会計事務所職員が「集金・請求」を苦手とする原因とその対策

一般の方からすると、会計事務所の職員の方などは会計のプロフェッショナルですから、「会計事務所の人って、意外と請求とか苦手なんですよ」と聞けば「えっ?冗談でしょ?」なんて思うかもしれません。

しかし、会計業界の人がこの記事を読めば、「うんうん、あるある」と思う事でしょう。

当サイト管理人は、これまで数多くの会計事務所の方と一緒に仕事をしてきましたが、意外と税理士や公認会計士の人で、こうした「集金、請求」を苦手にしている人が多いなと感じます。

集金に関しては、ここ数年で「口座振替」などのサービスが定着してきましたのでそれほどでもなくなりましたが、「請求」に関しては未だに苦手とする傾向にあるようです。

せっかく素晴らしい仕事をしたとしても、請求がしっかりと出来ない限りは経営が安定せず、いつまで経っても資金繰りで頭を悩ませることになります。

会計のプロが資金繰りで頭を悩ませるというのも滑稽な話ですが、意外とこうした会計事務所が少なくないというのが現状のようです。

ですから逆に言えば、こうした「集金、請求」を得意としている会計事務所は経営が安定している事が多く、新しい事にも挑戦しやすい体力がありますので、経営的にも好循環となっています。

そこでこの記事では、なぜ多くの会計事務所が「集金・請求」を苦手とするのかという事と、その対策についても考えていこうと思います。

集金は昔よりも楽になった

まず集金についてからですが、こちらは冒頭でもお伝えしたように、最近では「口座振替サービス」などが定着してきたため、顧問料や決算料などの集金について悩んでいる事務所は少なくなってきているでしょう。

また、「〇〇ペイ」などといったサービスや、「クレジットカード決済」も当たり前の時代となっているので、昔に比べて集金はかなり楽になっています。

それこそ10年以上前などは、会計事務所の職員が定期訪問の際などに、顧客から顧問料や決算料などを回収している時代もありましたから、それと比べればかなり改善していると言えるでしょう。

とは言え、古い考え方の所長などは「お客さんとの密接なコミュニケーションが大切」などという理由から、未だに現金による集金を行っている事務所もあるようですから、ここは考え方次第といったところでしょうか(もちろん、現在こういった事務所はごくごく僅かです)。

また、訪問による集金はしなくとも、クライアントに請求書を送り、のちに振込をお願いしているという事務所は現在でも少なからずあるようです。

集金において問題が発生するのは、多くの場合この「振込依頼」の場合が多く、こうした方式を採用している事務所などは、未収金が発生している事も少なからずあるようです。

昔より悩む事の少なくなった集金問題ですが、このように多少の問題は存在しますので、なぜそのような問題が発生するのかについても見ていきましょう。

集金の問題が発生する原因

会計事務所において集金の問題が発生する原因としては、概ね以下のような事が考えらえます。

集金の問題が発生する原因
  1. 決算書に使用した資料の返却時、請求書を同封しているため、顧客がそれに気付かない。
  2. 担当職員が顧客の経営状態を知り過ぎているため、同情してなかなか「入金をお願いします」と言えない。
  3. 担当職員が「集金までが自分の仕事」という意識が足りない。

まず上記1の「決算書に使用した資料の返却時、請求書を同封しているため、顧客がそれに気付かない」という事についてですが、これ、意外と多くの会計事務所で起きている現象です。

例えば以前、とある税理士の方が「ウチのクライアントさんは皆さん良い人なんですが、どういった訳か、皆さん入金が遅いんですよねぇ」と嘆いておられました。そこで私が「どういった方法で請求しているのか」などを詳しく尋ねると、この会計事務所は、決算資料と請求書を同じ封筒に入れてクライアントさんに渡していたようです。

そこで、「決算資料は決算資料だけでお返しし、請求書は別の封筒に【請求書在中】の文言を入れて送ってみませんか?」と提案しました。するとその結果、全てのクライアントさんが請求書を送ってから遅くとも1ヶ月以内には入金してくれるようになり、その税理士の方はかなり驚いておられました。

要は多くの場合、入金が遅れる理由というのは「渋っているから」という訳ではなく、何かしらの問題があるから起こりうるのであって、その問題を取り除いてあげれば意外と簡単に解決してしまうという事です。

次に2の「担当職員が顧客の経営状態を知り過ぎているため、同情してなかなか「入金をお願いします」といえない」についてですが、これも意外と会計事務所において多いのではないでしょか?

