻側に税金がかからない」というラインなのです。

 

 

夫側から見た場合、現在(2020年8月時点)において、パートをしている妻の収入が201万6千円までであれば「配偶者特別控除」というものを利用できますから、いくらか控除を受ける事ができ、「夫側の税金」は安くなる可能性があります(細かい規定有り)。

更に言うと、妻側の収入が150万円未満であれば、配偶者控除と同じく夫側は「最大38万円の配偶者特別控除」を受ける事ができるので、夫側からすれば仮に妻の収入が上がったとしても、それが150万円未満であれば通常の配偶者控除と変わらず、税金を最大限安くすることが可能となります。

これがいわゆる「150万円の壁」という事になります。

ですから、仮に妻の収入が100万円や103万円を超えて妻自身が税金を支払わなくてはいけなくなっても、夫側は妻の収入が150万円未満であれば、所得税においてはそれまでと変化はないという事になるのです。

妻の収入が100万円や103万円を超えたとしても、それほど税額は高くなりませんから、家庭全体の収支で考えれば「100万円の壁」「103万円の壁」をそこまで気にする必要もないと言えます。

夫側の収入にも制限がある

そして次が、配偶者控除、配偶者特別控除などを利用する場合、夫側の収入に制限があるという事について。

基本的に夫の収入が1,000万円を超える場合には、夫自身においてこれらの控除が利用できませんから注意が必要となります。また、基本的に夫が利用できる控除額は最大で「38万円」となっていますが、夫自身の収入が900万円を超えたあたりからこの控除額が徐々に減る事となり、1,000万円を超えてゼロになるという仕組みになっています。

ですから、いくら「〇〇〇万円の壁」を意識したとしても、税務上においては夫の収入がいくらなのかについても考えなくてはいけないという事になります。

妻がフリーランス(個人事業主)の場合は計算が変わる

そして最後が、妻がフリーランス(個人事業主)の場合には扶養における計算が変わってくるという事について。

妻がパートやアルバイトで働いている場合は、あくまでも「給与所得」となりますから、「基礎控除48万円」+「給与所得控除55万円」の計103万円で計算すれば良いという事は既にご理解頂けたと思います(住民税は100万円)。

しかし、妻がフリーランス(個人事業主)として働いている場合は、この控除額が「基礎控除48万円」のみとなり、かなり不利のように思えますよね。

とは言え、個人事業主として確定申告をする場合、青色申告を行なえば「青色申告特別控除」というものが利用できますから、「基礎控除48万円」+「青色申告特別控除55万円」の計103万円までは認められるという事になります。

 

 

その点、白色申告で確定申告を行っていた場合、この「青色申告特別控除」は認められませんので、個人事業主の方なら是非「青色申告」をお勧めします

更に言うと個人事業主の場合、その事業にかかった費用は「経費」として計上する事ができ、仮に200万円の売り上げがあったとしても100万円の経費を計上する事が出来れば、「売上200万円-費用100万円=所得100万円」となり、更にここから青色申告特別控除などを引けば、最終的に「所得額0円」という事にもなり得ます。

あくまで「収入」ではなく、「所得額」であるという事に注目しましょう。

この「計上できる費用」については様々なものがあり、例えば「事業に使用した分の携帯代」もそうですし、「家賃の一部」なども計上する事が可能となります。もちろん、事業に使用したと説明できる合理的な資料は必要となりますが、そもそも例えば家賃などは生活する上で必ず支払わなくてはいけない費用ですし、その一部が費用化できれば手元に残るお金も増える事になりますから、実は主婦にとって、フリーランスとして働く方が何かと便利な事って多いんですよね。

社会保険上の扶養で注意すべき事

そして次が、社会保険上の扶養で注意すべき事について。

扶養について考える場合、実はこの社会保険の扶養が家計の収入を大きく左右する事になりますので、税務上について考えるよりも重要となってきます。

それでは、それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。

「106万円の壁」と「130万円の壁」に注意する

まずは、106万円の壁と130万円の壁に注意するということについてから。

前述したように、基本的に社会保険上の扶養に入るためには、会社員の夫の家族の収入が「130万円未満」という事が第一条件となります。これを超えてしまうと、その家族は夫の社会保険に加入する事が出来ず、自分で「健康保険」や「年金」に加入する必要が生じてしまいます。

