
近年のインターネットの普及により、多くの人は情報収集をほとんどネット検索に頼るようになりました。
それゆえに売り上げなどに及ぼす影響が大きいため、各企業とも、如何にこのインターネットを上手く利用できるかについて、それぞれ工夫を凝らしています。
一般的に、IT関連に疎いと言われる税理士業界ですが、最近ではホームページやブログを充実させ、顧客獲得に繋げている会計事務所も増えているようです。
では、この「ネット集客」が会計事務所において良い面ばかりかと言うと、必ずしもそうとも言えないのが現実ようです。
そこでこの記事では、税理士事務所(会計事務所)がホームページや、ブログを運営する上での「メリット・デメリット」にはどういったものがあるのかについてお伝えしようと思います。
※他の士業の方も、参考にして頂けると思います。
目次
ブログ等運営のメリット
まずはメリットについて。
一律にメリットと言っても、人それぞれ捉え方が違う事もあるでしょうが、以下では全般的に共通した利点について列挙します。
一応、この記事ではホームページとブログを中心にしているため、FacebookなどのSNSについては、別の記事で改めてお伝えします。
近年、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及により、多くの方がこのサービスを利用するようになりました。 税理士に限らず、多くの士業の方がSNSを利用する事も増え、人によっては、無くてはならないツールとなっ …
導入費用が安価
まず第一に、導入費用が安価であるという事。
昔に比べて、現在は様々なサービスが出現し、価格的にお手頃になっています。
例えば、ブログで言うと「アメブロ(アメーバブログ)」や「はてなブログ」などは無料で利用できるので、費用はほとんどかかりません。
また、「ちょっと見た目にこだわりたい」という場合でも、レンタルサーバーを借りて有料のテンプレートなど購入しても、初期投資としては5万円程度で済ませる事が出来ます。
昔は、ホームページ作成業者に頼むだけで、数十万円から数百万円も掛かっていたことを考えると、ハードルとしてはかなり下がったと言えますね。
また、ブログを集客のツールとして考えるのであれば、他のツールと比較しても、かなりコストパフォーマンスが良いと言えるでしょう。
例えば、税理士の集客方法として「税理士紹介サイト」がありますが、このサイト上での成約料は、大抵の場合は初年度顧問料の約50%を運営者に支払う形式となっています。
仮に、顧問料2万円/月、決算料16万円とすれば、初年度合計40万円となり、その50%である20万円を運営会社へ支払う事になります(内容は、サイトによって異なります)。
税理士の方からすると、事務所の運営費など様々な経費がかかるので、40万円を請求するにはそれなりの理由があります。40万円の仕事に対して、20万円の売上げで処理しなくてはいけないのですから、事業運営としてはかなり厳しいと言えるでしょう。
そこへ行くとブログでの集客は、税理士紹介サイトより成約件数は劣るでしょうが、一件成約すれば、初期費用5万円はすぐに回収出来ます。
残りの成約に関しては、全てが利益と考えられるので、こうした事からもコストパフォーマンスの面においては効果的なツールだと言えますね。
書籍出版依頼に繋がり易い
次が、「書籍出版依頼に繋がりやすい」という事について。
ブログを継続的に運営していると、出版会社などの目に留まりやすくなります。「出版不況」と言われる昨今ですが、出版会社としても何とか「売れる本」を世に送り出すべく、日々努力しています。
出版会社には、日々多くの原稿持ち込みがあるようですが、彼らもそういった素人の本を読むよりは、インターネット上で秀逸なブログを見つけ、出版依頼をするほうが楽だというのが本音です。
もちろん、文章力がなくては依頼も来ませんが、ブログを運営し続ける事により、ある程度の文章力は身に付いていきます。
また、自分が特化している分野を全面的に押し出すことにより、経済誌などからも依頼を受けやすくなります。
例えば、国際税務は多くの税理士が苦手としていますが、個人向けの「〇〇国との個人輸入の税務」など、ニッチな分野であれば、簡単に差別化を図ることが可能となります。
こうした、人とは違う分野のブログを更新し続ける事で、経済誌などが「個人輸入について」などの特集を組む時には、一番に声がかかる事でしょう。
「税理士業務だけで食べていく」というのであれば、それはそれで構いませんが、収益の柱は多ければ多いほど、ゆとりが生まれます。
講演依頼が発生しやすい
そして次が、「講演依頼が発生しやすい」という事について。
ブログ運営の利点として、出版依頼と共に「講演依頼」が発生しやすい事が挙げられます。
例えば銀行やハウスメーカーなどは、税制改正を商機として捉える事が多く、税理士を招いてのセミナーは全国各地で開催されています。ただし、大手住宅メーカーや大手銀行などは、専属の税理士がいることが多いので、初めはそういった大手からの依頼は少なく、小規模の講演になる事が多いでしょう。
税理士によっては、「1対1は得意だけど、大勢の前ではちょっと・・・」という人もいると思うので、これをメリットと捉えるかどうかは人によりますね。
ただ、税理士の中には「専門学校で講師をしていた」という人も多いので、そういった「人前で話すことが得意な人」は、プロフィールに積極的に記載する事で、こうした依頼に繋がり易くなると言えます。
また、ある程度ブログの訪問者が増える事で、自分が講演会を開催する時の告知ツールとしても利用できます。
地域の広告社に依頼する事を考えれば、安価に告知が出来るため、そういった面でも便利だと言えます。
ブログ自体が収益源となる
ブログを継続的に運営し、ある程度の読者が増える事で、「ブログ自体が収益源」となる可能性があります。
アフィリエイトという言葉をご存知でしょうか?
