
世の中には様々なサービスがありますが、そのサービスによっては「法人会員」と「個人会員」とで特典などを分けている場合があります。
法人会員向けのサービスは、個人向けに比べ「値引き率が良い」「保証期間が長い」など、全般的に優遇された内容となっているのが一般的です。
こうしたサービスを利用すれば経費の節減などが見込めますが、残念な事に個人事業主の場合は、この法人向けサービスを利用できない事が多いようです。
しかし、中には個人事業主でもこうした法人会員に加入できるサービスもありますから、出来る事ならこうしたサービスを上手に活用したいところですね。
そこでこの記事では、個人事業主でも加入できる「法人会員サービス」についてお伝えしようと思います。
目次
法人と個人の違いについて
それではまず、こうした便利なサービスをご紹介する前に、「法人と個人の違いについて」からお話しようと思います。と言ってもそんなに難しい内容ではなく、多くの人が理解されていると思いますので、必要のない方は読み飛ばして頂いて構いません。
まず、法人も個人も「人」という単語がありますから、簡単言えば「人格」があるという事ですね。
個人(人間)においては生まれた段階で人格が形成されますが、法人は生きている人間ではありませんので、「法律」によって人格を与えられたものと言えば分かり易いでしょうか。
要は法人とは、「法律によって権利・義務を与えられた組織」という事です。
法人には様々な種類があり、例えば一般的に「会社」と呼ばれる法人として「株式会社」や「合同会社」などがありますし、公益法人としての「社団法人」や「財団法人」などもよく知られているかもしれません。
株式会社と合同会社の違いなどについては、こちらの記事も参考にしてみて下さい。
法人を設立しようと考えたとき、まず最初に悩むのが「合同会社と株式会社、どっちの形態にした方が良いのかな?」という事かもしれませんね。 法人の形態には、この他にも「合資会社」や「合名会社」といった様々なものがありますが、一 …
これらの全ての法人は法律に基づいて設立されますから、一般的に「法人の方が個人よりも信頼度が高い」と言われるのは、ここに理由があるからだと言えます。
これまで多くの企業は「法人会員サービス」を「法人に限る」とし、個人事業主を対象とする事が少なかったのですが、近年の個人事業主の増加などを考慮し、こうしたサービスを個人事業主へも広げるようになってきています。
事業上、あると便利なサービス
個人事業と法人における活動は、どちらも内容においてそんなに差がありませんから、個人事業主だって法人と変わりないサービスを受けたいところ。
そこで事業を運営する上で、あると便利なサービスを列挙してみます。
- ネット通販などの「ECサービス」
- 事務機器・事務用品購入などの「割引サービス」
- 携帯電話の「法人プラン」
- 銀行の「法人用口座」
上記はどれも、事業を運営する上で欠かせないサービスの代表ですね。
事業運営上、消耗品の購入などはネット通販で済ませる事が多いでしょうし、携帯電話の利用も多くなると思います。こうしたサービスが「法人会員」となる事で、様々な優遇を受けられるわけですから、利用しない手はないと言えるでしょう。
それでは上記のサービスにおいて、個人事業主でも法人会員として加入できるサービスについて見ていきましょう。
ネット通販などの「ECサービス」
まずは、ネット通販などの「ECサービス」から。
文房具などの消耗品からパソコンの周辺機器まで、ネット通販を利用して購入する人も多いと思います。もちろん個人でも利用できますが、こうしたサービスを「法人会員」として利用すれば、「年会費」や「割引率」など、さまざまな点でお得になります。
それでは個人事業主でも法人会員として加入できる代表的な「ECサービス」について見ていきましょう。
Amazonビジネス
まずは何と言ってもおススメが「Amazonビジネス」です。
個人と同じく、基本は「無料」で登録する事ができ、商品や時期にもよりますが、個人よりも数%安い価格で商品を購入する事が可能となります。また、年会費数千円を支払って「Businessプライム」に加入すれば、「無料のお急ぎ便」「累積購入割引」など様々な特典が利用可能となります。
この他、プライベートと事業のアカウントを分ける事で、税務申告においても税務署に対して説明がしやすく、加入するメリットは大いにあると言えるでしょう。
Amazonビジネス | Businessプライム | |
---|---|---|
年会費 | 無料 | 年額4,900円(税込)~ |
法人割引 | 〇 | 〇 |
後払い | 〇 | 〇 |
購入レポート | 〇 | 〇 |
お急ぎ便無料 | ✕ | 〇 |
指定便無料 | ✕ | 〇 |
累積購入割引 | ✕ | 〇 |
