【クラウド会計ソフト】個人事業主向けシェア上位ソフトを徹底比較

会計ソフトと言えば、数年前まではパソコンにソフトをインストールして利用する「インストール型」が主流でした。しかしここ数年、インターネットのブラウザ上で利用できる「クラウド型」会計ソフトの利用者が急激に増えています。

年々、様々な利便性の高い機能も追加されているという理由もあり、インストール型からクラウド型へと移行する利用者が多くなっています。

しかし、絶対的な利用者数としては、依然としてインストール型が多く、まだまだクラウド型への抵抗感も拭えないようです。

そこでこの記事では、そういった「クラウド型会計ソフトって、実際どうなの?」と考えている方のために、現状、クラウド型会計ソフト売り上げシェア上位のソフトにおいて、「使い勝手」「機能性」「価格」「シェア」など、様々な観点から比較してみようと思います。

なお、法人の利用状況と個人の利用状況では内容が異なるため、この記事においては「個人事業主向け」を中心にお伝えします。

法人向けクラウド会計ソフトについて知りたい方は、こちらの記事をご覧になってみて下さい。

 

目次

インストール型とクラウド型の違い

ソフトの比較をする前に、そもそもインストール型会計ソフトと、クラウド型会計ソフトは何が違うのかについてからご説明しようと思います。

一番の大きな違いとしては、「パソコンにソフトをインストールする必要があるかないか」という事。

インストール型は、それぞれのデバイス(PCやタブレットなど)にインストールする必要がありますが、クラウド型はインターネット環境さえあれば、どのデバイスでも利用する事が可能です。

ですから極論、クラウド型であればスマートフォンによる利用も可能なため、事務所のパソコンに向かって入力する必要がなく、その場で取引データを入力できるという便利さがあります。

また、これまでのインストール型会計ソフトでは、ほぼMacのPCに対応していませんでしたが、クラウド型会計ソフトであれば、インターネットのブラウザ上でソフトを利用できるので、自分のパソコンのOS(WindowsかMac)についてあれこれ悩む必要がありません。

ここまで読むと、インストール型に比べ、クラウド型の方が優れているかのように思われるでしょうが、一律にそうとも言い切れません。

 

その理由が、「クラウド型は、インターネット速度の影響を受ける」事にあります。

 

インストール型会計ソフトは、パソコン上で稼働しますので、その処理速度はパソコンのスペックのみの影響しか受けません。

対してクラウド型は、お使いのインターネット環境に影響されるため、回線の契約内容によってはとても反応が遅く、かえって不便に思う事も出てくる可能性があります。

ここで、クラウド型会計ソフトと、インストール型会計ソフトのそれぞれの優位性を列挙してみます。

クラウド型会計ソフトの優位性
  1. OSを選ばず、Macでも利用できる
  2. ソフトを利用する上で、高い会計スキルを必要とされない
  3. 銀行明細、クレジットカード明細などを取り込み、自動仕訳してくれる
  4. 税理士事務所との情報の共有が簡単である(時間の有効化)
インストール型会計ソフトの優位性
  1. 入力スピードでは断然優位
  2. いざという時のためのバックアップ機能が完璧である
  3. セキュリティ面で安心
  4. トータルで考えると、費用が安く済む場合がある

ここで、クラウド型会計ソフトへの移行に踏み切れない理由として、「セキュリティ面」を危惧される方が多いかと思います。

確かに、セキュリティ面においてはインストール型に軍配が上がりますが、かと言ってクラウド型のセキュリティが劣る訳ではありません。インストール型においても情報漏洩の可能性はありますので、要は「使い方次第」というのが正しい認識かもしれません。

クラウド型会計ソフトのセキュリティについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみて下さい。

 

クラウド型シェア上位ソフト

それでは次に、クラウド型会計ソフトにおける売上げシェアについて見ていきましょう。

下記のデータは、MM総研というリサーチ会社が独自調査を行ったものです。アンケート対象者は、確定申告を行った個人事業主となっているため、法人におけるシェアとはならない事にご注意願います。

