電子署名法とは?電子契約や、電子認証局などについて解説

近年、テレワークの拡大と共に「電子契約」が注目されるようになってきましたが、この電子契約について調べると、必ずと言って良いほど「電子署名法」というキーワードが出現してくると思います。

この電子署名法ですが、言葉の感じからして「何となく、こういった内容の法律だろうな」とは予測できると思いますが、その細かい内容まで理解している人は少ないかもしれません。

また、電子署名法について詳しく調べるためにインターネットを検索しても、国や専門家(弁護士など)が解説している内容ばかりですので、表現が難しくて少し理解しにくいかもしれません。

そこでこの記事では、出来るだけ難しい言葉は使用せず、簡単に分かり易く電子署名法の内容などについて解説しようと思います。

電子署名法とは?

まず、この電子署名法とは正式名称を「電子署名及び認証業務に関する法律」といい、2001年に施行された法律となります。

この法律の専門的な内容については、実際に法律文を読んでいただければと思いますが、ごくごく簡単に説明すると、大きく分けて以下の二つについて定めた法律となっています。

電子署名法の内容
  1. 電子署名が一定の要件のもとにされている場合は、その署名は真正に成立していると推定される事。
  2. 上記電子署名が、真正のものであると認定されるために、それを認証する「認証機関」についてのルールなど。

要は、この法律の正式名称の通り「電子署名」についてと、その電子署名が正しいものであると認証するための「認証業務(機関)」について規定した法律という事です。

現在、この法律は全部で47の条文で構成されていますが、そのうち電子署名について書かれているのは1条から3条までしかありませんから、厳密に言えば「認証機関に対する規定」に重点を置いた内容だと言えます。

電子署名の定義

それでは、この電子署名法における「電子署名の定義」についても見ていきましょう。

電子署名法第二条1項において、電子署名は以下のように定義されています。

第二条(定義)

この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他、人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。

一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。

二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

法律文は独特の言い回しと聞きなれない単語が多いため、上記の条文を読んだだけでは理解しにくいですよね。

まず、上記の「電磁的記録・・・」とありますが、そもそも日常的に電磁的記録なんて言葉は利用しませんから、「具体的にどのようなものなの?」と考え込んでしまうかと思います。

この部分に関しては法律の作成者側からしても、IT(情報技術)などの進化によって、今後次々と新しい技術が開発される事を想定しているでしょうから「敢えて漠然とした文言」にしているのかもしれません。

では、この電子署名法の対象となる現時点における「電磁的記録」とは、具体的にどのようなものが考えられるかというと、PDFのようなファイル形式と言えば分かり易いでしょうか。

電子文書を作成する際に利用する代表的なファイル形式としては、現在、以下の2種類程度しか無いかもしれません(もちろん、他にもあるとは思いますが)。

電磁的記録
  • PDF - アドビシステムズ
  • DocuWorks(ドキュワークス) - 富士ゼロックス

基本的に、現在様々な文書の電子化ソフトが販売されていますが、そのほとんどがPDF形式となっているため「電子署名法の電磁的記録=PDF文書」と考えておけば、まず問題ないでしょう(上記ドキュワークスも、PDFと互換性があります)。

ただし、各認証局によっては対応できるソフトが異なるため、それぞれのホームページなどでしっかりと確認するようにして下さい。

では、仮にPDF形式で書類を作成したとして、そこにされた電子署名が真正なもの(正しいもの)として認められるためには、どのような要件が必要になるかというと、

  • 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものである事。
  • 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認する事が出来るものであること。

上記の二つの要件を全て満たす必要が生じます。

この文章も少し分かりにくいと思いますので、これを簡単に説明すると、要は「PDF文書等に記録された署名内容が、本人が作成したものと証明できるもの」である事と、「暗号化技術などによって、改変が行われていない事を確認できるもの」の両方が満たされていれば、「電子署名として認められますよ」という事になります。