自分のブログやサイトに広告を貼り、その広告を読者の方がクリックしたり、広告主のサイトでその読者が買い物をすることで、あなたへ広告収入が入るシステムです。
実際、当サイトもアフィリエイトに参加していますし、ブログを運営している多くの税理士がアフィリエイトを利用しています。
読者の数や、PV数(ページビュー数:閲覧されたページ数)にもよりますが、これだけで月5万円~10万円の収入になることもあります。
前述したように、収益の柱は多ければ多いほどゆとりが生まれるので、「収益源のひとつ」という考え方でも、ブログ運営はメリットがあります。
趣味として、気分転換として
ブログを長期間運営していくと、本業である税理士業務以外の内容について、記事を書くことも出てくるでしょう。
何も、「税理士が書くブログだから、税務の事しか書いちゃいけない」なんて事は無く、自分の好きなことについてドンドン発信していけば良いと思います。
むしろ、その方が親近感を持ってもらいやすく、「この税理士に依頼したいな」と考える読者も増えていくでしょう。
例えば、ブログを運営していくうちに、あなたがアフィリエイトが楽しくなり、それなりの実績を出すとします。
楽しいのですから気分転換にもなり、更に言えば、同じくアフィリエイトに取り組んでいる人と知り合い、それが依頼へと繋がるかもしれません。
それが目的ではないにしても、趣味の一つとして考えるのも良いのではないでしょうか。
ブログ運営等のデメリット
これまで、メリットについてお伝えしましたが、実際にはこんなに良い事ばかりでもありません。
デメリットについても理解した上で、取り組むか取り組まないか、また、取り組むにしても、その方法についてよく検討しましょう。
手間がかかる
上記のメリットで、「導入費用が安価」とお伝えした半面、運営に手間がかかるというデメリットがあります。
無料ブログを利用すれば、難しい設定などは少ないので、扱い方はそのうち慣れるでしょうが、将来的にほぼ高い確率で、無料ブログから自分でサーバーを借りる方式(有料ブログ)に乗り換える事を検討し始めると思います。
これは他の記事でもお伝えしますが、どうしても無料ブログというのは有料ブログに比べ、サイト作成の自由度が低いため、運営すればするほど物足りなくってきてしまうからです。
しかし、有料ブログを運営するとなると、様々な設定方法などを勉強しなくてはならず、導入費用が安いとはいえ、自分の時間を取られてしまうという事になります。
また、無料ブログであろうと、有料であろうと「記事を書く手間」は等しくかかってきます。
慣れた人だと、一つの記事に1時間程度で済ませる事もあるようですが、ちゃんとした記事(誤字脱字のチェック、表やグラフの添付など)を書くには、最低でも2~3時間は欲しいところです。
慣れても2時間ですから、最初はかなりの時間を必要とすることを覚悟しなくてはいけません。
そう考えると、本業以外に時間の確保が必要となり、余計なストレスとなる可能性があります。
ですから、ある程度「これも仕事のうちだ」と割り切らないと、ブログ運営は難しいと言えるでしょう。
暇そうだと思われる
税理士の方が運営しているブログを見ていますと、稀に「継続する事を目的にしている」ブログが散見されます。
悪いことではないのですが、それ自体が目的になるのもどうなのかな?と、考える人もいる事でしょう。
特に、1月~5月は、全員ではないにせよ、税理士にとっては繁忙期です。その繁忙期にもかかわらず、毎日ブログを更新しているのは、よほど「暇」なのか、よほど「実力があるか」のどちらかではないでしょうか。
もちろん、戦略的にブログを更新している税理士もいるので、一律に悪いとは言えません。
ただ、読者からすると、戦略的にブログを運営しているかそうでないかは、読んでいればすぐに分かります。
また、独立後数年は顧客も少なく、時間的余裕もあるため、こうした税理士も一律にダメだとも言えないでしょう。むしろ、「頑張っている税理士だな」と応援してくれる人もいるかもしれません。
