
ここ数年、「在宅ワーク」という働き方が注目されていますが、新型ウイルスの影響などもあり今後は更にこの働き方が増えていく事でしょう。
インターネット技術の向上もあり、様々な職種へとこの波が押し寄せていると思いますが、特に会計業界にはこの「在宅ワーク」という働き方は馴染みやすいのではないでしょうか。
基本的に、事務所で勤務するにしても、顧客から預かった資料をもとに入力を行いますから、パソコンと資料を入手できる環境さえあれば、自宅でも業務は行えるはずです。
そこでこの記事では、会計事務所出身者が「在宅ワーク」を選択する利点や、その理由などについてお伝えします。
目次
在宅ワークの環境は、昔よりはるかに整っている
実はこの会計事務所経験者による在宅ワークという働き方は、現在のようにインターネット環境が整う以前からありました。
当時は、会計事務所と在宅ワーカーが郵送などで資料をやり取りし、自宅でそれを入力した後、再度その資料と入力データを返送する方法が多かったと思います。
しかしこの方法ですと、どうしても顧客資料を外部に持ち出してしまう事に対する不安が付きまとい、情報管理の面において、どうしても管理が行き届かないという難点がありました。
しかし近年、インターネット環境が充実してきたため、顧客の資料をスキャナーで読み込み、それをクラウド上で共有する事で紛失等の恐れはなくなり、しかも郵送などの費用もかからなくなっています。
また、入力に関してもクラウド会計ソフトを利用する事で、いちいちデータを送る必要もなくなった点もこの在宅ワーク拡大の要因となっています。
もちろん、現在も旧来の「郵送方式」を採用している会計事務所もありますが、徐々にこの「クラウド方式」に移行する事務所が増えてきています。
これにより、自宅から一歩も外に出ない「完全在宅ワーク」が可能となってきているのです。
またこれは、会計事務所と在宅ワーカーだけの関係だけではなく、一般企業と在宅ワーカーとの間でも活用できる方法となりますから、あえて会計事務所だけと契約する必要もありません。
会計事務所出身者が在宅ワークをするメリット
基本的に在宅ワークとなれば、多くの企業が「時給制」を採用していますが、こうした会計事務所とのやり取りにおいては、時給制ではなく「出来高制」となる事が多くなります。
これにより、会計事務所の在宅ワークをする一番のメリットとしては、「好きな時間」に「好きなだけ」仕事を出来るという点が挙げられます。
もちろん、守るべき納期はありますが、それさえクリアすれば自分で予定を立てて仕事を進める事が可能となります。
- 出来高制の為、ある程度自分の思い通り仕事を進められる
- 通勤時間が不要となる
- 人間関係で悩むことが少なくなる
- 基本的に「業務委託契約」のため、複数事務所との契約も可能
- 確定申告で「家事関連費」の計上も可能
基本的に「業務委託契約」となるため確定申告が必要となりますが、通常の個人事業主と異なり、営業などに時間を取られる事も少ないですから収入に対する不安は少ないと言えます。
また、個人事業主であるがゆえに、事業に関連する経費を計上出来ますから、「家賃」や「光熱費」など家事関連費を経費として申告する事も可能となります。
時間的な制限を含め、パートなどで働くよりはかなりメリットの多い働き方だと言えます。
ちなみに、現在主婦の方で「夫の扶養から外れたくない」などと言った事を心配している人は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。
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在宅ワーカーが用意すべきツール
それでは、会計事務所出身者が在宅ワーカーとして働くために、どのようなツールを用意すべきかについても考えてみましょう。
最低限用意すべきものは以下の通り。
- パソコン
- Microsoft officeツール(最低限、Excel、Word)
- インターネット環境
- プリンター
上記はどれも、一般的な家庭であれば既に所有しているものばかりかと思います。また、依頼する側の企業によっては、こうしたツールを無償で貸し出してくれることもあります。
ですから、在宅ワークを始めるにあたって、新たな出費はほとんど無いと言えるでしょう。ただし、可能であれば以下のツールもあれば更に便利かもしれません。
- パソコンのモニター(画面)
- Googleのアカウント
上記のパソコンモニターに関しては、出来れば2画面以上での作業のほうが効率的となるため、いずれは用意したほうが便利かと思います。
先ほども説明しましたが、最近の会計事務所の在宅ワークは資料をスキャナーなどでデジタル化し、それをクラウド上で確認しますから、どうしても「入力用の画面」と「資料確認用の画面」があったほうが仕事が効率的にこなせます。
しかし最初からお金をかけるのもどうかと思いますから、契約を結んでから考えても良いかもしれません。
また、「Googleアカウント」とありますが、依頼する企業によってはクラウドを「Googleドライブ」で利用している事もありますので、事前にGoogleアカウントが必要となる場合もあります。
しかしこれも、契約後に考えても良いかもしれません。
企業側が用意すべきツール
それではここで余談にはなりますが、依頼する企業側が用意すべきツールについても見ていきましょう。
基本は以下の通り。
- 書類電子化ツール
- クラウド会計ソフト
- チャットツール
- クラウドツール
- 業務のルール作り
在宅ワーカーに業務を依頼する上で、一番重要となるのはやはり「書類電子化ツール」です。
世の中には書類を電子化するツールが沢山ありますが、このソフトの選択次第では、後々不便に感じてしまう事もあるからです。
