
新型コロナウイルスの感染拡大や非常事態宣言の影響などにより、在宅において業務が可能となる「テレワーク」を導入する企業が増えています。
しかし、そのほとんどが大企業中心となっており、資金的に厳しい中小事業者などは、導入を見送っている場合もあるでしょう。
そこで政府としても、そうした中小事業者のテレワーク導入を支援するため、様々な助成金事業を立ち上げていますが、ただ残念ながら、様々な省庁が独自の助成金事業を行っているため、それを探すだけでも一苦労というのが現実です。
そこでこの記事では、現在(2020年5月)において、「新型コロナウイルス対策」としてテレワークを導入した企業などが利用できる「助成金事業」などについて、申請先や期限などを分かり易く整理したものをお伝えしようと思います。
目次
テレワーク関連政策を運営している行政庁
まずは、現時点(2020年5月)において、テレワーク関連政策を運営している行政庁についてから。
このテレワーク関連政策とは、単に機器の購入に対する助成だけではなく、テレワークシステムを導入するにあたり、情報セキュリティなどについて専門家を無料で派遣してもらえる事業も含めます。
まず、助成金事業を行っている行政庁についてはこちら。
- 厚生労働省
- 経済産業省
- 東京都
次に、その他の導入支援を行っている行政庁はこちら。
- 総務省
- 東京都
それでは、それぞれの事業内容についても見ていきましょう。
助成金事業を行っている行政庁
前述したように、テレワーク導入における助成金事業を行っている行政庁は、「厚生労働省」「経済産業省」「東京都」の3つとなりますが、実はこの全ての行政は、新型ウイルスの感染拡大前からこうしたテレワーク支援事業を展開していました。
しかし、今回の非常事態宣言などの影響で、多くの企業がこのテレワークに注目する事となり、行政としても幅広い企業に更なる導入を促すため、今回新たに「新型ウイルス対策」として、助成額の引き上げなどを行っています。
ですから、これらの助成事業に申請する場合は、コロナ対策の事業に申請したほうが受け取れる額が多くなる可能性があります。
ただし、申請期間がかなり短くなっていますので、現在検討されているのであれば早めに申請する事をお勧めします。
厚生労働省
まずは「厚生労働省」から。
厚生労働省は、新型ウイルス感染拡大以前から創設している「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」と、新型ウイルス感染拡大後に創設した「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」の2種類の助成金事業を行っています。
主な違いとしては、例えば通常のテレワークコースは「成果目標の達成」などを基準に助成額が変わる仕組みである事に対し、コロナ対策のテレワークコースはそこまで厳格な適用要件を求められないなど、基準が緩いという傾向があります。
ただし、助成額で言えば通常のテレワークコースの方が高くなりますから、そこは自社の置かれた状況をよく判断した上で選択する必要があります。
働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)
【概要】
時間外労働の制限、その他の労働時間等の設定の改善及び仕事と生活の調和の推進のため、在宅又はサテライトオフィスにおいて就業するテレワークに取り組む中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成するもの。
【申請期限】
2020年4月1日~2020年12月1日まで
※支給対象事業主数は、国の予算額に制約されるため、12月1日以前に受付を締め切る場合あり。
【支給額】
成果目標の達成状況 | 達成 | 未達成 |
---|---|---|
補助率 | 3/4 | 1/2 |
1人当たりの上限額 | 40万円 | 20万円 |
1企業当たりの上限額 | 300万円 | 200万円 |
その他詳しくは、厚生労働省HPの「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」のページでご確認ください。
新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース
【概要】
