法人の「事業目的」を考える際のコツとポイント

新たに法人を設立する際、法人の設立登記(商業登記)が必要となりますが、その際に決めなくてはならない内容について、かなり悩んでいる人をたまに見かけます。

その中でも特に、「事業目的」について悩む人が多いようです。

この事業目的というのは、法人設立時に必ず決めなくてはならない事項(絶対的記載事項)となり、簡単に言うと「どういった事業を行う法人なのか」という事を記載する項目なのですが、人によっては「将来的に、あれもしたいしなぁ~」とか、「細かく記載しておかないと、後々心配だな」などと考える事もあるようで、これが決まらないために中々設立登記が出来ないなんて事もあるようです。

そこでこの記事では、法人の事業目的を考える際のコツやポイントについて詳しくお伝えしようと思いますので、現在事業目的で悩んでいる方や、将来的に法人を設立しようと考えている方などは参考にして頂ければと思います。

法人設立の流れ

まずは最初に、法人設立の流れについてから簡単に説明していきたいと思います。

法人を設立する際にはまず「定款」というものを作る必要があり、その中で法人の名称(商号)や住所など、様々な事項を記入していきます。

そしてその定款が出来上がったら、公証人役場にそれを持ち込み公証人によって「定款認証」をしてもらいます。そしてその後、資本金(出資金)を各株主が一定の口座に入金し、それをもって法務局に法人の設立登記を申請することになります。

ですから順番でいくと、次のようになります。

法人設立の流れ
  1. 公証人役場で「定款認証」をする(電子認証も可) ー ※合同会社の場合は定款認証は不要
  2. 資本金(出資金)の払い込みを行う
  3. 法務局にて設立登記を行う(電子申請も可)

法務局に対して提出する書類は様々ありますが、基本的には定款の内容が反映されますから、法人設立においては定款が最も重要となります。

ちなみに、上記2の「資本金(出資金)の払い込み」ですが、基本的に法人用の口座は法人設立後にしか開設できないため、この時点では口座がありませんよね。この場合に必要となる口座は、例えば株主の代表者などの個人口座でも利用可能ですから、一般的な感覚でいくとちょっと首を傾げるかもしれませんが、実務上はそうなっています。

定款に記載すべき内容

それでは次に、定款に記載すべき内容について。

詳細については別の記事にてお伝えしようと思いますが、基本的に定款の内容は「絶対的記載事項」と「相対的記載事項」、それと「任意的記載事項」の3種類から成り立っています。

その中でもこの記事で説明する「事業目的」は絶対的記載事項となっていますから、絶対、つまり「必ず」記載しなくてはならない内容だという事ですね。

ちなみに、絶対的記載事項というのは以下の5つとなっています。

絶対的記載事項
  1. 商号     - 法人名
  2. 目的     - 事業目的
  3. 本店の所在地 - 住所
  4. 会社の設立に際して出資される財産の価格またはその最低額 - 要は資本金の事
  5. 発起人の氏名または名称および住所 - 創立時の株主の事

※この他、「発行可能株式総数」というものに関しては絶対的記載事項とはならないのですが、登記時においては必要となるため、通常は最初から定款に記載しておきます。

事業目的を考える際のコツ

それでは次に、法人の事業目的を考える際のコツについて順に見ていきましょう。

難しく考えすぎない

まずは「難しく考えすぎない」という事。

特にキッチリとした性格な人などは、「自分の携わる事業について、事細かに書かなくてはいけないんじゃないか?」などと考える事もあるようですが、この事業目的というのはあくまで「こんな感じの事業をしますよ」というある意味漠然とした内容でも認められますから、そこまで難しく考える必要はありません。

例えば、居酒屋の経営を考えているのであれば、キッチリと「居酒屋の経営」などと記載する必要はなく、「飲食店の経営」と記載すれば十分だといえます。

また、建設業の方であれば建設業の業種は29業種ありますから、「将来的に全ての工事に携わるとすれば、29業種全部記載しなきゃいけないのかな?」と考えだす人もいるかもしれませんが、例えば「土木一式工事の設計、施工、監理、請負業」と「建築一式工事の設計、施工、監理、請負業」の2項目さえ入れておけば、ほとんどの業種を包括しているとも捉えられますから、いちいち全ての業種を記載する必要はありません。

もちろん、自社が「塗装工事」のみに特化した企業であれば、それをメインに記載したほうが対外的な印象も良くなりますので、むしろ細かく書いた方が良い場合もありますが、「あれもこれも」と全て記載する必要はないという事です。

また、例えば先ほどの居酒屋の経営をしようとしている人が「飲食店の経営だけじゃ物足りない、将来的にはコンサル業務もやりたい」と考えるなら、わざわざそれを追加する必要もなく、「飲食店の経営、企画、及びそのコンサルタント業務」という文言に変更するだけでも十分だと言えます。

何より、この事業目的を記載する際の特徴として、大抵の場合は最後の一文「前各号に附帯関連する一切の業務」という文言を入れますから、本業から派生するような業務も問題なく行えるという事になります。

ですから、関連業務については細かく書く必要がありませんので、あまり難しく考えすぎないようにしましょう。

ポイント

  • 細かく記載せず、大枠で考える - 居酒屋の経営をするのであれば、「飲食店の経営」など。
  • あれもこれも全て記載する必要はない。
  • 本業から派生する業務は「前各号に附帯関連する一切の業務」で包括できる。

