
日本国内には様々な士業が存在し、それぞれ役割が異なります。
一般の方であれば弁護士や税理士などに対しては、「訴訟を代理する人だな」とか「税金の専門家だな」などとすぐにイメージできるかもしれませんが、司法書士となると「何をしている人たちなの?」と疑問に思う人もいるかもしれませんね。
確かに司法書士は弁護士や税理士などと比べ、一般の人たちと接触する機会が少ないため、世間的にはマイナーな士業と言えるかもしれません。
司法書士の独占業務は様々ありますが、そのメインとなるのは「登記や供託の代理」となっており、要は商業登記や不動産登記を行う場合に、我々一般人に代わって申請してくれるという業務内容となっています。
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ですから、大抵の方であれば「不動産を購入する場合にお世話になる方達」という事になる訳ですね。
不動産の購入というのは、人生の中でそれほど頻繁に発生するわけではありませんから、あまり司法書士を探すことも少ないかもしれませんが、そうは言っても全くのゼロという訳でもありません。
そこでこの記事では、司法書士を探す方法やその選び方のコツなどについてお伝えしようと思いますので、現在司法書士を探している人に参考にして頂ければと思います。
目次
実は、司法書士を探すのは結構難しい
まず最初にお伝えしておきたいこととして、「実は、司法書士を探すのは結構難しい」という現実があります。
最近では税理士や弁護士をサイトなどで紹介するサービスが増えていますが、司法書士を紹介するサイトはほとんど無いですし、何よりも、そもそも司法書士というのは、数ある士業の中でも登録者数が極めて少ないというのが一番の理由かもしれません。
以下は、士業の登録者数を表にしたものですが、例えば税理士と司法書士を比べるとその差約4倍近くにもなりますから、いかに司法書士が少ないかが分かりますよね。
士業名 | 登録者数(各年3月時点) |
---|---|
税理士 | 78,795人(2020年) |
弁護士 | 42,200人(2020年) |
司法書士 | 22,724人(2020年) |
社会保険労務士 | 42,537人(2019年9月) |
行政書士 | 48,639人(2020年) |
※社労士だけは基準日が異なります。
ですからそもそも司法書士を探すのは難しいという事になりますし、更にそこから優秀な司法書士を探すとなれば、かなりハードルが高くなるという事になります。
また、登録者における「女性比率」でいうと、司法書士は他士業よりも更に低くなる傾向があります。
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司法書士を探す方法と注意点
それでは次に、司法書士を探す具体的な方法についてお伝えしようと思いますが、それぞれ一長一短ありますから、注意点についても併せてお伝えしようと思います。
不動産会社に依頼する
まずは「不動産会社に依頼する」という方法。
会社などを経営しておらず、不動産の購入時に登記を依頼したいだけという人であれば、この方法が一番簡単な方法かもしれません。
例えば、新築のマンションなどを購入するとなれば、不動産会社が主催する説明会などで、そこの不動産会社と提携している司法書士が待機しており、様々な手続きと共に登記手続きも完了できるようになっています。
また、大規模な分譲住宅地などの購入においても、大抵は不動産会社お抱えの司法書士がいますから、こうした場合もあまり心配する必要はないのかもしれません。
ただし、中古物件などを購入する場合は、自分で探す必要が発生する場合もありますから、それが難しいとなれば仲介に入っている不動産会社に「司法書士を探してもらえますか?」と尋ねれば、大抵は提携先の司法書士を紹介してくれるかと思います。
しかし注意点として、その不動産会社の質というか規模によっては、ちょっと怪しげな司法書士を紹介される場合もありますから、少し不安だなと感じるようであれば、他の方法を選択したほうが良いかもしれません。
ポイント
- 大抵の不動産会社は、司法書士事務所と提携している。
- 新築マンションなどを購入する場合は、自分で司法書士を探す必要がないことがほとんど。
- 中古住宅を購入する際は、仲介の不動産会社に依頼してみよう。
- ただし、稀に怪しげな司法書士を紹介されることもあるので、注意が必要。
銀行などの金融機関に依頼する
次が「銀行などの金融機関に依頼する」という方法。
司法書士を不動産会社に紹介してもらおうと考えたけど、「ここの不動産会社に頼むのはちょっとな・・・」と思った方は、取引のある銀行に「司法書士さん紹介してくれませんか?」とお願いすれば、大抵はその銀行と付き合いのある司法書士を紹介してくれると思います。
銀行と付き合いのある司法書士は、古くからその地域で実績のある司法書士という事が多く、恐らく大抵の場合は外れくじを引くことは少ないでしょう。