前述した「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」において、新型コロナウイルス感染症対策を目的とした取り組みを行う事業主を支援するため、時限的に設置された特例コース。
追記:これまでは、5月31日までに事業を開始しなくてはいけませんでしたが、テレワーク機器の在庫がひっ迫しているなどの理由から、事業開始を「6月30日又は交付決定後2ヶ月を経過したいずれか遅い日」まで延長する事になりました。同時に支給申請日も延長(2020年5月24日発表)。
ただし、交付申請期限は従来通りとなっています。
【申請期限】
交付申請:2020年5月29日(金)まで ⇒ 上記延長
支給申請:2020年7月15日(水)まで ⇒ 2020年9月30日まで
【支給額】
補助率:1/2(1企業当たりの上限額100万円まで)
その他詳細については、厚生労働省HPの「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」のページでご確認ください。
経済産業省
次に「経済産業省」の事業について。
経済産業省も厚生労働省と同じく、新型ウイルス感染拡大前よりこのテレワーク助成事業を行っていました。どちらも「IT導入補助金」という名称ではありますが、従来タイプが「通常枠(A・B類型)」という呼ばれ、今回拡充分が「特別枠(C類型)」と呼ばれています。
これらの主な違いとしては、「①特別枠の場合、レンタル費用も対象となるが通常枠は購入のみ」「②補助金額や補助率が、特別枠の方が高額」などといったものが挙げられます。
IT導入補助金(通常枠A・B類型)
【概要】
中小企業・小規模事業者等が、自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助する事で、それぞれの企業の業務効率化・売上げアップをサポート。
【申請期限】
1次公募:(終了)
2次公募:2020年5月11日~2020年5月29日 17:00まで
3次公募:2020年9月末(予定)
4次公募:2021年1月末(予定)
【支給額】
A類型:30万円~150万円未満
B類型:150万円~450万円
補助率:1/2以下
その他詳細については、一般社団法人サービスデザイン推進協議会が運営する「IT導入補助金2020」のサイトをご覧になって下さい。
IT導入補助金(特別枠C類型)
【概要】
この特別枠C類型は、昨今の新型コロナ感染症が事業環境に与えた影響への対策及び同感染症の拡大防止に向け、具体的な対策(サプライチェーンの毀損への対応、非対面型ビジネスモデルへの転換、テレワーク環境の整備等)に取り組む事業者によるIT導入等を優先的に支援するために創設。
【申請期限】
1次公募:2020年5月11日~2020年5月29日 17:00まで
※2次公募以降は未定
【支給額】
C類型ー1:30万円~150万円未満
150万円~450万円(従業員の賃上げが必須条件)
C類型ー2:30万円~300万円未満
300万円~450万円(従業員の賃上げが必須条件)
補助率 :2/3
その他詳細に関しては、「IT導入補助金2020」をご確認ください。
東京都
テレワーク関連の助成事業においては、国が中心となって進めている印象が強いですが、各地方自治体も同様の施策を行っています。
特に積極的なのが東京都で、補助率も満額支給であることから、国の補助金制度を利用するよりも有利となる可能性があります。
ただし、対象企業が東京都内に限られている事や、東京都が実施する「2020TDM推進プロジェクト」に参加している事などが要件となるため、一定のハードルが設けられています。
東京都が行っている助成金事業は、「公益財団法人東京しごと財団」が事業運営を担っています。
事業継続緊急対策(テレワーク)助成金
【概要】
感染症の拡大防止および緊急時の事業継続対策として、在宅勤務等を可能とする情報通信機器等の導入によるテレワーク環境の整備に対する助成。
【申請期限】
2020年3月6日~2020年6月1日まで ⇒ 2020年7月31日まで延長
※支給決定日以後「2020年7月31日」までに完了する取り組みが対象となります。 ⇒ 2020年9月30日まで延長
【支給額】
上限額:250万円
助成率:10/10
その他詳細については、公益財団法人東京しごと財団HP内の「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」のページでご確認ください。
