公認会計士の年収や労働環境、転職などについて

世間的に公認会計士と聞けば、「頭が良いんだな」とか「年収も高いんだろうな」などと考える人もいるかもしれません。しかし実際に、どのような仕事をしているのかや、勤務実態についてはあまり知られていないと思います。

そこでこの記事では、公認会計士として働く人たちが一体どのような労働環境で働き、どの程度の年収を得ているのかなどについてお伝えしようと思います。

公認会計士を一括りに説明する事は難しいですが、おおよその傾向は掴んでいただけると思います。

目次

公認会計士の登録者数

まず、公認会計士の登録者数について。

2020年3月現在、日本国内において登録されている公認会計士の人数は、31,793人となっています。

様々なサイトを見ると、公認会計士の登録者数がバラバラで分かりにくいと思いますが、公認会計士協会には「会員」と「準会員」というものがあり、準会員には単に公認会計士に合格したのみの人も含まれていますから、これら準会員なども含めると39,255の総会員数となります(法人もこの会員数に含まれるため、単純に人数とはなりません)。

つまり、公認会計士として登録して「実際に活動している人」に限って見るのならば、31,793人になるということですね。

会員数だけで見るのならば、2000年当時で16,656会員となりますから、この20年ほどで2倍以上に増加している事が分かります。

登録者数を他の士業と比較したいのであれば、こちらの記事も参考にしてみて下さい。

 

公認会計士試験の合格率

次に、公認会計士試験の合格率について。

一般的に公認会計士試験は難関国家資格として知られ、合格率は毎年10%前後で推移しています。

上のブラフは、過去14年分の公認会計士試験の合格者と合格率の推移となっており、直近の2019年の合格率は10.7%となっています。

2008年頃までは高い合格率となっていましたが、当時は政府が公認会計士を増やすために試験制度改革を行ったため、一時的に合格者が増えた形となりました。しかし、金融危機の影響から、多くの監査法人が試験合格者の採用を控えたため、多くの就職浪人を増やす結果となってしまったのです。

これを重く見た政府は、その後、公認会計士の大量合格者を輩出する試験内容を見直し、その結果、近年は合格率10%前後で推移する形となったのです。

この傾向は、今後も同程度で続いていくと考えられます。

公認会計士の年収

続いて、公認会計士の年収についても見ていきましょう。

公認会計士の職域は幅広いため、全ての公認会計士が監査法人に勤務しているという訳ではありません。コンサルティングファームで働いている人もいれば、投資銀行などで働いている人もいます。

ですから、「公認会計士だからいくら」という年収額というものは、ハッキリと示せないのが正直なところです。

とは言え、現状(2020年時点)で監査法人に所属する公認会計士は約14,000人程度と、全体の約半数に上りますから、監査法人に勤務した場合にどの程度の年収が支払われるのかについて知る事で、おおよその傾向は掴めるのかと思います。

監査法人の役職

まず、監査法人における役職についてからご説明します。

その法人にもよりますが、一般的に監査法人に新入社員として入社すると「スタッフ」という立場からのスタートとなります。

その後、順次役職が上がっていき、「シニアスタッフ」「マネージャー」「シニアマネージャー」の順で、最後は経営者である「パートナー」というのが最高の役職となります。

それぞれ一般企業とは呼び名が異なりますから、あまりピンとこないと思いますので、一般企業の役職と対比させた表も参考にしてみて下さい。

監査法人における役職一般企業における役職
スタッフ平社員
シニアスタッフ係長クラス
マネージャー課長クラス
シニアマネージャー部長クラス
パートナー取締役

 

上記の内容は、代表的な役職となっていますが、監査法人によっては「アソシエイトパートナー」などといった役職を設けている場合もあります。

また、パートナーとなっても、その上に「理事」「理事長」といった役職もありますので、役職の種類はかなり幅広い事が分かります。

役職ごとの年収

それでは次に、監査法人における役職ごとの年収について。

その法人ごとに多少の違いはあると思いますが、概ね以下の表の年収額になるかと思います。

一般的な年収額昇進するための最低年数
スタッフ450万円~600万円3年程度
シニアスタッフ600万円~800万円5年程度
マネージャー800万円~1,200万円5年程度
シニアマネージャー1,200万円~1,500万円5年程度
パートナー1,500万円以上

