助成金・補助金の申請代行は誰に頼む?報酬はいくら?

国や地方公共団体などは国民や事業者に対し、様々な助成金補助金事業を通して、経済的支援を行っています。特に、昨今の新型コロナウイルス対策などでは、かなり多くの助成金事業・補助金事業が発表されています。

こちらについて詳しくは、当サイトの「コロナ関連」のページをご覧になってみて下さい。

こうした助成事業などを利用する事により、普段の生活や事業運営の助けになりますから、少しでも早く利用したいところですが、こうした助成事業の申請書というのは複雑な内容であることが多く、素人が作成するとなると少しハードルが高いと言えますよね。

そこで専門家に依頼する事を考えると思いますが、一体、誰に依頼したら良いのか、また報酬はいくらくらい支払わなくてはいけないのかと不安になるかと思います。

そこでこの記事では、どういった助成金を誰に依頼すべきで、またその報酬額はいくらぐらいなのかなどについてお伝えしようと思います。

参考までに、こうした専門家を探すサービスやその料金などについてもお伝えします。

ちなみに、助成金・補助金の支給を受けた際に発生する税金について知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。

 

目次

助成金申請代行は、社労士だけの独占業務ではない

インターネット上の情報を見ると、「助成金申請は、社労士だけの独占業務です」などといった内容を見つける事がありますが、実は、助成金申請代行は社労士だけの独占業務ではありません

確かに社労士だけしか取り扱えない助成金事業もありますが、それは「厚生労働省が所管する助成金事業」だけに限定されます(厳密に言えば、弁護士による代行も可能)。

では、なぜこういった情報が溢れているかというと、世の中にある多くの助成金事業は厚生労働省が所管している事業がほとんどだからです。ですから「助成金 = 社労士」というイメージが出来上がってしまったのですね。

ただ、厚生労働省以外にも助成金事業を行っている省庁もあり、こうした場合は社労士の資格が無くても申請代行を行う事が可能となります。

これに関しては、社労士でも勘違いしている人もいますから注意が必要です。

また、厳密に言えばこうした社労士の業務は「有償独占業務」と呼ばれ、「報酬を得て行う場合は、社労士以外が取り扱ってはいけない」という事になるため、逆に言えば「無報酬で代行すれば社労士法違反にはならない」という事になります。

とは言え、無報酬でこうした申請代行を行う事は考えられませんから、現実的には社労士の独占業務になるという事ですね。

もちろん、自分で申請する事自体は問題ありませんので、たとえ厚生労働省所管の助成金事業であっても、必ず社労士に依頼する必要はありません。

ポイント

  • 厚生労働省所管の助成金事業だけは、社労士の独占業務となる(弁護士も一部可能)。
  • それ以外の助成金・補助金事業は、社労士以外の専門家でも問題ない。
  • たとえ厚生労働省所管の事業であっても、無報酬であれば法律違反とはならない。
  • 自分(自社)で申請する分には、何も問題はない。

社労士に依頼した場合の報酬額は?

とは言え、厚生労働省所管の助成金事業は、様々な添付資料などが必要となりますから、いくら自分で申請できると言っても少しハードルが高いと言えます。

小規模事業者の方であれば、多くの場合、結果的に社労士に依頼する事になると思いますが、ここで心配なのが「一体いくらかかるのか?」という事だと思います。

平均的な相場というものはありませんが、世間的に言われているものがこちら。

助成金申請の報酬額

【着手金がある場合】

着手金:2万円~10万円程度

報酬額:助成金額の10%~15%程度

【成功報酬の場合】

報酬額:助成金額の15%~20%程度

上記は大体の報酬相場となりますが、社労士事務所や申請内容などによっては、例えば成功報酬が25%に設定されている場合もありますから注意が必要です。

仮に、助成金として100万円が承認されたとして、成功報酬20%であれば、社労士に支払う金額は20万円になるという事ですね。

ですから、「20万円も支払うなら、自分で作成したほうが安い」と考えるなら自社で申請すれば良いですし、「自分の時給で考えるなら、社労士に依頼したほうが効率的」と考えるなら、社労士に依頼したほうが良いという事になります。

この辺は、自社の状況に応じて判断すれば良いでしょう。

社労士に依頼すべき助成金事業とは?