銀行側からしても、おかしな司法書士と付き合っていれば対外的なイメージが低下するという懸念がありますから、その辺は結構厳しくチョイスしていると思います。
一般の方が不動産を購入するのであれば、そのほとんどが住宅ローンを利用するはずですから、「抵当権の設定登記」が必要となります。そこで、融資申し込みの際に銀行担当者に対して「司法書士さんを紹介してほしい」とお願いすれば、大抵はちゃんとした司法書士を紹介してくれるはずです。
ただし、金融機関によっては稀に「対して能力も高くない司法書士事務所なのに、付き合いが長いからという理由だけで、いつまでもその事務所を使い続けている」という場合もありますから注意が必要です。
誤解を恐れずに言うと、こうした傾向は「信用金庫」や「信用組合」に多い傾向があり(地銀も稀にある)、もちろん地域性によっても変わってきますが、こうした金融機関に依頼する場合は少し注意したほうが良いかもしれません。
ポイント
- 不動産会社に依頼するのを躊躇するなら、銀行に頼んでみる。
- 大抵の場合、その地域で実績のある司法書士を依頼してもらえる。
- ただし、信用金庫や信用組合に依頼する場合は、少し注意が必要。
税理士事務所に依頼する
そして次が、「税理士事務所に依頼する」という方法について。
これは会社経営者などには向いている方法だと言えますが、一般の方であればそもそも税理士との付き合いも少ないでしょうから、あまり現実的な選択肢ではないのかもしれません。
しかし税理士に司法書士を紹介してもらうというのは、かなり効果的な方法であり、恐らくその地域でも有能な方と出会える可能性が高いと言えるでしょう。
大抵どこの税理士事務所も司法書士事務所と提携していることが多いですから、特に商業登記を依頼する場合には、この方法が一番効率的だと言えます。
ただし、規模の小さい税理士事務所であったり若手の税理士の場合であれば、そもそも司法書士と付き合いがないという事もあり得ますから、税理士事務所に依頼するとなれば、それなりの規模の税理士事務所を選択したほうが良いでしょう。
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ポイント
- 商業登記を依頼する場合には最良の方法。
- もちろん、不動産登記においても利用したい選択肢。
- ただし、ある程度の規模の税理士事務所であることが前提。
ネットで検索する
そして最後が「ネットで検索する」という方法ですが、当サイトとしてはこの方法はあまりお勧めしていません。
というのも、大抵の場合ネット検索をするとなれば「地域名 司法書士」などと検索する事になると思いますが、そこで検索上位となる事務所というのは、SEO対策などをしているから上位表示されているだけで、実力があるから上位表示されているという訳ではないからなのです。
つまり「広告にお金をかけている」というだけの事という訳ですね。
ですから「上位表示されているから優秀な司法書士なんだろうな」と期待しても、場合によっては「何なんだ、ここの事務所は」と期待外れに終わる可能性があります。
実際、とある地域で上位表示される司法書士事務所に、当サイト管理人は何度か依頼したことがありますが、担当者の入れ替わりが激しかったり、資格を取りたてで実務もよく分かっていない司法書士を担当にされたりと、まぁ散々な想いをさせられました。
もちろん、全ての上位表示されている司法書士事務所がこれと同じだとは言いませんが、優秀な司法書士に依頼したいと考えているのならば、他の方法を選択したほうが良いでしょう。
ポイント
- この方法は一番お勧めしない方法。
- 出来る事なら、他の方法で探した方が良い。
- 他の方法が選択できない場合の、最後の選択肢と考える。
司法書士事務所を選ぶ際のコツ
それでは次に、それぞれの方法で司法書士を紹介してもらった上で、実際にそこの事務所に依頼するかどうかを決める際のコツについてもお伝えしておきましょう。
現実的には以下の手法を試すことが出来ないかもしれませんが、ある程度の指標にはなると思います。
司法書士事務所に行って、補助者とも面談する
まずは、「司法書士事務所に訪問し、その補助者とも面談する」という事について。
個人的には、可能であればこれは是非やって頂きたい内容と言えます。
というのも、実際に法務局へ申請するのは司法書士となるのですが、書類を作成する段階においては、そのほとんどが資格を有していない補助者が行う事になるからです。
「資格がない?だったら別に面談する必要も無いんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、実は司法書士事務所の実力というのは、この補助者の実力にかかっていると言っても過言ではないからなのです。
