
簿記検定などに合格し、「よし、簿記の資格もあるから、経理の求人でも探そう」と、転職サイトなどを検索すると、必ずと言って良いほど記載されている文言が、
「〇年以上の実務経験が必要」
という内容かと思います。
様々なサイトなどで、「資格を取れば、就職・転職に有利ですよ」などと書かれていますが、現実として資格を取得しただけでは、希望の会社に就職できるわけではありません。
やはり企業側からすると、「資格があるのは大いに結構だけど、本当に実務が出来るの?」というのが本音だと言えるでしょう。
求人広告を出しているからには、少しでも早く人材が欲しいところでしょうが、企業としても膨大な人数の面接をこなすのは負担になります。そこで、ある一定の条件を設ける事でハードルを上げ、自社の求める人材を募集すれば効率が良いという訳ですね。
その一番分かり易いハードルが、「〇年以上の実務経験」という事です。
しかし、一律に実務経験と言われても、どこからどこまでというのは、あまり具体的でない事が多いようです。そこでこの記事では、企業が経理人材に求める実務経験について、具体的にお伝えしようと思います。
目次
必要な年数は、求める人材によって異なる
まずは必要とされる「経験年数」について。
一般的に、経理における実務経験として求められる年数としては、「2年以上」というのが一番多いと言えます。
考え方としては「1年程度だと一通りの経験はしているかもしれないが、やはり、2年以上経験していれば、ある程度習熟度も高いだろう」という事でしょう。
経理となれば、決算業務に携わる仕事がメインとなります。決算は1年に1回ですから、それを2回経験すれば、それなりの実力が備わっているだろうという事ですね。
ですから、求人の募集条件を見ると、「日商簿記2級合格者、2年以上の実務経験者歓迎」という内容がかなり多くなるという訳です。
更に言うと、通常、日商簿記3級に合格しただけですとあまり求人案件が多くありませんが、この「2年以上の実務経験」を満たしている事で、いきなり求人案件が増えるという可能性もあるのです。
しかし、同じ経理の仕事でも、幹部候補になると少し話は違ってきます。
幹部候補の求人となれば、給与もかなり高額となりますが、その分求められるスキルも高まります。ですから多くの場合、募集条件の内容は「日商簿記1級合格者」で、更に「5年以上の実務経験」を求められるようになります。
やはり、幹部として仕事を任せられるだけの高いスキルを身に付けるには、最低でも5年以上の経験が必要だとほとんどの企業は考えているようです。
実務経験の「具体的な内容」
とは言え、経理の業務というのは多岐に渡るため、具体的にどんな内容が実務経験として認めらるのか分かりづらいかもしれません。
それぞれのポジションごとに、求められる実務経験の内容について見ていきましょう。
経理スタッフ
まずは経理スタッフに求められる実務経験の内容から。
代表的なものとしては、以下のようになります。
スタッフに求められる実務経験
- 経費精算業務(計算、仕訳)
- 入出金管理
- 給与・労務関連(社会保険など)
- 請求書作成
- 会計ソフトへの入力
基本的に、企業としては最後の「会計ソフトへの入力」の経験も欲しいところですが、最低限上記4番目の「請求書の作成」までの経験があれば、一応「経理の実務経験」として認める場合が多いようです。
もちろん、これ以上の経験があれば「尚可」となり、支払われる給与にも違いが発生する事になります。
経理マネージャー
それでは次に、経理マネージャーに求められる実務経験の内容について。
ここで、スタッフとマネージャーの区別方法として、「スタッフは入力作業がメイン」「マネージャーは、管理業務がメイン」と考えて下さい。
つまり、マネージャーになると、入力作業よりもスタッフを取りまとめる能力を求められ、役職としては課長や部長職と考えれば分かり易いと思います。
マネージャーに求められる実務経験
- 月次、年次の決算業務
- 各種税務申告業務
- 資金繰り対策(銀行対応)
- 原価計算
- 税理士対応
以上からわかるように、経理マネージャーとして転職するには、最低限「決算業務」「税務申告」の経験を求められ、それにともなって「銀行対応」「税理士対応」という業務も付随して任せられるかという事がポイントとなります。
一般的に、中小企業に勤務していれば決算業務や申告業務に携わる事も多くなりますが、大企業の経理として働いていた場合は、入力作業がメインとなるので、決算書一式の作成まで経験する事は少ないかもしれません。
その点、税理士事務所に勤務していた人であれば、年間に数十件もの決算業務に携われる事から、多くの企業が「税理士事務所経験者歓迎」と記載しているのも理解できます。
税理士事務所(会計事務所)勤務は転職に有利なのか?