先ほど、「厚生労働省所管の助成金事業の申請代行は、社労士の独占業務」とお伝えしましたが、では、具体的にどのような助成金事業が厚生労働省所管となるのかについても見ていきましょう。

厚生労働省の取り扱う業務は多岐に渡りますが、大きく分けると以下のようになります。

厚生労働省が扱う業務
  • 健康・医療
  • 子ども・子育て
  • 福祉・介護
  • 雇用・労働
  • 年金

ですから、上記に関連する助成金事業であれば、厚生労働省所管の助成金事業と考えてほぼ間違いないと言えるでしょう(もちろん、上記の業務を地方自治体などが取り扱う場合もあります)。

この中でも、事業者に対する助成金として多いものが「雇用・労働関係」となっており、具体的には以下のようなものが挙げられます。

雇用・労働関係の助成金事業
  • 労働者の雇用維持     - 雇用調整助成金など
  • 離職者に対する再就職支援 - 再就職支援コースなど
  • 新たな労働者の雇い入れ  - 地域雇用開発助成金など
  • トライアル雇用      - トライアル雇用助成金など
  • 障害者の職場定着支援   - 障害者雇用安定助成金など
  • 雇用環境の整備      - 人材確保等支援助成金など
  • その他

この他、起業に対する助成や、仕事と家庭の両立支援などに対する助成金事業もあります。

新型コロナウイルス感染症対策として注目されている「雇用調整助成金」などは、完全に厚生労働省所管となりますので、申請代行を検討している方は必ず社労士に依頼するようにしましょう。

とは言え逆に考えれば、上記以外の助成金事業は社労士でなくとも申請代行出来る事になりますので、税理士などの専門家に依頼しても問題ありません。

社労士に依頼する際の注意点

このように、厚生労働省が所管している助成金事業は数が多いですので、現実的に考えれば、今後社労士に依頼する場面も出てくるかと思います。

そこで以下において、社労士に依頼する際の注意点についてもお伝えしておきます。

全ての社労士が助成金申請に精通している訳ではない

まずは、「全ての社労士が、助成金事業に精通している訳ではない」という事。

厚生労働省の集計では、2020年9月30日時点での社会保険労務士の登録者数は、全国で43,168人いると言われています。

しかし、この登録者全員が助成金の申請代行を取り扱っている訳ではなく、そのほとんどが「給与計算」や「社会保険・労働保険の申請代行」などの業務を中心に行っています。

むしろ、助成金の申請代行をメインで行っている社労士の方が少ないと言えるでしょう。

ですから、「社労士だから助成金に詳しいだろう」と考えるのは早計で、社労士に依頼すれば問題なく助成金申請が承認されるという考え方は少し危険だと言えます。実際、当サイト管理人は「助成金の申請書すら見たことがない」という社労士に会ったことがあり、かなり驚いた記憶があります。

社労士に依頼する場合のポイントとしては、「これまで、どの程度の実績がありますか?」とか、「どの分野の助成金申請が得意ですか?」などと必ず質問するようにしましょう。

ポイント

  • 全ての社労士が助成金申請に詳しいわけではない。
  • むしろ、助成金申請代行を断る社労士も存在する。

不正受給に要注意

次が「不正受給には十分注意する必要がある」という事。

よく新聞などで、「助成金の不正金受給で、〇人逮捕」などといった報道を目にすることがあるかと思います。

助成金の不正受給は犯罪ですから、逮捕されるのはもちろんですが、起訴される事だってありえます。実際、これまで不正金受給で逮捕された社労士も存在しますし、そうなった場合、依頼した企業としても何らかの責任を取る必要があります。

不正受給の方法は様々ありますが、その内容は「出勤簿の改ざん」「給与明細の改ざん」などと単純なものから、「実際に従業員が退職したように見せかける」などといった手の込んだものまで、よくもまあ考えつくなぁと思わせるものまであります。

