意外と難解な「印紙税」、困ったときには誰に相談すべき?

契約書や領収書に貼り付ける「印紙」ですが、この取り扱い方法や金額については、印紙税法という法律で一定のルールが決められています。

しかし、内容が複雑な事や頻繁にある法改正の為、しばしば「この場合、どう処理したらいいのかな?」と悩むことも多いかもしれません。

数ある税法の中でも、この印紙税法は専門家でも難しい分野とされています。

そこでこの記事では、印紙税の取扱いに困ったとき「一体、誰に相談すれば良いのか?」という事と、「そもそも印紙を節約する方法はないのか?」などといった内容についてお伝えします。

印紙税を税理士に相談するのは要注意

基本的に、印紙「税」というくらいですから、この内容についての相談先は「税金のプロである税理士だったら間違いないだろう」と考える人もいるかもしれませんが、実は印紙税において、税理士に相談するのは少し注意が必要となります。

もちろん、中には印紙税に精通した税理士もいるにはいますが、様々な理由から「相談すべき専門家とまでは言えない」というのが正直なところです。

それでは、その理由について幾つかご紹介しましょう。

法律上、税理士には印紙税における代理権限がない

まず第一に、「法律上、税理士には印紙税における代理権限がない」という事。

実はこれ、現役の税理士でも知らない事があり、税務調査において調査官からこれを指摘され「えっ?それホント?」などと驚く税理士も実際にいたようです。

確かに税理士法において、以下のような文言があります。

税理士法第二条(税理士の業務)

税理士は、他人の求めに応じ租税(印紙税、登録免許税、関税、法定外普通税(地方税法(昭和二十五法律第二百二十六号)第十条の四第二項に規定する道府県法定外普通税及び市町村法定外普通税をいう)、法定外目的税(同項に規定する法定外目的税をいう)その他政令で定めるものを除く。第四十九条の二第二項第十号を除き、以下に同じ)に関し、次に掲げる事務を行う事を業とする。

一 税務代理

二 事務書類の作成

三 税務相談

法律文は独特の言い回しのため分かりにくい部分が多いですが、要は「税理士は、税金における【税務代理】【事務書類の作成】【税務相談】に応じる事ができるけど、それは全ての税金についてではなく、例えば印紙税や関税などにおいては税理士に代理権限などはありませんよ」という事になります。

ですから厳密に言えば、仮に税務調査があったとして、それが印紙税に対する調査であれば税理士は立会いをする事が出来ないという訳です。

しかし、現実的に印紙税のみの調査というのはあまり考えられませんし、法人税や所得税の調査とともに「少しだけ印紙税について触れる」というのが実際のところです。

とは言え、調査官から「印紙税については、税理士の先生は対応できませんから」と言われれば、それは法律上、間違っていないという事になります(ただし、それを実際に言う調査官がいるとすれば、かなり悪質で意図的であるとは思いますが)。

現実的に、印紙税に詳しい税理士はかなり少数

税理士試験においては様々な税法科目がありますが、その中にこの印紙税法はありません。

法律上、「税理士は印紙税における代理業務が行えない」のですから、当たり前と言えば当たり前の話ですね。

ですから、ほとんどの税理士は印紙税法について学ぶ機会が少ない事が分かりますし、更に言えば、税務処理においてこの印紙税に触れる機会も乏しいため、印紙税に詳しい税理士はかなり少数であるのが現実です。

ですから、仮にアナタが印紙税について税理士に質問したとしても、大抵の税理士が一般的な回答しかできず、あまり突っ込んだ内容にまで触れる人はかなり稀だと言えるでしょう。

実際、当サイト管理人はこれまで数多くの税理士と仕事をしてきましたが、この印紙税について詳しい税理士は、100人の税理士がいたとすればその内に1人か2人いれば良い方かもしれません。

もちろん「いることはいる」ので、根気よく探せば印紙税に詳しい税理士を見つける事も出来るでしょうが、確率としてはかなり低いでしょう。

税務署職員に尋ねれば、ちゃんと答えてくれるのか?

では、税理士がダメなら税務署職員に尋ねればちゃんとした答えが返ってくるだろうと考える人もいるかもしれませんね。

しかし実際は、税務署職員でもこの印紙税に詳しい人は少ないのが現状です。

また、税務署職員の中には、この印紙税を税務調査の交渉材料にする人もいるようですから注意しなくてはいけません。

例えば、税務署職員は税務調査をする限り、「何も指摘事項がありませんでした」では済まされません。税務調査をするのであれば、何かしらの結果(修正申告など)がなければ、自身の評価にも影響します。

要は、サラリーマンと同じく、税務署職員も日々何かしらの評価をされている訳で、それが「調査回数」であったり、「如何に納税額を増やしたか」という事を問われるわけです。