はじめてテレワーク(テレワーク導入促進整備補助事業)
【概要】
東京都が実施する「テレワーク導入に向けたコンサルティング」を受けた企業等に対して、テレワークをトライアルするための環境構築経費および制度整備費を補助し、テレワーク導入促進を図るための事業。
※「テレワーク導入に向けたコンサルティング」とは、この記事内下部でも説明しますが、東京都が行っている「ワークスタイル変革コンサルティング」の事を指します。
【申請期限】
2020年4月8日~2021年3月31日まで
【支給額】
10万円~100万円
補助率:10/10
その他詳細については、公益財団法人東京しごと財団HP内の「はじめてテレワーク」のページでご確認ください。
テレワーク活用・働く女性応援助成金
【概要】
都内中堅・中小企業等が取り組む、家庭と仕事の両立や働き方改革の推進に向けた、テレワークによる職場環境の整備のために実施する事業に対する助成。
【申請期限】
※現在募集は終了。令和2年分事業の予定は未定。
【支給額】
テレワーク機器導入事業 :250万円・助成率1/2
サテライトオフィス利用事業:250万円・助成率1/2
その他詳細に関しては、公益財団法人東京しごと財団HP内の「テレワーク活用・働く女性応援助成金」のページでご確認ください。
導入支援事業を行っている行政庁
それでは次に、「テレワークの導入支援事業」を行っている行政庁について。
この導入支援の特徴は、助成事業のように助成金・補助金を支給する訳ではなく、テレワーク導入をこれから検討している企業に対して、「無料」にてコンサルタントを派遣したりする内容となっています。
一口にテレワークといっても、「どんな設備が必要なのか」「就業規則の変更は必要なのか」など事前に検討すべき内容が多く、専門家の助けを借りないと思い通りの運用が出来ない可能性があります。
「テレワークを導入したいけど、何から手を付けたら良いのか分からない」という方は、是非利用しておきたい事業です。
総務省:令和2年度テレワークマネージャー相談事業
【概要】
テレワークの導入等を検討している企業・団体等に対し、テレワークの専門家(テレワークマネージャー)が無料で助言や情報提供等を行い、良質なテレワークの普及促進を目的とする。
【相談実施期間】
2020年4月1日~2021年3月31日
【相談費用・回数】
費用:無料
回数:新型コロナウイルス感染症対策期間は、当面の間「支援回数・1回の支援時間の上限なし」
その他詳細については、当事業委託先の株式会社NTTデータ経営研究所のHP内「総務省令和2年度 テレワークマネージャー相談事業」のページでご確認ください。
または、総務省HP「テレワークの推進」のページも参考にしてみて下さい。
東京都:ワークスタイル変革コンサルティング
【概要】
都内企業等のテレワーク導入を推進するため、専門のコンサルタントが訪問し、課題解決などの支援を無料で行う事業。
【相談実施期間】
2020年4月2日~終了日は未定
【相談費用・回数】
費用:無料
回数:最大5回まで
【その他注意事項】
東京都が行っている助成金事業のうち、このワークスタイル変革コンサルティングを受けなければ申請できない助成金事業があります。
以下がその一覧。
- はじめてテレワーク
- テレワーク活用・働く女性応援助成金
- 東京都中小企業制度融資 産業力強化融資
その他詳細については、東京都産業労働局の「ワークスタイル変革コンサルティング」のページでご確認ください。
まとめ
国を中心としたテレワーク関連の大規模な助成事業は以上となりますが、地方自治体によっては独自の支援策を打ち出しているところもあります。
例えば大阪府堺市などもこのテレワーク事業の助成事業を行っていたりしますから、それぞれお住まいの地域の自治体ホームページなどで確認するようにしましょう。
また、どの事業も「予算上限」を設けていることがありますから、場合によっては申請期限前に申し込みを締め切る事もあるのでご注意下さい。
各地方自治体が行う、テレワーク関連の助成事業についての記事はこちら。
現在、国を中心にテレワーク関連の助成事業が次々と発表されていますが、地域によっては自治体ごとに国とは異なるテレワーク支援事業を行っています。 あくまで「コロナウイルス対策支援」という性質が強いため、事業規模も小規模であり …
この他、コロナ関連の支援事業などについて知りたい方は、当サイト内の「コロナ関連」のページも参考にしてみて下さい。