データ出典:MM総研

上記を見ると、圧倒的に「やよい」のシェアが高いことが分かります。

続いて「マネーフォワード」「freee(フリー)」となっており、この三社で市場をほぼ独占していると言っても良いでしょう。

クラウド型会計ソフトが出始めの頃は、これ以外のソフト利用者もそれなりにいたようですが、今後はこの三社の主戦場になるのは間違いありません。

売上げシェア1位【やよい】

出典:弥生会計

まずは、クラウド型会計ソフトにおけるシェア1位の「やよい」から。

やよいと言えば、インストール型会計ソフトでも断トツNo.1の売上を誇るソフト会社です。ほとんどの税理士事務所でも導入され、会計業界でやよいを知らない人はまずいないでしょう。

やよいのセールスポイントは、何と言っても「使いやすい、簡単」というところ。

給与計算ソフトや顧客管理ソフトといった、周辺ソフトが充実している事も人気の理由でしょう。

売上げシェア2位【マネーフォワード】

出典:マネーフォワード

そして、やよいに続く第2位が「マネーフォワード」です。

ここ数年、freee(フリー)と2位争いを繰り広げていますが、機能性の高さから、税理士からの人気も高まっています。その理由としては、「会計業界を熟知した機能づくり」にあると言えるでしょう。

とある調査機関の調べでは、「会計事務所が、顧問先に紹介したいクラウド会計ソフト」としてNo.1だったようです。

こうしたアンケート結果というのは、得てして内容が偏りがちになりますが、実際、当サイト管理人の付き合いのある税理士の方々と話していても、あながち的外れではないと感じます。

売上げシェア第3位【freee(フリー)】

出典:freee(フリー)

そして第3位が「freee(フリー)」です。

このfreee、発売当初はかなり話題となり、多くの税理士事務所が興味を示しましたが、現在は少しマネーフォワードに押され気味の印象です。機能開発ではかなり評価が高く、他社にはない便利なサービスが豊富にある事が強みと言えます。

税務調査サポート」や、個人事業の開業をサポートする「開業freee」など、他社に先駆けて、常に新しいサービスを開発する企業として有名です。

これまでこのfreeeは「非上場会社」でしたが、2019年12月に上場を果たしましたので、株式市場から得たお金で、更なる機能開発が期待されるところです。

項目別会計ソフト比較

それではさっそく、それぞれの項目ごとにクラウド型会計ソフト3社を比較していきます。

基本的に、消費者(個人事業主)側からの観点でお伝えしますが、内容によっては税理士事務所などの方々においても役立つ内容となっています。

シェア

やよい5.0
マネーフォワード3.5
freee3.0

まずは「シェア」について。

前述したように、やよいはインストール型会計ソフトのシェアにおいてもNo.1ですから、これまでやよいを利用していた層がクラウド型に乗り換える際においても、「やっぱり、使い慣れたソフトが良い」という理由から、クラウド型もやよいを利用している傾向があります。

会計ソフトの特徴として、ソフトごとに仕様が大きく異なるため、どうしても他社会計ソフトに移行しづらいという点があります。

しかし、「これから初めて利用する」という人からすれば、どのソフトも機能性は高いですから、あまりシェアについて考える必要はないのかもしれません。

自動連携機能

マネーフォワード4.5
freee4.0
やよい3.0

次が「自動連携機能」について。

クラウド型会計ソフトにおける自動連携機能とは、各金融機関の口座明細や取引明細が自動で読み込まれるという便利な機能です。要は、手動でデータ入力を行う必要が減ったという事です(もちろん、全てのデータではありませんが)。

