会社法について知りたいと思ったら、どの士業に相談すべきか?

会社を経営する上においては様々な法律知識が必要となりますが、それを自分で一から学習するとなれば膨大な時間を要することになり、経営面からみればかなり非効率となります。

やはり「餅は餅屋」という事で、その道の専門家に尋ねるほうが効率的な事業運営が行えると言えるでしょう。

日本国内における代表的な法律と言えば、民法や税法、そして刑法などが思い浮かぶと思いますが、会社運営において一番身近な法律は税法となり、こちらは税理士の専門分野となります。

そしてその次に、会社を運営する上で頻繁に接する事になる法律というのが「会社法」となってくると思いますが、意外とこの会社法を意識したことがないという経営者の方も多いかもしれませんね。

基本的に株式会社であれば「株主総会」などについてはこの会社法で規定されていますし、M&Aや事業再編などにおいても、この会社法の知識が必要とされます。このように、何かと会社運営に密接にかかわってくる会社法ですが、結論から言うと「ほどんどの税理士は、この会社法についてあまり詳しくない」というのが実態です。

ではそうなると、「法律だから、弁護士に相談すればいいよね?」と考える人もいるかもしれませんが、全ての弁護士が会社法に詳しいわけではなく、場合によっては他の士業に相談したほうが良い場合もあるのです。

そこでこの記事では、会社法について教えてほしいと思った場合、一体どの士業に相談すべきかなどについて、事例を交えながらご説明しようと思います。

会社法の知識って、そもそもどんな場面で必要になるの?

ではまず最初に、会社法の知識というのは、そもそもどのような場面で必要になるのかについて見ていきましょう。

結論を言えば、「会社運営上、様々な場面において必要になる」という事になりますが、中小企業などの場合であれば、以下のようなことがメインとなってくると思われます。

会社法の知識が必要となる場面
  1. 法人の設立
  2. 役員報酬の変更
  3. 定款変更
  4. 役員選任・解任
  5. 増資・減資
  6. 合併・M&Aなど
  7. その他

まずは会社の設立において、この会社法の知識はとても重要となってきます。同時に登記も必要となりますから、こちらは司法書士の専門分野となりますね。

また、役員報酬を改定する場合、株主総会を開催しなくてはいけないことになっていますが、こちらは登記を必要としませんので、司法書士でなくてもある程度はわかる範囲です。この他、「役員選任・解任」や「増資・減資」などは、会社を経営していく上でそう頻繁に起きることではありませんが、こちらも会社法で規定されているため、会社法に対するある程度の知識が要求されることになります。

こうしてみると会社法というのは、「頻繁に接するわけではないけど、会社を経営する上では必要不可欠な法律」という事が分かるかと思います。

会社法に詳しそうだと思われている士業

それでは次に、世間から会社法に詳しいんだろうなと思われている士業を列挙してみようと思います。

会社法に詳しそうな士業
  • 弁護士
  • 司法書士
  • 公認会計士
  • 税理士
  • 行政書士

まずは弁護士ですが、こちらは試験自体にも会社法がありますので、最低限の知識は皆さん持たれていると思います。しかし会社法は条文が1,000条近くあり、この会社法を苦手としている弁護士も少なからずいるようです。

次に司法書士ですが、こちらも試験に会社法(商法)が出題され、更に商業登記においては、この会社法の知識がかなり必要とされる場面が多いですから、司法書士も会社法のプロフェッショナルだと言えるでしょう。

そして次が公認会計士ですが、こちらも試験において必須科目の中に「企業法」というものがあり、その大部分が会社法に関する内容となっています。

上記3士業においては、人によって得手不得手はあるにせよ、試験に合格している限りは最低限の知識は有しているといえますから、「基本的なこと」であれば問題なく答えてくれるでしょうが、「税理士」「行政書士」においては、そもそも試験内容で会社法に触れることもなく、専門家として頼るには少し不安が残ります。

もちろん、中には会社法に詳しい税理士や行政書士もいるのでしょうが、全体でみればかなり少数であると言え、実質的な会社法における専門家は「弁護士」「司法書士」「公認会計士」となってくるのだろうと思われます。

では、会社法における専門家としては「弁護士」「司法書士」「公認会計士」のいずれかであるという事はご理解頂けたかと思いますが、やはりそれぞれ得手不得手というものがあり、これらの士業のいずれかに依頼すれば完璧という訳でもありません。

そこでそれぞれの士業ごとに、どういった特徴などがあるのかについても見ていきましょう。

弁護士なら安心・・・という訳でもない

まずは弁護士から見ていきたいと思いますが、基本的に弁護士というのはそれぞれ専門分野があり、全ての弁護士が会社法に詳しいわけではありません

例えば、離婚や交通事故関連などばかり受託している弁護士などは、そもそも会社法に触れる機会が少ないですから、ある程度の事には答えられるにしても、突っ込んだ話となると「ちょっとお手上げ」なんて人もいますから注意が必要です。

その点、大手事務所などに勤務している弁護士であれば、M&Aばかり手掛けているなんてこともあり、その場合、会社法の知識がかなり求められますから、こうした弁護士に依頼するのは安心して良いでしょう。

