税理士試験は「独学」で合格できるのか?

税理士試験を受けようと考えれば、まず最初に「学校に通うか」「独学で勉強するか」で悩むところでしょう。

実際ブログなどで「独学で税理士試験、合格しました!」なんて報告している人もいるようですから、独学で税理士試験に合格することは不可能ではないといえるようです。

ただ、結論から言うと、

「独学での受験はおススメしない」

という事。

現実的に言えば、独学での税理士試験合格は難しいといえますし、そこにはそれなりの理由もあります。

とは言え、当サイトでは独学全てを否定している訳ではありません。

「結局どっちなの?」と、何だかわかりにくいですよね。

そこでこの記事では、税理士試験が独学で合格しにくい理由や、問題点など、また逆に「この科目なら独学に向いている」といった情報についてお伝えします。

目次

独学合格が難しい理由

まず、現実的なお話として、当サイト管理人がこれまでに出会った税理士の数は100人を超えますが、その内、税理士試験に独学で合格した人は一人もいません。

前述しましたが、確かに独学で税理士試験に合格している人もいるにはいるでしょうが、これが現実ではないでしょうか?

また、税理士試験は年々難易度が上がっています。

もし、あなたが「独学で合格した人を知っている」と言うのであれば、その人が何年前の試験で合格したのかを尋ねてみて下さい。少なくとも、ここ数年で合格した人はいないと思います。

では、何故税理士試験に独学で合格しにくいのかについて見ていきましょう。

理由① 市販の教科書が少ない

書店やAmazonで税理士試験の教科書を検索するとわかりますが、税理士試験の教材は驚くほど少ないです。会計学の簿記論・財務諸表論は結構充実していますが、「税法」の教材はほとんど無いと言っていいでしょう。

仮にあったとしても、その教材を利用しての合格は難しいと言わざるをえません。

これは、私の知り合いの税理士で、「元」某大手専門学校の講師だった方の言葉ですが、

 「税法は、ほぼ毎年改正がありますよね。で、厄介なことに、税理士試験は8月に行われて、ほとんどの法律は4月頃に改正になるんです。ということは、前年の9月から税法の勉強を始めても、4月の改正内容に対応できなければ合格できないんです」

要は、運良く法改正が無ければ、前年のテキストでも対応できるのですが、実際はほとんど不可能に近いという事です。

ですから、市販の教科書を販売している業者は、彼らも営利でやっている以上、採算の合わない教科書販売は行いませんよね。だから、税法テキストの種類が少ないということなのです。

その点、大手の専門学校は、国会の審議入りの時点から法改正への対策を練っていますから、その辺のフォローが迅速であるという利点があるのです。

理由② 税法は出題範囲が広い

次に独学で合格することが難しい理由として、「税法は出題範囲が広い」という問題があります。

税法の特徴として「多くの理論を覚えなくてはならない」という事が挙げられますが、実際にその年に出題される問題は、その内のごく僅かです。全ての理論を完璧にマスターしていれば問題ありませんが、現実的にそれは難しいですよね。

イメージとしては、周りに何も見えない大海原で、あなたはポツンと一人、船の上に浮かんでいる状態です。海図もコンパスも無く、目的地(合格)に辿り着くのは至難の業だと言わざるを得ません。

要は何が言いたいかというと、闇雲に学習しても膨大な時間を必要とするだけで、効率的な学習ができないという事です。

そこへいくと大手の専門学校などでは、あらかじめ出題されるであろう論点を予想し、そこを重点的に押さえた指導をしてくれるので、どちらに船を漕ぎだせば良いのかがわかります。

理由③ モチベーションが維持できない

あなた自身、かなりの集中力と自制心を持ち合わせているなら、独学でも合格できるかもしれませんが、ほとんどの方がそうではないのが現実ではないでしょうか?

税理士試験は長丁場となり、最低でも2~3年、長くなると8年くらいかかる事もザラです。そんな長い期間、あなたは合格へ向けて、毎日一人でコツコツと勉強し続けることが出来るでしょうか?