 

これでいくと、新入社員の年収が平均で500万円程度となりますから、大手企業と比べても遜色ない事がお分かり頂けると思います。

仮に大学在籍中に公認会計士試験に合格出来たなら、新卒で450万円~600万円の年収を得る事が出来るのですから、公認会計士が世間的に「高収入」と言われるのも納得できますよね。

参考として、次の役職に昇進するための最低年数も記載していますが、これでいくと、20代のうちに年収1,000万円も夢でないことが分かります。

公認会計士の労働環境

このように、高額な年収を得る事が出来る公認会計士ですが、労働環境においてはどうなのでしょうか。

実は、先ほどの表において年収額を〇〇〇万円~〇〇〇万円と幅を持たせているのには理由があり、なぜ年収に幅があるかというと、それぞれ「残業数」が個人個人で異なるからです。

要は、仮にスタッフの年収で見るならば、残業の少ないスタッフは450万円程度の年収となり、残業の多いスタッフは600万円程度まで上昇するという事です。

公認会計士が書いた書籍やブログなどを見ると、「繁忙期はそれなりに残業も多いが、それ以外であればまとまった休みも取得できますよ」などと書かれていますが、これらの公認会計士の多くは、既に監査法人を退職している事が多く、自身が勤務していた数年前の実態から語っている事が多いようです。

しかし近年、大手企業の不正会計が頻発している事により、監査法人の作業量が以前にもまして増加しているのが現実です。

特に大手企業の監査をしている公認会計士からは、以前に比べ作業量が3割ほど増加しているとの声も聞こえてきます。上場企業の決算は3ヶ月ごとにあるため、これらを担当する公認会計士は、常に忙しいというのが現実のようです。

ただし、所属する部署によっても残業の量が異なりますから、一律に全員が忙しいという訳でもなさそうです。

公認会計士における女性比率

よく「アメリカの公認会計士の女性割合は50%」などと、諸外国でいかに公認会計士が女性に人気があるかのように論じられていますが、これは制度の違いなどもありますから日本と単純に比べる事は出来ません。

特にアメリカは報酬も高く、社内制度も日本より進んでいますから、これはあまり参考にはならないでしょう。

実際に、日本国内の公認会計士に占める女性割合は14.1%(2018年時点)と極めて低く、事業所全体で見ても有資格者でないスタッフを含めて32.3%と、士業の中でもかなり女性の割合が低くなっています。

こちらについて詳しく知りたい方は、下の記事も参考にしてみて下さい。

 

 

公認会計士試験の合格者に占める女性比率は、2019年度試験では23.6%と上昇傾向にはありますが、実際には、一旦監査法人に就職したとしても数年で転職する女性が多いため、全体的な女性比率の向上には繋がっていないようです。

様々な媒体などで、「公認会計士は女性が活躍しやすいですよ」とか、「女性が働きやすい」などと宣伝していますが、実際には女性が働きやすい環境整備が出来ていない結果、こうした短期離職組が増えているのかもしれません。

公認会計士の転職先

前述しましたが、日本の監査法人の幹部に当たる「パートナー」の年収は、1,500万円~2,000万円程度とされ、一般企業に比べれば高いほうだとされますが、これがアメリカとなれば1億円以上の報酬もあるため、「責任やリスクに比べ、日本の監査法人は割に合わない」と考える会計士も多いです。

そうなると、同額の報酬で、尚且つ残業などが少ない企業に転職したほうが良いと考えるのが当たり前かもしれません。

世間的に公認会計士の需要は多く、考えられる転職先としては以下の通り。

公認会計士の転職先
  • 大企業の経理部門・経営企画
  • コンサルタント会社
  • ベンチャー企業のCFO(最高財務責任者)
  • 税理士事務所
  • 金融機関

まず、「大企業の経理部門・経営企画」については、近年、大企業における会計は複雑化しており、例えば「連結財務諸表」「IFRS対応」など、組織内会計士のニーズはどんどん高まっています。

