コロナの影響で、「現金確保」の動きはしばらく続く?

今年(2020年)に入ってから感染拡大が続いている新型コロナウイルスですが、9月に入っても終息の兆しが見えてきていません。

これは日本だけでなく世界的にも同様で、感染への恐怖だけでなく、経済的な損失においても多くの人が頭を抱えている事でしょう。

そこで多くの企業は「キャッシュ イズ キング(現金が王様)」という事で、現金確保に動いています。例えばトヨタなどは、「トヨタ銀行」と呼ばれるほど潤沢な流動資産を保有している事で有名でしたが、そのトヨタでさえも1兆円以上の融資枠を確保したと世間を騒がせました。

大企業でもこれだけ機動的な動きをしているのですから、中小企業ともなれば、更に現金確保に対する俊敏な動きが必要となってくるでしょう。

そこでこの記事では中小企業や税理士の方向けに、国内企業の現金確保の動きやそれに対する銀行の対応、そして今後どのような対策を打つべきなのかなどについてお伝えしようと思います。

民間金融機関の貸出残高は過去20年で最高額

新型コロナウイルス対策として、日本政策金融公庫が「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を開始しましたが、この申請に多くの企業が殺到し、融資の実行までに通常よりもかなりの時間がかかる事が問題視されました。

借り入れを希望する事業者側としては、従業員の給与や様々な支払いが滞ってしまえば倒産に繋がりますから、一日でも早く融資を実行してほしいと考えます。

そこで政府は、都道府県等による制度融資を利用する事で、銀行や信用金庫などの民間金融機関においても「無利子、無担保」で事業者に貸付けができるような仕組みを整えました。

地域にもよりますが、その融資条件は以下のようになっています。

民間金融機関によるコロナ対策融資
  • 担保   :不要
  • 融資期間 :10年以内(うち据置期間5年以内)
  • 補助期間 :保証料は全融資期間が対象、利子補助は当初3年間

要は、事業者からすれば「無担保、無利子、保証料なし、しかも5年間の据置期間」があるためかなり助かりますし、金融機関側からすれば、利子や保証料を都道府県が支払ってくれるという事で、安心して貸し出せるという事になります。

この為、民間金融機関の融資残高がドンドン増え、2020年7月時点でおよそ「570兆円」と、過去20年間で最高額となっています。

大手銀行は、預金確保に動き始めている

ここまで読んで勘の良い方であれば「それだけ貸し出しているんだから、現時点での銀行の預金残高で賄いきれるのかな?」と考えるかもしれませんね。

しかし現時点においては、国民一人当たり10万円を支給した「特別定額給付金」のおかげで、銀行の預金残高は2020年7月時点で「780兆円」以上あり、そこまで不安視されるほどでもありません。

とは言え、この特別定額給付金は生活費などに充てる事が想定されるため、今後ジワジワと預金残高が減っていく事も考えられます。

そこで某大手銀行などは、一部の顧客に対して「特別金利」の定期預金サービスなどを提供し始めています。

少し前であれば、大手金融機関などは「むしろこれ以上の預金はいりません」というスタンスでしたが、現在は借入れの申し込みが殺到しているため、事前対策として例えば「特別金利6か月間」などといったサービスを今後増やしてくるのかもしれません。

今後のコロナウイルスの感染拡大状況にもよりますが、場合によっては、地方銀行なども預金獲得に動き始める事も想定されます。

中小事業者や税理士が取れる対策

このように、現時点においては日本国内でお金が循環しているので、そこまで心配する必要もありませんが、今後の新型コロナウイルス感染拡大状況によっては、いつお金が目詰まりするかも分かりません。

そこで現状、中小事業者の方や税理士の方が取れる対策などについても考えてみましょう。

対策① 助成金・補助金の申請

まず一番の対策として、「助成金・補助金の申請」が考えられます。

現時点において国や地方公共団体などは、様々なコロナ対策の助成金事業を展開しています。その内容や支給金額は様々ですが、自分の住んでいる地域においてそうした助成事業があるかどうか確認し、対象となるなら迷わず申請しておきましょう。