上記を見ると、Businessプライムに加入すれば「累積購入割引」という特典もありますから、Amazonで頻繁に買い物をする方であれば、年会費を支払ってでも加入する価値はあるといえますよね。
それでは次に、このAmazonビジネスに登録するために必要となる書類ですが、個人事業主の場合は以下のいずれか1点の書類の提出が必要となります。
- 開業届出書
- 過去2年以内の「確定申告書B」
- 過去2年以内の「所得税青色申告決算書」
- 過去2年以内の「青色申告承認申請書」
※いずれの場合も、税務署の「受付印」が必要。電子申告の場合は、別途「受信通知」が必要。
これを見ると「開業届出書でも可」となっているため、「決算書まで見せたくない」と考えている人にとっても抵抗なく申請できると言えますね。
コストコ
次が主婦の方に人気の「コストコ」です。
コストコは会員制の店舗として有名で、品ぞろえが多く、しかも安いと評判ですよね。特に食材が豊富ですから、飲食店を経営されている方などは上手に利用したいところです。
このコストコ、個人会員と法人会員とに分かれていますが、法人会員になるとお得なサービスがたくさんあります。
比較してみると下の表のようになります。
個人会員 | 法人会員 | |
---|---|---|
年会費 | 年額4,400円(税別) | 年額3,850円(税別) |
家族カード | 1枚 | 1枚 |
追加カード | ✕ | 最大6枚(1枚3,500円) |
配送依頼 | △(店舗のみ) | 〇(FAX、メール可) |
イベントの案内 | ✕ | 〇 |
ボリューム会員営業支援 | ✕ | 〇 |
上記を見ると、年会費において法人会員の方が550円(税別)安くなっていることが分かります。これだけでもかなりお得ですよね。また更に、個人会員には出来ない「追加カード」も作ることが出来ますから、買い物を従業員の方に任せる事も可能になります。
この他にも「イベントの案内」「ボリューム会員営業支援」など、さまざまな特典がありますから、個人事業主の方はぜひ法人会員になる事をお勧めします。
それではコストコの法人会員になるために、個人事業主が提示する必要のある書類についても見てみましょう。
- 名刺
- 公共料金の請求書等
- 店舗のチラシ等
上記いずれかに加え、免許証などの本人確認書類の提示が必要。
※「屋号」が無い場合は、営業許可証などが必要となる場合もある。
個人事業として営業している限り、名刺はほとんどの方が持っていると思いますから、登録へのハードルはかなり低いと言えますね。
また、副業をしている方にも利用しやすいかもしれません。
事務機器・事務用品購入などのサービス
次が、「事務機器・事務用品購入などのサービス」について。
事業内容や職種にもよると思いますが、一般的に事業を運営するとなれば、こうした事務機器や事務用品は頻繁に購入する事になると思います。
消耗品ですから、少しでも安く手に入れたいところですよね。
これらの事務機器・事務用品なども法人会員になる事により、個人会員よりも安く購入出来たり、保証期間が長くなったりなどの特典があります。
それではそれぞれ見ていきましょう。
パナソニック
まずは「パナソニック」から。
パナソニックと言えば、家電が一般的に有名ですが、法人会員になる事で様々な割引制度を利用する事が出来ます。
特に注目したいのがパソコンです。
パナソニックのパソコンといえば「レッツノート」が有名ですが、法人向けモデルと個人向けモデルとでは仕様がかなり異なります。法人向けになれば様々なカスタマイズが可能となり、例えば「光学式ドライブ」が不要であれば、ドライブレスにする事で価格をかなり抑える事も可能となります。
また、通常は保証期間が1年間となりますが、法人会員であればこれが「4年間」まで延長され、出張修理などにも対応してくれます。
これはかなり便利な内容だと言えますよね。
個人会員 | 法人会員 | |
---|---|---|
年会費 | 無料 | 無料 |
メーカー保証 | 1年間 | 4年間 |
盗難等の保証 | なし | 保証プラン有り |
まとめ買い割引 | ✕ | 〇 |
リース契約 | ✕ | 〇 |
後払い | ✕ | 〇 |
カスタマイズ | △(一部可) | 〇(幅広く対応) |
出張修理 | ✕ | 〇 |
上記を見ると、法人会員の特典が多い事がよくわかります。
支払いに関して言えば、「リース契約」や「後払い」にも対応してくれるため、「今月は支払いが厳しい」という場合でも柔軟な支払方法の選択が可能となります。
また、パソコンが故障した場合、通常は工場などに送って数週間待つことが一般的ですが、法人会員であれば出張修理にも対応してくれるため、この辺も有難いポイントですね。