これは、司法書士の方であれば特に納得する部分かと思います。実際、勤務歴が長く実力もある補助者の方などは、所長の司法書士からも意見を求められることも多いですし、その人が休暇を取っただけで、事務所内が回らなくなるなんて事もあるようです。
当サイト管理人も、とある若手の司法書士に登記について尋ねるために連絡したところ、「ちょっと待ってくださいね」と電話を保留にされ、結局、古株の補助者の方と話すことになったという事が何度もあります。
これは弁護士事務所でもそうなのですが、実は法律系のバックオフィス(事務局など)というのは、その事務所の実力を測るうえでかなり重要視すべき部分です。ですから、司法書士事務所に訪問する機会があるのであれば、そこの補助者の方がどの程度の実力なのかを知ることで、ひいてはその事務所全体の実力を知る事となる訳です。
しっかりとした見積書を作れるか確認する
そして次が、「しっかりとした見積書を作れるか確認する」という事について。
商業登記の場合はそうでもありませんが、不動産登記の場合などはその不動産の額によって「登録免許税」の額が高額となる場合があり、事前にしっかりとした見積書が提示されないと、後で依頼者側がお金の工面で苦労する可能性もあります。
通常、司法書士に不動産登記を依頼するとなれば、司法書士への報酬と登録免許税を合算した見積書を提示してくれるかと思いますが、中にはこれをいい加減にする司法書士もいるため、登記の当日になって右往左往するなんて事もまれにあります(実際、当サイト管理人は経験しています)。
もちろん、依頼者側としても事前に登録免許税について調べておく必要はあるかと思いますが、専門家に依頼するという事は、そうした事も含めて依頼するわけですから、この辺はきちんと行ってもらいたいと考えますよね。
また、こうした事をしっかりと出来ないという事は、仕事自体もズボラである可能性が高いですから、単純に見えて結構重要視すべき点だと言えるでしょう。
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やたらと「捨印」を強要しないか確認する
そして最後が、「やたらと捨印を強要しないかを確認する」という事について。
捨印とは、仮に申請時においてその書類にミスが発見された場合、その部分を修正し、捨印の横に「〇字抹消、〇字挿入」などと記載する事で、わざわざ書類を最初から作り直す必要がなくなるという方法です。
捨印を事前に押しておくことにより、司法書士とクライアントが何度も会う必要がなくなりますから便利と言えば便利なのですが、この捨印というのは、実は考えようによってはとても怖い手法なのです。
というのも、例えばAさんからBさんへ不動産を売却するという登記があったとしましょう。そのまま登記をすれば、所有権はBさんへと渡るはずですが、この捨印を悪用すれば、全く関係のないCさんへ所有権を移転させることだって可能になるという事ですよね。
これはあくまで極論ではありますが、司法書士に言われるがまま捨印を何か所も押していると、思いもよらない事態となる場合もあるという事です。
もちろん、ほとんどの司法書士はそのような事はしませんが、あまりにも捨印を強要する司法書士であれば「ズボラなのかな?」とか、「書類の内容に自信がないのかな?」と思われても仕方ないと言えます。
実際、よほどの事が無ければ捨印などは利用する事はありませんし、当サイト管理人の経験上から言っても、優秀な司法書士であれば「あれもこれも」と捨印を要求する事は少なかったように思います(もちろん、書類の内容によっても異なりますが)。
ですから、ある程度の捨印は仕方ないにしても、全ての書類に大量の捨印を求めるような司法書士であれば「ちょっと大丈夫?」と考えて丁度いいくらいかもしれません。
まとめ
以上をまとめると、一般の方が不動産登記において司法書士を探すならば「不動産会社」か「銀行」に依頼するのがベストだと言えますし、会社を経営されている方であれば「税理士事務所」に紹介を依頼するのがベストであるという事になります。
インターネットで探すのは、上記の選択が出来ない場合の最後の手段と考えておきましょう。
なお、起業や独立を考えている人が、法人設立で司法書士を探したい場合は、設立後の税務署などへの書類申請などの事を考えれば、司法書士よりもまずは税理士を探しておいた方が得策だと言えます。
初めて法人を設立した人からすれば、「やっと設立登記も終わった。これで少しはゆっくりと出来るかな?」なんて考えるかもしれませんが、実は法人というのは、設立前よりも設立後の方がやるべきことが沢山あるのです。 特に、役所(行政 …
ですから税理士事務所を探したのちに、その税理士事務所から司法書士事務所を紹介してもらうという方法が一番スムーズだと言えるでしょう。
「まずは税理士を探してみたい」という方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。
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