こうした話をすると、社労士側としては「社労士にそんな事をする人間はほとんどいない。大体において不正受給を提案するのは怪しげなコンサル会社だ」などと反論する人もいるのですが、実際にこれまで立件されたケースが多々ありますから、社労士でもこうした不正受給に手を染める事は現実的にありえます

こうした不良社労士については、厚生労働省も対策を強めており、内容によっては「失格処分」などの懲戒処分を下す事にもなります。

厚生労働省のHP上で、これら懲戒処分を受けた社労士の一覧が掲載されていますから、詳しくは「社会保険労務士の懲戒処分事案」のページでご確認ください。社労士に依頼する際には、その社労士が懲戒処分を受けていないか事前に確認しておきましょう。

当サイト管理人は、これまで税理士や弁護士の方々を中心に一緒に仕事をしてきましたが、その中で何人かの社労士の方と出会うことがありました。そのほとんどが真面目な方が多いのですが、中には怪しげな人もいましたから、「社労士として登録しているから安心」という訳でもありません。

助成金申請の相談をして「ここをちょっとごまかせば、簡単に受給できますよ」なんて言われても、安易に話に乗ってはいけません。

ポイント

  • 不正受給を持ちかける社労士は実際に存在する。
  • 摘発された場合、申請者である企業(個人)も処分を受ける。

社労士を探す方法は意外と少ない

そして最後が「社労士を探す方法は意外と少ない」という事。

現在、インターネット上で様々なサービスが登場しており、士業を探すサービスなども続々と登場しています。税理士や弁護士などは、昔に比べて簡単に探せるようになりましたよね。

しかし、社労士を探すことのできるサービスは意外と少ないため、依頼したいと考えても「どこで探したら良いのか分からない」と悩んでいる人も多いかもしれません。

現在考えられる社労士を探す方法としては、以下の方法くらいだと思います。

社労士を探す方法
  • 知人に紹介してもらう
  • 税理士などの士業関係者から紹介してもらう
  • 社会保険労務士会のサイトから検索
  • 会計ソフト会社の「社労士検索サービス」から検索
  • スキルシェアなどのクラウドサービスから検索

まず一番安心できる方法としては、「知人に紹介してもらう」「税理士などの士業関係者から紹介してもらう」方法だと言えますが、この方法だと面談から申請依頼までの時間が相当かかりますから、「今すぐお願いしたい」と考えている人には向いていないと言えるでしょう。

また、「社会保険労務士会のサイトから検索」するにしても、どの社労士がどの程度の経験があるのかよく分かりませんから、あまりお勧めできる方法とは言えません。

最後の「会計ソフト会社の社労士検索サービスから検索」「スキルシェアなどのクラウドサービスから検索」する方法は、その社労士の得意分野や経歴などが詳しく紹介されているため、助成金申請において社労士を探す方法としては一番効率的かもしれません。

自分に合った方法を選択してもらえればと思いますが、以下において、「会計ソフト」「クラウドサービス」で社労士を探す方法についてご紹介します。

社労士を探す方法

それでは以下において社労士を探す方法をご紹介しますが、ここでは前述したように「会計ソフト会社を利用する方法」「クラウドサービスを利用する方法」に分けて説明しようと思います。

会計ソフト会社の「社労士検索サービス」を利用する方法

まずは、会計ソフト会社の「社労士検索サービス」を利用する方法から。

「社労士と会計ソフト?何の関係があるの?」と考える人もいるでしょうね。しかし、会計ソフト会社と社労士というのはかなり密接な結びつきにあります。

大抵の場合、会計ソフト会社というのは商品ラインナップとして、会計ソフトだけではなく「給与計算ソフト」「勤怠管理ソフト」などを販売しています。多くの社労士は、こうした会計ソフト会社が販売するソフトを利用していますから、会計ソフト会社としても社労士というのは「大切なお客様」という訳です。