この健康保険と年金額が非常に高く、扶養として加入していれば「無料(タダ)」であるのに、仮に妻が国民健康保険や国民年金にでも加入してしまう事になれば、人によっては年間で20~30万円以上の新たな出費が発生する事となります。

ですから、この時点で一気に手取りが減少してしまうという事に繋がりかねません。もちろん、将来的に貰える年金額が増える可能性はありますが、トータルで考えれば損となる可能性は否定できませんよね。

また、仮に妻側の勤める企業がある一定以上の規模(例えば、従業員が501人以上いるなど)の場合には、今度は130万円という基準ではなく、妻の収入が106万円を超えた段階で、強制的に妻の勤める勤務先で社会保険に加入しなくてはならなくなります。

ですから、収入を130万円未満に抑える事だけではなく、妻の勤務先は「106万円の壁」の対象となる企業なのかについても十分確認しておきましょう。

この点、妻が個人事業主であれば、106万円の壁について心配する必要はありません。

妻が個人事業主の場合、「計上できる経費」についても注意

次が、妻が個人事業主の場合、その計上できる経費についても注意する必要があるという事。

まず前提として、妻が個人事業主の場合、会社員である夫の社会保険の扶養として加入できないと勘違いしている人もいるようですが、これは間違いで、基本的に妻の「所得額」が130万円未満であれば、大抵は加入できますのでご安心ください。

ただここで注意すべきは、その収入に対して、計上できる経費が限られてくるという事。

基本的に社会保険の扶養の判定においても、妻が個人事業主であれば収入から経費を差し引いた「所得金額」で判定する事になるのですが、この場合、税務上で認められている経費と同等のものが認められる訳ではありません。

例えば、税務上においては自動車などの「減価償却費」が経費として認められますが、社会保険の扶養の計算上は通常これが認められません。また、「青色申告特別控除」も認められませんから、税務上よりかなり厳しく判定される事になります。

更に言うと、この社会保険の扶養の判定は「健康保険組合ごと」に行われる事になり、その組合によってはほとんど経費を認めないという場合もありえますので、ここは夫が加入している保険組合に各自が問い合わせる必要があります。

この基準が一番緩いと言われているのが「協会けんぽ」なのですが、協会けんぽでも「減価償却費」や「青色申告特別控除」などは収入から差し引く事は認められておらず、この計算には十分慎重になる必要があります。

例えば、その内容の一部を表で比較すると、以下のようになります。

主な支出税法上の経費協会けんぽ某保険組合
青色申告特別控除
減価償却費
外注工賃
租税公課
給与賃金
通信費
広告宣伝費

※詳しくは、直接保険組合等にご確認ください。

上記で考えると、たとえ税法上の所得が130万円未満となっていたとしても、社会保険上ではこれをオーバーする可能性が高いという事になりますね。

ですから、個人事業主として働こうと考えているのであれば、事前に夫(親)の加入する保険組合にしっかりと確認しておくことをお勧めします。

〇〇〇万円の壁をまとめると

このように、扶養と言っても様々な点に注意する必要があり、単純に「私は収入が130万円未満だから心配ないわ」とはならない事がお分かり頂けたかと思います。

それでは最後に、この扶養の壁について一覧にしてまとめてみたいと思います。

100万円の壁(住民税)
パートなどの給与収入が100万円を超えると「妻に住民税」が課される事になる。
103万円の壁(所得税)
パートなどの給与収入が103万円を超えると「妻に所得税」が課される事になる。
106万円の壁(社会保険)
一定規模の企業にパートで勤めていると、収入が106万円以上となれば、妻はその企業で社会保険に加入しなくてはならない。
130万円の壁(社会保険)
妻の収入が130万円以上となると、夫の社会保険の扶養から外されてしまう。
150万円の壁(所得税)
妻の収入が150万円以下であれば、夫は「配偶者特別控除」で満額の控除(38万円)を利用できるが、妻の収入が上がる度にその控除額が減っていき、201.6万円以上となった時点で控除を受けられなくなる。

以上となりますが、ここで注意したいのが何度もお伝えしている通り、パートやアルバイトの場合はそのままの給与額を上記の数値に照らし合わせるだけで良いですが、個人事業主の場合には「収入-経費=所得」で考えるという事を間違わないようにして下さい。