副業のパターンと、それぞれのメリット・デメリット

2017年頃から「副業解禁」という言葉があちこちで聞かれるようになり、現在、副業を始めようかと検討している人も多い事でしょう。

「本業との相乗効果」「収入が上がる」などなど、良い事ばかりに思えますが、いざ始めようとすると考えなくてはいけない事がたくさんあります。

その一つが、「どのような事業(勤務)形態にするか?」という事。

具体的に言うと、本業は会社員で副業は個人事業主であったり、また、単純に二つの会社両方で正社員として雇用されるなど、そのパターンは様々です。

この記事では、副業を始めるにおいて「どのようなパターンがあるか?」また、それぞれの「メリット・デメリット」などについてお伝えします。

目次

副業のパターン

それでは早速、副業のパターンについてご紹介します。

「本業:会社員、副業:会社員」のパターン

まずは、本業が会社員で、副業も会社員というパターン。

簡単に言うと、「複業」であり、ダブルワークという事になります。

このパターンとしては、例えば本業の勤務が月曜から金曜となっていて、休日である土日に副業の会社に勤務する事が多いようです。またこれ以外にも、本業の終業後に副業場所で勤務するという形態もあります。

ただし厳密に言うと、勤務時間の関係上、上記の方法ですと副業はアルバイト扱いとなる可能性が出てくるため、注意が必要となります。

ですから、どちらも正社員として働くなら、本業の勤務日数が週3日程度、副業の勤務日数も週2、3日である必要があります。

「本業:会社員、副業:アルバイト」のパターン

次が、本業が会社員で、副業がアルバイトのパターン。

こちらは先ほど説明した通り、本業の業務が終わった後や、休日などに働くダブルワークという事になります。現在の副業の形としては、このパターンもしくは上記の「正社員+正社員」を選択している人が一番多いかもしれません。

正確な数字は定かではありませんが、2019年現在において、この「複業」を選択している人は、日本国内に約700万人いると言われています(ランサーズ調査)。

「本業:会社員、副業:個人事業主」のパターン

次が、本業が会社員で、副業が個人事業主のパターン。

個人事業主と言っても規模や業務内容は様々で、月に1~2万円程度の「お小遣い稼ぎ」を目的にしている人から、本業の年収と同じくらい稼ぐ人までいます。

アフィリエイトやせどり、中には不動産投資で稼ぐ人もいるようです。

「本業:会社員、副業:会社社長」のパターン

そして次が、本業が会社員で、副業が会社社長のパターン。

このタイプに多いのが、副業で始めた個人事業が上手くいき、税務上の関係からその事業を法人化させたという人。もちろん、事業開始時点から法人でスタートさせる場合もありますが、現実的には少数派でしょう。

会社社長と言っても、規模が特別大きい訳ではなく、法人という箱を作り、そこから給与をもらっているというイメージでしょうか。

最近流行している「不動産賃貸業」、いわゆる「サラリーマン大家さん」にこのタイプが多いようです。

「本業:フリーランス、副業:フリーランス」のパターン

そして最後が、本業がフリーランスで、副業もフリーランスというパターン。

要は、個人事業主が複数の事業を行っているという事。

厳密に言えば副業ではありませんが、こうしたパターンがある事を知っておくことで、将来的に「自分はどうなりたいのか?」と考えた時、参考になる事もあります。

各パターンごとの「メリット・デメリット」

それでは以上を踏まえて、各パターンごとのメリットデメリットについて見ていきましょう。

「会社員+会社員」

メリット
  1. 本業では出会えないタイプの人々と交流できる
  2. 副業の仕事が本業に活かせることも
  3. スキルや意識の向上に繋がる
  4. 経済的安定に繋がる
デメリット
  1. 休日が減り、体力的・精神的に疲弊する
  2. 本業と副業間の移動中、事故が起きた場合の労災認定が難しい
  3. 勤務時間によっては、副業の会社においても「雇用保険」「社会保険」の加入が必要
  4. 本業の会社が週休二日制の場合、副業において正社員になるのは難しい