しかし、これまで金融機関から送られてきた明細書を手打ちで入力していたことを考えると、大幅な負担減となります。

また現在、この自動連携機能はどんどん進化していて、連携先は銀行などの金融機関に留まらず、下記のようなサービスとも連携しています。

自動連携先
  1. 銀行などの金融機関
  2. 信用金庫
  3. 農協、漁協
  4. クレジットカード会社
  5. 電子マネー(交通系も対応)
  6. POSレジ
  7. 通販(Amazon、楽天など)
  8. アフィリエイト・サービス・プロバイダ(ASP)

この連携機能で頭一つ飛び出しているのが、マネーフォワードだと言えます。

その次がfreeeとなりますが、この2社はいつも新しい提携先を発表しているので、お互い良い刺激になっていると思います。

やよいに関して言えば、この2社に追随している形ですので、少し遅れている感は否めません。

それぞれの企業が特徴のある提携先を開発しており、例えばネットショップを運営しているならfreeeブログやアフィリエイトの収入がある方はマネーフォワードといった具合に、自らの業種にあったソフトを選択すると良いでしょう。

自動仕訳(作成)機能

マネーフォワード4.5
freee4.0
やよい3.0

そして次が、「自動仕訳(作成)機能」について。

クラウド会計ソフトの一番の利点は、この自動仕訳機能だと言えるでしょう。

自動仕訳(作成)機能とは、例えばアナタが仕事に必要なボールペンを購入したとして、その内容を会計ソフトに入力するとなると、必ず「費目」や「勘定科目」を入力しなくてはいけません。

これが仮に、得意先への贈り物であれば、費目は「接待交際費」となりますし、自分で使用するなら「消耗品費」となります。

こうした作業を自動で行ってくれるのが、この「自動仕訳(作成)機能」という訳です。

慣れてしまえば簡単なことですが、これを考えるだけでも多少の時間を必要としますよね。そこでこの作業を自動で処理してくれるのですから、かなり便利な機能だと言えるでしょう。

ですから、各社とも日々この「自動仕訳機能」の利便性の向上に努めているのですが、それぞれのスタンスは大きく異なります。

例えば、freeeでは完全自動作成が可能となりますが、マネーフォワードは科目の推測まで行い、登録に関しては「登録ボタン」を押す手間がかかります。また、freeeはデータ内容を後から変更する事ができませんが、逆にマネーフォワードはこれが可能となります。

どちらも一長一短ありますが、ここは好みの問題と言えるでしょう。

「完全自動作成」であれば、これを「楽だな」と感じる人もいれば、「意図していない仕訳をされた」と感じる人もいるという事ですよね。

ですから、税理士や会計事務所の方からすると、様々な面で考えればマネーフォワードの方が使い勝手が良いと考えるのかもしれません。

逆に、TKCなどを好んで利用する税理士の方は、freeeの方が信頼できると言えます。

機能開発

freee4.5
マネーフォワード4.0
やよい3.5

そして「機能開発」について。

機能開発面においては、どのソフト会社も力を入れていますが、その中でもfreeeがひとつ抜きんでている印象が強いです。

特に、法人税の申告書まで完全にクラウド上で作成できる「クラウド申告freee」などは、会計業界にとって衝撃だったようです。

また、株式店頭公開(IPO)を目指しているスタートアップ企業において、freeeの導入企業が多い事を考えると、内部統制などの監査機能も優れていると言えます。

3社とも「法人設立ソフト」は提供していますが、個人事業を始める人向けのソフトはfreeeの「開業freee」だけとなっており、こういったところからも、freeeは幅広い視野を持っているなと感じます(2021年1月現在、マネーフォワードにおいてもマネーフォワード開業届をリリース済みです)。

業務ソフト連携

マネーフォワード4.5
やよい4.0
freee3.5

事業を運営するとなると、会計だけでなく、給与計算や顧客管理、請求書の発送など、様々な業務をこなさなくてはなりません。こういった周辺業務を手助けしてくれるのが、「業務ソフト」だと言えるでしょう。