という事は、簿記の資格を取得し、税理士事務所(会計事務所)に数年間勤務した実績があれば、かなり就職・転職に有利に働くと考えますよね。
しかし現実的には、一律にそうとも言えないのが実情です。
それでは、その理由について見ていきましょう。
入所後数年は、入力業務がメイン
当サイト管理人は、これまで様々なタイプ、規模の税理士事務所と付き合ってきましたが、どこの事務所に伺っても、基本的に未経験の新入社員には、まずは「入力業務」を経験させることが多いように感じます。
具体的には、顧客から預かってきたレシートなどの数値を会計ソフトに入力したり、顧客の入力した帳票の修正などといった業務です。
もちろん、入社後すぐに数件の顧客を持たせてもらい、いきなり決算書作成や税務申告を任せられることもあるようですが、これは殆ど稀と言って良いでしょう。
ですから、転職する際に「税理士事務所に勤めてたんですか?それは助かる」と面接官が喜ぶかもしれませんが、多くの場合、税理士事務所で顧客を持たずに働いていたスタッフは、申告書の作成をさせて貰っていない事がありますので、税理士事務所に務めただけで会計スキルが上がると考えるのは早計だと言えます。
大規模事務所になるほど「分業制」
次に、小規模・中堅の税理士事務所であれば、かなり幅広く業務を任せてもらえる機会がありますが、大規模事務所になればなるほど、その機会は減る事になります。
その理由が、「多くの大規模事務所は分業制を採用している」という事。
基本的に、大規模税理士事務所が抱えるクライアントは事業規模が大きく、一人のスタッフで全てこなせる業務量ではありません。売上高数百億円ともなれば、経費も数百億円単位となり、入力するデータ量も膨大な規模となります。
そこでこうしたクライアントに対応するために、「クライアント打ち合わせ担当」「入力担当」「帳票出力担当」などなど、完全分業制にしなければ効率よく業務をこなせないのです。
ですから以前、当サイト管理人が、とある税理士にクライアントの月次データを依頼した時、「事務所に連絡して頼んで欲しい」と言われたので、その通り事務所に連絡したことがあります。
そこで「入力担当」の方に、「試算表が欲しいのですが」とお願いすると、その方が試算表の意味を理解しておらず、結局、余分なデータまで一式送られてきました。
笑い話のように聞こえますが、このようなことは意外と多いのが事実です。
ですから、「将来を見据えて、税理士事務所で色々な経験をしておきたい」と考えているなら、自ら進んで「他の業務も任せてほしい」と頼まない限り、せっかく税理士事務所に入社しても、あなたのスキルアップには繋がらないと考えなくてはいけません。
求人条件は必ずチェックする
このように、一口に「経験年数」「実務内容」と言っても、詳しく見ればその内容は多岐に渡る事がわかります。ですから、転職サイトなどで求人情報を検索するなら、必ず「求人条件」は詳しくチェックしなくてはいけません。
そこを誤るとミスマッチの原因となり、企業側にとっても求職者側にとっても、時間の無駄となってしまいます。
ポイントとしては、「この企業に入社したら、どんな仕事を任せられるのか?また、自分はそれに対応できるのか?」という事と、「求められる資格、経験」などについてじっくりと観察しましょう。
世の中にはたくさんの転職サイトがありますが、ここで「経理の転職に強い」「求人条件が明確になっている」おススメのサイトをご紹介します。
doda
経理の仕事を探すのであれば、まずこの「dodaエージェントサービス」で確認する事をお勧めします。数ある転職サイトの中でもトップクラスの掲載数を誇り、尚且つ経理の求人が多い事でも有名。
税理士事務所や公認会計士事務所の求人もあるので、税理士を目指す人にもお勧めです。
対象資格 | 求人企業 | 雇用形態 |
---|---|---|
日商簿記3級以上 | 大規模企業がメイン | 正社員 |
ジャスネットキャリア
【ジャスネットキャリア】は、「経理の転職に特化したサイト」として有名で、求人数も他のサイトに比べて豊富な内容となっています。
また、求人欄も見やすく、「どういった企業が、どういった人材を求めているか」ということが一目でわかるので、とても便利です。
対象資格 | 求人企業 | 雇用形態 |
---|---|---|
日商簿記2級以上 | 大規模企業がメイン | 正社員 |
ジャスネットスタッフ
この【ジャスネットスタッフ】は、上記と同じくジャスネットコミュニケーションズ(株)が運営する「経理に特化」した転職サイトとなっています。
ジャスネットキャリアと異なる点は、こちらは「派遣」がメインとなっており、派遣での転職を考える方にはおススメのサイトです。
紹介予定派遣もあり、正社員を目指す方にも便利なサイトです。
対象資格 | 求人企業 | 雇用形態 |
---|---|---|
未経験可案件も多数 | 職種、業務内容から幅広く選べる | 派遣、紹介予定派遣、正社員 |