士業こそ「マーケティング」と「セールス」を混同してはいけない

昔から日本においては、「難関国家資格に合格すれば、それだけで高収入を得られるだろう」などといった考え方が定着していますが、近年ではそうした難関国家資格の代表とされる士業でさえも、資格があるだけでは生活するのもままならなくなっています。

もちろん、それなりの経験やスキルがあれば依頼者(顧客)も増えるかもしれませんが、最近ではそれだけでは足りず、更に「マーケティング」「セールス」のスキルも事業運営において必要不可欠となってきています。

要は、どれほど能力があるとしても、世間に知ってもらわなくては売り上げに繋がらないという事です。

「そんな事、言われなくても分かってるよ」といった声も聞こえてきそうですが、意外と士業の方の中には、こうした「マーケティング」や「セールス」を苦手としている人が多く、更に言うと、マーケティングとセールスを混同している人も多いため、的外れな営業方法を続けているという事に気が付いていないといった人も見受けられます。

これは士業に限ったことではありませんが、この二つの違いを理解しなければ、効率的に売り上げを伸ばすことは出来ません。

そこでこの記事では、マーケティングとセールスの違いや、士業の営業力を向上させる方法などについて考えてみたいと思います。

マーケティングとセールスは全く違う

まず繰り返しになりますが、マーケティングとセールスは全く別物であるという事についてから。

まず、「マーケティング」を直訳するとすれば、これには様々な概念があり、「市場調査」であったり「ブランディング」などと表現する人もいますが、要は自社の商品であったりサービスを世間に知ってもらう事だといえます。

これを「集客」と考えれば簡単ですね。

これに対し「セールス」とはその名の通り「売ること」となりますから、「営業」と読み替えても良いのかもしれません。

つまり、マーケティングによって見込み客を集客し、その集まった人に対して自社のサービスを売る事がセールスとなります。

 

 

いくら良い商品があったとしても、お客さんが集まらなくてはそれを売る事は出来ませんし、仮に集客が出来たとしてもセールスが下手であれば、いつまで経っても売り上げには繋がらないという訳です。

ですからこれを明確に区別していないと、「集客が下手だから売上げが増えない」のか「セールスが下手だから売上げが増えない」のかが分かりませんので、どういった対策を打って良いのかも見えてきません。

集客力を向上させる対策と、営業力を向上させる対策とでは全く異なりますから、ここを混同してしまうと的外れな対策ばかりしてしまう事になります。

マーケティング(集客)は、実はかなり簡単

しかし実は、集客というのはかなり簡単ですから、セールスよりは難しく考える必要はありません。

昔から士業においては様々な集客方法がありますが、代表的なものとしては以下の通り。

士業の従来からある集客方法
  • 知り合いなどからの紹介
  • ハガキ・DM(ダイレクトメール)
  • チラシ・地域情報誌
  • セミナーの開催
  • 保険会社への営業 - 税理士等
  • 金融機関への営業 - 税理士、司法書士等

士業ごとに細かく分ければさらに増えてくると思いますが、概ね上記の方法が従来からある士業の集客手段だと言えます。

どれを利用してもそれなりの成果があり、工夫次第では面白いほど簡単に顧客を集める事も可能ですから、意外と集客を得意としている士業の方も多いようです。

また最近では、インターネット技術の進化により、Web上で集客する方法も増えています。

士業のWeb集客方法
  • 自社HP・ブログによる集客
  • 「スキルシェアサービス」「クラウドソーシング」を利用した集客
  • 依頼者と専門家を繋ぐ「マッチングサービス」を利用した集客

どれもそれなりの費用はかかりますが、ある程度「集客にはお金がかかる」と割り切る事が出来るのであれば、上記のウェブサービスなどを利用することで、かなり集客の手間を省くことができますから、実は集客というのはそれほど難しくないという事が分かるかと思います。

上記サービスについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみて下さい。

 

 

また、税理士向けの記事とはなりますが、ブログ運営に関する事について知りたければ、こちらの記事も参考にしてみて下さい。

 

士業に一番足りないのが「セールス力」

前述したように、最近では集客を簡単に行えるよう手助けをしてくれるサービスが増えていますから、集客に関してはそれほど悩む必要もありません。

しかし「セールス」となると、多くの士業の方が苦手としているというのが実態です。

つまり、せっかくお金をかけてお客さんを集める事が出来たとしても、それがなかなか成約には至らず、結局売上げに繋がらないというのが問題だという事です。

昔であれば、例えば税理士などは紹介などによってやって来たお客さんに対し、「当事務所の顧問料は月額〇万円で、決算料は〇〇万円です。どうしますか?」と、極端な話、これだけでお客さんの方が「よろしくお願いします」と頭を下げる時代もあったようですが、現在はインターネットの普及もあり、「まずは比較してから」という考え方が定着していますので、昔のように簡単にはクロージングとならなくなっています。

