公認会計士試験合格から税理士になる「メリット・デメリット」

「税理士になりたい」と、目標を定めた人は、多くの場合まず「税理士試験合格で税理士になる」「公認会計士試験合格で税理士になる」かのいずれかで悩むことが多いようです。

実際、資格の専門学校においても、生徒からそのような質問を受ける事が多々あるとか(某大手専門学校講師談)。

また、大学においても「会計のプロ」になりたいと考える学生は、「公認会計士と税理士の違い」や、「どちらが就職などに有利なのか?」などと悩むことも。

公認会計士と税理士の違いについては、宜しければこちらの記事を参考にしてみて下さい。

 

 

こういった疑問を解消するため、現役の公認会計士の方や、税理士の方に質問する事もあるでしょうが、そういった方々は「自分の経験」に基づいて返答する事になります。

すると、どうしても偏った内容となるため、「結局、どっちが良いの?」と、更に悩みが深くなるかもしれません。

しかし当サイトでは、両方の立場の方の意見を熟知しているため、客観的な立場から、公平な内容をお伝えしています。

もちろん、何事にも「向き・不向き」がありますので、「絶対にこの方法が良い」などという答えはありません。

そこで、記事においては「公認会計士合格から税理士になるメリット・デメリット」についてお伝えしていますので、その内容を理解した上で「自分は公認会計士試験をうけよう」「いや、税理士試験を受けよう」という判断材料に利用してもらえたらと思います。

試験内容の大まかな違い

税理士試験と公認会計士試験の詳しい内容については、それぞれの記事がありますので、深く知りたい方はそちらをご覧になってみて頂ければと思います。

 

 

ここではまず、両試験の「大まかな違い」についてご説明します。

公認会計士試験と税理士試験との「一番分かり易い大きな違い」といえば、公認会計士試験が「短答式試験」「論文式試験」に区分されている事に対し、税理士試験にはそういった区分が無いという事です。

簡単に言うと、税理士試験が「どの科目からでも受験できる」事に対し、公認会計士試験は「短答式試験」に合格しなければ、「論文式試験」を受験する事が出来ないという事になります。

試験科目の違いとしては様々ありますが、会計の基本となる「簿記」「財務諸表論」といった科目については同じようなスタンスとなります。

ただ、法律系の試験においては、税理士試験は税法メインとなりますが、対して公認会計士試験は、企業法や監査論といった公認会計士特有の問題が出題される事になります。

また、税理士試験は「受験資格」が必要なのに対し、公認会計士試験は受験資格を必要としないという違いがあります。

以上をまとめると、下記のようになります。

税理士試験公認会計士試験
受験資格の有無必要不要
試験の区分必須科目、選択必須科目の有無はあるが、基本的に5科目合格すれば良い「短答式試験」合格後、「論文式試験」に合格する必要がある
会計科目「簿記論」「財務諸表論」は、選択必須科目基本は税理士試験と同じようなスタンス
法律系科目税法のみ会社法、民法など多岐に渡る

公認会計士試験合格から税理士になるメリット

それでは、上記を踏まえた上で、公認会計士試験合格から税理士になることのメリットについてお伝えします。

公認会計士、税理士の両方の業務ができる

まずは、「公認会計士、税理士の両方の業務ができる」という事。

以前は、公認会計士試験に合格さえすれば、税理士に登録する事ができ、税理士の業務を扱うことが出来ました。

ただ、現在においては公認会計士試験に合格しただけでは税理士登録はできず、研修等を受ける必要が生じます。

とは言え、ある程度の条件をクリアすれば、公認会計士の業務も行えますし、税理士の業務も行うことも出来るという訳です。

ここで勘違いしてはいけないのが、公認会計士が税理士の業務を行うためには「税理士の登録が必須」になるという事です。

サイトによっては、あたかも「公認会計士に登録すれば、税理士業務を行える」かのように説明しているものもありますが、これは全くの誤りで、むしろ、公認会計士が税理士登録をせずにおこなった税務業務は、「税理士法違反」となりますのでご注意ください。

登録費用などの年間負担は生じますが、幅広く業務を取り扱えるというメリットがあります。

これに対し、税理士試験に合格しただけでは公認会計士に登録する事は出来ませんので、「選択肢が多い」という点では、公認会計士試験に合格する方が有利と言えるでしょう。

税理士試験より短期間で合格しやすい?