ただし、こうした弁護士は報酬も高くなる傾向がありますからご注意ください。

とは言え、ここに組織再編などにおける商業登記などが絡んでくると、いくら弁護士でも司法書士に依頼せざるを得ません。具体的な事例に関しては次項でお伝えしますが、法律だったら何でもかんでも弁護士に依頼すればよいという訳でもないのです。

登記が絡んでくるなら、やっぱり司法書士

次が司法書士についてですが、やはり組織再編などが絡む商業登記が必要となれば、司法書士に依頼するのが一番だと言えるでしょう。

これは実際にあった話ですが、とある会社で、上場企業からの買収話が持ち上がりました。その買収される側の会社の顧問をしていた税理士は、相手側が上場企業というだけあって、それなりに優秀な弁護士に依頼しているだろうと安心していたのですが、打ち合わせを重ねるうちに「どうもおかしい」と考えるようになりました。

そこで、当サイト管理人に「どこか、商業登記に詳しい司法書士の先生いないかな?」と相談してきたので、その地域では有名な司法書士を紹介することになったのです。

当初、相手側の弁護士が契約書や議事録を作成していたようですが、その内容があまりにも「・・・」だったようで、結局その司法書士がほとんどの書類を作成する羽目になったようです。

後日談としてその司法書士から聞くと、まぁ色んな理由をつけてその弁護士は司法書士に仕事を丸投げしてきたようです。話している内容からすると、実はその弁護士というのは、会社法について全くと言っていいほど無知だったようです。

私は結局その司法書士に平謝りするしかありませんでしたが、一般的な感覚から言うと、私のように「弁護士だから大丈夫だろう」と考える人は結構多いのではないかと思います。

また、会社を運営する上で、税務上の観点から「増資」や「減資」について検討する場面もあると思いますが、依頼者からすると、ここは税理士が詳しいのではと考えるかもしれませんね。しかし、実務においてはやはり司法書士のほうが詳しい場合がほとんどで、例えば特殊な事例でいくと「デット エクイティ スワップ」などと聞いて、すぐに答えられる税理士はほどんどいないかと思います。

・デット エクイティ スワップ(Debt Equity Swap)とは

デット・エクイティ・スワップを簡単に説明すると、要は「債権の株式化」という事になり、例えば役員貸付けがあった場合、それを資本に組み替えることなどを指します。

頭文字をとって、別名DES(デス)などと呼ばれることもあります。

出来ればこうした知識は税理士の方にも持っておいてほしいですが、知らないのであれば最低限、司法書士などと外部提携くらいはしておいて欲しいところです。

とは言え、司法書士も全ての人が会社法に詳しいわけではなく、中には「不動産登記ばかりしている」という司法書士もいますから、こうした司法書士は少し商業登記を苦手とする傾向にありますから注意が必要です。

安定感があるのは公認会計士

そして最後が公認会計士ですが、会社法において公認会計士に質問すると幅広い知識を持っている人が多く、「安定感があるなぁ~」と感じるかもしれません。

もちろん、商業登記などについてはそれほど詳しくはありませんが、公認会計士は実務において、事業再編やM&Aなどといった会社法の知識を必要とする業務が多いので、例えば応用力を必要とするテクニカルな処理においても際立った能力を発揮する人が多い印象があります。

会社運営に必要となる会社法の知識であれば、全般的に見て公認会計士の方が一番頼りがいがあるのかもしれません。

とは言え、公認会計士のすべてが会社法のエキスパートという訳でもなく、中には「ちょっと・・・」なんて人もいますから注意が必要です。

とは言え、全般的に見れば公認会計士で会社法に詳しくないという人はほとんどいないでしょう。

税理士の人にはもう少し勉強してもらいたい

そして最後に税理士についてですが、個人的な感想を言えば、税理士の方々にはもう少し会社法を勉強して頂ければなと思います。

もちろん、「この人はすごい」という人も中にはいますが、大抵の場合「公認会計士が税理士にも登録している人」であったり、「その地域でも有名な税理士」という事が多く、会社法に詳しいという税理士はあまりお見かけしたことがありません。

前述したように、例えば顧問先の役員報酬を変更する場合には必ず株主総会の開催が必要となり、その議事録の作成も不可欠となりますが、この作成方法すら知らないなんて税理士も中にはいるのですから驚きです。

これを読んで、「そんな奴いないだろう」と考える税理士の方もいるかもしれませんが、試しに、自分の事務所の職員に対して「定時株主総会と臨時株主総会の違いって知ってる?役員報酬の変更は、どっちでするんだっけ?」と尋ねてみて下さい。これにしっかりと答えられる職員が意外と多いことに驚くかと思います。

商業登記まで精通してくださいなどとは言いませんし、条文をしっかりと覚えて下さいなどとは言いませんが、せめて日常的に経営者の方から相談される内容、例えば役員報酬の変更や増資・減資などについては最低限勉強されたほうが、顧問先の方にも喜ばれると思います。

やはり、経営者が一番最初に相談する相手というのは税理士になりますから、せめて弁護士や司法書士、公認会計士の方々と外部提携するなどして、いつでも回答できるような体制を整えておいて頂ければなと思います。