これは担当職員だけでなく、所長である税理士の方にも多い傾向かもしれません。

特にその所長が独立当初から付き合いのあるクライアントに対しては、苦楽を共にした「戦友」の意識があるようで、なかなか「入金をお願いします」と切り出せないようです。

人として同情する事はもちろん大切ですが、経営者として考えた場合、いつまでも放置しておくというのも問題だと言えます。

そして最後が「担当職員が、集金までが自分の仕事という意識が足りない」という事についてですが、これはサラリーマンならではの発想の為、どうしても所長などの経営者とでは相容れない考え方だと言えます。

どちらの考え方も理解できなくはありませんが、入金がなくては自分の給料も支払ってもらえないという意識は最低限持ってもらいたいところです。

集金問題への対策

それでは次に、上記でお伝えした集金における問題の対策についても考えていきましょう。

簡単に行える方法としてはこちら。

集金問題への対策
  1. 口座振替サービスを利用する。
  2. 各種決済サービスを利用する。
  3. 請求書は単体で郵送する。
  4. 入金管理システムを整備する。

まずは、「口座振替サービスを利用する。各種決済サービスを利用する」という方法。

現在この方法は、すでに多くの会計事務所が導入しており、一番簡単な解決方法だと言えるでしょう。顧問料については毎月確実に入金されますし、わざわざ「入金をお願いします」とクライアントに連絡をしなくても済みますので、「どうしても同情してしまう」という人にはピッタリの方法かもしれません。

もちろん、「消費税の増税時の対応が大変」という事や「手続きが面倒」という面もありますが、一度導入してしまえば会計事務所、クライアント双方にとって便利な選択肢だと言えます。

口座振替であれば振込よりも手数料が抑えられる場合がありますから、一度検討してみる価値はあると言えます(決済サービスは、若干手数料が高め)。

次が「請求書は単体で郵送する」という事ですが、前述した「クライアントが請求書に気付いていなかった」という事への対策において、かなりの効果を発揮します。

地味ではありますが、これまでこの方法を提案した会計事務所においては全てで効果がありましたので、騙されたと思って一度試してみては如何でしょうか。

そして最後が「入金管理システムを整備する」とありますが、これは何もお金をかけてソフトを導入する必要もなく、エクセルなどでちょっとした表を作るだけでも十分です。

その表をもとにして、それぞれ担当者毎に「未収金割合」を伝え、定期的にクライアントに対して入金を促すような体制にするという事です。

ここまですると少し面倒だとは思いますが、口座振替サービスを利用しないのであればこれくらいの対策は必要だと言えるでしょう。

請求は多くの人が苦手としている

次が請求についてですが、これは会計事務所の方に限らず、意外と多くの人が苦手としている分野のようです。

しかし厳しい事を言うようですが、どんなに立派な仕事をしたとしても請求をしなければ報酬は発生しませんし、報酬がない限りはそれはビジネスとは言えず、ただのボランティア活動という事になります。

もちろん、ボランティアも立派な仕事であることに間違いありませんが、報酬を得なければアナタは生活する事も出来ず、仮にそのためにアナタが廃業してしまったら、アナタの力を必要としてくれる他のクライアントさんに迷惑をかける事になります。

そう考えると、しっかりと報酬を得る事で、更に多くの人のお役に立てるという事にもなるのですから、請求はとても大切であるという事が分かりますよね。

また、現在従業員として働いているとしても、将来的に独立することを考えているなら、独立後には必ずこの請求について嫌というほど考えなくてはいけませんから、今のうちから慣れておいた方が後々楽になると言えます。

それほど大切な業務であるはずの請求ですが、ここで、なぜ多くの人がこの請求を苦手とするのかについて考えてみましょう。

多くの人が請求を苦手とする理由

その人の立場や業種などによっても様々な理由があると思いますが、概ね以下のような理由から「請求って嫌だな」と考える人が多いようです。

請求を苦手とする理由
  1. 請求するタイミングがよく分からない。
  2. 自社のサービスに自信を持っていない。
  3. 自社の値付け・値決めに自信を持っていない。
  4. 相手の押しに弱い。なあなあで済ませてしまう傾向がある。
  5. そもそも、お金を頂くことに罪悪感を感じてしまう。

まず、上記1の「請求するタイミングがよく分からない」とありますが、これは独立したての人に多い悩みかもしれません。

従業員として働いていれば、その会社の請求ルールが出来上がっており、そのルールに従って請求すればいいのですから、これについてはあまり悩む必要もありませんよね。しかし、自分で新しく事業を立ち上げると、そのルールもイチから作らなくてはいけませんから、ここで悩む人もいるようです。

次に2の、「自社のサービスに自信を持っていない」とありますが、これはどこの会社においても生じうる問題かもしれません。

実際に商品やサービスを提供しても、「これって高すぎないかな?」などと考えてしまい、定価で請求する事に引け目を感じてしまうのかもしれません。

そして3の「自社の値付け・値決めに自信を持っていない」ことも同様で、自社のサービスが価格に見合ったサービスなのか、また相場と比べてどうなのかと考えてしまい、いつまで経っても自社の値付けが定まらないという人も結構見かけます。