とは言っても、簡単すぎるのもいけない

上記で難しく考えすぎるのもいけませんとお伝えしましたが、とは言ってもあまり簡単すぎるの良くありません

例えば自分の会社を設立するとして、「この会社は、大手企業からの業務委託がメインとなるな。だったら単純に業務委託とだけ事業目的に入れよう」というのは問題となります。

というのも、そこまで漠然とし過ぎてしまうと、今度は定款認証時や登記申請時に否認されてしまう可能性があるからです。

ですから「業務委託」のみとはせず、少なくともこの場合は「〇〇の業務委託」くらいは記載する必要があります。

ポイント

  • あまり漠然とし過ぎるのもいけない。
  • 例えば、コンサルタント業をするのであれば、せめて「経営コンサルタント業」や「〇〇のコンサルタント業務」などと記載する。

許可が必要となる場合はしっかりと記載する必要がある

次が、「許可が必要となる場合は、しっかりとその内容を記載する必要がある」という事について。

基本的に事業目的の内容は、要件さえ満たしていれば自由に記載して良いことになっていますが、許認可などが必要となる場合には、その事業を事業目的に記載しなくてはいけない事となっています。

詳しくは行政書士などの専門家に尋ねて頂ければと思いますが、代表的な例としては以下のようなものが挙げられます。

注意が必要な許認可
  1. 宅建業 - (記載例)不動産の売買、賃貸、仲介並びに管理
  2. 警備業 - (記載例)綜合警備保障業
  3. 運送業 - (記載例)一般貨物自動車運送業
  4. 産廃業 - (記載例)産業廃棄物処理業
  5. 派遣業 - (記載例)一般労働者派遣事業

この他、特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人なども、事業目的について厳格な内容が求められますが、これは特殊なため割愛させていただきます。

法人を設立後に許認可を取得しようと考えている場合は、事前に行政などに確認しておくようにしましょう。

ちなみに、これはあまり知られていませんが、「債権回収事業」などは弁護士のみが取り扱える事業ですから、これを行うと弁護士法違反となります。ですから、事業目的に「債権回収業」などと記載する事が出来ません(サービサーなどは除く)。

事業目的をあまり書きすぎてはいけない

そして最後が、「事業目的をあまり書きすぎてはいけない」という事について。

実際に、一つの法人で多岐にわたる事業を運営していくのであれば問題ありませんが、単純に「将来的にやるかもしれないから」といった程度の考えで、何でもかんでも記載するというのはあまりお勧めできません。

というのも、あまりにも多くの事業目的を記載していると、対外的な印象が悪くなる可能性があるからです。

最近ではそうでもないようですが、10年以上前であればこうした「事業目的がとにかく多い企業」というのは、どこか少し「怪しい」企業が多かったように思います。

実際、銀行などはこうした「事業目的が多い企業」に対して「要注意企業」とみる事もあったようですから、借り入れなどにおいても不都合が生じる可能性があります。

もちろん、最近も同様であるとは言い切れませんが、何にせよあまり対外的には印象が良くないため、出来れば事業目的は「5つ程度」、多くても「10個程度」に抑えておいた方が良いでしょう。

将来的に事業が拡大した場合は、その時点で「事業目的の変更登記」を行えば良いだけですから、設立時にあれもこれもと記載しない方が良いでしょう。

ポイント

  • 事業目的が多すぎる企業は、対外的な印象が悪くなる可能性がある。
  • 事業目的の数は、出来れば「5つ程度」で多くても「10個程度」。
  • 事業が増えた場合は、その都度変更すれば良いだけの話。

事業目的の記載例

それでは最後に、事業目的の記載例を少しだけご紹介しておきましょう。

世の中には数多くの職種がありますから、ほんの一部とはなりますが、下記の記載例を参考にして自社の業種に当てはめてみて下さい。

※ 実際に記載する場合は、専門家である司法書士や公証人などに相談するようにして下さい。

ネットビジネス関連

まずはネットビジネス関連から。

アフィリエイト
  • インターネットを利用した広告業務
  • インターネットを利用した情報提供の仲介業務
ユーチューバー
  • インターネットを利用した広告業務及び動画配信業務
  • インターネットを利用した情報提供の仲介業務

※「投げ銭」などを利用する場合は、別途事業目的を考えなくてならない可能性もありますから、その際には司法書士などにご相談ください。

せどり
  • インターネットを利用した通信販売業務
  • 古物営業法に基づく古物商
  • 古物品の売買、卸ならびに輸出入

※上記のみでも十分だと言えますが、せどりの場合は事業の形態にもよって内容が異なりますから、こちらも場合によっては司法書士などに相談しましょう。

物販・製造関連

続いて「物販・製造関連」について。

物販・製造関連
  • 〇〇の製造、加工、修理、販売
  • 日用品雑貨の輸入、製造、販売
  • 食料品の販売

その他

そして最後に「その他」として幾つかご紹介しておきます。

その他
  • 経営コンサルタント業
  • 〇〇におけるコンサルタント業務
  • 損害保険代理業
  • 生命保険の募集に関する業務
  • コンピュータのソフトウェアの開発並びに販売
  • 介護事業

この他にも様々ありますが、まずは上記でお伝えした記載例を基に、自社の事業内容を何となくはめ込むだけでもそれらしい文言になりますから、一度試してみて下さい。