ポイント

  • 電子署名法で言う「電磁的記録」とは、PDFファイルがほとんど。
  • この法律において電子署名が認められるためには、そのPDF文書などになされた署名が、「本人が作成したものと証明できる」「暗号化技術などによって、改変が行われていないことが確認できる」必要がある。

電子署名法の効果

では、PDF文書等に署名した電子署名が、この電子署名法の規定する電子署名として認められる場合、どのような効果が発生するのかというと、法律文では以下のように規定しています。

第三条

電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く)は、当該電子的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理する事により、本人だけが行うことが出来る事となるものに限る)が行われている時は、真正に成立したものと推定する。

要は簡単に言うと、仮にPDFで電子文書を作成した場合、「①そのPDFに電子署名がされており」、「②その電子署名が認証局などで本人がしたものであると証明できるならば」、その署名は法的に認められますよという事になります。

通常、紙による契約の場合、その契約当事者双方の「署名」「押印」が求められることが多いですが、これは後に裁判によって争いが生じた場合、その契約書が真正に成立している事の証明に必要となるためです。

基本的に「契約自由の原則」がありますので口頭でも契約は成立しますが、「署名」や「押印」を求められるのはこうした争いを防止するために行われます。

しかし電子契約となれば、こうした署名・押印が出来ませんから、後の裁判資料としては利用できない可能性があります。そこで、この電子署名法による電子署名が認められれば、紙の「署名」「押印」と同様、契約が真正に成立したという「強い証拠力」を持つことになるのです。

ポイント

  • 押印や署名は、実際には無くても構わない。
  • しかし、争いが起きた時に、その契約書の効力を証明するために必要。
  • 紙の場合は「押印」「署名」となるが、電子契約においては認証局に認証された「電子署名」がその代わりとなる。

電子認証機関(電子認証局)とは

では続いて、この電子署名を認証する機関(電子認証局)について説明していきますが、それぞれ提供する認証業務等が多少異なりますのでご注意ください。

また法律上、この認証局には「認定認証業務」「特定認証業務」とに分けられており、少しわかりづらくなっています。

この違いを簡単に説明するなら、「認定認証業務を行う認証局は、主務大臣の認定(お墨付き)をもらった事業者」で、「特定認証業務を行う認証局は、法律上の技術的要件は備えているが、大臣の認定をもらっていない事業者」という事になります。

要は、法的にどちらの認証局であっても電子署名の有効性は証明できるのですが、国に認定された事業者かそうでないかという違いだけです。

もちろん、国のお墨付きがある事業者の方が安心するでしょうから、以下において、現在「認定認証業務」を認められている認証局の一覧と、それぞれの特徴などについてご紹介します。

