確定申告の「青色申告」「白色申告」って、どっちがどうお得なの?

個人事業主として起業や独立をした場合や、副業を開始して一定の収入がある場合などは、必ず確定申告をしなくてはなりませんが、これまで会社員として働いてきた方であれば、そのほとんどが年末調整だけで済んでいた可能性が高いため、「今回初めて確定申告をする」なんて人もいるかもしれませんね。

そこでまず最初に悩むのが、「青色申告と白色申告って、結局何が違うんだ?」という事かと思います。

結論から言うと、「青色申告のほうが、税制面で有利となる場合が多い」となるのですが、申告する際に注意すべきことも何点かあるので簡単に考えていると痛い目に合う可能性もあります。

そこでこの記事では、白色申告に比べ青色申告はどういった点でお得なのかという事や、申告する際の注意点などについてお伝えしようと思います。

なぜ「青色」申告と呼ばれるのか?

それでは最初に、なぜ青色申告は「青色」と呼ばれるのかについてから。

これは簡単な話、昔の所得税の確定申告において、申告書の用紙が青色であったことから現在でもこう呼ばれ続けているからです。

既にこの青色の用紙は使われなくなっていますが、青色申告は白色申告に比べ税制上の特典が多いことから、これを区別するために現在でも名称として残しているだけのお話です。

ですから特に深い意味はなく、ただ単純に「そういった風に分けられているんだなぁ~」と覚えておくだけで十分です。

青色申告が出来る所得の種類は決まっている

そして次が、青色申告で所得税の確定申告が出来る種類は決まっているという事について。

現在所得税の種類は大きく分けて10種類あり、その内訳は以下の通りとなっています。

所得の種類
  1. 事業所得
  2. 不動産所得
  3. 山林所得
  4. 利子所得
  5. 配当所得
  6. 給与所得
  7. 退職所得
  8. 譲渡所得
  9. 一時所得
  10. 雑所得

このうち、青色申告が出来る所得は「事業所得」「不動産所得」「山林所得」の3種類のみとなっています。

ですから、例えば所得の内容が会社からの給与のみであれば、給与所得となりますから青色申告はできませんし、株式などによる配当所得でも青色申告は出来ない事となっています。

ここで注意しておきたいのが「会社員が副業を行う場合」なのですが、一般的に、副業となると「事業所得」か「雑所得」のどちらかとなってしまいます。

この部分については後ほど詳しく説明しますが、仮に雑所得として認定されると、青色申告での申告は認められなくなりますので注意してください。

青色申告の主な特典

それでは次に、青色申告を利用することでどのような特典があるのかについて見ていきましょう。

以下は、白色申告をした場合との比較となっています。

青色申告の特典青色申告白色申告
① 青色申告特別控除55万円または10万円控除。※基準を満たせば、65万円控除も可能。適用なし
② 専従者給与青色事業専従者給与。原則として、全額必要経費算入可専従者一人当たり最高50万円(配偶者の場合は、86万円)
③ 現金主義一定の条件を満たせば適用可能適用なし
④ 純損失の繰越翌年以降3年間繰越控除が可能変動所得、被災事業用資産の損失のみ控除可能
⑤ 純損失の繰戻還付前年分の所得に対する還付が認められる適用なし
⑥ 引当金貸倒引当金、退職給与引当金等の一定の引当額を必要経費として算入できる貸倒引当金に限り、一定の引当額を必要経費として算入できる
⑦ 棚卸資産の評価低価法の適用が可能低価法の適用は不可能
⑧ 少額減価償却資産の特例30万円未満の固定資産の購入であれば、その年に一括で償却可能適用なし

出典:国税庁

確定申告に慣れていない場合、何やら難しい言葉ばかり並んでいるように感じるかもしれませんが、ポイントとしては、上記①の「青色申告特別控除」、②「青色事業専従者給与」、④「純損失の繰越」、⑧「少額減価償却資産の特例」だけでも覚えておけば十分です。

それでは、この4点について更に詳しく見ていきましょう。

青色申告特別控除

まずは「青色申告特別控除」についてから。

2019年分の確定申告までは、この青色申告特別控除の額が「65万円もしくは10万円控除」とされていましたが、2020年分の確定申告からは「55万円もしくは10万円控除、要件を満たせば65万円控除も可能」という事になりました。

基本的に青色申告をしていれば「10万円控除」は誰でも適用となりますが、55万円控除を適用する場合、一定の要件が求められることになります。

55万円控除の適用要件
  1. 青色申告を行い、「不動産所得」または「事業所得」を生ずる事業を行っていること。
  2. これらの所得に係る取引を、複式簿記により記帳していること。
  3. 上記2に基づいて作成した「貸借対照表」および、「損益計算書」を確定申告書に添付すること。
  4. 確定申告書において「55万円控除」を受けるためその金額を記載し、確定申告の提出期限内に提出する事。

(注)現金主義を採用している場合は、この55万円控除を受けることはできません。

青色申告の対象となる所得は前述したように「事業所得」「不動産所得」「山林所得」の3種類ですが、上記を見ると、55万円控除においては「山林所得」は対象とならないことが分かります。

