「認定経営革新等支援機関」の概要と、依頼する際の注意点

「認定経営革新等支援機関」と聞けば、多くの人が何のことだか分からないかもしれませんが、「この機関を利用すれば、補助金が受けられる」とか「優遇税制が受けられる」と聞けば、何となく分かる人もいるかもしれませんね。

しかし実態として、この制度全体を完全に理解している人は少ないかと思います。

そこでこの記事では、この認定経営革新等支援機関の概要や、それに関する様々な制度、依頼する際の注意点などについて、詳しくご紹介したいと思います。

経営革新とは?

まず、認定経営革新等支援機関の説明の前に、そもそも「経営革新とは何なのか?」についてから。

経営革新とは、政府が中小企業の事業活動を支援する目的として「中小企業経営革新支援法」という法律を制定し、中小企業の新陳代謝を促すために様々な優遇政策を与えるというもの。

簡単に言えば、「本業以外に、新しい事業を展開してイノベーションを起こしなさいよ。そうすれば、色々と優遇が受けられますよ」といったところです。

しかし、この法律は時限立法であったことや、他の様々な中小企業支援の法律と重複する部分があったため、その統合を図る事や制度の拡充を目的に、時代と共に名称を変えながら現在も制度自体は続いています。

現在は「中小企業等経営強化法」に名称を変え、その法律の中の様々な中小企業支援制度の一部として残っています。

中小企業等経営強化法の目的
  1. 経営革新支援
  2. 創業・ベンチャー支援
  3. 新連携支援
  4. 環境整備(経営基盤強化支援など)
  5. 経営力向上支援
  6. 経営革新等支援機関の業務拡大

上記が中小企業等経営強化法の主な目的ですが、このうち経営革新の支援内容は以下の通りとなっています。

経営革新の支援内容
  1. 政府系金融機関(日本政策金融公庫など)による「低利融資制度」
  2. 信用保証の特例
  3. 各種補助金制度
  4. 税制措置(減税、還付など)
  5. 販路開拓コーディネート事業
  6. その他

この中でも「低利融資制度」や「税制措置」などは、ご存知の方も多いかもしれませんね。

簡単に言うと経営革新とは、中小企業等経営強化法の中にある様々な支援策の一部と言ったところです。

認定経営革新等支援機関とは?

それでは次に、「認定経営革新等支援機関」について。

もともとこの経営革新制度は、中小企業が新規事業を行う際、自社でその事業の経営革新計画を策定し、その内容を都道府県などに認定される事で様々な支援を受ける事が出来る制度でした。

しかし、この経営革新計画書には「その事業内容の革新性」や、その事業を行う事による「経常利益の伸び率」などを記載しなくてはならず、どうしても専門的な知識が必要となります。

そこで政府は、こうした中小事業者の悩みを解決するため、これら事業者をサポートする専門家を認定する制度を創設しました。この制度によって国から認定された機関が「認定経営革新等支援機関」という訳です。

また、近年の中小企業支援策は多岐に渡るため、経営革新計画策定のサポートだけでなく、様々な場面においてこの認定経営革新等支援機関が活躍するようになっています。

現在(2020年4月時点)において、この認定経営革新等支援機関は全国で35,537機関あり、その内訳は次のようになっています。

認定経営革新等支援機関の内訳
  • 税理士、税理士法人
  • 公認会計士、監査法人
  • 弁護士、弁護士法人
  • 中小企業診断士
  • 民間コンサルタント、コンサルタント会社
  • 商工会、商工会議所
  • その他

この他にも行政書士や社会保険労務士、銀行などの金融機関も認定されていますが、概ねこの支援機関の大部分が「税理士および税理士法人」で占めており、むしろ税理士業界で認定されていない事務所の方が少ないといえるかもしれません。

ですから、アナタが現在税理士と顧問契約しているなら「認定経営革新等支援機関となっていますか?」と質問すれば、概ね「はい」と返事が返ってくる事でしょう。

なぜ、認定経営革新「等」支援機関なのか

上記の内容から、認定経営革新等支援機関の「認定」の部分の理由はお分かり頂けたかと思いますが、なぜ経営革新「等」となっているかについても考えてみましょう。

前述したように、そもそもこの支援機関制度は、経営革新の策定支援などを目的としていましたが、中小企業等経営強化法の目的の中に「経営革新等支援機関の業務拡大」が盛り込まれているため、経営革新の支援活動以外にも業務を広げる事となりました。

この認定経営革新等支援機関が果たす役割は年々増加しており、むしろ近年では、国の補助事業などで「関与が必須」となっている事業は多岐に渡ります。

ですから、経営革新「等」となる訳ですね。

認定経営革新等支援機関の関与が必須、又は一部条件となる国の事業はこちら。

関与が必要となる事業等
  • 先端設備等導入計画(生産性向上特別措置法)
  • 法人版事業承継税制(経営承継円滑化法)
  • 個人版事業承継税制(経営承継円滑化法)
  • 事業承継・集約・活性化支援資金融資事業
  • 事業承継補助金
  • 経営改善計画策定支援事業
  • 中小企業経営力強化資金融資事業
  • 経営力強化保証制度
  • 企業再建資金(企業再生貸付制度)
  • 商業・サービス業・農林水産業活性化税制
  • 個人事業者の遺留分に関する民法特例(経営承継円滑化法)

例えば、下の図をご覧になってみて下さい。

 

これは現在、経済産業省がテレワークを推進する中小事業者に対して「ある一定の条件を満たした場合、減税が認められますよ」という「中小企業経営強化税制」の申請方法を説明したものです。