逆に言えば、現在業績を伸ばしている士業事務所というのは、この「セールス力」が非常に高い事務所であり、従来のように「事務所で座っているだけで仕事の依頼がある」といった考え方から抜けきれない士業の方が、かなり苦戦しているように思います(実際、当サイト管理人が見る限り、急成長している事務所はセールス力の高い所長が多いと感じます)。

こうした話をすると決まって、「そうは言っても、具体的にセールス力が高い、低いってどういう事?」と言われる事が多いですので、ここで、当サイト管理人がこれまでに出会ってきた士業の方で、「あぁ、この人は本業の実力はあるのに、セールス力の無さで損をしているな」と感じたエピソードを幾つかご紹介しようと思います。

個人情報の関係もありますから、具体的な内容などは多少変更を加えてありますのでご了承ください。

将来、年商100億円となる企業を見抜けなかった税理士の話

まずは、将来、年商100億円となる企業を見抜けなかった税理士のお話から。

以前、当サイト管理人のクライアントの方で、若いながらもかなり優秀な経営者の方がいらっしゃいました。

その方は法人を設立してまだ数年程度でしたが、既に年商2~3億円となっており、今後さらに成長していくのは間違いないと私は感じていたのですが、当時その方が依頼していた税理士が少し頼りないという事もあり、「知り合いの税理士さんを紹介して欲しい」と依頼されていたのです。

そこで私は、「どういった事を税理士に求めますか?」と質問すると、「事業が急成長しているのは良いのですが、全く節税が出来ていないので、そこを具体的に提案してくれる人だと助かります」との返答でしたから、その地域でも節税に強く、しかもそのクライアントさんの業種を熟知している税理士を紹介する事にしました。

その経営者の方と私と税理士の3人で面談したのですが、そこで私が目にしたのは、あまりにもその税理士がセールストークが下手だという事。

例えば、セールスといっても結局は「人間関係の構築」が重要となりますから、最初は雑談をしたり、相手の困りごとを聞いたりして距離を縮めていくのが普通だと思いますよね。

しかしその税理士、いきなり節税の方法について話し始めたので、私もそのクライアントさんも少し引き気味となってしまいました。事前にそのクライアントさんの承諾を得て、その税理士に決算書を3期分渡していたので、税理士としては自分の考えた節税方法を少しでも早く披露したかったのでしょうが、仮にその方法が素晴らしいものだとしても、依頼者側からしたら「何だこの人」となるのは当たり前だと言えます。

また更に言うと、一口に節税といっても様々な種類があり、相手が想定しているものと税理士が提案している内容に乖離があれば、クライアントからしたら「そうじゃないんだよなぁ」と拍子抜けしてしまいますよね。

結局、この税理士はそのクライアントさんと契約することが出来なかったのですが、本人からすると「何がいけなかったのか分からない」と首を傾げるばかりで、自分のセールス力の無さを疑う事もありませんでした。

その後、このクライアントさんは年商100億円を超えており、この税理士からしたら逃した魚は大きかったと未だに後悔しています。

何も提案できなかった弁護士の話

次が、クライアントに対して何も提案できなかった弁護士のお話。

こちらも私のクライアントさんを紹介した時のお話ですが、そのクライアントさんは親族間の相続で悩んでおられ、私に弁護士を紹介して欲しいと依頼してきました。

しかし、そのクライアントさんは地方に住んでおられたので、私はその地域の弁護士の知り合いがいなかったため、当時一緒に仕事をしていた弁護士に「〇〇の地域で相続に強い弁護士さんいませんか?」と尋ねる事に。

するとその方が、「あぁ、それなら私の同期で優秀な人がいますよ」と紹介してくれたので、私はその方と連絡を取ったのですが、確かに電話口の対応などからは安心できそうだと感じたので、その弁護士を私のクライアントさんに紹介する事にしました。

この時もクライアントさんの了承を得て、事前に資料などを弁護士にお伝えしており、当日はタイムチャージ制でその内容に対する弁護士の見解を聞く予定だったのですが、全くと言って良いほど提案が無いといった状況。

