
現在、新型コロナウイルス対策として、国税庁が法人税・所得税・消費税を中心とした国税の「申告猶予」「納税猶予」策を打ち出しています。
こちらについて詳しくは、以下の記事もご覧になってみて下さい。
既にご存知の方も多いと思いますが、2019年度(令和元年度)分の確定申告の期限が延長されています。 当初の提出期限は2020年3月16日(月)まででしたが、これが4月16日(木)までに変更されました。 しかし、感染拡大や …
コロナウイルス感染拡大により、ほとんどの企業が何かしらの影響を受けていると思いますが、国としても様々な特例措置を打ち出すことで、企業の負担軽減に取り組んでいるようです。 特に「税金関係」でその傾向が強く、国税庁はホームペ …
また、国税庁以外の行政機関等でも「猶予制度」や「減免制度」を発表しているところがあり、利用できるものは利用して、少しでも資金確保に努めたいところです。
そこでこの記事では、新型コロナウイルス対策として行政機関等が発表している「支払猶予制度」「減免制度」などについてお伝えしようと思います。
目次
地方税関連
まずは「地方税関連」についてから。
一口に地方税と言っても様々な種類がありますので、以下においては、新型コロナウイルス対策の対象となっている地方税について列挙します。
- 法人住民税
- 法人事業税
- 個人住民税
- 個人事業税
- 固定資産税等
地方税納税猶予等の基本的な考え方
基本的に地方税に関する裁量権は地方自治体にありますが、2020年4月30日に地方税法の改正が行われたことで、全国一律に新型コロナウイルス対策における地方税の納税猶予等のルールが決められることとなりました。
この納税猶予の「対象となる人」「申請期限」「猶予期間」などの内容は、全国の都道府県で同様の内容となっており、その内容は国税の適用要件とほぼ同等となっています。
国税等の納税猶予適用要件等については、以下の記事をご覧ください。
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詳しくは、お住まいの都道府県および市区町村HPをご覧になって頂ければと思いますが、総務省が公表している猶予に対する指針としては以下のようになっています。
- 猶予の対象となる人
- 以下①、②のいずれも満たす納税者・特別徴収義務者が対象。
① 新型コロナウイルスの影響により、2020年2月以降の任意の期間(1ヶ月以上)において、事業等に係る収入(給与や売上)が前年同期に比べて概ね20%以上減少している場合
② 一時に納付し、又は納入を行う事が困難な場合 - 対象となる地方税
- 2020年2月1日~2021年1月31日までに納期限が到来するほぼ全ての地方税(※一部を除く)
- 猶予期間
- 納期限から最長1年間
※ただし、予定中間申告による取り扱い等については、各都道府県で確認の事 - 申請期限
- 2020年6月30日、又は納期限のいずれか遅い日まで
- その他備考
- 猶予期間中の延滞金が全額免除
担保の提供が不要
猶予期間中における途中納付や分割納付にも対応
※(一部を除く)とありますが、総務省では「証紙徴収の方法で納めるものを除く」と表現しています。
証紙徴収の方法で納めるものは自治体によっても異なりますが、例えば「狩猟税」や「自動車税環境性能割」などがこれに当たります。
ここで、東京都と道府県では地方税の取扱いが多少異なりますから、都内にお住まいの方は少し注意が必要となります。
詳しくは、お住まいの地方公共団体HPにてご確認ください。
固定資産税・都市計画税は取り扱いが少し異なる
上記の内容は、「ほとんどの地方税は納税猶予の対象となる」という内容でしたが、同じ地方税とはいえ、固定資産税・都市計画税については少し取り扱いが異なります。
というのも、固定資産税・都市計画税においては、一定の要件を満たした場合、納税の猶予だけでなく税額の軽減措置も可能となる場合があるからです。
ただしこの軽減措置は、2021年以降の取扱いとなる事に注意が必要です。
2020年度分の固定資産税等に関しては、他の地方税と同じく「納税の猶予」のみの対応となりますが、2021年度分に関しては一定の条件を満たせば「全額減免」か「1/2減免」の対象となります。
この減免措置に関してはまだ内容が固まっていませんので、詳細が分かり次第別の記事でお伝えしようと思いますが、現段階では「認定経営革新等支援機関等に事前確認を受ける」などといった要件が盛り込まれおり、様々な要件をクリアする必要があるようです。