しかし、例えは悪いですが、毎日ブログを更新するにしても、「今日、〇〇食べました」「今日の天気は・・・」などだけでは、やはり「暇そうだな、この税理士大丈夫かな?」と思われてしまいます。
考え方にもよりますが、更新できないのであれば「しない」と、メリハリをもって運営しなければ、逆効果になる事があるので注意しなければいけません。
中途半端な運営は、むしろ悪影響
上記の「毎日の更新は、暇そうに見える」というデメリットとは反対に、中途半端なブログ運営はむしろ悪影響になることがあります。
では、どういった事が中途半端化と言うと、
① 中身が薄い
② 更新頻度が少ない
③ 何のブログなのかわからない
という事。
実際、こうしたブログは検索にも引っ掛かりませんし、読者も良い印象は抱きません。
「毎日更新するなと言ってみたり、更新しろと言ったり、結局どっちなんだ?」と思うかもしれませんが、極論を言えば「目的も、戦略もないなら、むしろやらないほうがマシ」という事です。
例えば以前、当サイト管理人の知り合いである司法書士法人の代表者が、某大手コンサルタント会社から「スタッフにブログを書かせた方が良い。これからはネットの活用が重要だ」と指導され、その通り実行しました。
最初は定期的に更新していましたが、時間が経つにつれ更新頻度は下がり、内容も「〇〇のお店は美味しかった」というものに。
「書かされている感」が丸出しで、結局そのブログは閉鎖されましたが、後に聞くと、かなり不評だったようです(スタッフにとっても、顧客側から見ても)。
ですから、「事務所が一丸となって運営する」若しくは「代表者だけでも運営し続ける」意識が無いと、ブログ運営は継続する事が難しいと言えるでしょう。
しつこいようですが、「そのブログを運営する目的は何か?」について十分な検討が無ければ、やらないほうがマシだと言えます。
無料の問い合わせが多い
実際、ブログを運営していくとわかりますが、顧客獲得のために頑張っているのに、驚くほど多くの「無料の問合せ」がある事に愕然とするでしょう。
よく士業の方で、
「サイト経由の顧客は、『・・・ちょっと』な人が多い」
「うちは、HPは作っているけど、更新は業者任せで、問い合わせフォームは設けていない」
なんて言う方が、あなたの周りにもいるかと思います。またこれは、税理士や士業に限らず、どこの業界にも共通している事です。
ブログを運営していく中で問い合わせのメールがあると、最初は嬉しいものですが、その多くが「無料の問合せ」である可能性が高く、それに対応するだけで無駄な時間を取られる事になります。
ネットで検索すること自体が無料(もちろん、通信費はかかりますが)ですので、こうしたネット経由の顧客というのは、「当たり前のように」無料で相談してくる事が多いのです。
もちろん、こうした顧客が将来的に、ちゃんと報酬を支払ってくれる顧客にもなり得るので、全てを無視することも出来ません。
こうした「無料相談」への対策は、別の記事でもお伝えしますが、現実的にかなり多いという事実は、事前に認識しておかなくてはいけません。
最近では、どこの士業事務所でもホームページやブログなどを開設していると思いますが、これまでに少なくとも1度くらいは「無料の問合せ」があったという事務所がほとんどではないでしょうか。 仕事の受注につながらないばかりか、無駄 …
まとめ
以上、ブログ等運営における「メリット・デメリット」についてお伝えしましたが、人によってはここに書かれているデメリットが、むしろメリットと感じる事もあるかもしれません。
誰しも「向き、不向き」はあるので、税理士によるブログ運営は、全員にお勧めできるツールではないという事です。
ただし、やりもせずに「自分には向いていない」と決めつけるのは早計といえますので、一度チャレンジしてみて、それでも向いていないと思えば閉鎖すれば良いだけの話ではないかと。
初期費用が安く済む分、撤退してもそれほど痛手には感じません。
当サイトでは、そうしたブログ運営に取り組もうとする方への記事も作成していこうと考えているので、興味のある方は、そちらも参考にしてみて下さい。