不正会計・横領の防止には、クラウド会計ソフトと経費精算システムが効果的

経営者の頭を悩ませる問題のひとつに「不正会計・横領」がありますが、これはいつの時代にもあり、現在でもこれを完全に防止する手立ては見つかっていないようです。

経営者自身がこうした不正に手を染める場合は論外ですが、経理担当者などの従業員が行う事もあり、その場合、「どの程度まで任せたら良いのか、逆にどの程度管理したら良いのか」という社内での信頼関係の問題にも発展します。

出来れば人を信用したいというのが人間の情というものですが、実際にこういった不正会計や横領は、起きてしまってからではどう対処する事も出来ません。

そこでその対策として、近年認知度の高まっている「クラウド会計ソフト」「経費精算システム」を利用する事で、不正会計や横領を起こりにくくすることが可能となります。

この記事では、不正会計や横領はどのようにして起こり、またそれが発覚した場合の税務上の問題や、それを起こさせないためのクラウド会計ソフトや経費精算システムの活用方法などについてお伝えしようと思います。

不正会計と横領はセットで起こりやすいもの

まず、不正会計と横領とでは何が違うのかという事から。

不正会計と似たような言葉で「粉飾決算」というものがありますが、これは上場企業などが実際には決算が赤字であるのに、対外的に黒字であるかのように見せかけているというもの。

上場企業の場合、その経営が上手く行っていないようであれば、株主が経営陣に対し経営責任を追及する事になるため、この粉飾決算は経営陣の責任逃れのために利用される事が多いようです。

これに対し不正会計は、特に財務内容をよく見せる目的で行われるわけでもなく、多くの場合、横領などを隠すための帳尻合わせのために行われる場合がほとんどです(もちろん脱税など、それ以外の目的にも利用されます)。

ですから、横領と不正会計は大抵セットで行われる事になります。

横領のよくあるパターン

新聞報道などでよく目にする横領ですが、その内容を見ると「数年間横領を続けていた」というものがほとんどです。

数年間も見つからなかったのですから、よほど巧みな手法を使っていたのだなと考えてしまいそうなものですが、実はそのほとんどが呆れるほどに原始的な手法で行われているのが現実です。

代表的なものとしては以下の通り。

横領のパターン
  • 小口現金の着服
  • 経費の水増し
  • 会社備品の無断売却・転売
  • 法人口座の私的利用
  • インターネットバンキングを利用した不正出金
  • 業者と結託した「キックバック」

どのパターンにおいても最初は少額から始め、いくらやっても見つからないため、それがどんどんエスカレートしていったというのがほとんどのようです。

例えば、「インターネットバンキングを利用した不正送金」などはすぐにバレてしまいそうなものですが、こうした横領手法を行う社員は往々にして経理担当社員であることが多く、しかも「通帳を誰にも渡さない」「銀行との取引は一人で行う」などの対策をしますから、中々その不正が表に出てきにくいという特徴があります。

また、決算期には銀行口座残高を確認するのでそこで発覚しても良さそうなものですが、こうした横領に手を染めている人間というのは、例えば銀行が発行する残高証明書を偽造したりとあの手この手で発覚を阻止しますから、何年間も横領が見つからないというのも当然と言えば当然なのかもしれません。

こうした横領ですが、報道されるものは実はほんの一部であり、実際には事件として取り扱っていないだけで内々で処理している場合がかなり多いようです。

例えば、「経費の水増し」などというのは昔からよくある手法で、白紙の領収書に適当な金額を記載して請求したり領収書の金額を書き換えたりと、逆に言えば大企業などでは必ず発生しているといっても過言ではないでしょう。

社員数が何万人ともなれば、一人や二人こうした不正に手を染めていてもそれを発見するのは至難の業です。

ですから、世間では「横領=経理担当者が行うもの」という図式が出来上がっているようですが、実はこうした横領というのは、どこにでも起こり得るというのが現実です。

不正会計、横領はどのようにして発覚するか?

