士業が異業種交流会に参加するメリット・デメリット

現在、士業の顧客獲得方法としては様々な方法があると思いますが、やはりいつの時代も「紹介」が、一番スタンダードな方法ではないでしょうか?

依頼者からすると、信頼を寄せる人から紹介されれば安心して依頼できるでしょうし、士業側からしても「紹介」は成約に繋がりやすいことから、一番確実な営業ツールだと言えます。

しかし、この紹介は頻繁に発生するわけではなく、特に独立開業直後などは、ほとんどゼロに等しいと言えるでしょう。

そこで多くの人は、何とか紹介を獲得するためにあの手この手と努力するわけですが、その手段の一つとして「異業種交流会への参加」を検討する人もいるかもしれませんね。

現在、全国あちこちで、この「異業種交流会」が開催されていますが、ただ正直に言って、営業のツールとして実際に役立つのかは疑問が残るところです。

そこでこの記事では、士業の方が異業種交流会に参加する事の「メリット・デメリット」について少し考えてみたいと思います。

目次

メジャーな異業種交流会

現在、インターネットを検索すると、実に様々な異業種交流会を見つける事が出来ます。

しかしまずは、昔からあるメジャーな異業種交流会についてから考えていきましょう。

メジャーな異業種交流会
  1. JC(日本青年会議所)
  2. ライオンズクラブ
  3. ロータリークラブ

上記は、厳密に言うと異業種交流会ではありませんが、多くの人が真っ先に思いつく団体だと言えるでしょう。

どの団体も、運営目的は「社会奉仕」を理念として掲げていて、営利目的を排除する方針としています。実際の活動内容としても、地域社会に対するボランティアが中心となっています。

しかしながら、こうした理念があるにもかかわらず、営業活動を目的にして入会する人も多い事から、傍から見ると矛盾を感じる事もあります。

メジャーな異業種交流会の矛盾

このサイトをご覧になっている方の中には、クライアントから「〇〇(上記のいずれか)の会員になってほしい」と依頼されたことがある人もいるかもしれませんね。

本来の目的は社会奉仕ですから、自発的な参加がモットーなはずです。

しかし各団体とも、運営するには会員の確保が必要となりますから、会員を増やすために既存会員の経営者などが、自社の顧問税理士や顧問弁護士などを誘っているのが現状です。

士業側からしても、クライアントからのお願いは無碍にも出来ませんので、仕方なく入会する場合もあるでしょう。

そういった理由で入会した人の場合、そこでの活動は、「営業活動の一環」という意識が強いかもしれません。

実際、数年前にとある司法書士が、ロータリークラブの会費が必要経費になるかどうかで国税庁と争いましたが、これは否認されました。

確かに、この司法書士側からすれば「営業活動の一環」と捉えているでしょうし、この裁決には賛否両論ありましたが、原則的に言えば、こうした団体の活動目的は「社会奉仕」であるため、個人的な活動と捉えられても仕方がありません。

「本音と建て前」において、非常に曖昧な部分があると言えます。

異業種交流会のメリット

上記の社会奉仕団体に限らず、現在、様々な異業種交流会の参加を検討している人からすれば、「実際に顧客獲得につながるのか?」という事が、一番気になるところでしょうね。

結論から言えば「本人次第」という面は否定できませんが、異業種交流会に対して「顧客獲得」は期待しない方がいいと言えます。実際これは多くの方が経験していることですから、分かりきったことかもしれませんが・・・。

とは言え、「自分は顧客獲得だけを目的としている訳ではない」という人もいるかと思いますので、ここでは、それ以外に考えられるメリットについてお伝えします。

多くの経営者と出会えることが出来る

こうした交流会の一番のメリットは、多様な経営者と出会えるという事でしょう。

どうしても士業というのは、同業者同士で一緒にいる事が多くなる傾向があります。

それはそれで良いのですが、多様な人と出会う事で、今までになかった知識や考え方を得る事が出来るため、自身のブラッシュアップの為にも有益だと言えます。

また、様々な業種に従事する人の話を聞くことで、ひいては、自身のクライアントにとって役に立つ情報を得る事もあるでしょう。

要は、「自分の考え方に、幅が広がる」という事ですね。

地域社会に貢献できる

全ての異業種交流会でではありませんが、前述した「メジャーな異業種交流会」に参加すると、地域社会へ貢献する事が出来ます。

活動内容としては、街中のゴミ拾い、地域の祭り運営、各種寄贈など様々で、社会奉仕をしたいと考えている人にとっては良い団体だと思います。

顧客紹介に繋がる・・・事もある

回りくどい表現ですが、確かに顧客紹介に繋がる「事も」あります。

これについては、デメリットの部分で詳しくお伝えしますが、全くのゼロという訳ではありません。

ただし、あくまでも「事もある」程度ですから、人によるといったところでしょうか。

異業種交流会のデメリット

以上がメリットですが、これ以外にもメリットはあると言う人もいるかもしれません。ただ、「異業種交流会全般」に対して言えるメリットとしてはこの程度かと思われます。

もちろん参加する会によっては、様々な特典があるのかもしれませんし、「実際に自分は異業種交流会で顧客獲得が出来ている」なんて人もいる事でしょう。

とは言え、そういったメリットを感じている人でも、同時に以下で紹介するようなデメリットを感じている可能性が高いと思われます。

そこで次に、異業種交流会に参加するデメリットについても見ていきましょう。

参加しただけで満足してしまう

まずは、「参加しただけで満足してしまう」こと。

意外かもしれませんが、こういった人、結構多いです。これは、セミナーに参加している人にも多いですね。

異業種交流会に参加すると、多くの人と名刺交換をすることになりますが、中には、有名な人が参加している会もあるので、そういった人と名刺交換し、それだけで「凄い」「良かった」と満足してしまう場合が・・・。