様々な機関に対して手続きを行わなくてはいけない事が分かりますが、まず最初に、認定経営革新等支援機関に投資計画案の確認依頼から始めなくてはいけない事が分かります。

要は、これら国の制度に詳しくない事業者がいきなり国に申請するよりも、事前段階でこうした専門家にアドバイスをもらっていたほうが申請もスムーズに進むことを期待しているのでしょう。

これはほんの一例ですが、上記の「認定経営革新等支援機関の関与が必要となる事業等」を見ると、経営革新以外の支援事業として「事業承継」などが目立ちますから、中小企業の顧客が中心である税理士がこの認定経営革新等支援機関として名を連ねるのにも納得できますね。

認定経営革新等支援機関の探し方

前述したように、多くの税理士・税理士法人がこの認定経営革新等支援機関となっていますので、現在顧問税理士がいる事業者であれば、その顧問税理士が支援機関となっている可能性が高いですから、敢えて新たに探す必要もないかもしれません。

しかし、顧問税理士がいない場合や、その他の事情で認定経営革新等支援機関を探したいという人は、中小企業庁の「認定経営革新等支援機関検索システム」で探すことが出来ます。

この検索システムはパソコンのブラウザ上で利用でき、支援機関の事業内容、住所などある程度の事は調べられるのですが、細かい支援実績などまでは記載されていません。

こうした詳細まで調べたい場合は、エクセルデータにはなりますが、同じく中小企業庁HP内にある「経営革新等支援機関認定一覧について」のページから検索する事をお勧めします。

認定経営革新等支援機関に依頼する際の注意点

次に、認定経営革新等支援機関に依頼する際の注意点について。

それぞれ項目ごとに見ていきましょう。

「実績ゼロ」の支援機関も数多くある

ここまでの内容を読んで、「国が認定している機関だし、ほとんどが経営の専門家だから誰に頼んでも心配ないだろう」と考える人もいるかもしれませんが、実はそう簡単な話でもありません。

というのも、前述したように現在日本全国で支援機関が約36,000機関あるとお伝えしましたが、このほとんどの機関が、これら支援活動やクライアントの補助金実績がないからなのです。

要は、認定機関として登録はしているものの、各種支援事業を経験したことがない機関がかなり多いという事。

もちろん、国から支援機関として認定されるためには様々な要件が必要となりますが、これが税理士であればほとんど無条件(税理士として活動していれば、ほぼクリアできる内容)で認定される事になります。

ですから経験値で言えば、むしろ中小企業診断士や民間のコンサルタント会社の方が高いかもしれません。

実際、当サイト管理人が支援機関として認定されている税理士に話を聞くと、そのほとんどが「実績ゼロ」であることが多く、酷い場合には、この制度の趣旨をほとんど理解できていない税理士がいる事に驚かされました。

もちろん、こうした支援事業に積極的に関与して実績を多く残している税理士もいますが、支援機関を探す場合には、この辺について十分注意する必要があります。

経営革新の申請は要注意

次に注意する点として、「経営革新の申請」においては十分慎重にならなければいけないという事。

そもそも前提として、経営革新の申請においては、この認定経営革新等支援機関に依頼する必要はありません。あくまで、「申請においては不安があれば、相談してみてはいかがですか?」というのが前提です。

経営革新という言葉が使われているのに、何だかややこしいですよね。

経営革新において、経営革新計画書を作成しなくてはならない事は前述しましたが、この計画書の中に「その事業内容の革新性」や、その事業を行う事による「利益の伸び率」などを記載しなくてはいけないともお伝えしました。

この利益の伸び率に関しては、税理士などにとってはお得意の分野ですが、「事業内容の革新性」については、いかにして申請先の行政機関にその革新性を認めさせるかが重要となってくるため、一番必要となる能力は「文章力」となってきます。

もちろん、その内容については事業を始める事業者の考えや想いが重要となってきますが、言葉の選び方ひとつで相手への伝わり方もかなり変わってしまいます。

ですからこういった場合に備え、支援機関に事前相談しておけば計画書作成もスムーズに進むという訳ですね。

しかし、こうした支援事業に不慣れな機関だと、「どうすれば認定されやすいか」などといった提案も乏しいものとなってしまいます。

要は、「経営革新の申請において、支援機関の関与は必須じゃありませんけど、事前にコンサルティングを受ければ申請がスムーズになりますよ。ただし、経験不足の支援機関に頼むと、大した提案はうけられませんよ」ということ。

また最近では、こうした認定経営革新等支援機関の中で「経営革新の承認を受ければ、必ず政府系金融機関の低利融資を受けられる」などと宣伝している業者もいるようですが、経営革新が承認されたからと言って、必ずしもこうした「低利融資」や「優遇税制」を受けられるわけではありませんのでご注意ください。

依頼する際のポイント

それでは最後に、認定経営革新等支援機関に依頼する際のポイントについて列挙しておきます。

ポイント
  • これまで、こちらが申請しようとしている補助について、何件くらいの実績があるのか尋ねる。
  • ネットで検索する際は、経営革新等支援機関一覧についてのページで、エクセルデータにて実績などを詳しく調べる。
  • 税理士だからと言って、この支援事業に詳しいわけではない事を事前に理解しておく。
  • 支援機関に依頼すれば、必ず補助制度を利用できるわけではない。
  • 詐欺まがいの支援機関も存在する事に注意

上記の点に注意しながら、自分に合った支援機関を探すようにしましょう。

仮にアナタの顧問税理士が、この認定経営革新等支援機関に登録されているとしても、実績などをちゃんと尋ね、不安が残るようでしたら他の支援機関に依頼したほうが良いでしょう。