そして4の「相手の押しに弱い。なあなあで済ませてしまう傾向がある」とありますが、これは相手から「これ、サービスしてよ」とか、「こんなに高いんだったら頼まなかった」などと言われると、ついつい弱腰になってしまい、「じゃあ、安くしておきますよ」と安易な値引きに応じたり、酷い場合には無料でサービスを提供するなんて人もいるようです。

そして最後の「そもそも、お金を頂くことに罪悪感を感じてしまう」という事についてですが、これを読んで「えっ?お金をもらう事に罪悪感を抱く人なんているの?」と考える人もいるかもしれませんね。

しかし、こうした人は意外と多く、普段はそんなことを考えていないにしても、潜在的に「お金を請求すること=悪い事」とインプットされているため、なかなか請求に対して前向きになれないという傾向があります。

こうして見ると、どれも精神的な面の問題が多いと思いますが、実際にこれを読んで「あっ、これ、自分の事だ」と思った人もいるのではないでしょうか。

請求問題への対策

では、どうしたらこうした請求への苦手意識を克服できるかということですが、これは物理的な対策はあまりなく、どこまで行っても精神的な問題を解決するほかないと言わざるを得ません。

特に、「お金を頂くことに罪悪感を抱いてしまう」などという場合には、どんな対策を施したとしてもその潜在意識を変えない限り、いつまで経っても「申し訳ないなぁ~」という考えから脱却できません。

こう言ってしまうと身も蓋もありませんが、実際問題としてそれが現実です。

とは言え、全く対策が無いかと言えばそうでもなく、物理的な対処法としては以下のような方法が考えられます。

請求問題への物理的な対策
  1. 業務を受託する前に、「この業務は〇〇万円掛かりますし、完了後〇日以内に報酬を頂戴します」と、必ず事前にクラアントに伝える。
  2. 請求書送付後、「請求書をお送りしましたのでご確認願います」と、一言伝える。
  3. 顧問料などの定期的な請求は、口座振替などをお願いする。
  4. しっかりと「分かり易い」値決めをして、ホームページなどに掲載しておく。

まず上記1の「必ず事前にクライアントに伝える」とありますが、これは仕事の依頼を受ける上でかなり重要な事であるはずなのに、意外とこれをせずに後でもめている人が多いように感じます。

結局、「言った、言わない」となり、せっかく良い仕事をしたとしても、嫌な気分をいつまでも引きずってしまう事にもなりかねません。

特に、「いつまでにご入金くださいね」と伝えておかなければ、依頼者側からしても不安になりますから、ここは遠慮せずにしっかりと伝えるべきでしょう(もちろん、相手を見て判断する必要はありますが)。

これをするだけでもクライアント側としては、「ちゃんと支払わなければいけないないな」という意識が芽生えますので、一部の例外を除けば、ほとんどの方がきちんと理解してくれます。

また、上記2の「請求書を送りましたと一言伝える」という事についてですが、意外とこれも効果があるにもかかわらず、実行していない人が多く見られます。

たった一言「請求書をお送りしましたので・・・」とお伝するだけで、特に「支払ってくださいね」とも言っていないのに、相手側からすれば「あぁ、支払わないといけないな」と思ってもらえるのですから、かなり便利な方法だと言えますよね。

その電話のついでに雑談や世間話でもすれば、クライアントとも更に距離を縮める事もでき、一石二鳥だと言えます。ちょっとした事かもしれませんが、これを行動に移している人で資金繰りに悩んでいるという人は、これまで見た事がありません。

そして3の「口座振替などをお願いする」とありますが、最初から「当社はこういったルールなんです」とお伝えしておけば、あえて「あの、請求を・・・」なんて、ドキドキしながらクライアントにお願いする必要もありませんよね。

ただしこの方法は、相続税の申告などの単発の業務には向いていませんので「業務内容による」と言ったところでしょう。

そして最後の「分かり易い値決めをして、ホームページなどに掲載しておく」方法についてですが、自分で言えないのであれば「他の人に言ってもらう」か「事前に書いておく」しか方法はありませんよね。

現実的に他の人に伝えてもらう事は出来ませんから、「当社はこういったルール、報酬になっております。つきましては、この通りにお願いします」とホームページなどに掲載しておくことで、あえて苦手な「請求のお願い」をしなくても済みます。

これも前述した「口座振替の依頼」と同様ですが、事前に自社のルールをお伝えしておけば、ほとんどの方はそのルールに合わせてくれますから、口頭で請求についての依頼をするのが苦手な人には向いている方法だと言えるでしょう。

まとめ

集金・請求いずれにおいても、本来は「仕事の対価」として堂々と相手に伝えるべきですが、中には言いがかりをつけられたことがあり、それがトラウマとなって苦手意識が芽生えてしまったという人もいるのかもしれません。

しかし、そのように「ごねる」人は少数であり、多くの人は気持ちよくお金を支払いたいと思っているはずです。

横柄な態度でお金を請求するなどというのは論外ですが、しっかりと仕事をしたという自信があるのなら、その分しっかりと請求するべきだとは思いませんか?