【新型コロナウイルス対策】法人が利用できる申告関連の特例措置

コロナウイルス感染拡大により、ほとんどの企業が何かしらの影響を受けていると思いますが、国としても様々な特例措置を打ち出すことで、企業の負担軽減に取り組んでいるようです。

特に「税金関係」でその傾向が強く、国税庁はホームページ上で日々、新しい施策について情報発信しています。

国税庁以外の省庁も同様の取り組みを行っていますが、日本特有の「縦割り行政」の影響もあり、全ての施策がまとまりがなく、一体、どれが自社に利用可能なのかが分からないという方もいらっしゃるでしょう。

そこでこの記事では、現時点(2020年5月10日)における情報を基に、「新型コロナウイルス関連の特例措置など」を分かり易く整理した上でお伝えしようと思います。

特に「企業における税金関連」の情報についてお伝えしますので、それ以外について知りたい方は「コロナ関連」の他の記事も参考にしてみて下さい。

申告期限の個別延長とは?

まず、決算の申告期限の個別延長についてから見ていきましょう。

個別延長の目的と、申告・納付期限

通常の決算における申告期限は、決算日から2ヶ月以内となり、仮に3月31日が決算日であれば5月31日が申告期限となります。

この2ヶ月間の間に、売掛金や買掛金の整理などをして決算内容を固める訳ですが、2020年4月の緊急事態宣言の発令などにより、どこの企業もこの決算業務が滞っていたかと思います。

そこで国税庁はこうした状況を踏まえ、コロナウイルスの影響により期限内の申告が困難となる企業の救済措置として、「申告期限の個別延長」を認める事にしました。

この申告期限の個別延長の期限は、「申告・納付ができないやむを得ない理由がやんだ日から2ヶ月以内」としています。イメージとしては以下の図のようになります。

 

 

仮に、通常の決算日が3月31日だとすれば申告日は5月31日となりますが、5月31日を過ぎてもコロナウイルスの影響により申告書の作成の取り掛かれないのであれば、極論を言えば「いつまで」という期限を設けていない事になります。

もちろん、申告書を作成できるようになれば、その日から起算して2ヶ月以内に申告しなければいけません。仮に5月31日に作成開始出来るのであれば、申告期限は7月31日までという事になります。

またこの場合、納付期限も同日となります。

個別延長が認められるための事由

次に、個別延長が認められるための事由について。

国税庁は個別延長が認められる事由について、様々な具体例を列挙しています。代表的なものとしては以下のようなもの。

個別延長が認められる事由
  • 法人の役員や従業員がコロナウイルスに感染した場合
  • 社内において、体調不良により外出を控えている人がいる
  • 社内において、平日の在宅勤務を要請している自治体に居住している人がいる
  • 社内において、感染拡大防止のため外出を控えている人がいる
  • 企業の方針として、感染拡大防止のため在宅勤務を実行している
  • 取引先や関係会社において、感染症における影響があり、決算作業が間に合わない

この他にも、具体的事例として以下のような内容も例示しています。

具体的事例
  • 依頼している税理士やその事務所のスタッフが、コロナウイルスに感染した場合
  • 納税者や経理責任者が現在外国に滞在しており、ビザが発給されないなど
  • 学校の臨時休業などの影響で、職員などが通常業務を行えないなど(依頼している税理士事務所も含む)
  • 関係者が濃厚接触した疑いがあるなど

具体例としては上記などを例示していますが、国税庁としては、これ以外の事由についても柔軟に対応するとしていますから、「ウチの場合はどうかな?」と悩んでいるのであれば、所轄の税務署などに問い合わせるようにして下さい。

申請に必要な手続き

次が、個別延長を申請するための手続きについてですが、基本的に別途申請書などを提出する必要はありません

コロナウイルスの影響が無くなり、申告書を提出する段階において、その申告書の余白部分に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記入すれば足りるとされています。

申告においてe-Taxなどを利用している場合は、「電子申告及び申請・届出名欄」に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記入する事になりますから、詳しくは国税庁HPの「法人税及び地方法人税並びに法人の消費税の申告・納付期限と源泉所得税の納付期限の個別指定による期限延長手続に関するFAQ」をご覧になって下さい。

決算申告・納付以外に認められる個別延長は?

法人における申告・納付の個別延長は、決算申告のみに限らず、様々な申請や届出などにも認められる事となっています。

代表的なものとしては以下の通り。

個別延長が認められる申請等
  • 中間申告
  • 源泉所得税
  • 酒税関連

法人に関連するものは上記のとおりとなりますが、これ以外にも個人向けの内容もありますから、詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧になってみて下さい。

 

 

ここで注意が必要となる点として、「中間申告」について少しだけ説明しておきます。

中間申告に関しても個別延長が認められますが、コロナウイルスによる影響がないのに中間申告が提出されなかった場合には、それが提出されたとみなされる、いわゆる「みなし提出」として処理されます。