詳しい内容は割愛しますが、要は、少しネットで調べれば分かるような事ばかりで、依頼者が「この人にお願いしたい」と思えるような提案は何ひとつなかったのです。

このクライアントさんは会社を数社経営しており、この弁護士が満足の良く対応をしてくれれば法律顧問の依頼も検討していたのですが、結局期待外れに終わってしまったため、何も依頼せずにそのままとなってしまいました。

ここで、弁護士の方の場合、依頼者との面談をタイムチャージ制とする事が多いと思いますが、限られた時間でクライアントとの信頼関係を築くのも難しく、その後の顧問契約へとは中々繋がりにくいといった難点があるかと思います。

確かに弁護士にとってはタイムチャージ制は都合が良いのかもしれませんが、その後のセールスという観点で考えれば、あまり有効な方法ではないと言えるのではないでしょうか。

セールス下手な士業が無意識にやっている事や特徴

ここまで読んで、「自分には関係ない」と考えるのであれば、ここから先は読む必要はないと思います。

ただ、意外と多くの士業の方は、顧客の心が離れてしまうような言動や行動を無意識にしており、それに全く気が付いていない人もいますから注意が必要です。

それではここで、セールス下手な士業の方が無意識にやっている事や特徴などについても見ていきましょう。

雑談が苦手

まずは雑談が苦手という事。

先ほどの税理士の話にも出てきましたが、意外とこの雑談を苦手とする士業の方が多いように感じます。確かに、クライアントと会う際にはビジネスの話をする訳ですから「無駄な話は必要ない」と考えるのかもしれませんが、見込み客、つまり初対面のお客さんを目の前にしていきなり仕事の話に取り掛かるのもどうかと思いますよね。

やはり、お互いの人間性を少しでも知る事で親近感も湧いてきますし、親近感が湧く事で相手の話も聴こうという姿勢になってきます。

ある意味、雑談が苦手という人には真面目な方が多く、本人に悪気が無いのは分かっているのですが、士業というのはサービス業であり、何処まで行っても人間関係が重要となってきます。

もちろん、そうした真面目さを気に入ってくれる人もいるでしょうが、やはりある程度の親近感が持てない限り「この人に依頼したい」とは思いにくいですよね。

無理にとは言いませんが、初対面の人との人間関係を築くためには、ある程度の雑談は必要となるのではないでしょうか(もちろん、例外もありますが)。

いきなりこちら側の提案から入る

次が、いきなりこちら側からの提案から入るという事。

これ、意外と多くの方が無意識にやっています。自分がやられたら嫌なはずなのに、セールスをする側となるとそれを忘れてしまうのかもしれません。

例えばアナタが、洋服を買いにブティックに行ったとしましょう。アナタはパンツを探しているのに、いきなり店員さんが近づいてきて「このジャケット凄く良いでしょう?試着してみませんか?」と言われたらどう思いますか?

普通であれば、「コイツ、全然わかってないな」とか「頼んでも無いのに提案してくるなよ」と思いますよね。

しかし、これは士業でも同じことです。お客さんが、アナタに頼んでもいない提案をされたらどう感じるでしょうか?もちろん「へぇ~、そんな事もあるんだ」となる場合もありますが、多くの場合押し売りされているような気分になる事でしょう。

例えば、仮にクライアントが「節税がしたい」と要望していても、それがどういった種類の節税を求めているかは、ちゃんと本人に尋ねてみないと分かりませんよね。

クライアントとしては「社宅による節税」などを考えていたとしても、税理士がいきなり「保険商品」を勧めてきたら、「この人、何言ってるの?」となるのは間違いないでしょう。

専門家からしたらベストな提案をしているつもりでも、顧客側にとってはベストでない事が往々にしてあるのです。

クライアントの要望(話)を聴かない

次が、クライアントの要望(話)聴かないという事。

これも先ほどの「いきなりこちら側の提案から入る」事と関連しますが、要はどちらも「お客さんは何に困っていて、何を欲しているのか」について考えない人が多いという事です。

例えば司法書士であれば、仮にクライアントが、法人の役員任期満了に伴う役員選任登記を依頼してきたとします。ただ、その会社としては、親族での経営をしているため役員の変更というのは滅多に起きません。

クライアントとしては、数年に一度の役員登記を煩わしいと思っているのですが、法律に詳しいわけではありませんので具体的に「こうして欲しい」と司法書士に伝える事が出来ません。

そこで大抵の司法書士は「今は役員の任期を10年まで伸ばせますから、それでいきましょう」などと提案するのでしょうが、実はクライアントとしては、近い将来に相続が発生しそうであり、その対策についても考えなければいけなかったなんて可能性もあります。