確かに、専門学校へ通うとお金も掛かりますし、通学の時間ももったいなく感じるでしょう。しかし逆に考えれば、「せっかくお金を払ったんだから、ちゃんと元を取ろう」という考えも生まれ、学習の機会も増えると言えます。

また、専門学校では定期的に「全国模試」を開催しています。

それを受験することにより、「自分は今、合格圏内なのか?」「どこが弱いのか?」という事が理解できるので、効率的に勉強を進める事が可能となります。

ただし、専門学校のデメリットとして、仲間が出来てダラダラとしてしまうという事もあるので、そこは個人の性格によるといったところでしょうか。

独学で合格可能な科目もある

全般的に、税理士試験が独学での合格が難しいと言われる一方、独学での合格可能な科目もあるようです。

多くの税理士からインタビューした結果、

「簿記論、財務諸表論は、独学での合格が可能」

との事。

では、その理由について見ていきましょう。

理由① 市販の教科書が充実している

税法とは反対に、簿記論と財務諸表論は市販の教科書がかなり充実しています。その理由としては、簿記論・財務諸表論共に、「改正がほとんど無い」からと言えるでしょう。

この二つに関しては、世界的にも標準の考え方なので、むしろ改編、改正があると経済に混乱が生じます。こうしたこともあり、各出版社は、簿記論・財務諸表論のテキストは充実させることが可能なようです。

税理士試験のテキストで有名な出版社と言えば、TAC出版オンライン書籍サイト【CyberBookStore】かもしれません。

実際、簿記論・財務諸表論を独学で合格した人達は、TAC出版のテキストを使用している事が多いようです。

その他の専門学校もテキストを販売していますが、流通経路が限られている事や、金額が高額だという難点があるようです。

この場合、「ヤフオク!」や「メルカリ」で安く売られている事があるので、こうしたオークションサイトで入手するのも一つです。

「税理士試験を受験しようと思っていたけど、難しいからやっぱりやめた」

なんて人もいますから、中には新品同様で出品されている事があります。

ただ、人気の商品はすぐに売れてしまうという難点があるので、定期的に出品状況を確認しなくてはいけません。

そうした手間を省くため、「オークファン」というサイトに登録しておけば、アナタの狙っている商品がヤフオク!に出品された時点で、メールで通知してくれるのでとても便利です。少しでもお金をかけずに税理士試験に合格するには、もってこいだと言えるでしょう。

簿記論・財務諸表論の独学合格を目指したいと考えている方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。

 

理由② 簿記試験の延長で学べる

次に、簿記論・財務諸表論が独学で合格可能な理由として、簿記検定試験の延長で学べるからという事が挙げられます。

税理士試験を受ける際、受験資格が必要となります。

受験生の中には、この受験資格を得るため、全経上級や日商簿記1級に合格してから税理士試験へと臨む場合もあります。

特に、日商簿記1級は難易度が高く、税理士試験合格者でも合格できない事もあり、力試しとしては最適です。

また、日商簿記1級に合格すると、簿記論・財務諸表論の受験生の中で、上位30%に入っていると言われ、更には、これに税理士試験の過去問と理論暗記をプラスするだけで、合格することに有利に働くと言われています。

実際、日商簿記1級に合格後、半年間勉強しただけで簿記論・財務諸表論のダブル合格出来た受験生もいる事から、効率な勉強方法だと言えるでしょう。

 

まとめ

以上から、結論としては、

「簿記論・財務諸表論は独学で合格可能」

「税法は、専門学校に通う」

という方法が、金銭的にも、効率的にも最もベストな方法だと言えるでしょう。

ただし、個人の性格にもよるので、「自分に向いている方法は何か?」と慎重に考える必要があります。

とは言っても、考え過ぎても始まらないので、まずは日商簿記の勉強から始めてみては如何でしょうか?

【参考記事】