この場合、納付税額が確定してしまいますから、この辺については事前に担当の税理士などとよく相談しておくようにしましょう。

納税が困難な場合

次に、今回のコロナウイルスの影響により納税が困難な場合について。

もともと日本の法律において、納税が困難な事業者などに対し、納税の猶予を与える制度があります。

現行法では、「換価の猶予」と「納税の猶予」というものがありますが、今回新たに「納税の猶予の特例(特例猶予)」というものが創設されました。

今回のコロナウイルスの影響で納税が困難となった人は、この特例猶予が認められることにより、最長1年間まで納税を猶予する事が可能となります。

ここで注意が必要なのは、あくまでも納税が猶予(延長)されるだけであって、免除されるわけではないという事。

従来の猶予制度と、今回の特例猶予の主な違いとしては以下の通り。

特例猶予納税の猶予換価の猶予
担保の提供無担保原則必要原則必要
延滞税全額免除全額、又は一部免除1.6%/年
延長期間1年間まで1年間まで1年間まで

 

通常の猶予であれば、原則として「担保の提供」や「延滞税」がかかりますが、今回の特例猶予を利用する事で、どちらも不要となります。

猶予制度を利用できる条件

それでは次に、前述した納税の猶予制度を利用できる条件に付いても見ていきましょう。

それぞれ、全てを満たす必要があるのでご注意ください。

換価の猶予の場合
  • 一時の納税により、事業の継続・生活維持が困難となるおそれがあること。
  • 納税について誠実な意思があること。
  • 納期限から6ヶ月以内に申請があること。
  • 猶予を受けようとする国税以外に滞納が無いこと(例外あり)。
特例猶予の場合
  • 新型コロナウイルスの感染症やそのまん延防止のための措置の影響により、令和2年2月1日以降の任意の期間(1ヶ月以上)において、事業等に係る収入が前年同期と比べて概ね20%以上減少していること。
  • 一時に納税する事が困難であること。

今回、仮に特例猶予が認められなかったとしても、従来の「納税の猶予」「換価の猶予」で認められる可能性もありますから、諦めずに税務署などに問い合わせるようにしましょう。

現時点(2020年5月)においては、上記の条件となっていますが、今後の情勢次第では変更される可能性もありますから、詳しくは国税庁HPの「国税の納税の猶予制度FAQ」をご覧になられるか、「国税局猶予相談センター」へ相談するようにして下さい。

猶予の申請

この納税猶予に関しては、確定申告の個別延長とは異なり、別途申請が必要となります。

現時点(2020年5月)においては、2020年6月30日までとされていますが、今後の状況次第で変更になる可能性もあります。

また、冒頭でお伝えした「申告の個別延長」を申請をされた場合には、その申告書の提出日が期限となります。

申請書は、国税庁のHPからダウンロードして、そこに必要事項を記載した上で提出する事になりますが、その他「収入や現預金の状況が分かる資料」などの提出も必要となるため、出来れば税理士などに申請を依頼したほうがスムーズに手続きが完了するかと思います。

その他、法人に対する特殊な措置

今回のコロナウイルス関連対策は、これまで説明してきた「個別延長」と「特例猶予」がメインとなりますが、これ以外にも法人に対する様々な措置がありますから、法人の経営者や税理士の方々は、これらを上手に利用して事業運営に役立てましょう。

以下に紹介する内容は、あくまで現時点でのものとなっていますから、今後変更になる可能性もあるためご注意ください。

こちらについて更に詳しく知りたい方は、国税庁HPにある「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取り扱いに関するFAQ」をご覧になって下さい。

 

企業が生活困窮者に対し、自社製品などを提供した場合
通常であれば「寄付金」扱いとなるが、感染症が終息するまでに行われたのであれば、「損金」として計上可能。
食材の廃棄などは、「災害により生じた損失」となるか
学校の臨時休業の要請などが原因で、棚卸資産や固定資産などに損失が生じた場合などは、「災害により生じた損失」となる。また、消毒等の費用に関しても同様に認められる。ただし、店舗の売り上げ減少などは対象とはならない。
企業がマスクを取引先等に無償提供した場合、「寄付金」に該当するか
感染症が終息するまでに行われた行為であれば、寄付金に該当しない。ただし、提供先が転売などをした場合には必要経費としては認められないなど、細かな規定がある(国税庁HPをよく確認の事)。
業績が「悪化した場合」に行う役員給与の減額
通常、年度途中の役員報酬の減額は定期同額給与に該当せず、損金算入が認められないケースがあるが、減額の理由が「業績悪化改定事由」とされれば、損金算入が認められる
業績の「悪化が見込まれる場合」に行う役員給与の減額
前述の内容は「業績悪化後」の役員給与の減額であるが、「業績悪化が見込まれる場合」においても役員給与を減額する企業も出てくると考えられる。通常は損金算入が認められないケースとなり易いが、業種などによっては認められる場合もある
欠損金の繰戻し還付の特例
今回、特例として「欠損金の繰戻しによる還付の特例」を制定。これまで資本金が1億円以下の法人などが利用可能であったが、今回特例として資本金の額が「1億円超10億円以下」の法人でも利用可能となる。
消費税の課税選択変更に係る特例
今回新たに「消費税の課税選択の変更に係る特例」を創設。一定の条件を満たす企業であれば、課税事業者となる事を選択する事や逆にやめる事が可能となる。また、この特例を利用すれば、2年間の継続適用要件等は適用されない。詳しくは、国税庁HPの「消費税の課税選択の変更に係る特例について」を参照のこと。
特別貸し付けに係る契約書の印紙税の非課税
一定の条件を満たす貸付の場合、その契約書における印紙税が非課税となる。また、既に印紙税を納付している場合にも還付を受ける事が可能。こちらについて詳しくは、国税庁HPの「消費貸借契約書に係る印紙税の非課税措置について」を参照のこと。