大企業に転職すれば収入が下がる事も少なく、更に福利厚生もしっかりしている企業が多いですから、特に女性会計士には人気の転職先となっています。

次に「コンサルタント会社」ですが、公認会計士自体もコンサルタント業務に携わるため、外資系のいわゆる「コンサルティングファーム」に転職する事があります。しかしこうしたコンサルティングファームは、監査法人に負けず劣らず残業が多いですから、労働環境を重視する人にはおススメ出来ない選択肢だと言えます。

これは「ベンチャー企業のCFO」にも同じことが言え、業務内容が刺激的な分、同時に残業が多いという傾向があります。

その他「税理士事務所」「金融機関」なども公認会計士を積極的に雇い入れたいと考えていますが、これらに関しては監査法人より収入が減る事もあります。

 

 

ただし、中には「時給換算すれば、監査法人時代よりも上がった」という人もいますから、転職を検討している場合は、その転職先の労働条件などをしっかりと確認するようにしましょう。

公認会計士におススメの転職サイト

それでは最後に、公認会計士におススメしたい転職サイトについてご紹介します。

それぞれ特徴が異なりますから、自分に合ったサイトを選んで、納得のいく転職先を見つけましょう。

公認会計士の転職に特化:「マイナビ会計士」


このマイナビ会計士は、公認会計士の転職に特化したサービスとなっており、掲載されている企業の内容も、監査法人だけでなくコンサルティングファームやベンチャー企業CFOなど、様々な領域における公認会計士の活躍の場を提供しています。

通常のサイト上にはあまり案件は掲載されていませんが、無料の会員登録をすれば数多くの企業を検索する事が出来ます(約8割の企業が非公開案件)

対象となる士業主な特徴その他

公認会計士のみ

求人企業の8割以上が「非公開案件」

IPO支援、事業承継、M&Aアドバイザリー、投資銀行業務、経営企画など様々な領域から選択できる

専任のキャリアアドバイザーが、就職前から就職後まで長期間に渡って対応してくれる

転職先は、4割が事業系会社、3割がコンサルティングファーム

 

会計職に特化:「ジャスネットキャリア」


豊富な転職情報【ジャスネットキャリア】

このジャスネットキャリアは、会計の仕事に特化した転職サイトとして有名で、税理士事務所や公認会計士事務所といった専門的な求人において、国内でもトップクラスの求人数となっています。

また、大企業の経理職の求人も多いですから、士業事務所で働きたい人のみならず、会計職全般で転職先を探している人にはとても便利なサイトだと言えます。

対象となる士業主な特徴その他

公認会計士、および試験合格者

税理士、および科目合格者

USCPA

簿記検定合格者

会計職の転職に特化したサイトで、求人件数は業界トップクラス

大企業の経理職の求人、ベンチャー企業CFOなど、経理の管理職の求人も多数

非公開求人は99%

弁護士、司法書士、行政書士など、その他士業の求人案件も掲載

「経理実務の学校」という動画配信サイトを運営しており、ジャスネットに登録すれば、無料で講座を視聴する事も可能

 

難関資格、高額報酬:「MS-Japan」


このMS-Japanは、管理部門の転職に特化したサイトとして知られ、士業の転職案件を数多く掲載しています。東証1部上場も果たし、業界内でも認知度は高いと言えます。

管理部門に特化しているだけあり、高額報酬の案件が数多くありますから、年収アップを狙っている人にはおススメのサイトだと言えるでしょう。

対象となる士業主な特徴その他

弁護士・公認会計士・税理士および、試験合格者

弁理士・社会保険労務士・USCPA

会計事務所、法律事務所での業務経験者

管理職候補をメインターゲットとしているため、高額報酬案件が多数ある

求人件数、常時4,000件以上掲載

年収1,000万円以上の案件や、50代以上限定の案件もあり、幅広い層の求職者にもおススメ

セミナーや個別相談会を常時開設しており、現在転職するか迷っている人も気軽に相談できる

 

まとめ

年収の高いとされる公認会計士ですが、その分、残業も多い事を覚悟しなくてはいけません。

しかし、監査法人で数年勤務した実績があれば、多くの企業から引き合いがありますから、若いうちに頑張った分だけ後は楽になるという考え方もできます。

最近の若手公認会計士は2~3年で退職する事が多いようですが、出来れば5年ほど頑張ったほうが、後々いい結果を引き寄せる事になるかと思います。