それでは、個人事業主がパナソニックの法人会員になるために、必要となる書類についても見ていきましょう。
- 特になし
ホームページ上で申請するだけで会員になれます。
実際にパナソニックに問い合わせてみましたが、個人事業主が法人会員に登録するために必要となる書類はないそうです。
これは、屋号がない個人事業主でも同様です。
これまでご紹介してきたサービスの中でも、登録条件のハードルが一番低いと言えますから、パナソニック製品が気に入っている方は、是非登録してみては如何でしょうか。
ASKUL(アスクル)
そしてお次が「アスクル」です。
事務用品系の通販サイトとして有名なアスクルですが、こちらは完全に法人向けサイトとなり、個人向けは「LOHACO(ロハコ)」となります。
ロハコならご存知の方も多いかもしれませんね。
事業を運営するとなれば、文房具やコピー用紙が大量に必要となりますから、こうしたサイトを利用すれば「安く」購入する事ができ、しかも「早く」手元に届けてくれますから便利です。
また、オフィスチェアや事務机なども豊富に揃えていますので、事務所の模様替えや移転などを考えている人にも助かるサイトです。
それでは、個人向けのロハコと法人向けのアスクルでどのような違いがあるのか、下の表で確認してみましょう。
ロハコ(個人) | アスクル(法人) | |
---|---|---|
年会費 | 無料 | 無料 |
商品の傾向 | 食品からコスメまで幅広い | 事務用品中心に700万点以上 |
送料無料 | 3,300円(税込)以上 | 1,000円(税込)以上 |
翌日配送 | 〇 | 〇 |
当日配送 | ✕ | 〇 |
配送時間指定 | 〇 | ✕ |
後払い | ✕ | △(一部可) |
上記を見ると、送料無料となる条件がアスクルの方が安くなっているのが分かりますね。この他にもアスクルには「当日配送」というシステムもありますから、「急いで送って欲しい」という要望にも応えてくれます。
ただ、配送時間の指定が出来ませんから、ここは少し不便さを感じるかもしれません。
それでは次に、個人事業主がアスクルに登録するために必要となる書類等について。
- 特になし
基本的に、携帯電話とメールさえあれば登録が可能となります。
以前は固定電話が無ければ登録できなかったようですが、現在は携帯電話とメールさえ利用できれば登録が可能となっています。
ただし、法人ですと後払いにも対応していますが、個人事業主の場合はクレジットカードのみの支払いとなりますから、注意が必要です。
携帯電話の「法人プラン」
そして次が、「携帯電話の法人プラン」について。
仕事をする上で欠かせない携帯電話ですが、個人契約の場合と法人契約の場合ではかなり内容が異なっており、総合的に見ると法人契約の方がかなりお得となっています。
これだけでも法人契約に切り替えたほうがお得ですが、更に言うと、税務調査においても法人契約にしておいた方が何かと便利になります。
携帯電話というのは、どうしてもプライベートでの使用もありますから、この辺がキッチリと区別されなければ、税務調査で指摘を受ける事もあります。その点、法人契約にしておけば、「事業用に利用している」という事が証明されますので、税務署に対しても説明がしやすくなります。
基本的に、携帯会社と契約するとなれば、大手通信3社のいずれかになると思いますが、個人事業主が法人会員となれるのは以下の会社のみ。
- au(KDDI)
- ソフトバンク
そうです、実はドコモは現時点(2021年2月)での個人事業主の法人会員加入を認めていないのです。
ですから、個人事業主が法人契約を検討するならば、auかソフトバンクのみとなります。
登録時に必要となる書類については、それぞれ以下の通り。
- 商号登記簿謄本
- 公共料金領収書
- NTT東西の領収書
- 国税または地方税の領収書
- 納税証明書
- 社会保険の領収書
- 行政機関、地方自治体、およびその下部組織の押印(首長印含む)がある書類
※以上の内いずれかひとつと、代表者の本人確認書類(免許証など)が必要となります。
ちなみに、「屋号」がなければ受け付けてもらえません。
- 直近の「所得税青色決算申告書」
- 領収書関係
※以上の内いずれかと、代表者の本人確認書類(免許証など)、名刺、印鑑が必要となります。
各店舗により取り扱いが変わる事がありますから、事前に販売店へ問い合わせるようにしましょう。
銀行の「法人用口座」
次にあると便利なのが「銀行の法人用口座」です。
個人事業主の方が事業で銀行口座を利用する場合、通常は個人口座を利用する事がほとんどかと思います。一般的に、個人が法人用の銀行口座を開設できるイメージは低いですよね。しかしここ数年、銀行によっては個人事業主に対しても法人用口座開設を受け付けるところが増えてきました。