多くの場合、長年にわたって発覚しにくい不正会計・横領ですが、それがいつまでも続くわけでもなく、何かしらのきっかけで表沙汰になる事となります。

発覚するきっかけの代表例がこちら。

発覚するきっかけ
  • 税務調査
  • 経理担当者の退職、異動
  • 税理士、公認会計士による指摘
  • 金融機関による指摘
  • 内部通報

上記にように発覚するきっかけは様々ありますが、一番表沙汰になり易いのが「税務調査」だといえます。

やはり税務署の調査能力は高いため、どんなに隠ぺい工作をしても結果的には必ず見つかる事になるようです。例えば最近で言えば、関西電力経営陣への賄賂などは、この税務調査がきっかけで発覚する事となりました。

ですから、税務調査と聞くと経営者からすれば「嫌だなぁ~」と思うかもしれませんが、会社の規律を正すために役立つと考えれば有難い事なのかもしれません。

この他、「税理士、公認会計士の指摘」によって発覚する事もあり、税理士などによっては「だからこそ税理士に相談しましょう」などと宣伝している事もありますが、実際には監査法人や税理士などがこうした横領を見抜けなかったため、巨額の横領事件へと発展する事があるので何とも言えないところです。

特に、外部の人間からすると経理担当者などは社長の信頼が厚く、「あまり余計なことを言っても問題なるかな」と及び腰になってしまいがちですから、税理士や公認会計士に対する過度な期待はしないほうが良いでしょう。

ただし、出来れば今後、税理士や公認会計士の方にはこういった対策をどんどん経営者に向けて提案して頂きたいところです。

横領発覚後はかなり悲惨

では、「横領が発覚してしまえばこれで安心」かというと、実際にはそうでもないのが現実です。

特に、税務調査で発覚した場合などは会社にとってかなり悲惨な事となり、この場合の税務処理は「同時両建説」という考え方で処理されます。

同時両建説とは、例えばその会社の従業員が横領を働いたために発生した損失については、その従業員に対して損害賠償請求ができるという考えから、即時に会社の損失には出来ず、更に言うと、その横領した従業員が隠ぺいのために行った経費の計上については、そもそも経費として認められない為、その経費についても否認される事になります。

要は、実際に会社からお金が無くなっている事に加え、経費を否認された分、追加で税金を支払わなくてはいけないという事です。

では実際に、その従業員に対して損害賠償請求によってお金を回収できるかといえば、多くの場合こうした横領を働く人というのはギャンブルやFXなどに使っているため、ほとんど手元にお金が残っていないというのが現実です。

お金は盗られるわ、税金は取られるわで経営者からしたら大変なのに、横領が発生すると回収の見込みがたたないのがほとんどでしょう。

ではここで、回収不能となればその回収が出来なくなった事業年度に「貸倒損失」を計上する事になりますが、これは税理士の方であればご存知だと思いますが、税務署というのは中々この貸倒損失を認めません。

わずかでも回収の見込みがあれば、貸倒損失は認めないというのが税務署のスタンスなのです。

確かに、「不正を見抜けなかった会社が悪い」と言われればそれまでですが、「発生するのも地獄、発覚するのも地獄」というのが横領の怖いところだと言えるでしょう。

不正会計・横領の一般的な防止策

それでは次に、こうした不正会計・横領を防止する一般的な方法についてご紹介します。

その一覧がこちら。

一般的な防止策
  1. 通帳の原本を複数人でチェックする体制にする
  2. 出金と記帳の担当者を分ける
  3. 定期的な担当替え
  4. 商品や備品などの定期的な査定を行う
  5. 1日の出金額に上限を設ける
  6. 小口現金やキャッシュカードなどを廃止する

