
ここ数年で士業の営業方法も多様化しており、一昔前では珍しかったホームページやブログなどを作成する士業事務所というのは、今ではもう当たり前となりつつあります。
むしろ最近では、顧客側から「えっ?ホームページくらい作ってないの?」などと言われる事もあるようで、人々の意識は大きく変わったなと感じますよね。
もちろん、Web集客を必要とせず、紹介だけで事務所を運営できるのであればわざわざホームページを作成する必要もありませんが、営業目的ではなく「事務所の顔」として、最低限の情報を掲載したホームページくらいは作っておいて損はないのかもしれません。
近年のインターネットの普及により、多くの人は情報収集をほとんどネット検索に頼るようになりました。 各企業とも、如何にこのインターネットを上手く利用できるかについて、それぞれ工夫を凝らしています。 一般的に、IT関連に疎い …
とは言え、ホームページやブログを作成するとなると、慣れていない人であれば様々な事について考えなくてはならず、その中でも特に「所長やスタッフの顔写真は載せたほうが良いのか?」という点について悩む人が多いように感じます。
この点において正解というものはありませんが、結論から言うと「営業や集客を目的としているなら、出来るだけ掲載したほうが良い」と言えるでしょう。
そこでこの記事では、士業事務所がホームページやブログを作成する場合、顔写真を掲載したほうが良いパターンや、その掲載方法の工夫の仕方などについてお伝えしようと思います。
目次
顔写真を掲載するメリット・デメリット
まず、士業事務所のホームページやブログにおいて、顔写真を掲載すべきか否かというのは、それぞれの事務所の運営スタンスによって判断が異なってくるかと思います。
そこで、載せるか載せないかについて考える判断基準として「顔写真を掲載するメリット・デメリット」について少し考えてみましょう。
顔写真を掲載するメリット
まずはメリットから。
顔写真を掲載するメリットとしては、以下のような事が考えられます。
- 写真の撮り方によっては、顧客側からすると親近感が湧くこととなり、依頼へのハードルが下がる。
- 特に士業の場合、「信頼感」を重要視する顧客が多いため、安心感を与える事にもつながる。
- 顔出しする事で、メディアなどからの出演交渉やインタビュー、記事作成の依頼などが増える。
顔写真を掲載する事のメリットとしては、何と言っても「親近感を持ってもらえる」ということが一番に挙げられます。
例えば弁護士の場合、一般的に弁護士に対するイメージというのは「ちょっと怖そう」という意見が多いですから、少しにっこりと笑った顔写真を掲載するだけで、「あっ、何だか優しそう」となり、依頼へのハードルが下がる事に繋がります。
また弁護士だけでなく、士業に仕事を依頼するとなればある程度の「信頼感・安心感」は必要となりますから、顔が見えない人に依頼するよりも、事前にどんな人か知っておきたいと思うのが一般的な考え方ですよね。
そこでホームページなどに顔写真を掲載することで、こうした依頼者の不安などを取り除くことができ、その結果として集客面においてはかなりプラスへと働きます。
この他にも、顔出しする事で「メディアからの依頼」は圧倒的に増える傾向にありますから、場合によっては「出版の依頼」「新聞などへのコラム記事作成依頼」「セミナー共同開催の依頼」などなど、顔写真を掲載する事で、思いもよらなかった仕事が舞い込んできている士業の方は結構います。
こう考えると、「もっとお客さんを増やしたい」「事業を多角的に広げたい」という人であれば、顔写真の掲載は是非ともするべきだと言えるでしょう。
顔写真を掲載するデメリット
しかし、顔写真を掲載するのはメリットばかりではなく、デメリットもそれなりに存在します。
顔写真を掲載する上でのデメリットは以下の通り。
- 個人情報の問題(インターネット上に、写真が出回ってしまう)。
- 写真の撮り方によっては、むしろ不信感を与えてしまい逆効果になる事も。
それなりにあるとは言っても、顔出しをするデメリットというのは、士業の方であれば上記の2点くらいしかないと言えます。
これが「副業でブログを書いている会社員」などの場合であれば、会社にバレたくないなどといった理由も挙げられるでしょうが、士業の場合、そもそも本業で活動しているのですから、そういった事について考える必要はないでしょう。
もちろん、当サイト管理人のように「顔出し無し」しかも「名前すら掲載していない」というサイトもありますが、それはそれで様々な理由があります。
例えば、当サイトでは一部の税理士や士業について、具体例を出して「こんな酷い税理士もいる」とか、「こういった弁護士は依頼する価値はない」などと書いたりしています。かなりリアルな内容もありますから、顔出しや名前を掲載すると「あぁ、あいつだな」となりますので、本音で書きづらくなるという問題が生じてしまいます。
当サイトは、税理士を中心とした士業関連の情報を多くの人に知ってもらいたいという想いがありますから、そういった事もあって敢えて顔出しなどはしていません。
それこそ当サイトが「自社への集客を目的としているサイト」であれば、もちろん顔出しもしますが、現状はそういった事は考えていない為、今後もこのまま進めていこうと考えています。