では、個人事業主がこうした法人用口座を開設する事により、どのようなメリットがあるのかを列挙してみます。
- 「屋号」が記載できるため、取引先も安心できる
- 通常、一つの銀行で口座は一つしか開設できないが、個人用と法人用の二つ開設できる
- 個人と法人のお金を容易に分けられることができ、申告時にも便利
- 銀行によっては、同銀行口座間の振込手数料が無料になる事も
まず「屋号が記載できる」とありますが、個人口座であれば個人名で「日本 太郎」などといった名義となりますから、相手側からするとちょっと不安になりますよね。
ここで仮に「△△レストラン」などと表示されれば、「あぁ、ちゃんとあのレストランの代表口座なんだな」と、安心して取引をする事が出来ます。
また、一般的にどこの銀行も口座は1つしか開設できませんが、法人用口座と個人用口座の2つを同銀行内で作る事も可能です。
その他、「個人と法人のお金をキッチリと分けられる」事や、「手数料がお得になる」といった利点もありますから、個人事業主の方は是非とも法人用口座を開設しておきたいところです。
それでは、個人事業主でも法人用口座が開設できる銀行についてご紹介します。
PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)
まずは「PayPay銀行」(2021年より、ジャパンネット銀行から名称変更となっています)。
こちらはヤフーの子会社となっており、Yahoo!のサービスを利用している人にとっては優遇措置が数多くあるため、是非とも開設しておきたい口座です。
PayPay銀行の利点は以下の通り。
- 3万円以上の入出金なら、提携ATMの手数料が無料(制限なし)。
- インターネットバンキングでの振込なら、手数料が最低55円(税込)から。
- 口座開設手数料、口座維持手数料は無料。
- ビジネスローンも「1.45%」から対応。
提携ATMにおける3万円以上の入出金が無料ですから、現金を取り扱う店舗にとっては有難いサービスですよね。ATMを自社の金庫代わりに利用する事が可能となります。
また、PayPay銀行の利点は「ビジネスローンが充実している」という点が挙げられます。条件はそれぞれありますが、そのほとんどがインターネット上で手続きが完了しますので、何度も銀行に足を運ばなくても良いという利点があります。
PayPay銀行に、個人事業主が法人口座を開設するために必要となる書類についてはこちら。
- 口座開設申込書
- 本人確認書類
- 「印鑑証明書(原本)」「住民票の写し(原本)」のいずれか1点。
または、
- 運転免許証のコピー
- 個人番号(マイナンバー)カードのコピー
- 各種健康保険証のコピー
- パスポートのコピー
- 印鑑証明書のコピー
- 住民票の写しのコピー
- 特別永住者証明書のコピー
- 各種年金手帳のコピー
- 各種福祉手帳のコピー
のいずれか2点。
上記の原本提出を選択した場合はその1点のみの提出で問題無いが、コピー提出を選択した場合は、これらに加え「公共料金の領収書(原本またはコピー)」の提出が必要となる。
GMOあおぞらネット銀行
こちらは「あおぞら銀行」と「GMOインターネット」が共同出資するインターネット専業銀行となっています。
GMOあおぞらネット銀行の利点は以下の通り。
- GMOあおぞらネット銀行の口座あてであれば、振込手数料が無料。
- 口座開設手数料、口座維持手数料は無料。
こちらの銀行の最大のポイントは、何と言っても「同銀行口座間の振込手数料が無料」という点です。
こちらに上限はありませんから、例えば従業員の方にGMOあおぞらネット銀行の個人口座を開設してもらう事で、給与の振込手数料を無料にすることが可能となります。
他の金融機関における給与振込手数料は、1回毎ではさほど高くはありませんが、人数と回数が増えればそれなりの出費となりますのでこれはとても助かりますよね。
GMOあおぞらネット銀行において、個人事業主が法人用口座を開設するのに必要となる書類はこちら。
- まず個人口座を開設
- 個人口座開設後、以下の書類を提出
- 「個人事業主の確認書類」 - 個人事業開業届出書、青色申告承認申請書、確定申告書、個人事業開始申告書、国税・地方税の納税証明書、各行政機関発行の許認可証のうち、いずれかコピーを1点。
- 「事業内容等が確認できる書類」 - ウェブサイトのアドレスを印字したもの、会社案内等、請求書等、契約書等、提案書等のうち、いずれかコピーを1点
まとめ
意外と知られていませんが、このように個人事業主でも法人契約できるサービスは数多くありますから、「これまで損していたなぁ」なんて人もいるかもしれませんね。
どれも申請手続きはさほど難しくありませんから、これを機に登録してみては如何でしょうか。