2020年度分固定資産税等の「納税猶予」の条件等については、他の地方税と同じ内容となっていますが、こちらについても詳しくは、お住まいの自治体HPにてご確認ください。
社会保険等関連
続いて「社会保険等関連」について。
今回、新型コロナウイルス対策として「納付の猶予」や「減免」の対象となる社会保険等は以下の通り。
- 厚生年金保険料
- 労働保険料
- 国民年金保険料
- 国民健康保険、後期高齢者医療制度、介護保険
厳密に言うと「国民健康保険等」に関しては、地方税としての取扱いとなるのですが、ここでは社会保険関連として一緒に説明させて頂きます。
その他健康保険料については、中小企業においては「協会けんぽ」、大企業においてはそれぞれの保険組合で取り扱いが異なると思いますので、ご自身が加入している組合等に確認するようにして下さい。
ちなみに、現段階(2020年5月22日時点)では、協会けんぽはコロナ対策における減免などについて触れていません。
厚生年金保険料
まずは「厚生年金保険料」について。
厚生年金保険料の支払い猶予においては、もともと「換価の猶予」と「納付の猶予」という制度があります。
換価の猶予と納付の猶予の違いについて説明すると長くなりますが、それぞれ概ね以下のような内容となっています。
換価の猶予
- 厚生年金における換価の猶予の内容
- 保険料等を一時に納付する事により、事業の継続または生活の維持を困難にする恐れがある場合に、申請に基づいて差押財産の換価(売却)が猶予される制度。
- 換価の猶予の効果
- ・既に差押を受けている財産の換価(売却)が猶予される。
・差押えにより事業の継続または生活の維持を困難にする恐れがある財産については、差押えを猶予(又は既にした差押えを解除)することが出来る。
・換価の猶予期間中の延滞金の一部が免除。 - 申請の要件
- 厚生年金保険料を一時に納付する事により、事業の継続等を困難にする恐れがあるなどの一定の要件に該当する時は、納付すべき保険料等の納期限から6ヶ月以内に管轄の年金事務所へ申請する事により、換価の猶予が認められる場合がある。
納付の猶予
- 厚生年金における納付の猶予の内容
- 災害、病気、事業の休廃業などによって、保険料等を一時に納付することが出来ないと認められる場合や、届出が遅延したことにより遡及した月分に係る保険料等の納付義務が発生し、本来の法定納期限から1年以上経過した月分に係る保険料等を、一時に納付することが出来ない理由があると認められる場合に、申請に基づいて納付が猶予される制度。
- 納付の猶予の効果
- ・新たな差押えや換価(売却)などの延滞処分の執行を受けない。
・既に差押えを受けている財産がある場合には、年金事務所に申請する事により、その差押えが解除される場合がある。
・納付の猶予が認められた期間中の延滞金の全部または一部が免除 - 申請の要件
- 次のいずれかに該当する場合であって、厚生年金保険料等を一時的に納付する事が困難な時には、管轄の年金事務所を経由して地方(支)局長へ申請する事により、納付の猶予が認められる場合がある。
① 財産について災害を受け、または盗難にあったこと
② 事業主又はその生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと
③ 事業を廃止し、又は休止したこと
④ 事業について著しい損失を受けたこと
現行の制度では上記の通りとなりますが、今回はこれらに加え、新型コロナウイルス対策として「納付猶予の特例」という制度を創設しています。
- 特例対象となる事象所
- 以下の①、②のいずれも満たす事業所が対象。
① 新型コロナウイルスの影響により、2020年2月以降の任意の期間(1ヶ月以上)において、事業等に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少している場合。
② 厚生年金保険料を一時に納付する事が困難であること。 - 対象となる厚生年金保険料等
- 2020年2月1日~2021年1月31日までに納期限が到来する厚生年金保険料等。
上記の期間のうち、すでに納期限が過ぎている厚生年金保険料等(他の猶予を受けているものを含む)についても、遡ってこの特例を利用できる。 - 猶予期間
- 納期限から最長1年間。
- 申請期限
- 指定期限まで。
※「指定期限」とは、毎月の納期限からおおよそ25日後となります。 - その他備考
- 猶予期間中の延滞金が全額免除。
担保の提供不要。
通常の「換価の猶予」「納付の猶予」とは異なり、「担保の提供不要」「延滞金の全額免除」といった優遇措置がありますので、出来ればこの「特例猶予」を利用したほうが利便性が高いと言えます。
