
自転車は、子供から大人まで気軽に乗れるということやエコであるなどといった様々な理由から、人によっては「なくてはならない存在」となっている事もあるでしょう。
最近では、通勤電車などにおける新型コロナウイルス感染防止のために、自転車を通勤に利用する人も増えてきているようですから、販売台数もかなり増えてきているようです。
このように便利な自転車ですが、手軽にスピードが出る分、事故が起きた際には重大事故へと繋がる事も多く、その利用には十分注意が必要となります。
現在、こうした自転車による事故は全国的に頻繁に起きており、国や自治体は近年、所有者に対して自転車保険の加入を義務付けるように動き出しています。
そこでこの記事では、自転車保険の加入が義務付けれらている自治体や、その罰則などについてお伝えしようと思います。
目次
自転車保険の加入義務は、各自治体の「条例」によって制定される
まずは、「自転車保険の加入義務は、各自治体の条例によって制定される」という事について。
基本的に自転車保険の加入義務は、各都道府県や政令市が条例で定める事となっており、全国一律に義務化されている訳ではありません。
また、仮に条例が制定されているとしても、自治体によっては「義務」としているところと「努力義務」としているところに分かれ、地域によってその対応が異なります。
とは言え、この自転車保険の加入を義務付ける条例を制定する自治体は年々増えており、2020年4月1日現在においては以下のようになっています。
条例の種類 | 都道府県 | 政令市 |
---|---|---|
義務化 | 山形県、埼玉県、東京都、神奈川県、 山梨県、長野県、静岡県、滋賀県、 京都府、大阪府、奈良県、兵庫県、 愛媛県、福岡県、鹿児島県 合計15ヶ所 | 仙台市、さいたま市、相模原市、静岡市、 名古屋市、京都市、堺市、福岡市 合計8ヶ所 |
努力義務 | 北海道、茨城県、群馬県、千葉県、 富山県、和歌山県、鳥取県、徳島県、 高知県、香川県、熊本県 合計11ヶ所 | 千葉市、北九州市 合計2ヶ所 |
出典:国土交通省
この加入義務化の条例は、2015年10月に兵庫県が初めて制定し、その後全国へと広まり、現在では努力義務も含めて合計36もの自治体が制定していますから、この流れは今後も続いていくものと考えられます。
「ウチは大丈夫だな」と思っていても、将来的には全国一律で加入が義務付けられる可能性もありますから、現時点で対象地域でないとしても事前に検討はしておくべきでしょう。
急激に増えている理由は、裁判による「高額賠償」が頻発しているから
では、なぜこの5年程度の間に、多くの自治体で自転車保険の加入を義務付けるようになったかというと、もちろん住民の意識向上のためという理由もありますが、ここ数年、自転車事故における裁判において、かなり高額の賠償命令が決定されているからという点が一番の理由だと言えるでしょう。
下記の表は、自転車事故による裁判で高額な賠償命令がなされた事例一覧となっています。
- 賠償額
- 事故の概要
- 9,521万円
- 男子小学生(11歳)が、夜間の帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において、歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭がい骨骨折等の障害を負い、意識が戻らない状態となった。
(神戸地裁 2013年7月4日判決) - 9,266万円
- 男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から、車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った。
(東京地裁 2008年6月5日判決) - 6,779万円
- 男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。
(東京地裁 2003年9月30日判決) - 5,438万円
- 男性が昼間、信号表示を無視して高速度で交差点に進入、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突。女性は頭がい骨内損傷等で11日後に死亡した。
(東京地裁 2007年4月11日判決) - 4,746万円
- 男性が昼間、赤信号を無視して交差点を直進し、青信号で横断歩道を歩行中の女性(75歳)に衝突。女性は脳挫傷等で5日後に死亡した。
(東京地裁 2014年1月28日判決)
出典:一般社団法人 日本損害保険協会
よく新聞報道などで、「自転車事故を起こした場合、1億円近くの賠償金を支払う可能性もある」などと報じられることもありますが、実際に1億円までとはいかなくとも、数千万円単位での賠償命令はこのように数多くあります。
特に上記の神戸の事故は世間を騒がせ、兵庫県としてはこの反省を踏まえ、自転車保険の加入義務付けの条例制定に踏み切ったと言われています。
自転車保険の罰則や、加入対象者は?
こうした事もあり、各自治体とも続々と条例を制定するようになっていますが、特に今年(2020年)は、東京都を含めた9つの自治体が新たに条例を公布したことで注目を浴びています。
これについて「最近になって初めて知った」という人もいるでしょうから、この自転車保険加入義務の大まかな内容についても見ていきましょう。
「義務」と「努力義務」の違いは?