そこで税務署職員の中には、税務調査で指摘事項が何も無かった場合、苦肉の策で印紙税の納付を求める事があるようです(これは実際に、数人の税理士が指摘しています)。

前述したように、ほとんどの税理士がこの印紙税についてあまり詳しくない為、税理士も「それはおかしい、指摘内容に誤りがある」と、自信をもって調査官に意見できない場合があるようです。ただ、出来ればこの場合、税理士の方には「持ち帰って検討する」とその場で返答して欲しくないところではありますが。

この辺を熟知している調査官などは、自身もよく分かっていない印紙税において、「どうせ税理士も分かっていないから、応じてくるだろう」とたかをくくって・・・、かどうかは分かりませんが、印紙税を最後の切り札に使う事もあるようです。

もちろん、税務署職員の中にも印紙税に詳しい人もいますが、ごくごく少数のため、税務署職員に尋ねれば誰でもちゃんとした回答をしてくれる訳ではないようです。

印紙税の専門家は弁護士だけど・・・

ここまで聞くと、「じゃあ、結局誰に尋ねたら良いんだ?」となるかと思いますが、印紙税の専門家として一番頼りになるのが弁護士だと言えるでしょう。

とは言え、全ての弁護士が印紙税に精通しているかというと、そうでもないのが悩ましいところです。

弁護士と言えば法律全般に精通していると思われがちですが、一般的な法律と税法とでは文言ひとつとっても微妙なニュアンスの違いがあるため、勉強不足の弁護士の場合、その辺を勘違いしてしまう事もあるようです。

例えば、税理士などの士業がクライアントと顧問契約を結ぶ場合、この契約書に印紙を貼り付ける必要があるのか疑問に思いますが、この場合は非課税となり印紙は不要です。しかし、これが「税理士法人」との契約となれば、印紙が必要となるなど細かいルールが存在します。

また、国税庁のホームページ上には「民法上、例えば、委任契約に近いと言われる混合契約であっても、印紙税法上は請負契約となるものも生ずる」と書かれていますから、ここをしっかりと理解している弁護士でなければ、判断に迷う事も多いかと思います。

ですから、仮に弁護士に依頼するとしても、しっかりと経験を積んだ弁護士に依頼するようにしましょう。

弁護士を探す方法としては、弁護士ドットコムで探す方法がメジャーかもしれませんが、多くの専門家が登録している「ココナラ」というサービスでも「ココナラ法律相談」というものがあり、こちらでも多くの弁護士を検索できますから、一度検索してみるのも良いと思います。

印紙税を節約する方法

このように何かと面倒な印紙税ですが、そもそも「紙」の契約書などでなければ印紙を貼る必要もなく、「これって印紙が必要なのだろうか?」とか、「誰に相談したら良いんだろうか?」などと悩む必要もなくなります。

では、紙を使用せずに契約を結ぶためにはどうしたら良いかというと、「電子契約」という方法を選択すれば、上記のように印紙税で悩む必要もなくなります。「電子」契約ですから、紙を使用する必要が無いという訳です。

この電子契約については、国税庁も印紙税がかからないと回答しています。これは印紙税法および印紙税法基本通達法からも分かるように、印紙は「原本」に対して課税されるため、今後も法改正が無い限り、この考え方は変わらないものと思われます。

この電子契約、最近はテレワーク導入に合わせて利用する人も増えているようです。

現状、日本国内で電子契約サービスシェアトップなのが、弁護士ドットコムという企業が手掛ける「クラウドサイン」というサービスで、このクラウドサインだけで日本国内の電子契約のおよそ8割をカバーしていますから、ほぼ独占状態といっても良いかもしれません。

ただし、この電子契約サービスはまだまだ新しい分野なので、今後もクラウドサインがトップであり続けるという保証はありません。現在、数多くの企業がこの電子契約サービスに参入してきていますから、今後はかなりの激戦となるでしょう。

電子契約サービスを提供している企業として世界的に有名なのが「DocuSign(ドキュサイン)」という企業ですが、こちらも現在日本においてサービスを提供し始めており、今後は本格的な電子契約の時代となるのかもしれません。

この電子契約サービスに関しては、改めて別の記事にて詳しくお伝えしようと思います。

まとめ

以上のように、印紙税は複雑で分かりにくい税金であり、それを正確に理解している専門家もかなり少ない事がお分かり頂けたかと思います。

相談する場合は、出来るだけ経験を積んだ弁護士に相談したほうが良いでしょう。

ただし、国税OB税理士の中にはこの印紙税における経験が豊富な税理士もいますから、敢えてそうした税理士を探すのも良いかもしれません。

そもそも印紙税で悩みたくないという人は、電子契約サービスを利用する事で印紙を貼る必要がなくなりますので、そちらを選択するのもひとつですが、こうしたサービスには当然「サービス料」を支払わなくてはいけませんから、場合によっては「高くついた」なんて事にもなりかねませんので、そこはよく考えた上で判断してください。