しかし士業の方で、しかも集客を目的としているホームページやブログを作成しようと考えているのなら、デメリットとしては上記くらいしかありませんから、出来る事なら顔写真を掲載したほうが良いと言えるでしょう。
という事で、上記メリット・デメリットから考えられるのは、
- 集客を頑張りたい、他事務所と差別化を図りたいなら「顔写真を掲載する」
- 個人情報が心配だし、あえてWeb集客も期待していないのなら「顔写真を掲載しない」
と言ったところでしょうか。
顔写真を掲載する際の注意点
ここまで読んで、「やっぱりウチの事務所は必要ないな」と考えるのであれば、以下の内容を読む必要はないと思いますが、「顔出ししようと思う」と考えるのなら、以下の注意点について事前によく検討しておくことをお勧めします。
せっかく顔写真を掲載するのですから、考えなしに進めるよりは、戦略的に行った方が良いと言えますよね。
スタッフ全員に無理強いしてはいけない
まずは、「スタッフ全員に顔出しを無理強いしてはいけない」という事。
たまに見かけるのが、所長自身がそういった事に積極的で「事務所全員の顔写真を掲載しなくてはいけない」とスタッフに対し、半ば強要するかのように顔写真を掲載させている事務所があります。
確かにその気持ちも分からなくはありませんが、スタッフの方はそれぞれ家庭や個人的な事情もあり、「どうしても顔出ししたくない」という人もいるかと思います。
そこを無理強いしてしまうと、せっかく優秀なスタッフであったとしても、それが原因で退職してしまう(実際に、某事務所でありました)なんて事にもなりかねませんから、ここは慎重にスタッフ全員と相談すべきだと言えます。
もちろん、所長だけが顔写真を掲載するよりも、スタッフ紹介ページにおいてある程度のスタッフ数が掲載されていたほうが「あぁ、ここの事務所はそれなりの規模なんだな」と思われる可能性もありますから、そこは交渉次第といったところ。
例えば、とある事務所では「顔出しは嫌だけど、似顔絵なら良いですよ」というスタッフさんもいましたし、「出来れば顔出しどころか、本名さえも出したくない」というスタッフさんに対しては、「似顔絵+イニシャル」であればOKという事もありましたので、ここは柔軟に対応すべき点だと言えるでしょう。
写真を撮るなら、必ず「プロ」に依頼する
次が、「写真を撮るなら、必ずプロに依頼する」という事について。
せっかく顔写真を掲載しているのは良いのですが、その写真がピンボケであったり、やけに暗い写真であるという士業事務所をたまに見かけます。
前述したデメリットにもありましたが、こうしたいわゆる「パッとしない写真」というのは、むしろ逆効果となり、「ちょっとここはやめておこう」と依頼者に思わせてしまう事にもなってしまいます。
例えば、以下の画像は同じものですが、色のトーンや明るさが違うだけで、まったく印象が変わってくることが分かるかと思います。
右側は素人が撮影した場合に起こりがちなミスですが、照明の使い方などで、これだけの差が生じてしまいます。
やはり「顔」というのは重要ですから、素人が撮影した写真を掲載するのではなく、出来るだけプロにお願いして写真を撮ってもらった方が効果的となります。
もちろん多少のお金はかかりますが、そこは「投資」と考えて、中途半端にやるよりも徹底的に工夫したほうが、間違いなく集客効果が高まると言えるでしょう。
写真は一枚だけでなく、複数枚あったほうが良い
そして次が、「写真は一枚だけでなく、複数枚あったほうが良い」という事について。
スタッフ紹介ページなどにおいて、とりあえず一人一枚写真を掲載するだけでも十分ですが、出来れば複数枚あったほうが、よりそのスタッフの人となりを多くの人に知ってもらう事が出来ます。
例えば、一枚目は真面目な顔で、二枚目はにっこりした顔で撮影すると「この人は基本的に仕事が出来そうだけど、こんな優しい顔もするんだ」と、より親近感を持ってもらえるようになります。
「魅力とはギャップである」と、ある人が言っていましたが、確かにその通りで、特にお堅い印象の強い士業の方であれば、このギャップがあればあるほどプラスに働く場合があります。
とは言え、あまりふざけ過ぎるのも信頼感を失ってしまいますから、そこはプロの写真家の方などと相談しながら、工夫する必要があると言えます。
身だしなみはとても重要
そして最後が「身だしなみはとても重要」という事について。
昔は「士業と言えばスーツ」というイメージが強かったですが、最近ではスーツを着ず、ラフな格好で顧問先へと訪問する士業の方も増えてきているようです。
しかし稀に、「ラフとだらしなさを勘違いしている人」もいるようで、クライアントから言わせると、「悪い人じゃないんだけど、ちょっと感覚がねぇ・・・」なんて言われている士業の方もいますから注意が必要です。
本人からすれば「親近感を持たれるように」と思っての事かもしれませんが、やはり身だしなみというのは仕事をする上でとても重要で、相手に不快感を与えてしまえば、本人がどういった想いでその恰好をしていようとも、それだけで敬遠される事にもなります。
「自分の仕事に自信があるから、見た目は関係ない」という考え方も良いですが、最低限の身だしなみくらいは考えるべきではないでしょうか。