まず、自治体によって「義務」と「努力義務」とに分かれている事は冒頭でもお伝えしましたが、両者にはどういった違いがあるのかという事について。
簡単に言うと、義務とは「必ず加入しなくてはならない」という事に対し、努力義務とは「加入するように努めて下さい」とお願いしているだけという事になります。ですから、努力義務の対象となっている自治体であれば、必ずしも自転車保険に加入する事を求められていませんので、そこは「個人の自由」といったところ。
あくまでも「注意喚起」の要素が強いのですが、自治体としてはまずは努力義務として条例を制定し、その後様子を見ながら「義務化」へと移行していく事を検討している場合が多いようです。
違反した場合の罰則は?
となると、自転車保険の加入を「義務」としている自治体に住んでいる場合、これに違反すると「罰則が科されるんじゃないか?」と考えてしまいますが、現状、どこの自治体においても「違反しても罰則は無し」とされています。
という事は、義務とはいえ条例に違反して加入しなくとも、何のお咎めも無しという事になりますね。
「だったら、加入を義務付ける条例を制定する必要があるの?」と思ってしまいますが、各自治体とも「現時点(2020年)」では罰則を設けていないだけで、今後も罰則を設けないとは言い切っていません。
例えば、自転車保険の加入を義務化している大阪府では、Q&Aにおいて「罰則等はありますか?」という質問に対し、以下のように答えています。
本条例では、自転車保険への加入を義務化していますが、罰則は設けておりません。これは、罰則を設けるためには、保険加入について確認を行わなければなりませんが、自転車事故を補償する保険には、自動車保険や火災保険、傷害保険の特約で付帯する保険等、加入者が本人ではなく家族が契約しているものなど、加入者がそれぞれの保険加入を証明する事が困難なためです。
さらに、自転車には車両を登録するシステムがなく、車両番号がない場合もあるため、車体を特定し、罰則の対象を確認する事が困難なため、罰則は設けていません。
出典:大阪府自転車条例 Q&A
要は、「罰則を設けたいところですが、物理的に難しいんです」といったところ。これについては国土交通省も言及しており、今後も罰則の制定は困難であると考えられています。
そうなると、「罰則がないんだったら、加入しなくても良いよね」と考える人も出てくるかと思いますが、実はそう簡単な話でもありません。
仮に万が一事故を起こして裁判となった場合、未加入であれば様々な問題が生じてしまいます。
まず、加入が義務付けられている地域で事故を起こした場合、未加入となれば裁判上不利となる場合もあるでしょうし、何よりも多額の賠償金を自腹で支払わなくてはなりません。
年々賠償額が上昇していますから、必ず加入しておくべきだと言えるでしょう。
加入対象者は?
そして次に、自転車保険に加入しなくてはいけない対象者について。
これは自治体によっても多少違いはありますが、概ねどこの自治体においても、以下の人を加入対象者としているようです。
- 自転車の利用者
- 自転車を利用する子供を持つ「保護者」
- 自転車を従業員に使用させる「事業者」
- 自転車のレンタルなどを行う「貸付事業者」
つまり、自転車を所有する人はもちろんの事、保護者や事業者に対しても加入義務を課していますから、ほとんど全ての人が対象になるという事ですね。
また、自転車を販売する小売業者に対しても、「保険加入の有無の確認」を義務化していますから、対象地域に居住されている方は必ず保険に加入するようにしましょう。
実は、気付かないうちに加入している人もいる
ほとんどの自転車保険は、どんなに高くても「年間数千円」程度の保険料ですから、それほど負担も重くないとはいえ、出来る限り安く済ませたいと思う人も多いかと思います。
そういった方には朗報なのが、「実は気付かないうちに、既に自転車保険に加入している場合がある」という事。
前述した大阪府のQ&Aにもありましたが、様々な保険の特約などにおいて、この自転車事故の補償が含まれている場合があるのです。その対象となりうる保険は以下の通り。
- 自動車保険
- 火災保険
- 傷害保険
- 共済保険
- 団体保険 - 会社やPTAの保険等
- TSマーク付帯保険 - 点検日から1年以内
- その他 -クレジットカードの特約など
上記のいずれかに加入している場合、特約として自転車保険の補償がついている事がありますから、一度確認してみましょう。
以下は、自身が既に自転車保険に加入しているかどうかを判定するフローチャートとなっています。
出典:自転車活用推進官民連携協議会
上記フローチャートを利用して、「自分はどうなのか?」と一度チェックしてみましょう。
加入有無の確認の際に注意すべきこと
しかし、仮に特約として補償されていたとしても、幾つか注意すべき点があります。
それぞれ注意すべき点についても見ていきましょう。
補償の対象は、家族全員になっているか?
