
新聞やテレビなどを見ていると、毎年のように新しい「ビジネス用語」が登場しますが、実際にその言葉の意味をしっかりと理解しているという人は、意外と少ないかもしれません。
何となく程度なら分かるかもしれませんが、「じゃあ、詳しく説明して」と言われると、ちょっと言葉に詰まるという人もいるのではないでしょうか。
もちろん中には、マスコミなどが流行りのように利用する一過性の用語も多くあり、数年後には「あれって結局何だったの?」なんて言われるものもありますから、全てを完璧に理解する必要もないかもしれませんね。
とは言え、ビジネスにおいては知らずにいると恥をかくこともありますから、最低限の情報くらいは知っておきたいところです。
そこでこの記事では、今年(2020年)に入ってよく耳にするようになったビジネス用語について、誰でも理解できるように詳しく説明していきたいと思います。
「来年になったら使わなくなった」なんて事もあるでしょうが、知識の一つとして覚えておいていただければ。
また、今回紹介するビジネス用語は、株式市場などにおいても注目されていますから、投資判断などにも利用できると思います。
目次
DX(デジタル・トランスフォーメーション)
まずは、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」についてから。
この用語は数年前からチラホラと耳にするようになりましたが、今年に入ってから急激に多用されるようになりましたね。経済誌などを読んでいても、DXという単語を見ない事はないといっても過言ではないでしょう。
ではこのDXは一体どういった意味なのかと言うと、現実的にはかなり幅広い場面で使われているため、これといった定義も定まっていないのですが、簡単に言えば「デジタル技術によって、事業の変革を行う」という意味になります。
ではなぜ今年(2020年)に入ってから急に注目されるようになったかというと、やはり新型コロナウイルスの影響が大きかったからだと言えます。
デジタル化の推進は、企業だけでなく国や地方自治体においても何年も前から提唱されていましたが、実際には遅々として進まず、掛け声だけで終わっていた感がありますよね。
しかし、新型ウイルスの感染拡大や、それに伴う緊急事態宣言などにより、デジタル技術を活用しなければどうにもならない状態となり、否が応でもDXについて考えなくてはならなくなったという訳です。
例えば企業においては、今回の新型ウイルス対策において、以下のような事について考える必要があったかと思います。
- ハンコ文化の見直し - 電子契約の導入
- 在宅勤務の増加 - Zoomなどのビデオ会議システムの導入
- 顧客との面談減少 - チャットシステム、配送システムの自動化など
上記を見ると分かると思いますが、DXに取り組むことで「省人化・省力化」を図ることができ、その結果生産性を上げる事にも繋がります。ですからその分、時間的にも余裕が生まれる事になりますから、余剰時間・人員でもって新たな事業を起こすという事も可能となります。
また、政府としても日本企業にはDXの積極的な推進を期待しています。
日本は先進国とは言え生産性が低く、このままではGDPの減少も避けられません。そこで政府としても、「e-文書法」「電子署名法」「電子帳簿保存法」などを公布し、企業がDXを推進する上で必要となる法整備を進めています。
これらの法律について詳しくは、こちらの記事も参考にしてみて下さい。
「電子帳簿保存法」などと聞いても、一般の方からすると「一体、何のための法律なのか?」と疑問に思うかもしれませんね。 しかしこの法律、経理担当者が「知らない、聞いたことが無い」となれば、その会社は少し問題があるかもしれませ …
これまで、書類や文書の保管においては「紙による保管」が一般的でしたが、最近ではIT(情報技術)の進化により、これらを電子データで保管する方法が広く浸透しつつあります。 特に、新型コロナウイルスの感染症拡大や、それにともな …
近年、テレワークの拡大と共に「電子契約」が注目されるようになってきましたが、この電子契約について調べると、必ずと言って良いほど「電子署名法」というキーワードが出現してくると思います。 この電子署名法ですが、言葉の感じから …
今後も「デジタル庁」などの創設も見込まれていますから、暫くの間はこのデジタルトランスフォーメーションという言葉は多少なりとも耳にするかもしれませんね。
株式投資ではどう考える?
- 日本においては、NTTデータや日立などがDX銘柄として注目されているが、新興系のAI関連企業なども関連銘柄とされている。
- 米国においては、GAFAMなどが中心となっているが、ショッピファイやドキュサインといった新しい技術やサービスを提供する企業も注目されている。
ESG(イー・エス・ジー)
そして次が「ESG」について。
最近では「ESG経営」や「ESG投資」など、様々な場面でこの単語を目にするようになっているかと思います。ではこのESGとは一体何なのかというと、以下の単語の頭文字を組み合わせたものから成り立っています。
- E(Environment) - 環境
- S(Social) - 社会
- G(Governance) - ガバナンス(企業統治)
要はESGとは、企業が環境や社会へ配慮した経営を行っているかどうかの判断基準となります。
例えば「ESG投資」であれば、従来から行われてきた投資判断基準のような、いわゆる「利益が多く、株主に対する配当が多い企業を優良企業と見なす基準」ではなく、それに加えて環境や社会などに配慮した経営をしているかどうかを基準にして投資を行うというものです。
つまり、社会全体が企業に対して「利益追求だけでは駄目ですよ」という風潮になりつつあるという訳ですね。
このESGという考え方はここ数年で広まった考え方ですから、ハッキリとした指標は無いのですが、現状においては以下のポイントを重視するようです。
- E(環境) - 地球温暖化対策、エネルギー使用量の削減、二酸化炭素排出量の削減
- S(社会) - ダイバーシティー、女性従業員の活躍、ワークライフバランスへの取り組み
- G(企業統治)- 社外取締役比率など、倫理規定、ステークスホルダーに対する責任
簡単に言えば、その企業が「内外を問わず社会的責任を果たしているかどうか」という事が判断基準になるという内容です。
こうした考え方は今後も定着するかは分かりませんが、少なくとも近年において機関投資家などは「ESG投資を重視する」と宣言し始めていますから、まずは大企業から広がりを見せるのかもしれません。
株式投資ではどう考える?