基本的に、PDFに変換するだけでも良いのですが、「データ量」「OCR」「データ整理」などの点を考慮すれば、ある程度費用をかけて書類電子化ツールを購入したほうが便利です。
この電子化ツールについては、最近では「電子帳簿保存法」なども注目されていますから、これについて詳しくはこちらの記事もご覧になってみて下さい。
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またこれ以外にも、「チャットツール」や「クラウドツール」などは在宅ワーカーさんとのやり取りで重要となりますから、出来るだけ使い易いものを選択するようにしましょう。
「業務のルール作り」に関しては、やはり重要な資料を扱うため、その利用方法や管理者権限などを事前にしっかりと決めておくことが重要となります。この点について詳しくは、こちらを参考にしてみて下さい。
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「会計事務所出身者」の定義
依頼する企業側とすれば、経験豊富な人に仕事を任せたいと思うでしょうが、その基準というのも企業によって様々です。
ではこの依頼者側から見た「会計事務所出身者の定義」とは、一体どの程度の経験を言うのでしょうか。
様々な求人サイトを検索すると、以下のような募集内容となっている事が多いようです。
- 会計事務所での2年以上の勤務経験
- 1つ以上の会計ソフトの使用経験がある
- Excelを使用した作業が出来る
以上であれば、ほとんどの会計事務所出身者がクリアできる条件かと思います。
この辺についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧になってみて下さい。
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ただし、企業によってはこれに加え、下記のようなスキルを求める事もあります。
- 日商簿記2級以上取得もしくは同等以上のスキル
- 月次決算が出来る人
- クラウド会計ソフト利用経験者(freee、マネーフォワード等)
- 給与計算経験者
上記の内容の全てを必要とされる訳ではありませんが、報酬が高い企業になるとそれなりのスキルを求められることがあります。
しかし最低限、どこの企業も「日商簿記2級以上のスキル」はほしいところのようですから、資格取得者は優遇される傾向にあります。会計事務所に勤務していたのであれば、日商簿記2級以上のスキルはあると思いますが、意外と実際に資格を取得していないという人も見かけます。
それほど難しくはありませんから、この際、日商簿記2級の合格を目指してみるのも良いかもしれませんね。
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在宅ワークを検索できる「求人サイト」
それでは、こうした会計事務所向けの在宅ワークを検索できる「求人サイト」についても見ていきましょう。
まだまだそれほど多くはありませんが、下記のサイトであれば、希望に合った仕事を見つける事が出来るでしょう。
ジャスネット在宅スタッフ
会計事務所出身者が、在宅ワークの仕事を探したいのであれば、まずはこの「ジャスネット在宅スタッフ」で求人企業を確認する事をお勧めします。
ジャスネットという企業は、このサイトの他にも求人サイトを作成していますが、そのどれもが「会計職に特化したサイト」となっていますから、やはり実績が違います。
掲載企業数はそこまで多くはありませんが、全般的に、会計事務所の求人が多い傾向があります。
主な特徴 | 業務内容 | 雇用形態 |
---|---|---|
会計職に特化した求人サイト 全般的に、「会計事務所の勤務経験があればOK」という求人が多い | データチェック、代行入力など 企業によっては、給与計算を求める事もあり | 業務委託、または派遣 |
フジ子さん
このフジ子さんというサイトは、このサイトを運営しているフジア株式会社という企業が、様々な企業から秘書業務を時間単位で請け負い、その業務内容をチームでこなしていくというちょっと変わった在宅ワークとなっています。最近注目されている「オンラインアシスタント」という働き方です。
企業との直接のやりとりはメインアシスタントが行いますので、アナタはそのメインアシスタントから指示された仕事をこなすといった流れとなります。
チーム制ですから、仲間同士で助け合う事もでき「最初は一人だと不安だなぁ」と考えている人にはピッタリのサイトかもしれません。ただし、「雇用契約」となりますから注意が必要です。
主な特徴 | 業務内容 | 雇用形態 |
---|---|---|
オンラインアシスタント業務を受注する企業 完全在宅ワークだが、チーム同士で助け合える | 会計事務所などでのクライアント対応 決算作業 | 契約社員、または正社員 |
まとめ
在宅ワークと表現はされますが、必ず自宅で働く必要は無く、極論を言えば旅行先でも働く事が出来ますから、「時間」と「場所」を選ばず働きたい人にとってはとても嬉しい働き方ですよね。
また、上記でご紹介した求人サイトをご覧頂ければ、いかに会計事務所経験者が必要とされているかがお分かりになるかと思います。
しかも在宅ワークの求人は年々増えていますから、これを機に、働き方を見直してみては如何でしょうか。
ちなみに、主婦の方で「私は会計事務所出身者ではないけれど、在宅ワークに興味がある」という人は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。
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