この場合、司法書士としては「メリットもありますが、こんなデメリットもありますよ」と説明する必要があり、もっと言えば、クライアントの話に耳を傾ける事で、もっと違った提案が出来るのかもしれません。

ここで注意していただきたいのが、実は依頼者というのは「何を依頼したいのか分かっていない場合が多い」という事。こういうと「そんな事ないだろ」などという人がいるのですが、実は多くの人は漠然とした要望はあるにしても、それを上手く言葉で表現する事が出来ないというのがほとんどです。

例えば行政書士であれば、「建設業の許可を取得したいんですが」というクライアントが現れたとして、何も聞かずに「じゃあ」という事で申請の準備をしても、実はよくよく話してみると、本当は宅建業の許可の方が必要だったなんて事もあるのかもしれません。

これもじっくりとクライアントと話をしなければ分からない事ですから、「クライアントの真の要望はどこにあるのか?」という事について考えるのであれば、やはりしっかりと相手の話に耳を傾ける必要がありますよね。

専門用語を多用する

次が、専門用語を多用するという事。

これも多くの方が無意識にやっていて、クライアント側からすると「正直、何を言っているのか分からない」と感じる事が多いようです。

例えば、「疎明資料(そめいしりょう)」などと言って、パッと理解できる人がどれだけいるでしょうか?疎明資料を簡単に説明すると、「証拠」であったり「エビデンス」となりますが、一般の方からすれば日常的に使用する言葉ではなく、その言葉の意味を考えるだけでも一苦労です。

もちろん、理解できる人も中にはいますが、ただでさえ難しい話に加えそこに難しい専門用語まで出てくると、多くの人は「聞いてるだけでも疲れてくる」事となります。

限られた時間の中で詳しく説明するのは難しいと言えますが、出来るだけ「誰にでもわかる言葉」で話さないと、「何だかよく分からない」となり、結局依頼へと繋がらなくなります。

料金体系が不明朗

そして最後が、料金体系が不明朗という事。

例えば社労士の場合、助成金の申請代行において「受給額の20%を報酬として頂きます。それ以外は頂戴しません」というのはハッキリしていて分かり易いですよね。

しかし例えば弁護士などは、「着手金〇万円+成功報酬〇〇%+日当+実費」などとホームページなどで掲載している事が多く、依頼者からすると「結局、自分はどれくらい支払わなくてはいけないんだ?」と悩むことに。

もちろん、弁護士側にも言い分はあるのでしょうが、もう少し分かり易い報酬体系にした方が、依頼へのハードルも下がると言えます。

また税理士なども分かりにくい報酬体系を提示していることが多く、ホームページ上では「売上が〇千万円であれば、決算料は〇〇万円」などと記載しているのに、実際に依頼すると「御社の場合、仕訳の数が多いですから、少し報酬額が高くなります」などと言ってくる税理士もいるから驚きです。依頼者側からすると、「そんな事、最初から想定できるだろ」となりますよね。

また、税理士に依頼する場合、通常「顧問料」と「決算料」ばかりが注目されますが、これ以外にも「年末調整」や「予定納税」の費用も発生する可能性があります(事業規模による)。

契約後に、「実はこんな費用もかかります」と言われれば「聞いてないぞ」となりますが、事前に「こうした費用も発生しますよ」と分かり易く説明する事で、依頼者の印象も変わってくると言えるでしょう。

セールス力を上達させるには?

最後に「セールス力を上達させるには?」という事について考えてみたいと思いますが、要は上記でお伝えした「無意識にやっている事」について改め、意識的に逆の事をやってみるという事になります。

つまり、

  • 初対面の人に親近感を持ってもらうため、雑談を少し工夫してみる。
  • いきなりこちらから提案せず、まずは相手の話に耳を傾ける。
  • 相手の本当の困りごとを見つけ、それに対する提案をする。
  • 難しい言葉は出来るだけ使わない。
  • 分かり易い料金体系にする。

ということを意識的にやってみるという事です。

「そんな事で、セールス力が向上するの?」と疑問を持たれるかもしれませんが、往々にしてセールス力の高い方というのは、上記の全てをこなしています。

初めは上手く行かないかもしれませんが、何度か練習する事で、段々と上達していく事でしょう。

もちろん、これ以外の方法もありますが、それら全てを説明すれば本が出来るボリュームとなりますし、最低限、上記の事が出来れば十分だと言えるでしょう。どれもお金のかかる事ではありませんので、一度試してみては如何でしょうか?