まず、上記1~3については、人員的に余裕のある大企業なら可能ですが、中小企業やスタートアップなどの企業においては現実的に難しいと言わざるを得ません。

特にスタートアップなどは経営者が経理に疎い事が多く、外部から招いた経理責任者に財務を任せっきりにする場合がほとんどで、実際には横領が発生する可能性があるなどと夢にも思っていないのかもしれません。

またスタートアップは、投資家から多額の資金を調達するため、一人で経理処理を行っているとその額の多さに感覚がマヒしてしまうなんて事もあるようです。

出来るだけ複数人で経理内容をチェックするのが理想ではありますが、現実的に難しいという企業が大多数だと言えるでしょう。

その点、上記4の「商品や備品などの定期的な査定を行う」というのは、不正防止に対しても効果があるだけでなく、事業内容を正確に把握するためにも役立ちますから、横領の有無以前にしっかりと行っておきたい項目です。

上記5、6は簡単に行えますが、実際には上記全ての対策を行っていたとしても、完全には不正会計や横領を防止できていないというのが現状かもしれません。

【更なる防止策】クラウド会計ソフト、経費精算システムの活用

そこで更なる防止策としてお勧めしたいのが、クラウド会計ソフト、経費精算システムを活用するという方法。

これらを上手に活用する事で、人間では気付かない事でも異常値として検出してくれたりしますから、これまで以上に不正会計や横領を抑止する事が可能となります。

それではそれぞれを利用する事で、どのような効果を期待できるのかについても見ていきましょう。

クラウド会計ソフトの効用

まずはクラウド会計ソフトの効用から。

クラウド会計ソフトを取り入れる事の利点は、何と言っても「銀行口座のAPI連携」にあると言えます。

APIとは、「application programming interface」の頭文字をとったもので、インターフェイスとは「繋げる」という意味ですから、要はアプリケーションを繋げるプログラムという意味となります。

もっと簡単に言うと、例えばクラウド会計ソフト(アプリ)と銀行口座を「紐づける」技術と言った方が分かり易いかもしれません。

例えば、クラウド会計ソフトを導入し、自社の法人口座と紐づけしておくことで、これまでのような「通帳に記載されていた取引履歴を手入力で会計ソフトに打ち込む作業」が不要となり、自動的に口座情報がクラウド会計ソフトへ反映される事となります。

ですから、仮に経理担当者がインターネットバンキングで不正出金を繰り返していたとしたら、その横領は隠しようが無くなるという訳です。これだけでもかなり不正防止に役立ちますよね。

また銀行口座とのデータ連携以外にも「POSレジ」や「請求管理ソフト」との連携も可能となりますから、レジ作業における不正や業者などに対するキックバックの不正検出にも役立つと言えます。

クラウド会計ソフトサービスを提供している会社はいくつかありますが、どの企業もこのAPI連携をどんどん増やしているため、今後更に不正防止やその検出に強い効果を発揮することとなるでしょう。

経費精算システムの効用

そして次が、経費精算システムを導入する事による効用について。

経理事務で何気に時間と労力を要するこの「経費精算」ですが、実は、この経費精算においてかなりの額の横領が発生しているという事に気付いていない経営者も多いと思います。

例えばよくある手法が「交通費の過払い申請」。

仮に事業所が東京駅近辺にあるとして、従業員が品川駅近辺の自宅から通勤しているとします。東京駅と品川駅間は定期代を支給しているのですから、その間の移動であれば新たな経費は通常発生しませんよね。

しかし、例えばその従業員が横浜から東京駅までの交通費を請求してきたらどうでしょうか?「東京~品川」間は定期で利用でき、実際に必要となる運賃は「品川~横浜」間のみのはずです。

これを「東京~横浜」間の運賃全額を請求してきたとしたら、少額であるとはいえ、その従業員は過剰に運賃を受け取ることになります。

もちろん、失念という場合もあり得ますが、これを常習的に行っている人がいるのも事実です。

そこでこの経費精算システムを導入すれば、事前にその社員の定期区間を入力する事で、こうした過払いを防止する事が可能となります。

また、こうした経費精算システムはクレジットカードとの連携機能もありますから、例えば営業社員に法人のクレジットカードを持たせることで立替精算が不要となり、更に言えば小口現金も必要がなくなります。