心理学的に、人間の視線というのはまず相手の顔を見つめ、そのあとに服装などを観察するようになっていますから、できれば写真を撮る際に、着用する服装についても工夫してみては如何でしょうか。
顔写真の撮影、似顔絵を依頼するなら
それでは最後に、「撮影はプロに依頼したほうが良いのは分かった。でも、どこで探したら良いのか分からない」という方のために、出張撮影してくれるプロのカメラマンを探せるサイトや、安く似顔絵の作成をできる方法をお伝えしておきましょう。
出張撮影を依頼できるサイト
まずは、出張撮影を依頼できるサイトから。
世の中にはこうしたサイトが数多くありますが、そのほとんどが「結婚式撮影」や「出産記念撮影」などといった、いわゆる個人向けサービスが主体となっています。
もちろんそうした個人向けサービスを利用しても良いのですが、基本的にビジネス利用の写真と比べると少しイメージが違ってくるという可能性もあります。また、士業のホームページなどに掲載するとなれば、「商用利用」という取り扱いになるため、契約などについても注意しなくてはなりません。
その辺を考えると、「fotowa(フォトワ)」というサービスがおすすめとなります。
このフォトワは、ピクスタという東証マザーズ上場企業が運営しており、基本的には個人向けサービスが主体となっていますが、商用利用向けのサービスも行っていますから、安心して利用できるといえます。
もともとこのピクスタという企業は、サイト上でカメラマンの撮影した写真を売り買いできるサービスからスタートしており、そういった理由から登録しているカメラマンの数は国内でも有数となっています。
少し金額は高くなりますが、「よく分からないけど、とにかく安心して依頼したい」という人にはお勧めのサイトだといえます。
そしてもう一つ、「ミツモア」というサイトもご紹介しておきます。
このミツモアは、「地域の専門家から見積もりが届く」というコンセプトで運営しており、例えば「大阪市内 カメラマン」で検索し、見積もりを依頼すると最大5名のカメラマンからあなたの元に詳細な見積もりを届けるという仕組みになっています。
サイト自体は運営開始からまだ数年ですので、上記のピクスタよりも登録しているカメラマンは少ないですが、年々利用者の増えているサービスです。
「できれば、少しでも費用を安く抑えたい」という人であれば、このミツモアを利用したほうが良いでしょう。
また逆に、このミツモアは士業の集客にも利用できますから、興味のある方はこちらの記事も参考にしてみて下さい。
以前はどの士業においても「広告規制」というものがあり、集客のために広告などを利用する事が制限されていましたが、近年ではほとんどの士業においてこの広告規制が撤廃され、各士業とも様々な方法で顧客獲得に励んでいます。 しかしそ …
似顔絵のイラストを依頼できるサイト
そして次が、似顔絵のイラストを依頼できるサイトについて。
この似顔絵というのは実は意外と難しく、作家によっては独特な「クセ」を出してくる場合もありますから注意が必要です。
当サイト管理人も以前、知り合いの弁護士から「自分の身内にイラストレーターがいるから、出来れば利用してやってほしい」と頼まれ、付き合いもありますから渋々お願いしたことがありますが、その時かなり後悔した記憶があります。
それぞれの作家ごとにタッチが違いますから、出来れば事前にその作家の作風を確認しておいたほうが良いでしょう。
その点、「ココナラ」というサイトであれば、サイト上でその作家が「私の作風はこんな感じです」と紹介しており、あらかじめその作家の作風を確認することが出来ますから、私のようなミスマッチは起こりにくいと言えます。
ココナラのコンセプトは「サイト上で、スキルを売り買いできるスキルマーケット」という事になっていますが、要はクラウドソーシングと同じことで、サイト上で業務委託を行えるサービスという事です。
同じくクラウドソーシングであれば、日本最大級の規模を誇る「クラウドワークス」に依頼するのも良いですが、こちらは少し金額的に分かりにくい面もありますから、これまで一度でも利用したことがあるという人でないと少し使いづらいかもしれません。
ただし、登録している作家の数でいえば、ココナラよりもクラウドワークスが断然多いですから、「たくさんの中から選びたい」という人にはお勧めです。
まとめ
これまでの士業の営業方法というのは、知人などからの紹介が多く、実際に会ってから交渉することが多かったので、「あえてホームページで顔出ししなくても、面談時に見てもらったら良いじゃないか」と考える人もいるかもしれませんね。
しかし現在、特に若い経営者の方などは「デジタル ネイティブ世代」という、いわゆる「生まれた時から、身の回りにインターネット環境などが充実していた」人たちが増えてきていますから、士業探しにおいても当り前のようにインターネットを利用するようになっています。
その際、顔写真を掲載しているかどうかというのは、こうした若手経営者にとっては重要な判断基準となってきています。
また、新型ウイルス感染症対策においても、今後は「出来るだけ人と面会したくない」という人も増えていくことでしょうから、そういった意味でもホームページやブログというのは重要なツールとなっていくでしょう。