電子認証局一覧

電子認証登記所(商業登記認証局)
こちらは、法務省が統括する電子認証局で、この電子認証局を利用すれば「商業・法人登記」「不動産登記」「e-Tax」「特許のインターネット出願」などをオンラインで済ませる事ができ、主に「公共機関への手続き向け」と考えれば良いでしょう。
日本電子認証株式会社
法人認証カードサービス
こちらは民間企業が提供しているサービスですが、上記の「商業・法人登記」や政府の「電子入札」にも対応しているため、どちらかというと、公的な要素の強いサービスと言えます。公共機関に対する「電子申請」「電子入札」を検討している企業向けの電子認証局といった位置づけです。
日本電子認証株式会社
AOSignサービスG2
こちらも上記と同じく、日本電子認証株式会社が提供しているサービスとなりますが、上記の「法人認証カードサービス」とは提供してる内容が少し異なります。
東北インフォメーション・システムズ株式会社
TOiNX電子入札対応認証サービス
こちらのサービスもどちらかというと公的機関などに対する「電子入札」や「電子申請」、「e-Tax」を対象としたサービスをメインとしています。こちらの東北インフォメーション・システムズは「東北電力のグループ会社」であり、運営基盤に対する安心感があります。
株式会社帝国データバンク
TDB電子認証サービスTypeA
帝国データバンクのサービスも、公的機関に対する申請などに対応していますが、「電子契約」や「e文書法」にも対応しており、例えば、「物品売買契約」「請負契約」「金銭貸借契約」などにおいても電子契約が有効に利用できます。
セコムトラストシステムズ株式会社
セコムパスポート for G-ID
このセコムが提供するサービスの特徴は、一般的な電子認証はもちろんのこと、「行政書士」「司法書士」「社会保険労務士」「土地家屋調査士」といったいわゆる士業向けの電子証明書を発行している部分にあります。
三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社 DIACERTサービス
三菱電機が提供しているサービスは2種類ありますが、こちらは電子申請、電子納税、電子出願用途や電子契約などを必要とする際に利用するサービスとなります。
三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社 DIACERTサービスーPLUS
こちらは主に公共団体などに対する電子入札に利用するためのサービスとなります。対象となる行政は幅広く、例えば全国にある多くの自治体や政府関連の電子入札に対応しています。
株式会社エヌ・ティ・ティネオメイト
e-Probatio PS2
このエヌ・ティ・ティネオメイトは、他の電子認証局と同様に公的機関への申請用にも利用できますが、この会社独自に様々な電子契約サービス会社と提供しており、例えば「CECTRUST電子契約サービス」「電子署名システム デジ印」「瞬簡PDFサイン2」などといった電子契約サービスと連携する事で、簡単に電子契約を結ぶことが可能となります。
地方公共団体による公的個人認証サービス
こちらは「地方公共団体情報システム機構」という団体が運営しており、主に個人の「社会保険関係手続」や「自動車の登録等」、「電子申告」などの申請に対応しています。どちらかというと「行政に対する申請」というイメージが強く、電子契約等にはあまり馴染まないかもしれません。

電子認証局は、これまであまり利用されてこなかった

このように、事業者選定を含めた法的整備はしっかりとなされており、電子署名法が施行されてから既に約20年ほどが経過していますが、電子認証局はこれまであまり利用されてこなかったのが実情です。

先ほどの認証機関の説明でも分かると思いますが、これまでは政府や地方自治体向けの「電子申請」「電子入札」向けが中心であり、建設業や士業の方には馴染みがあったと思いますが、現在注目されている「電子契約」における利用はかなり低いのが現状です。

これには様々な理由があると思いますが、概ね以下のような事由から利用が進まなかったと考えられています。

電子認証局の利用が進まない理由
  • 電子認証の手続きに時間がかかり、オンライン上で素早く完了するという利便性が感じられない。
  • 電子契約を結ぶ場合、相手側も同様に電子署名の証明書発行を必要とするため、お互い手間に感じる。
  • 維持費などにおいて、それなりの費用が発生する。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大や、緊急事態宣言などの影響などにより、徐々に電子署名による契約に興味を持つ企業も増えてきているようです。

近年注目されている「電子契約サービス」

とは言え、やはり電子認証局を利用した電子契約はハードルが高いという理由から、電子契約の導入に躊躇する企業が多いのも確かです。

そこで最近注目されているのが、電子認証局の認証が不要となる「電子契約サービス」です。

通常、電子契約を結ぶ際には、以下の図のように契約者双方がそれぞれの電子署名に対して認証局の証明書を必要とします。

その分、法的効力が高いと言えるのですが、時間や費用がかかってしまう事になり、お互いにとって負担でしかありません。

そこへ行くと電子契約サービスを提供している会社を利用すれば、以下の図のように全ての手続きがサイト上で完了するため、その手軽さからここ数年で利用する企業が急増しています。

 

 

とは言え、あくまでも民間事業者が証明するものですから、その会社が倒産する恐れもありますし、認証局を利用しない為、法的効果に疑問が残ります。

こうした電子契約サービスを提供する事業者の中には、認証局の認証を絡めたサービスを提供している会社もありますから、そこは契約書の内容によって使い分けるなど、柔軟な対応が必要となるでしょう。