
先日の11月15日、「公認会計士・監査審査会」より、2019年の公認会計士試験合格発表が行われました。
合格された皆さん、おめでとうございます。
また、今回残念ながら不合格だった方も、次回に向けて気持ちを切り替えて頂ければと思います。
今回(2019年度)の公認会計士試験ですが、合格率は10.7%と例年並みとはいえ、受験者数が徐々に増加しているなどといった特徴があるようです。
そこでこの記事では、2019年度の公認会計士試験の特徴などについてお伝えします。
目次
受験者数は徐々に増加
今年の願書提出者数は12,532人と、前年の11,742人に比べ790人増加しています。
公認会計士試験の願書提出者は2015年に10,180人まで減少し、「このままでは10,000人を切るか?」と言われていましたが、ここ4年は連続して増加傾向にあります。
リーマンショックが引き金となり、そこから数年間、大手監査法人が新規採用を抑えたり大規模なリストラを行ったため、試験自体の人気も落ちましたが、ここに来てじわじわと人気が戻ってきているようです。
合格率は低下
今年の合格率は10.7%と、昨年の11.1%に比べ0.4ポイントマイナスとなっています。
しかし最終合格者数は、今年が1,337人で昨年が1,305人ですから、32人増加していることになります。これは受験者数が増えたため、その分合格者数が増えたのだという事が分かります。
ちなみに、ここで言う「合格率」とは、願書提出者に対する「論文式試験合格者」の割合を言います。
合格者の年齢
今年度の合格者の平均年齢は25.2歳と、昨年の25.0歳とほぼ変わりません。
また、合格者の最低年齢は18歳で最高年齢は62歳となっています。
傾向として、ほぼ毎年60歳代の合格者がいるようですが、平均年齢は徐々に低下していることが分かります。
合格者における女性の比率
今年の男性合格者は1,022人、女性合格者は315人であり、合格者に占める女性の割合は23.6%となっています。
しかし、今年度の願書提出者における女性の比率が24.4%ですから、公認会計士を目指す女性は「そもそもが少ない」と言えるでしょう。
男女間において合格率に差がある訳では無く、公認会計士試験は男性に人気があるという事です。
ただ近年、この女性比率は上昇傾向にはあります。公認会計士を含めた士業の男女比率について知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。
近年、「男女共同参画社会を目指す」として、国が主導となり女性の活躍を促す機運が高まっています。 これは士業においても同様で、各士業とも女性へのアプローチを積極的に行っており、その甲斐もあってか、昔に比べれば士業における女 …
合格者の職業
職業別の合格者割合でみると、「学生」が56.1%と圧倒的に多くなっています。次いで「無職」13.8%、「専門学校等」が12.8%と続きます。
ここからわかる事は、この公認会計士試験に合格するためには、学生時代に勉強に打ち込んで合格するか、そこで合格出来なかったとしても、数年間無職で受験勉強を続ける人が多いという事ですね。
ただし、それぞれの職業毎の「合格率」で見た場合、学生が15.0%と一番高いですから、必ずしも浪人してでも受験する事が合格に繋がりやすいかといえば、疑問の残るところです。
またその他の特徴として、2006年から2009年にかけて「その他」の合格者が多いですが、これは旧試験の名残りで「会計士補」の合格者が多い事からこのような比率となっています。
「専門学校等」の合格者比率は年々低下していますが、これは何も専門学校に通っている人の合格率が低いという訳ではありません。この理由は様々あるかと思いますが、多くの人は「合格後」を考えた場合、大学を卒業して就職したほうが有利だと考えるからかもしれません。
ですから多くの学生は、大学に通いながら専門学校に通うという「ダブルスクール」を選択する傾向が強いようです。
ちなみに、公認会計士試験においてダブルスクールを検討しているなら「資格の大原」がお勧めです。
2018年の公認会計士試験では、全国合格者1305名のうち、486名が大原の生徒ですから実に4割近くの合格者が大原の生徒であることがわかります。
短答式試験と論文式試験では合格率が違う
一般的に「合格率」と聞けば、受験者数に対する合格人数の割合で考えるかと思います。
しかし、公認会計士試験は「短答式試験」と「論文式試験」に分かれ、短答式試験合格後、論文式試験に合格してやっと「最終合格」となります。
ですから、上記でお伝えした「2019年度の合格率10.7%」というのは、今年度の願書提出者数から、この論文式試験合格者の割合を出しているため、必ずしも正確な数値とは言えません。
この辺は、公認会計士試験の受験生ならご存知ですよね。
要は、「短答式試験受験」⇒「合格」⇒「論文式試験受験」⇒「最終合格」という訳です。
単純に合格率10.7%と聞けば「狭き門なんだな」と思うかもしれませんが、例えば2019年の短答式試験の合格率は17.1%であり、論文式試験の合格率は35.2%ですから、そこまで難しく考える必要もないかと思います。
また、短答式試験は年2回、論文式試験は年1回ありますから、それなりにチャンスは多いともいえるでしょう。
下の表は、「短答式試験」「論文式試験」の合格率を分けたものです。
これを見ると、ここ数年の「最終合格率」は横ばいですが、論文式試験は毎年30%台で推移していることが分かります。つまり、短答式試験に合格し、論文式試験に臨めば「3人に1人は合格できる」という事が分かります。
また、前述したように短答式試験は年2回試験が実施されますから、頑張れば公認会計士試験は、それほど難しくないとも考えられるでしょう。
合格者の就職先
今回合格された方々は、既に就職活動を始めているかと思います。
通常、公認会計士試験合格者の就職先は「大手監査法人」がほとんどで、大学や専門学校などでも就職の案内がある事でしょう。
確かに、公認会計士試験に合格しただけでは公認会計士として名乗る事は出来ず、実務経験などが必要となるので、まずは監査法人などに就職しなくてはいけません。
しかし、その選択次第によっては、その後のキャリア形成にも影響を与えますから、出来たら下記の記事も参考にして頂ければと思います。
当サイトは、税理士についての情報を中心にお伝えしているサイトですが、公認会計士も税理士になれる事から、公認会計士にまつわる情報についても多数お伝えしています。 一般的に、税理士も公認会計士も「会計のプロ」であることに変わ …
世間的に公認会計士と聞けば、「頭が良いんだな」とか「年収も高いんだろうな」などと考える人もいるかもしれません。 しかし実際に、どのような仕事をしているのかや、勤務実態についてはあまり知られていないと思います。 そこでこの …
まとめ
どうしても公認会計士は、リーマンショック後の「就職難」というイメージが付きまとうので、受験に対し二の足を踏む人もいるかもしれません。確かに、現時点(2019年11月)における上場企業の業績は決して良いとは言えませんから、今後どうなるか流動的な部分はあります。
しかし、近年はどこの監査法人も人手不足ですから、いきなり「求人を縮小します」とはならないでしょう。
まずは来年合格に向けて、スタートを切ってみては如何でしょうか?