まずは、「補償の対象は、家族全員となっているか?」ということについて。
例えば自動車保険の場合などには、その補償対象者が「配偶者のみ」などとなっている事もあり、小さいお子さんがいらっしゃる場合には対象とはなりませんので注意が必要です。
原則として、この自転車保険は「自転車を利用する人全員」が加入する必要があるため、仮に「自転車事故を補償」といった特約があったとしても、全員が補償の対象でない事があるのでこの部分はよく確認しておきましょう。
支払限度額(保険金額)の上限はいくらか?
次が、「支払限度額(保険金額)の上限はいくらか?」という事について。
前述したように、近年では1億円近くの高額賠償命令もあるため、出来るだけ事故が起きた場合に支払われる保険金額も高めに設定しておくべきだと言えます。
仮に特約としてついていても、「上限金額1,000万円」ということもあり、これだけでは裁判が起きた場合に賠償金を賄うには少し不安が残ります。
出来たら「5,000万円以上」、可能であれば「1億円以上」の支払限度額が設定されているかどうかを確認してください。
ちなみに、「TSマーク付帯保険」の場合、マークの色によってその補償額が異なり、赤色の場合は「1億円」、青色の場合は「1,000万円」となっていますから、こちらもよく確認するようにして下さい。
補償の範囲は?
そして最後が「補償の範囲はどこまでが対象となっているか?」という事について。
前述した「自転車保険のついている(可能性のある)保険等」のなかで、様々なものを紹介しましたが、それぞれ補償の対象が異なりますのでこちらもよく確認しておきましょう。
例えば、「事故でけがを負わせた相手への補償」があっても、「自分がけがをした場合」は対象となっていない事もあるようです。
逆に、自分への補償が手厚くても、相手への補償限度額が「1,000万円まで」と低く設定されている事も多いですから、これでは少し頼りないですよね。
保険プランによって全く内容が変わってきますから、この部分についてもしっかりと確認しておきたいところです。
「自分は加入していない」「補償額を増やしたい」と思ったら
ここまで読んで、「自分は結局、加入していなかったな」「加入はしていたけど、補償額が頼りないな」と思った方のために、その対策方法についてもお伝えしておきましょう。
まずは、「家族の保険」に加入が可能か確認する
最初にやるべき事として、「家族の保険」に自分も加入する事が可能であるか確認するという事。
意外と盲点かもしれませんが、同居の家族が自動車保険や火災保険などに加入している場合、ある一定の条件を満たせばその対象となる事もありますから、自分が保険に加入していないとしても、それでカバーできる事もあります。
この場合、多少保険料が上がる事もありますが、大抵は自転車保険に新たに加入するよりは安く済む事が多いですから、まずはこちらを検討してみましょう。
保険会社に相談する
次が、「保険会社に相談する」という事。
あえて新しく自転車保険に加入するより、現在加入している保険の内容を見直すことで、月々の保険料をそれほど上げなくても対応できる場合があり、それが可能であれば経済的にも負担が少なくて済みます。
意外と自分が加入している保険についてあまり理解していない人も多いですから、これを機に、一度補償内容について考えてみるのも良いですね。
現在の保険を見直す場合、ファイナンシャルプランナーに相談する事で、自分に合った保険を提案してくれますから、まずは一度無料で相談してみるのも良いでしょう。
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どちらも保険見直しサイトとしては有名で規模も大きいですから、自分に合ったところで相談してみては如何でしょうか?
それでもダメなら、自転車保険に加入する
様々な事を検討してみた結果、やはり「自分は加入していなかった」という場合には、やはり新たに自転車保険に加入する必要があります。
どの保険を選んでも、保険料は「月額数百円」という事がほとんどですから、そこまで心配する必要もありません。
安いところですと、「au損保」などは月々340円~となっていますし、「楽天損保」では月々250円~となっていますので、一度問い合わせてみては如何でしょうか?
ちなみに、アナタが仮に現在フリーランスとして活動しているのであれば、業務中の自転車事故を5,000万円まで補償してくれる「フリーナンス」というサービスもありますので、こちらも検討してみる価値はあると思います。
これまで会社員として勤めていた人が、個人事業主やフリーランスとして独立する際、一番面食らうのがこの「保険関係」かもしれません。 会社員時代は、勤務先の会社が全ての手続きを行ってくれていたでしょうから、これまで全く意識した …
自転車を安く購入するなら(自転車保険も加入できる)
それでは最後に、自転車を安く手に入れる事ができるサイトをご紹介しておきます。
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