仮にこの特例猶予を利用できなかったとしても、従来の猶予制度を利用できる可能性もありますから、詳しくは管轄の年金事務所へ相談するようにして下さい。
または、厚生労働省HP内の「新型コロナウイルス感染症関連情報」のページか、日本年金機構の「新型コロナウイルス感染症の影響による納付の猶予(特例)」のページにてご確認ください。
労働保険料等
次が「労働保険料等」について。
基本的に労働保険料等の納付猶予の内容も、厚生年金の内容とほぼ同等となっています。
ただし、所管する行政はどちらも厚生労働省となりますが、相談窓口はそれぞれ別になっているのでご注意ください。
労働保険料等に関して詳しくは、都道府県労働局に問い合わせるか、厚生労働省HP内の「労働保険・新型コロナウイルス感染症関連情報」のページにて確認するようにして下さい。
国民年金保険料
次が「国民年金保険料」について。
もともと国民年金保険制度においても、保険料免除・納付猶予制度はありましたが、今回の新型コロナウイルス対策として臨時の「特例免除申請」を受け付ける事となりました。
従来の免除・納付制度については日本年金機構HPのこちらのページをご覧になって下さい。
今回の臨時特例制度の内容はこちら。
- 対象となる人
- 以下①、②のいずれも満たす人が対象。
① 2020年2月以降に、新型コロナウイルスの感染症の影響により収入が減少したこと
② 2020年2月以降の所得等の状況から見て、当年中の所得見込みが、現行の国民年金保険料の免除等に該当する水準になる事が見込まれる事 - 対象期間
- 2020年2月分以降の国民年金保険料
- 申請の受付開始日
- 2020年5月1日以降
- その他備考
- 学生も対象
提出先は、住民登録をしている市(区)役所・町村役場、または年金事務所
上記について詳しくは、日本年金機構HPの「新型コロナウイルス感染症の影響による減収を事由とする国民年金保険料免除について」のページをご覧になって下さい。
国民健康保険、後期高齢者医療制度、介護保険
そして社会保険関連の最後が「国民健康保険、後期高齢者医療制度、介護保険」について。
国民健康保険の取扱いは基本的に各自治体の裁量となっていますが、今回の新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、厚生労働省から都道府県に対し、以下のような取り扱いをするようにと通達がされています。
【届出・申告期間を経過した者の取扱い】
国民健康保険、後期高齢者医療制度及び介護保険の資格取得、資格喪失、住所変更等の届出・申告については、これらの届出の事由が生じた日から14日以内に届出を行わなければならないこと等とされているが、今般の新型コロナウイルス感染症に関しては、その感染拡大を十分に防止する事が求められていること等も踏まえ、やむを得ない理由による届出等の遅延を認めるなど、柔軟に運営頂きたい。
【保険料(税)徴収猶予の取扱いについて】
特別な理由があるものについては、条例等の定めるところにより、保険者の判断で、保険料(税)の徴収猶予を行う事が可能とされているので、これを踏まえ、各保険者において、これについて周知も含め、適切に運営頂きい。
独特な行政文書で読みにくいかもしれませんが、要は「申請期限を過ぎても、柔軟に対応してあげて欲しい」という事と、「内容は各自治体に任せるけど、出来るだけ納付猶予に応じてあげてね」という内容です。
ですから、この対応については各自治体ごとに判断の分かれる事になり、全国で一律の対応というものはありません。
要は「自治体任せ」という事となりますので、詳しくはお住まいの自治体HPにて確認するようにして下さい。
水道光熱費・通信関連など
税金・社会保険関連以外にも、水道光熱費や通信費などにおいて支払猶予や免除に対応している事もありますから、詳しくは対応事業者一覧のページをご覧になってみて下さい。
- 経済産業省・資源エネルギー庁HP内「電気料金に関する対応(予定)事業者一覧(PDF)」
- 経済産業省・資源エネルギー庁HP内「ガス料金に関する対応(予定)事業者一覧(PDF)」
- NHKホームページ内「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う受信料のお支払に関する相談窓口」
- NHKホームページ内「事業所契約のみなさまへ(受信料免除・事業所割引・多数一括割引の取扱いについて)」
この他、水道料の減免などに対応している自治体もありますが、これは各自治体によって取り組みが異なりますから、それぞれお住まいの自治体HPにて確認するようにして下さい。