「会社員+アルバイト」

メリット
  1. 時間を気にせず、働く時間を選択しやすい
  2. 経済的安定に繋がる
デメリット
  1. 休日にしか働く事ができず、本業が忙しい場合は副業に時間を割けない
  2. 本業と副業間の移動中、事故が起きた場合は「会社員+会社員」のパターンより、更に労災認定が難しい
  3. 副業における「雇用保険」「社会保険等」の加入は、ほぼ不可能
  4. 多くの企業でアルバイトをすると、確定申告の整理が面倒になる

基本的に、「会社員+会社員」と「会社員+アルバイト」のメリット・デメリットはあまり変わりませんが、保険の取り扱いと確定申告の取り扱いで多少違いがあります。

例えば確定申告で言うと「会社員+会社員」の場合は、ある程度双方の会社で源泉徴収はしてくれるでしょうから、あまり確定申告で悩むこともないと思います(ちなみに、年末調整はメインとなる会社のみでしか行えません)。

しかし「会社員+アルバイト」では、ほとんどの場合、振り込まれたアルバイト料を自分で計算し、それを取りまとめて確定申告するという手間が発生します。

また、雇用保険や社会保険等に関しても、給与額やアルバイト額によっては副業先でも保険の適用になる場合がありますから、この辺はよく双方の会社と相談しなくてはいけません。

本業と副業の事業所間の移動における事故については、現在、労災認定がかなり難しいですが、これに関しては政府も対応を急いでいるところです。

「会社員+個人事業主」

メリット
  1. 副業の内容によっては、本業の会社の利益に貢献できることもある
  2. やり方次第では、独立開業に繋げることも出来る
  3. 経営者の視点で物事を見れるようになる
  4. 大きく狙うなら、本業より収入を得る事も可能
  5. 小さく狙うなら、定期的な小遣い稼ぎになる
デメリット
  1. 副業の規模にもよるが、確定申告はほぼ必須
  2. 確定申告をする場合、所得の種類はほぼ「雑所得」となる(例外あり)
  3. 副業における労災保険の加入は難しい
  4. 副業が忙しくなると、本業に支障をきたす恐れも
  5. 事業内容によっては、事前にある程度の「初期投資」が必要になる場合がある

上記のメリットを見ると、やり方次第では大きく飛躍できそうな「会社員+個人事業主」の副業ですが、その分デメリットも目立ちます。

例えば、デメリット2の「確定申告する場合、所得の種類はほぼ「雑所得」となる」とありますが、インターネット上を見ると「会社員の副業は、事業所得で申告すべし」などといった記事を多く見かける事があります。

しかし現実を言うと、会社員が副業で申告する場合、「事業所得」「雑所得」のいずれかを選択する事になります(「不動産所得」の場合もあります)が、そのほとんどが「雑所得」での申告となるでしょう。

確かに、事業所得で申告したほうが税制面のメリットが多いのは事実ですが、仮に税務調査があったとすれば、税務署から否認される確率が高いと言えます。

この「事業所得」「雑所得」について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。

 

 

ですから、上記のような「会社員の副業は、事業所得で申告すべし」のような記事を書いている人は、実態を把握しておらず無責任だといえますから、あまり信用してはいけません。

もちろん、「会社員+個人事業主」で、事業所得として認められている場合もありますから、「全てが雑所得」とはなりませんが、そこは税理士などのプロとよく相談する事をお勧めします。

「会社員+会社社長」

メリット
  1. 事業として経費で落とせる項目が多い
  2. 家族への給料が支給できる
  3. 個人事業に比べ、借り入れがしやすい
  4. 個人としての確定申告は簡単
デメリット
  1. ほぼ、税理士に法人の決算申告を依頼することになる
  2. 上記税理士費用など、様々な固定費がかかる
  3. 配偶者を役員にすると、本業の扶養から外される
  4. 税務調査対応など、本業の仕事に支障が出やすい
  5. 借り入れはしやすいが、個人で保証しなければならず、精神的にも負担