各社とも便利なソフトを提供していますが、こういった業務ソフトを一番多く手掛けているのがマネーフォワードだと言えます。

給与計算が行える「クラウド給与」はもちろんの事、請求書を作成できる「クラウド請求書」、経費精算が簡単に行える「クラウド経費」、マイナンバーの管理ができる「クラウドマイナンバー」など、事業運営に必要なサービスがほぼ揃っていると言えます。

更に注目すべき点として、これらのサービスはクラウド会計ソフトを契約するだけで、全て利用する事ができるという事です(利用人数の上限などはあります)。

ソフト間同士の連携も抜群で、総合的な事業運営に役立てたいと考えている方には、一番お勧めのソフトです。

税理士紹介サービス

マネーフォワード3.5
freee3.5
やよい3.5

会計ソフトには申告がつきものですから、税理士との提携が欠かせません。そこで各社とも「税理士紹介サービス」を提供し、それぞれ独自のスタンスでアピールをしています。

まず、提携している事務所が一番多いのは、何と言ってもシェアの高いやよいとなりますが、当サイト管理人の印象としては、やよいはこのサービスを積極的に展開しているようには思えません。

正直言って、「他のソフト会社がやっているから、ウチもやるか」というレベルでしょうか。

その点、マネーフォワードfreeeに関しては、税理士だけに限らず、公認会計士や社労士なども紹介するなど、このサービスに積極的に取り組んでいる事が伺えます。

ただ、掲載している税理士を見ると人数はマネーフォワードよりはfreeeの方が多いのですが、誤解を恐れずに言えば、質から行くとマネーフォワードの方がレベルの高い税理士が多いように感じます(当サイト管理人の知見として)。

どのソフト会社も一長一短ありますから、これに関しては一概に「ここ」と決めるのは難しいところです。

この会計ソフト会社が提供する「税理士紹介サービス」について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧になってみて下さい。

 

サポート

やよい4.5
マネーフォワード3.0
freee3.0

そして最後が「サポート」です。

一般的に、会計ソフトのサポートデスクというと、製品の使用方法などに関するサポートがメインとなりますが、やよいのサポートは勘定科目の仕訳方法に始まり、確定申告の相談などまで、幅広いサポート体制で有名です。

マネーフォワードとfreeeもサポートデスクがありますが、正直、担当者のレベルにおいては、やよいにはまだまだ到底及ばないといった印象を受けます。やはりこの辺は、長年の経験の差だと言わざるを得ないでしょう。

顧問税理士に依頼している方であれば、この辺はあまり気にする必要もないかもしれませんが、経理知識が少ない人にとって、やよいはとても便利なソフトだと言えるでしょう。

総合評価

やよい4.0
マネーフォワード4.0
freee3.5

各ソフトとも一長一短あり、一概にどれがおススメと判断するのは難しいところです。事業規模、業種などでも違ってくると思いますから、この記事を読んで「ウチはこのソフトだな」と判断して頂ければと思います。

しかし総合的な面から考えると、やよいとマネーフォワードが同率首位で、僅差でfreeeが続くといったところでしょうか。

今後、事業規模や業種ごとに見たおススメの会計ソフトの記事についても随時更新していきますが、個人事業の方であれば、下記の記事も参考にされてみて下さい。

プランごとの価格などについて、詳しくお伝えしています。

 

まとめ

如何でしたでしょうか?

この記事の内容は、現時点における情報をもとに作成しているので、今後の各社の開発状況によっては、評価も随分と変わっていく事と思われます。

しかし、各社ともライバルの動向には注視しているようですから、機能性についてはあまり差はなくなるのかもしれません。

前述しましたが、クラウド会計ソフトに対し、セキュリティー面を危惧される方もいるかと思いますが、各社とも大手金融機関並みのセキュリティーとなっているので安全性はかなり高いといえます。

現在アナタが、インターネットバンキングなどを利用しているのであれば、クラウド会計ソフトを利用するのと安全性は何ら変わりませんので、そこはあまり心配しなくても良いと言えます。