要は簡単に言えば、「55万円控除の適用を受けたければ、不動産所得か事業所得で貸借対照表の作成が必要になりますよ」ということになります。

そこで更に、65万円控除の適用を受けるとなると、以下のよう要件が求められることになります。

65万円控除の適用要件
  1. 「55万円控除」の適用要件を満たしている人
  2. 次のいずれかに該当していること
  • その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、「電子帳簿保存」を行っていること。
  • その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表および損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと。

つまり、55万円控除の対象となっている人で、更に「電子帳簿保存」か「電子申告」のどちらかを行っていれば、この65万円控除の対象となりますよという事になります。

とは言え、個人事業主で「電子帳簿保存」を行うのはハードルが高いと言えますから、どうしても65万円控除の適用を受けたいのであれば、e-Taxを選択するほうが現実的だと言えるでしょう。

電子帳簿保存法について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。

 

青色事業専従者給与

そして次が「青色事業専従者給与」について。

基本的に、白色申告でも家族(同一生計者)に対して給与を支払うことが出来ますが、その上限が50万円(配偶者は86万円)までとなっているため、一般的な給与額と比べかなり低い金額となりますよね。

そこでこの青色事業専従者給与を利用すれば、原則として全額が損金として認められることになりますから、家族に対してそれなりの額の給与を支払うことが可能となります(もちろん、常識的な額の範囲内とはなりますが)。

ちなみに、様々な条件を満たしていることが前提となりますが、例えば「15歳以上の家族」に対してもこの青色事業専従者給与の支払い対象となりますから、配偶者だけでなく、子供に対して給与を支払うことも可能となります。

一家の主が一人だけで申告すると、納税額が大きくなってしまいますが、それを家族に分散させることで合計の納税額を減らせることが可能となりますので、税理士が「家族に給与を支払いましょう。そうすれば節税になりますよ」なんて言う理由はここにあります。

ただし注意点として、この青色事業専従者となった人は、配偶者控除や扶養控除の対象となることが出来ません。ですから、総合的に考えて「身内に給与を支払ったほうが良いのか」それとも「これまで通り、配偶者控除などの対象のままが良いのか」という事については、しっかりと税理士と打ち合わせしておく必要があります。

純損失の繰越

そして次が「純損失の繰越」について。

こちらも青色申告ならではの特典ですが、一般的に、事業を開始して間もない頃というのは赤字になることが多く、軌道に乗るまでは時間がかかる場合が多いかと思います。

何とか頑張って、数年後にようやく黒字になったとしても、それまでの数年間は赤字を垂れ流しにしていた訳ですから、正直「これまでの赤字分はどうなるの?」と考えてしまいますよね。

そこで青色申告の特典の一つである「純損失の繰越」を利用することで、過去の赤字分と当期の黒字分を相殺することが可能となる訳です。これは3年分の損失まで繰越が可能ですから、かなり安心ですよね。

例えば、「2018年の損失額100万円」「2019年の損失額100万円」「2020年の損失額100万円」とすれば、合計で300万円の損失があるという事になります。しかし、2021年に300万円の黒字が発生すれば、過去の300万円の赤字と相殺することができ、プラスマイナスゼロとなりますから2021年の所得はゼロになるという事ですね。

もちろん細かく計算すればいろんな要素も影響してきますが、あくまでも計算を分かりやすく表現していますのでご了承ください。

これに対して白色申告の場合は、特定の場合にしかこの純損失の繰越が認められませんから、やはり青色申告のほうがお得だと言えますよね。

少額減価償却資産の特例

そして最後が「少額減価償却資産の特例」について。

これまで、青色申告をする事による様々なメリットを説明してきましたが、何よりもこの特例が一番のメリットかもしれません。

通常、事業に必要となる事務機器や自動車、建物などを購入した場合、それを購入した年に経費として計上することはできず、数年かけて費用計上しなくてはならないことになっています。これがいわゆる「減価償却」ということですね。

例えばソファーなら「5年もしくは7年」と償却期間が決められており、それぞれ国が定めた期間で減価償却をしなくてはならない事になっています。

しかし、個人事業主や一部の中小企業に対しては、法律で「ある程度の金額の固定資産であれば、その年に費用として計上しても良いことにしましょうよ」というルールが設けられています。

これが少額減価償却資産の特例という訳ですね。

その内容が、「取得金額が30万円未満であれば、この特例の対象資産となる」という事と、「その事業年度において計上できる合計額の上限は300万円まで」という事になっています。

ただし、この特例は「時限立法」となっており、現状においては「2022年3月31日までの間に取得した資産」について適用となります。

とは言え、この特例は対象となる企業を絞り込むなどの変更はあったにせよ、延長に延長を繰り返していますから、今後も継続する可能性は高いと言えます。

ここで注意点として、使用可能な期間が1年未満であったり、または10万円未満の資産を購入した場合は、そもそもその年の費用として計上することができます。ですから、これらの資産は上記の「合計上限額300万円まで」には含まれないこととなります。