 

たまにいますよね、「名刺コレクター」になっている人。

 

厳しい事を言うようですが、名刺をいくら集めても仕事には繋がりません。

また、いくら名刺を配っても、連絡がある事はほとんど稀と言っていいでしょう。

冷静に考えてみれば分かりますが、あなたは逆の立場で、たった一度名刺交換をした人に、大事なお客様を紹介するでしょうか?相手の人となりが分からないうちは、少し距離を置くはずですよね。

お互いを信頼するためには、何度も顔を合わせて会話をしなくてはいけません。

同じ会に何度も出席し、信頼関係を築くのなら良いですが、一度参加しただけで満足する人が多い事に、本当に驚かされます。

怪しげな人も参加している

余程の事が無い限り、ほとんどの異業種交流会は会員の紹介さえあれば、どんな人でも参加できます。そこで問題となってくるのが「怪しげな人も参加している」という事。

これは、異業種交流会に参加したことのある人なら、経験したことがあるかもしれません。例えば選挙前になると、その立候補者や議員秘書などはこぞって異業種交流会に参加するようになります。

もちろん、立候補者や議員秘書が怪しげかどうかはわかりませんが、仮にそこで名刺交換をすると、まず高い確率でメール攻勢を受ける事に(笑)。

また、怪しげなコンサルタントや、何だかよくわからないNPO法人の代表など(ほとんどのNPO法人は、真面目に運営していますが、稀に怪しい人がいるのも事実です)、とにかくよくわからない人が多く参加しています。

あなたもその会に参加している以上、相手から名刺交換を求められれば、それに応じるしかありません。しかしその後、ある程度の勧誘などがある事は覚悟しておかなくてはいけません。

結局は、多くの人が「営業目的」で参加しているということです。

つまり、仮にその会で紹介を得る事が出来たとしても、相手側からすれば「こっちも紹介したんだから、そっちも紹介してよね」と考えるのは当然で、こちら側も紹介しなくてはならず、その相手が信頼できる人であれば良いのですが、もし怪しげな人だとしたら、あなたは「自分の知り合いやクライアントをその相手に紹介できるだろうか?」という事について少し考えてみる必要があります。

また、「類は友を呼ぶ」という言葉があるように、怪しげな人が紹介する人はやはり怪しげな人である可能性が高いと言えますから、事前にそういった事についても認識しておくべきだと言えるでしょう。

本業に支障が出る

「一度だけでの参加では、営業に繋がらない。よし、本腰を入れて参加をしよう」

と、考える人もいるかもしれません。

本人が、それに喜びを感じているのであれば良いのですが、現実問題として、それが「本業に支障をきたす場合がある」ことを、事前に知っておかなくてはいけません。

例えば、前述したメジャーな会で言うと、それぞれ「運営委員会」が設置されており、その他にも様々な「〇〇委員会」があります。

入会後はそのどれかに参加しなくてはならず、定期的な出席を求められることになってしまい、仮に何かのイベントがあれば、平日だろうが休日だろうがお構いなしで、会場の設営などに駆り出されます。

 

ここで、一度冷静に考えてみて下さい。「アナタの目的は何ですか?」と。

 

社会奉仕が目的であれば良いんです。それは尊い事ですからむしろ頑張って欲しいと思います。しかし、本業を盛り立てる事、つまり、営業が目的であるのならば、本業に支障が出ては本末転倒ではないでしょうか?

その辺については、十分よく考えて行動して頂きたいと思います。

まとめ

結局、この記事を一言でまとめるなら、「参加自体は否定しないが、目的をよく考えたほうが良い」という事になるかと思います。

むかし、当サイト管理人はとある税理士事務所のスタッフに、「先生(所長)が、〇〇の会に頻繁に参加していて、事務所運営が大変です。何とか退会するように説得してもらえないでしょうか?」と、相談されたことがあります。

実際にその所長税理士と話してみると、本人はかなりその活動にのめり込んでいて、事の重大さに全く気が付いていない状態でした。

結局、最終的にはその会を脱退しましたが、これを聞いて「へぇ~、そんな人もいるんだ。でも自分は大丈夫」と思う人もいる事でしょう。

しかし、他人事として聞くと簡単のように思えますが、意外とそういった人ほど周りから「ちょっと危ないな」なんて思われていることもありますから注意が必要です。

あくまでも本業あっての活動であるという事を忘れず、参加するにしても、ほどほどの距離感を保つ事を強くお勧めします。