
既にご存知の方も多いと思いますが、2019年度(令和元年度)分の確定申告の期限が延長されています。
当初の提出期限は2020年3月16日(月)まででしたが、これが4月16日(木)までに変更されました。
しかし、感染拡大や緊急事態宣言の影響もあり、国としては更に柔軟な姿勢で取り組むとして、4月17日以降の提出であっても原則として確定申告書を受け付けると発表しています。
そこでこの記事では、新型コロナウイルスの影響における、個人の確定申告やその納税の取り扱いなどについてお伝えしようと思います。
目次
個別延長の対象者
現状、2019年度の確定申告は、2020年4月16日までに前年比で9割程度の申告が行われているため、税務署としては4月17日以降に申告する人はかなり少ないと考えているようです。
ですから、4月17日以降の申告者を「個別延長」の対象者と表現しています。
今回の確定申告で、個別延長の対象者として認められる一般的な内容はこちら。
- コロナウイルス感染者
- 体調不良により外出を控えている人
- 平日に在宅勤務を要請されている自治体に居住している人
- 感染拡大により外出を控えている人
この他にも、具体的な事例として以下のようなものを例示しています。
- 依頼している税理士やその事務所のスタッフが、コロナウイルスに感染した場合
- 納税者や経理責任者が現在外国に滞在しており、ビザが発給されないなど
- 学校の臨時休業などの影響で、職員などが通常業務を行えないなど(依頼している税理士事務所も含む)
- 関係者が濃厚接触した疑いがあるなど
このように、幅広く対象を広げていますから、税務署としてもある程度の内容には対応してくれるでしょう。
「自分はどうなのか?」と不安に思う方は、所轄の税務署へ相談する事をおススメします。
申告期限、納付期限はいつまでか?
次に、申告期限と納付期限について。
4月17日以降の申告期限に関しては、今のところ特段の取り決めはなく、極論を言えば「申告書を提出できるようになった日まで」とされています。
しかし、今後の状況次第では変更となる可能性もありますから、詳しくは国税庁HPのコロナ感染症関連ページで確認するようにして下さい。
また、税金の納付期限に関しては、原則として申告書を提出した日と同日となっていますが、振替納税の振替日においては、所轄の税務署から個別に連絡が入るようになっています。
4月16日までに申告した場合の振替日と、4月17日以降に申告した場合の振替日についてはこちら。
従来 | 4/16までに申告 | 個別延長した場合 | |
---|---|---|---|
申告所得税 | 2020年4月21日(火) | 2020年5月15日(金) | 個別に連絡 |
個人事業者の消費税 | 2020年4月23日(木) | 2020年5月19日(火) | 個別に連絡 |
出典:国税庁HP
個別延長の申請方法
今回の個別延長における申請方法ですが、別途、申請書などを提出する必要はないようです。
申告書を提出できるようになったならば、その申告書の余白部分に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記入するだけで認められます。
基本的に、申告書を書面で提出する場合には、右上の余白部分に記載すれば足りますが、「e-Tax」などを利用する場合は、特記事項欄に別途記載する必要があります。
詳しくは、国税庁の「申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限の個別指定による期限延長手続に関するFAQ」をご覧になってみて下さい。
申告以外に期限が延長される主な手続き(個人の場合)
個人の場合、上記の確定申告の延長以外にも、様々な手続きにおいて延長が認められるようになっています。
個人に関連する主な手続きとしては以下の通り。
- 所得税及び復興特別所得税の更正の請求
- 所得税の青色申告承認申請
- 青色事業専従者給与に関する届出(変更届出)
- 所得税の青色申告の取りやめ届出
- 純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求
- 所得税の減価償却資産の償却方法の届出
- 所得税の減価償却資産の償却方法の変更承認申請
- 所得税の有価証券・仮想通貨の評価方法の届出
- 所得税の有価証券・仮想通貨の評価方法の変更承認申請