前述した通り、このパターンは不動産投資を始めた、いわゆる「サラリーマン大家さん」が、事業規模拡大とともに個人事業から法人化したケースが多いかと思います。

不動産投資となると、多額の借り入れをする場合がほとんどですから、個人より法人にしたほうが何かと都合が良いといえます。

更に言うと、消費税の課税繰り延べ、所得税の節税という観点から、税理士から「法人化しませんか?」という提案をうけることが多く、その結果、法人化したという人が多いのではないでしょうか。

こうした「会社員+会社社長」というパターンの場合、個人の確定申告としては、本業の会社の年末調整と自分の会社の役員報酬をもとにして申告するだけですから、こちらはそんなに難しくありません。

この他にも「経費を落としやすい」「家族に給与を支払える」など、良い事ばかりのように思えますが、その分デメリットも多くあります。

例えば、個人事業であれば赤字となると税金は発生しませんが、法人の場合は赤字であっても「均等割り」という、最低限(数万円)の税額は発生します

また、法人の申告は素人が簡単に出来るようなものではありませんので、ほぼ確実に税理士に依頼する事となります。

法人であれば、その形態は事業として認められるので、個人のように「事業所得か雑所得か」で悩む必要はありませんが、その分事務処理などの負担も大きくなることを理解しなくてはいけません。

税理士が「節税になりますよ」などと言ってきても、法人を設立するかどうかは冷静に考えなくてはいけません。この辺について詳しくは、こちらの記事も参考にしてみて下さい。

 

「フリーランス+フリーランス」

基本的に、「フリーランス+フリーランス」というパターンは、個人事業主が複数の事業を営むだけなので、「会社員+個人事業主」のメリット・デメリットとあまり変わりません。

ただし、運営上の注意点は幾つかありますから、それについてご説明しておこうと思います。

フリーランス複業の注意点
  1. 売上げや経費が混ざってしまい、どちらで利益を上げているのか把握しづらい
  2. 既存事業が「輸出事業」、新規事業が国内事業の場合、消費税の取り扱いに注意しなければいけない
  3. サブの事業が「雑所得」として認定される事がある

まず、一番ありがちなのが1の「売上・経費が混入する」という事でしょう。

メインの事業が軌道に乗り、「よし、違う事業もやってみよう」と意気込むのは良いのですが、サブの事業でかかった経費をメインの事業に入れてしまえば、どちらでどれだけ利益を出しているのかが把握できなくなります。

こうなると、仮にサブの事業が大赤字だとしても実態が把握できていない為、なかなか撤退することができず、何のために新規事業を始めたのか分からなくなってしまいます。

また、現在輸出事業をメインで行っている場合は、国内で支払った経費にかかる消費税の還付を受けていると思います。しかし、新たに国内事業を始める事により、この消費税還付を受けられなくなる可能性がありますから、必ず税理士などのプロに相談する事をお勧めします。

そして最後に、「サブの事業が「雑所得」として認定される事がある」という事ですが、本人からすれば「複数の事業を行っている」という認識かもしれませんが、税務署からすると、サブの事業は「事業性が低い」と捉える可能性があります。

実際そのような理由から、サブの事業を「雑所得」とされた事例もあるようですので、まずは「そういった可能性もあるんだな」という事を理解しておきましょう。

まとめ

一口に「副業」と言っても、様々なパターンがあり、それぞれメリット・デメリットがある事をご理解頂けたかと思います。

それぞれのパターンにおける「申告時の注意点」「税理士の探し方」などについては、それぞれ下記の記事を参考にしてみて下さい。

 

副業の確定申告については、こちら。

税理士の探し方についてはこちら。

 

「最初は個人事業で始めて、大きくなったら独立しよう」とか、「いやいや、事業が大きくなったら法人化するけど、本業は続けよう」など、人それぞれ将来の計画も異なるでしょう。

どれが正解で、どれが不正解という事はありません。まずは、自分に合った方法から挑戦してみては如何でしょうか?