- このESGという考え方は、まだ認知され始めたばかりのため「どの企業が有望」というのは定まっていない状態。
- 考えようによっては、資源系メジャーなどはこのESGと逆行するため、この考え方が広まれば不利となってくる。
5G(ファイブ・ジー)
次が「5G(ファイブ・ジー)」について。
日本においては「ゴー・ジー」などと呼ぶ人もいるようですが、一般的には「ファイブ・ジー」ですから、恥をかきたくない人はファイブジーと言った方が良いでしょうね。
もちろんゴージーでも伝わるには伝わるでしょうから、問題ないとも言えますが(笑)。
さてこの5Gですが、英語で言うと「5th Generation(フィフス ジェネレーション)」となり、直訳すれば「第5世代」という事になります。
では一体何の第5世代なのかと言えば、無線通信技術における5番目の世代という事になり、日本においては「第5世代移動通信システム」の略とされています。つまり現時点における「スマートフォンなどの最新通信技術」という事になります。
この5Gですが、日本においては2020年の3月から商用サービスが開始されましたが、アメリカなどの諸外国などは既に2019年ごろから導入していますから、世界的に見ると日本は少し遅れているという印象があります。
5Gの代表的な特徴として、以下の事が挙げられます。
- 超高速通信 - 通信速度が最大20Gbpsまで向上
- 超低遅延 - 通信のタイムラグが低下
- 多数接続 - これまでよりも接続できる機器が増える
理論値としては、4Gに比べてかなり通信速度などが向上するとされていますが、現段階の実際の運用においては、スマホ自体が5Gに対応していないことも多いですから、5Gの本格運用はまだまだこれからと言ったところでしょうね。
株式投資ではどう考える?
- 日本企業は世界的に遅れている状態。
- 5G関連の中心は米国と中国企業となっており、経済的な摩擦も懸念される。
テレワーク
次が「テレワーク」について。
今年の緊急事態宣言などの影響から、このテレワークについてはほとんどの方が理解していると思いますから、あえて当サイトでご紹介するまでもないでしょうが、一応説明しておきます。
テレワークとは、「tele=離れたところ」「work=働く」を掛け合わせた造語で、要は場所や環境にとらわれない自由な働き方の事を言います。
ですから、テレワークと聞くと自宅で働くことのみをイメージする人もいるようですが、実際にはサテライトオフィスなどを利用した働き方もテレワークの一種となります。
テレワークと似たような言葉で「リモートワーク」という言葉もありますが、こちらも「remote=遠隔」「work=働く」を掛け合わせた造語となっており、意味としてはテレワークと同じですから、あえて使い分ける必要もないでしょう。
一般的に、テレワークで働く場所や環境としては、以下の3つに大別されることになります。
- 在宅勤務 - それぞれの自宅において勤務
- モバイルワーク - 移動中の新幹線やカフェなど、施設に依存しない働き方
- 施設利用型 - サテライトオフィス、シェアオフィス、コワーキングスペースなど
図にすると以下の通り。
要は、これまでのような「時間通りに出社して、基本は会社で業務を行う」という縛りがなくなったという事です。
当サイトはテレワークに関する記事もたくさんありますから、詳しく知りたい方は「テレワーク」のページもご覧になってみて下さい。
株式投資ではどう考える?
- 日本企業においては、チャット関連企業やサイボウズなどのグループウェア企業などが注目を集める。
- 世界的に見ると、米国のZoomやマイクロソフトなどは段違いの存在感。
植物肉
そして最後が「植物肉」について。
これは日本ではまだ馴染みの薄い言葉かもしれませんが、米国などではかなり定着し始めています。
植物肉とは簡単に言えば、大豆などの植物由来の成分で作られた「疑似肉」であり、もともとはベジタリアンや環境問題に関心の高い欧米の若者を中心に広まったものです。
更に2020年に入り、米国の食肉加工工場で新型コロナウイルスの集団感染があり、食肉の供給が停止した影響などから急速にこの植物肉が注目されるようになったのです。
これに目を付けた米小売り大手のウォルマートが取り扱いを拡大した結果、世界的な広がりを見せるようになりました。この植物肉は「代替肉」とも呼ばれ、とある試算では年9%の市場拡大があると予想されていますから、今後日本においても広がりを見せるかもしれません。
ただし、大豆は世界的に需要が高まっていますから、今後穀物市場において世界的な争奪戦が起きる可能性も含んでいます。
株式投資ではどう考える?
- 日本においてはまだまだ始まったばかりで、一部のカフェなどで試験的に導入し始めているのみ。
- 米国においては、ビヨンド・ミート(上場)やインポッシブル・フーズ(未上場)といった企業が注目を集める。