そこで更に、一般利用ユーザーと社労士ユーザーを結び付ける事により、会計ソフト会社としても、さらなる事業拡大に結び付けることが出来るという事になりますよね。

もちろん、社労士であれば誰でも良いという訳ではなく、ある程度の審査をした上で紹介していますから、依頼する側としても安心感があります。

現在、こうした「社労士検索サービス」を提供している会計ソフト会社はこちら。

マネーフォワードクラウド


社労士検索サービスを提供している会計ソフト会社の中で、一番この事業に積極的なのがこの「マネーフォワード」だと言えます。

マネーフォワードクラウドに登録するだけで、給与計算はもちろんのこと、「経費精算」「社会保険手続」「勤怠管理」「マイナンバー管理」の全てのソフトが使えるので、多くの社労士がこのマネーフォワードを利用し始めています

登録している社労士の数がかなり多いので、社労士を探すには一番便利なツールだと言えるでしょう。

主な特徴利用できるソフト紹介料

マネーフォワードクラウド製品を利用していなくても紹介可能

マネーフォワードへの問い合わせ内容をもとに、マッチングも行ってくれる

「クラウド会計」「クラウド確定申告」「クラウド請求書」「クラウド経費」「クラウド給与」「クラウド社会保険」「クラウド勤怠」「クラウドマイナンバー」

無料

 

freee(フリー)


この「freee(フリー)」は、マネーフォワードと同じくクラウド会計ソフトとして有名で、「クラウド会計ソフトfreee」や「人事労務ソフトfreee」を提供している会社です。

マネーフォワードのように細かくソフトを分けておらず、人事労務freeeさえ導入すれば、給与計算から勤怠管理までほぼ全ての労務管理を行えるようになっています。

ただし、マネーフォワードに比べると、freeeの社労士紹介サービスは少し見劣りする感があります

主な特徴利用できるソフト紹介料

freeeの製品を利用していなくても検索可能

社労士紹介に特化している訳でなく、「税理士紹介のついで」というイメージが強い

「クラウド会計ソフトfreee」「クラウド人事労務ソフトfreee」「マイナンバー管理freee」「中堅企業向けクラウドERP」無料

 

スキルシェアなどの「クラウドサービス」を利用する方法

次が、スキルシェアなどのクラウドサービスを利用して社労士を探す方法

スキルシェアとは、自分が得意なことをクラウドサービス上で紹介し、それに興味を持った人がお金を支払ってそのサービスを購入するというもの。

その内容は多岐に渡り、「似顔絵の作成」や「チラシデザイン」といったものから、ビジネスの相談まで様々なシーンで利用できます。士業関連のサービスもここ数年で増えており、多くの社労士がこのクラウドサービスに登録するようになっています。

ココナラ



現在、スキルシェアサービスを提供している会社は多数ありますが、実績、掲載件数で言えばこの「ココナラ」が一番だと言えるでしょう。

ココナラに登録している社労士はかなり多く、その提供するサービスも「就業規則作成」「助成金申請代行」といったものから、「助成金申請内容のチェック」といった簡単なものまで多岐に渡ります。

報酬額も数千円~数万円まで幅広くありますので、「まずはお試し」という人には丁度いいサービスだと言えるでしょう。

主な特徴ココナラの特典紹介料、費用

相談するために直接会う必要がないので、外出を控えている人にはおススメ

評価レビューが記載されているので、事前に社労士の評判を知ることが出来る

新規登録するだけで、「300円割引クーポン」がもらえる

友達を紹介するだけでも「600ポイントプレゼント」

紹介料・登録料は無料

社労士に支払う費用は、数千円~数万円

 

まとめ

如何でしたでしょうか。

基本的に厚生労働省所管の助成金申請代行は社労士に依頼したほうが良くて、それ以外については法律に定めが無い限り、社労士以外の専門家に依頼しても問題ないという事がお分かり頂けたかと思います。

それ以外の専門家としては、「税理士」「弁護士」「中小企業診断士」「行政書士」などが挙げられますが、助成金受給後には税務処理なども必要となりますから、可能であれば助成金申請などに精通した税理士に依頼したほうが良いでしょう。

税理士の中には、こういった助成金申請が得意な人もいますから、一度相談してみては如何でしょうか?

税理士を探したいという人は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。