現金での支払いだと社員の個人利用分まで請求される可能性がありますが、クレジットカード精算であれば、こうした不正も起こりにくくなります。

こうした経費精算システムは会計ソフトとのデータ連携も容易にでき、作業量も大幅に削減されるため、不正や横領の防止以外においても便利なシステムだと言えるでしょう。

おススメのクラウド会計ソフト

そこでお勧めしたいクラウド会計ソフトですが、現在この分野では「弥生」「マネーフォワード」「freee(フリー)」の3社がシェアを争っており、それぞれ独自の特徴を磨きながら利用者を増やしています。

まず「シェア」で考えるなら「弥生」が断トツなっており、やはり使い易さなどから弥生は根強いファンが多いようです。

また、前述した「API連携」を重視するなら「マネーフォワード」が一番で、3社の中でもかなり多くの金融機関と連携できるようになっています。最近では農協や地方銀行との連携も進んでいますから、マネーフォワードを選択すれば「自社のメインバンクと連携できない」などという事は起こりにくいでしょう。

そして、「不正会計防止」を一番重視するなら「freee(フリー)」がおススメで、このフリーは帳簿の改ざんが容易でない事で有名です。

それぞれ一長一短あり、また法人と個人では使い勝手も異なりますから、詳しくは下の記事を参考に選択してみて下さい。

法人はこちら。

個人事業はこちら。

ポイント

  • シェアで選ぶなら「弥生」
  • API連携で選ぶなら「マネーフォワードクラウド」
  • 機能性で選ぶなら「freee(フリー)」
  • ただし、法人と個人事業では勝手が違うため要確認

おススメの経費精算システム

そして次がおススメの経費精算システムですが、これは何と言っても「楽楽精算」が一番のおススメ。

現在、世の中には数多くの経費精算システムがありますが、国内における導入数ではこの楽楽精算がNo.1となっています。

使い勝手が良いのはもちろんのこと、前述した不正検出における機能も充実しており、不正請求や横領の防止にかなりの効果を発揮します。

もちろん、「初期費用10万円」「月額使用料3万円~」と、それなりの費用を必要としますが、一度軌道に乗ってしまえばこれまで経費精算に取られていた時間をかなり削減できるため、経理部門の人員を減らせる効果も出てきます。

しかし、「出来るだけ費用を抑えたい」という場合は、先ほどのクラウド会計ソフトでもご紹介した「マネーフォワードクラウド」を利用するのも良いでしょう。

このマネーフォワードクラウドを導入するだけで、経費精算システムの「マネーフォワードクラウド経費」もセットで利用できますから、むしろクラウド会計ソフトでマネーフォワードを選択したのであれば、敢えて新たな経費精算システムを導入する必要はありません。

また、この「楽楽精算」「クラウド経費」ともに、「電子帳簿保存法」の認証ソフトとなっているため、これらのソフトを利用すれば、今後「レシートの保管が不要」になったりと業務面においても利便性がかなり高いと言えます。

電子帳簿保存法については、こちらの記事をご覧になってみて下さい。

 

 

これら二つのソフトは、上記で紹介したクラウド会計ソフトとの連携も簡単にできますから、セットで導入すれば、不正会計や横領の防止において更に効果を発揮する事でしょう。

ポイント

  • 経費精算システムであれば、「楽楽精算」が一番のおススメ
  • 楽楽精算は不正請求の検知機能が優れている
  • ただし、それなりの利用料がかかるため、費用を抑えたい場合は「マネーフォワードクラウド経費」を選択
  • むしろ、会計ソフトでマネーフォワードを選択したら、敢えて経費精算システムを導入する必要はない
  • この二つのソフトは、電子帳簿保存法の認証ソフトとなっている