という事は厳密に言うと、少額減価償却資産の特例の対象となるのは30万円未満の資産ではなく、「10万円以上、30万円未満」の資産であるという訳ですね。

青色申告をする際に注意すべきこと

上記より、白色申告よりも青色申告のほうが断然お得であるという事が理解頂けたかと思います。

例えば、「簿記とかって難しいよなぁ~」と考えていても、青色申告特別控除の10万円控除であれば簿記的な知識は必要としませんから、作業的には白色申告とほとんど変わりがありません。

であれば、55万円控除や65万円控除を諦めるにしても、その他の特典は享受できるのですから、明らかに青色申告を利用したほうが賢いという事が分かりますよね。

しかし、青色申告を行うには幾つか注意点もありますから、気を付けておくべき点についてもお伝えしておきましょう。

事前に申請しておかないと、青色申告で申告できない

まずは、事前に申請をしておかないと、青色申告として確定申告が出来ないということについて。

通常、個人事業者として事業を始めるのであれば、税務署に対して「開業届」を提出することは多くの方がご存じかと思います。しかし、ここでよくある勘違いとして「開業届を提出すれば、青色申告が出来るんでしょ?」と考えている人が意外と多いようです。

これは全くの間違いで、青色申告で確定申告をするためには、開業届を提出するだけでは足りず、同時に「所得税の青色申告承認申請書」というものを提出しておかなければなりません。

しかもこれは「事前に」提出しておく必要があり、基本的には事業開始から2か月以内に提出する必要があります(例外として、1月1日から1月15日の間に開業した場合なら、3月15日までに提出する必要がある)。

仮に、2020年の1月1日から事業を開始したのであれば、2020年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に申請しておかなくてはならず、それを忘れていて2020年度分の確定申告の提出期限である2021年3月15日に青色申告として確定申告を申請しても、それは認められないという事になるのです。

この他にも、「青色事業専従者給与」などにおいても事前提出が求められますから、この辺について詳しくは以下の記事も参考にしてみて下さい。

 

不動産所得の場合は、「事業的規模」に要注意

次が、不動産所得で青色申告を行う場合は、事業的規模というものに注意しなくてはならないということについて。

これは、不動産所得がある人のみに関係する事ですが、基本的に不動産所得で青色申告をすることは可能である反面、その事業の規模がある一定以上でないと、青色申告を行うことで得られる特典に制限が設けられてしまう結果となります。

例えば、仮に不動産所得で青色申告をしていたとしても、それが事業的規模として認められなければ、「65万円控除」や「55万円控除」は利用できず「10万円控除」のみの適用となってしまいますし、また、「青色事業専従者給与」なども利用できなくなります。

こちらについて詳しくは、以下の記事も参考にしてみて下さい。

 

副業の場合は、事業所得か雑所得の判定が難しい

そして次が、この青色申告を行う場合、会社員などの副業である場合は注意が必要となるという事について。

前述したように、この青色申告が認められるためには「事業所得」「不動産所得」「山林所得」の3種類のいずれかで申告しなくてはならないことになっています。

そこで、会社員が副業として青色申告をするならば、事業所得か不動産所得のいずれかとなる可能性が高く、山林所得というのはかなりの少数派となるでしょう。

ではここで何が問題になるのかというと、不動産所得の場合はそれほど心配もありませんが、仮に会社員が事業所得として申告するとなれば、それが事業所得として否認され、雑所得であるとされる可能性があるからです。

事業所得という事は、それなりの事業性があるということになり、税務上、ある一定の要件を求められることになります。

一般的に言われている事業所得の要件としては、以下のようなものが挙げられます。

事業所得の要件
  1. 自身の計算と危険において営まれているもの
  2. 営利性と有償性を有しているもの
  3. 反復継続して遂行されているもの
  4. 社会通念上、事業として認められているもの

仮に、会社員が副業としてアフィリエイトやせどりなどを始めた場合、上記のほとんどの項目に該当する可能性がありますが、どうしても1の「自身の計算と危険において」という項目において否認される可能性が出てきます。

本人からすれば、「必死で頑張っている」と主張したいところでしょうが、税務署などからすれば「そうは言っても、本業からの給料があるから安全でしょ」なんて言われればそれで終わりです。

もちろん、会社員の副業であっても事業性を認められることもありますから、ここは何とも判断しにくいところですが、世間的に「サラリーマンだったら不動産投資をしましょう。そうすれば、青色申告も利用出来てお得ですよ」なんて宣伝文句が溢れているのにも納得できますよね。

この点については、プロである税理士でも頭を抱える部分ですから、十分慎重に考えるべきだと言えるでしょう。

詳しくは、こちらの記事も参考にしてみて下さい。

 

まとめ

以上より、どうせ確定申告をするのなら、断然青色申告の方がお得であることがご理解頂けたかと思います。

しかし同時に、注意すべき点も多くありますので、その辺については専門家である税理士などとよく相談したうえで「自分はどうするべきなのか?」という事について考えるようにしてください。

特に、繰り返しになりますが、会社員の副業においては税理士でも判断の難しいところですから、安易に考えるのはやめておきましょう。

現在、税理士を探したいと考えている人は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。