次が「税理士試験より短期間で合格しやすい」という事。

これに関しては、現在公認会計士として働いている人からすると、異論があるかもしれません。

確かに、どちらも難しい試験ですし、一律に試験の難易度は判別する事は出来ません。

しかし、当サイトの調べによると、税理士試験合格者が5科目合格するまでの「平均勉強時間」が約5,000時間である事に対し、公認会計士試験合格までの平均勉強時間が約4,000時間ですので、合格までの道のりは、公認会計士試験の方が効率的と見ることも出来ます。

仮に、平日の5日間は毎日3時間勉強し、土曜日は6時間、日曜日は休息とします。

そうすると、一年間は約52週あるので(5日×3時間+6時間)×52週ですから、このペースですと1年間で合計「1,092時間」の学習時間となります。

という事は、このペースの勉強時間ですと、税理士試験では合格までに約5年間かかり、公認会計士試験では約4年間かかることになります。

実際には、合格までにもっと時間を要す人もいれば、逆に短期間で合格する人もいるので何とも言えませんが、一般的な公認会計士試験の合格までの平均年数が3年と言われていますので、間違いなく税理士試験を受験するよりは短期間で済む事でしょう。

登録後の就職先が豊富

税理士試験に合格し、2年の実務経験を経て税理士登録したとしても、その後の就職先としては「税理士事務所(会計事務所)」がメインとなるでしょう。

これに対し、公認会計士登録者の就職先は多岐にわかれています。

一例を挙げるとすれば、

公認会計士合格者の就職先
  1. 監査法人
  2. 税理士事務所(会計事務所)
  3. コンサルティングファーム
  4. 大企業の経理・財務
  5. ベンチャー企業のCFO(最高財務責任者)
  6. 金融機関

と、公認会計士へ対する需要は様々あります。

もちろん、2年間の実務経験などを経て公認会計士に登録しない限りは、ここまで道は開けませんが、長期的な視野で考えると就職においては何かと有利と言えるでしょう。

就職時の給料が高い

そして、公認会計士は「初任給が高めに設定されている」という点も見過ごせません。

基本的に、公認会計士合格者は実務経験を得るため、そのほとんどがまず監査法人へと就職します。

そこでの初年度の給与は、ボーナスを含め450万円から600万円程度と言われています。ここに幅があるのは、人によっては残業時間の程度が異なるためであり、基本的には500万円程度が平均と言えるでしょう。

これは、一流企業と比べても遜色のない金額と言えるので、税理士事務所の初任給よりは高収入であると言えます。

しかしながら、これは「大学卒業時、すでに公認会計士試験に合格」していればという前提ですので、仮に、30歳で合格してから就職となれば、同年代の収入からは見劣りする可能性もあります。

これに対し、税理士事務所に就職した場合は、事務所の規模よるのでなんとも言えませんが、未経験者に対してここまで高額な給与を支給する事務所は殆どないと考えたほうが良いでしょう。

国際税務に強くなれる可能性も

そして最後のメリットが、「国際税務に強くなれる可能性がある」という事。

「可能性がある」というのは、あくまで全員がという訳でなく、就職先の業務内容によるという条件付きにはなります。

というのも、前述した通り、公認会計士試験合格者のほとんどが、合格後すぐに監査法人へと就職しますが、監査法人は規模が大きく、就職したからと言って全ての業務に携われるわけではありません。

本人の意見を尊重する事もあるようですが、基本的には、各部署へと均等に割り振られていくことが多いようです。

 

ですから、運が良ければ国際税務に携われることも出来るという訳です。

 