- 個人事業の開廃業等届出
- 贈与税の申告
- 贈与税の更正の請求
- 相続時精算課税選択届出
- 消費税及び地方消費税の確定申告
- 消費税及び地方消費税の更正の請求
- 国外財産調書の提出
- 財産債務調書の提出
上記が延長できる手続きとして国税庁のHPに掲載されていますが、これ以外にも対象となる手続きがあるかどうかについて知りたい方は、最寄りの税務署へ問い合わせてみて下さい。
納税が困難な場合
次に、今回のコロナウイルスの影響により納税が困難な場合について。
もともと日本の法律において、納税が困難な事業者などに対し、納税の猶予を与える制度があります。
現行法では、「換価の猶予」と「納税の猶予」というものがありますが、今回新たに「納税の猶予の特例(特例猶予)」というものが創設されました。
今回のコロナウイルスの影響で納税が困難となった人は、この特例猶予が認められることにより、最長1年間まで納税を猶予する事が可能となります。
ここで注意が必要なのは、あくまでも納税が猶予(延長)されるだけであって、免除されるわけではないという事。
従来の猶予制度と、今回の特例猶予の主な違いとしては以下の通り。
特例猶予 | 納税の猶予 | 換価の猶予 | |
---|---|---|---|
担保の提供 | 無担保 | 原則必要 | 原則必要 |
延滞税 | 全額免除 | 全額、又は一部免除 | 1.6%/年 |
延長期間 | 1年間まで | 1年間まで | 1年間まで |
通常の猶予であれば、原則として「担保の提供」や「延滞税」がかかりますが、今回の特例猶予を利用する事で、どちらも不要となります。
猶予制度を利用できる条件
それでは次に、前述した納税の猶予制度を利用できる条件に付いても見ていきましょう。
それぞれ、全てを満たす必要があるのでご注意ください。
- 一時の納税により、事業の継続・生活維持が困難となるおそれがあること。
- 納税について誠実な意思があること。
- 納期限から6ヶ月以内に申請があること。
- 猶予を受けようとする国税以外に滞納が無いこと(例外あり)。
- 新型コロナウイルスの感染症やそのまん延防止のための措置の影響により、令和2年2月1日以降の任意の期間(1ヶ月以上)において、事業等に係る収入が前年同期と比べて概ね20%以上減少していること。
- 一時に納税する事が困難であること。
今回、仮に特例猶予が認められなかったとしても、従来の「納税の猶予」「換価の猶予」で認められる可能性もありますから、諦めずに税務署などに問い合わせるようにしましょう。
現時点(2020年5月)においては、上記の条件となっていますが、今後の情勢次第では変更される可能性もありますから、詳しくは国税庁HPの「国税の納税の猶予制度FAQ」をご覧になられるか、「国税局猶予相談センター」へ相談するようにして下さい。
猶予の申請
この納税猶予に関しては、確定申告の個別延長とは異なり、別途申請が必要となります。
現時点(2020年5月)においては、2020年6月30日までとされていますが、今後の状況次第で変更になる可能性もあります。
また、冒頭でお伝えした「申告の個別延長」の申請をされた場合には、その申告書の提出日が期限となります。
申請書は、国税庁のHPからダウンロードして、そこに必要事項を記載した上で提出する事になりますが、その他「収入や現預金の状況が分かる資料」などの提出も必要となるため、出来れば税理士などに申請を依頼したほうがスムーズに手続きが完了するかと思います。
その他、個人が申請できる「コロナ関連の特例」
以上は国税に関する内容でしたが、この他にも同様の特例があるのでご紹介しておきます。
それぞれ申請先が異なりますので、リンクページ先をよくご確認ください。
- 贈与税 - 贈与税関連FAQ(PDF)
- 相続税 - 相続税関連FAQ(PDF)
- 厚生年金保険 - 厚生労働省コロナ関連ページ(年金)
- 労働保険等 - 厚生労働省コロナ関連ページ(労働)
- 国民年金保険 - 日本年金機構コロナ関連ページ
通常、個人住民税に関しては、税務署に確定申告を提出する事でそのデータが各自治体に転送されます。
ですから、税務署にさえ申請してしまえば、あとは連携してくれるのだろうと勘違いしてしまうかもしれませんが、今回のコロナ関連における申請においては、それぞれの行政に対し、個別に申請しなくてはいけませんので十分注意してください。