当サイトにおいても「助成金・給付金」のページにおいて、幾つかご紹介していますのでそちらもご覧頂ければと思いますが、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営している「J-Net21」というサイトにおいて、全国の助成金事業をリアルタイムで確認する事が出来ますから、こちらのサイトも定期的に確認するようにして下さい(ちなみに、助成金などを紹介しているページは、J-Net21内の「支援情報ヘッドライン」というページになります)。

また、助成金と聞くと「事業運営費を補てんする」というイメージが強いかと思いますが、これらの助成金の中には「テレワーク助成事業」も数多くあり、コロナ後を見据えた事業運営を考えるならば、こうした設備投資の助成金を活用する事も考えておいた方が良いでしょう。

税理士でも助成金の申請代行は行えますが、「誰に頼んだら良いのか分からない」というのであれば、こちらの記事も参考にしてみて下さい。

 

対策② 特別融資の申請

そして次が、「特別融資の申請」について。

一般的に、前述した日本政策金融公庫や民間金融機関が行っているコロナ対策融資は、その対象となるために様々な条件が必要となりますが、概ね「前年に比べて売り上げが〇%以上減少している」といった内容となっていますから、ほとんどの企業が対象になるかと思います。

現状、「ウチは売り上げが減っているけれど、そこまでの資金需要はないから申請しなくても大丈夫かな」と考えている人もいるでしょうが、今後、どの程度の期間でコロナが終息するかは誰にも分かりません。

ですから、「無担保、無利息」という事から考えても、融資申請をしておいて損はないと言えます。

転ばぬ先の杖ではありませんが、一度融資の申請について考えてみるのも良いかと思います。

対策③ 流動資産の売却(保険等)

そして最後が、「流動資産の売却」について考えるという事。

企業にもよるでしょうが、現状必要としていない流動資産を所有しているのであれば、それを売却するというのもひとつの選択肢となります。

特に、2017年頃から流行っていた「節税保険」などは、まさにその対象となるでしょう。

基本的にこの節税保険と呼ばれるものは、建前上は「経営者に不測の事態が起きた場合に備えて保険をかけておきましょう」というものですが、実際には経営者の退職時に退職金を支払い、その時点で保険金を解約する事で、「退職金の損金」と「保険金の益金」をぶつけて相殺するという狙いがありました(全てではありませんが)。

しかし金融庁がこれを問題視して近年では下火となりましたが、むしろ今年・来年あたりこそ、その「不測の事態」に当たると言えるのではないでしょうか。

これは企業にもよるでしょうが、2020年や2021年の決算は赤字となる可能性が高いでしょうから、こうした節税保険の解約返戻金でそれを相殺するというのもひとつの考え方です。

実際、2020年4月~6月において、こうした節税保険の解約が急増しており、保険会社によっては前年同期に比べ5倍~7倍もの解約が発生しているところもあるようです。

ここは顧問税理士としっかり相談する必要がありますが、企業によっては解約する上で絶好のタイミングであるという考え方も出来るでしょう。

コロナ後を見据えた動きも考える

現状においては、ともかく現金確保を優先させることが一番ですが、ある程度余裕が生まれたら、今度はコロナ後を見据えた対策も必要となってきます。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、多くの人の消費意欲が低下しているとは言われていますが、例えば高級輸入車やブランドバッグなどはむしろ販売量が増えているようです。

ですから、単純に「景気が悪いからモノが売れない」と考えるのではなく、今の時点から「今後はどういったサービスや商品を提供すべきだろうか?」と考える事が重要となってくるのではないでしょうか。

例えば、建設業や不動産業の方であれば、「マンションだと感染予防が難しいから、今後は一戸建ての需要が増えるかな」とか、「テレワークが定着すれば、間取りに書斎なども考えなければいけないな」なんて事も考えられるかと思います。

実際、大手ハウスメーカーなどは自宅に書斎を設ける間取りを提案し始めていますし、都心よりも地方の住宅購入希望者も増えているようです。

このように、考えるべき事は沢山ありますから、現金確保がひと段落した後は、コロナ後の戦略についてじっくりと考えてみては如何でしょうか。