ここで、「何故、国際税務に強くなることが良い事なのか?」と、疑問に思いますよね。

その一番の理由というのが、「国際税務を得意とする税理士が少ないから」なのです。

現在、インターネットの普及に伴い、多くの方が国際取引に参加し始めています。これは、企業だけでなく、個人の方も同様です。

それと同時に、こういった方々の多くが国際税務に頭を悩ませているのですが、税理士のほとんどが国際税務を苦手としているため、「誰に相談したら良いかわからない」という人が数多くいます。

現在、税理士の方々は、税理士間の競争が激化しているため「相続税専門」や「不動産専門」といった、特化型に取り組むことで、優位性を保とうとする動きとなっています。

しかし、「国際税務専門」という税理士はまだまだ少なく、参入余地がかなり大きい分野だと言えるでしょう。

公認会計士が独立するとすれば、税理士に登録して、まずは税理士業務で安定的な収入を増やすことがセオリーですが、この「国際税務」に特化する事で、他者との差別化が容易に行えます。

アナタが語学に自信がるのなら、是非この「国際税務」の経験を積むことをお勧めします。

公認会計士試験合格から税理士になるデメリット

このように、公認会計士試験合格を経ての税理士登録は、良い事ばかりのように思いますが、実はデメリットも多くあります。

それでは次に、デメリットについてもご紹介しましょう。

税理士に比べれば、税務知識は劣る?

まずは、「税理士に比べ、税務知識は劣る場面がある」という事。

これに対しては、公認会計士の方からすると反論もあるかと思います。実際、税務知識の高い公認会計士出身の税理士の方もいる事は事実です。

しかし、「相対的に見て」国内税務において言えば、やはり専門的に特化している税理士の方が上であると言わざるを得ません。

この理由としては、業務内容を対比させればよくわかります。

公認会計士は監査業務をメインとすることに対し、税理士は税務業務をメインとします。

どちらも似ているように感じるかもしれませんが、実は会計と税務は、似ているようで異なる部分が多いのです。

例えば会計上は損失が出ておらず、黒字決算のように見えても、税務上は赤字であり、数年間税金を支払っていない大企業はたくさんあります。

これは、会計上の処理と、税務上の処理が異なるために発生するのですが、クライアントが中小企業主体である場合、あまり会計上の処理を重視しません。

現役の公認会計士の中には、「公認会計士試験には租税法が含まれているし、合格後の修了考査でも『税に関する理論及び実務』があるから、税務に必要な能力は十分にある」と主張する方もおられます。

しかしながら、やはり「餅は餅屋」であり、税務の現場で日々奮闘する税理士に比べれば、経験値ではかないません。

もちろん、全ての税理士が優秀であるとは言いませんし、一律に比べる事はできませんが、「国内税務に精通したい」と思うなら、税理士試験合格を経て税理士になったほうが得策です。

合格後にもハードルがある

税理士に比べ、公認会計士は、合格後のハードルが多い事が難点となります。

公認会計士は、試験に合格しただけでは登録できず、下記のようなハードルを経て、ようやく登録が可能となります。

合格後のハードル
  1. 2年間の実務経験
  2. 3年間の実務補修
  3. 修了考査の合格

まず、「2年間の実務経験」ですが、これは監査法人や事業系会社で監査業務等の業務の経験が必要となります。

公認会計士試験合格者は、多くの場合これをクリアするために「監査法人」へと就職します。ただ、税理士も登録するためには2年間の実務経験を求められるので、ここはあまり差が無いかもしれませんね。

そして次の「3年間の実務補修」ですが、これは、公認会計士試験合格後に研修機関等で行う座学講座で、必ず一定の単位を取得しなくてはいけません。

ペースとしては、初年度に取得すべき単位が多いので、初年度は週1~2回の受講が求められます。

(一応、一定の条件をクリアすれば、補修期間を1年間短縮することも出来ます)

そして最後が、「修了考査の合格」です。

「試験に合格しても、まだ試験があるのか・・・」と、思ってしまいますよね。

これに合格できない限りは、何年経っても公認会計士に登録する事は出来ません。ただ、合格率は毎年70%台で推移しているので、よほどの事がなければ心配はいらないでしょう。

しかし、「30%は、必ず落ちている」事を考えれば、公認会計士登録までの道のりは、決して平たんではないと言えます。

この点、税理士にはこういった制度は無く、合格前、合格後いずれかに2年間の実務経験があれば登録できるので、「早く資格者として名乗りたい」という方にはおススメだと言えます。

また、以前は公認会計士試験に合格するだけで税理士に登録する事が出来ましたが、現在は一定の実務補修を修了してからでないと登録する事は出来ないこととなりました。

就職先によっては、知識に偏りが生じる事も

当サイト管理人が、公認会計士の方と話していてよく聞く内容が、「就職しても、最初は希望の業務に携われない事が多い」という事と、「ずっと同じ業務のため、幅広い経験が出来ない」という事です。

前述しましたが、公認会計士試験合格者のほとんどは、合格後の就職先として監査法人を選びます。

そこでそれぞれ業務を経験するわけですが、監査法人の規模が大きければ大きいほど、業務内容も細分化され、全ての業務を経験する機会が減ってしまいます。

要は「つぶしが効かない」という事です。

もちろん、一部の業務に特化すれば、その分野のエキスパートとして活躍することも出来ますが、数年後、税理士としても活躍したいのであれば、少し難しい点があるでしょう。

小規模の監査法人に就職すれば、色んな業務を経験することも出来るようですが、どちらも一長一短あり、知識の偏向はその後のキャリア形成に影響があると言わざるを得ません。

合格するなら、専門学校

公認会計士試験の合格を目指すのであれば、独学では難しく、どうしても「資格の専門学校」に通わざるを得ません。

有名どころとしては、やはり「資格の大原」「TAC」「LEC」になると思います。

どの学校を選択しても合格は出来ますが、それぞれ特徴があり、その特徴が自分に合うかどうかで選ぶことをお勧めします。

以下、各専門学校についてご紹介します。

資格の大原

資格の大原 公認会計士講座

会計の資格取得なら、何と言っても【資格の大原】が最大手です。合格実績、規模ともトップクラスで、多くの公認会計士合格者を輩出しています。当サイトとしては、一番お勧めの専門学校です。

特徴1特徴2特徴3
講師は、教える事のプロフェッショナルのため、理解しやすい講師が常駐しているので、いつでも質問できる全国規模で展開しているので、通学も便利
特徴4注意点-
通学コース、Webコースの併用も出来る受講生が多いため、自習室の空きがない事もある

 

TAC

規模の大きさ、合格実績では資格の大原と肩を並べる【TAC】ですが、ここ数年はあまり振るわない印象があります。とはいえ、これまでの実績もありますので、選択肢の一つとして考えるのも良いかもしれません。

特徴1特徴2特徴3
合格者しか講師になれないというこだわりがあるTAC出版TAC出版オンライン書籍サイト【CyberBookStore】の書籍は、多くの資格取得者に好評同様に、テキスト内容も評判が良い
注意点1注意点2-
ここ数年、公認会計士試験で振るわない印象講師がいつも常駐している訳ではない

 

LEC

規模的には上記専門学校に見劣りする【LEC】ですが、合格率では劣る事はありません。通学よりも、どちらかというと通信に強いイメージがあります。

特徴1特徴2特徴3
規模は上記専門学校では劣るが、合格実績は遜色ない通学よりも、通信に強いイメージ他に比べて、学費が安い
特徴4注意点-
通信の内容が充実しているので、忙しい人には勉強を効率的に進めやすい統一模試は、学生の絶対数が少ないため、模試だけは他の専門学校を受けたほうが良い

 

まとめ

如何でしたでしょうか?

確かに、「合格までの時間」「合格率」などを中心に考えれば、公認会計士試験を受験する方がお得のようにも思います。

しかし、合格後のキャリア形成について考えるなら、「どちらにも一長一短ある」という事がお分かり頂けた事でしょう。

試験は数年の事ですが、合格後の人生は長期間にわたります。

「自分は、どんな人生を送っていきたいのか?」についてよく考え、選択は慎重に行いましょう。