法人設立後、役所に提出しなければいけない書類は結構ある

初めて法人を設立した人からすれば、「やっと設立登記も終わった。これで少しはゆっくりと出来るかな?」なんて考えるかもしれませんが、実は法人というのは、設立前よりも設立後の方がやるべきことが沢山あるのです。

特に、役所(行政)に提出しなくてはならない書類が盛りだくさんで、税務署地方自治体、それに年金事務所など、様々な行政へ書類申請を行わなくてはなりません。

設立当初から税理士や社労士などと顧問契約をしているのであれば、それぞれの書類を彼らが代行して提出してくれるでしょうからそこまで心配する必要もありませんが、中には「出来るだけ設立当初は費用を掛けたくない」という事で、税理士などと契約していないという人も多いのかもしれませんね。

そこでこの記事では、法人設立後にそれぞれの行政に提出しなくてはならない書類の一覧と、その期限などについてお伝えしようと思います。

仮に税理士などと契約していても、その税理士が忘れてしまっているなんて事もあり得ますから、そういった人も念のため確認しておいて下さい。

目次

「税務署」に提出する書類

冒頭で「様々な行政に提出しなくてはいけない」とお伝えしましたが、まずは一番大事な「税務署」に提出しなくてはならない書類から見ていきましょう。

税務署に提出すべき書類は結構あるのですが、その会社の事業規模や内容によって提出すべき内容が変わってきます。ですからここでは「必ず提出しておいた方が良い書類」「場合によっては提出したほうが良い書類」とに分けてご紹介します。

「必ず」提出しておいた方が良い書類

まずは、必ず提出しておいた方が良い書類から。

法人設立届出書

  • 書類の説明:法人を設立したことを税務署に報告する書類
  • 提出期限 :法人設立から2ヶ月以内
  • 添付書類 :定款のコピー、登記簿謄本のコピー、株主名簿、設立時の貸借対照表
  • 提出先  :納税地のある税務署
  • 雛形   :国税庁HP

青色申告の承認申請書

  • 書類の説明:欠損金(赤字)の繰越、特別償却などの特典がある「青色申告」を行うための書類
  • 提出期限 :原則として設立後3ヶ月以内(3ヶ月以内に事業年度が終わる場合は事業年度内)
  • 添付書類 :なし
  • 提出先  :納税地のある税務署
  • 雛形   :国税庁HP

給与支払い事務所等の開設届出書

  • 書類の説明:従業員を雇い、給与を支払う場合に提出(役員報酬が発生する場合も同様)
  • 提出期限 :給与支払事務所開設から1ヶ月以内
  • 添付書類 :なし
  • 提出先  :納税地のある税務署
  • 雛形   :国税庁HP

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

  • 書類の説明:従業員給与の源泉徴収において、その支払いを年2回払いにする事を許可してもらう書類(従業員数の制限あり)
  • 提出期限 :特例を受けようとする月の前月末まで
  • 添付書類 :なし
  • 提出先  :納税地のある税務署
  • 雛形   :国税庁HP

「場合によっては」提出する必要がある書類

次が「場合によっては」提出する必要がある書類について。

以下は大抵、設立後すぐに提出する必要はありませんから慌てなくても良いのですが、「いずれは提出する可能性もあるんだな」というくらいで覚えておいて下さい(ただし、消費税関連は場合による)。

必要に応じて提出する書類
  • 減価償却資産の償却方法の届出書 - 提出する場合は、設立第1期の確定申告の提出期限まで
  • 棚卸資産の評価方法の届出書   - 同上
  • 消費税課税事業者選択届出書
  • 消費税の新設法人に該当する旨の届出書
  • 消費税簡易課税制度の選択届出書

消費税に関しては、その事業者ごとに提出すべき書類が変わってきますから、税理士などの専門家とよく相談した上で判断してください。

「地方自治体」に提出する書類

そして次が、法人設立後に「地方自治体」に対して提出する書類について。

税金は国だけでなく、地方自治体にも納税しなければいけませんから、税務署へ書類を提出するのと同様に、都道府県市町村へも書類を提出しなくてはいけません。

それぞれ地域によって提出方法が異なりますから(特に東京都内)、詳しくは事業所のある地方自治体に問い合わせるようにして下さい。

「都道府県」に対する法人設立届出書

  • 書類の内容:法人を設立した事を都道府県に対して報告する書類
  • 提出期限 :法人設立から1ヶ月以内
  • 添付書類 :定款のコピー、登記簿謄本のコピー
  • 提出先  :事業所のある都道府県
  • 備考   :東京都の場合は、事業開始から15日以内の提出

「市町村」に対する法人設立届出書

  • 書類の内容:法人を設立した事を市町村に対して報告する書類
  • 提出期限 :法人設立から1ヶ月以内
  • 添付書類 :定款のコピー、登記簿謄本のコピー
  • 提出先  :事業所のある市町村役場
  • 備考   :東京23区であれば、都税事務所に提出するだけでOK

「年金事務所」に提出する書類(給与・役員報酬を支払う場合)

次が「年金事務所」に提出する書類についてですが、実はこの申請が、他のどこの行政よりも早く提出しなければいけませんので、一番急がなくてはいけない申請となっています。

大抵どこの行政も「提出期限〇ヶ月以内」となっていますが、この年金事務所は「5日以内」などといった場合が多いですから、遅れないように気を付けましょう。

ちなみに、これらの書類は給与や役員報酬を支払う場合に必要となります。

健康保険・厚生年金保険新規適用届

  • 書類の内容:健康保険と厚生年金保険の適用事業者となった事を届け出るもの
  • 提出期限 :適用事業所となった場合速やかに(原則として、会社設立後5日以内
  • 添付書類 :登記簿謄本の原本、その他必要に応じて事業所の賃貸借契約書など
  • 提出先  :事業所のある年金事務所
  • 雛形   :雛形記入例
  • 備考   :その他詳細については、日本年金機構HPにてご確認ください

健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届

  • 書類の内容:被保険者の状況について届け出るもの
  • 提出期限 :適用事業所となった場合速やかに(原則として、会社設立後5日以内
  • 添付書類 :原則不要だが例外あり
  • 提出先  :事業所のある年金事務所
  • 雛形   :雛形記入例
  • 備考  :その他詳細については、日本年金機構「従業員を採用したとき」のページにてご確認ください

健康保険被扶養者(異動)届

  • 書類の内容:健康保険の被扶養者について届け出る書類
  • 提出期限 :被保険者に扶養者がいる場合速やかに
  • 添付書類 :場合によっては、被扶養者の収入状況がわかるものや、住所が分かるものなど
  • 提出先  :事業所のある年金事務所
  • 雛形   :雛形記入例
  • 備考   :扶養者の状況によっては、別途提出が必要な書類が発生したり書類の書き方も変わってくるため、詳しくは年金事務所にお問い合わせください。

「労働基準監督署」に提出する書類(従業員を雇った場合)

そして次が、「労働基準監督署」に提出する書類ですが、こちらは従業員を雇った場合のみに提出する事になっていますので、従業員を雇い入れる予定のない会社であれば必要ありません。

要は、従業員の「労災関係」の手続きとなります。事業の種類により「一元適用事業」「二元適用事業」とに区別されますので、詳しくは社会保険労務士や労働基準監督署などに問い合わせるようにして下さい。

※ 一般的に、「農林業」「漁業」「建設業」二元適用事業とされ、それ以外が一元適用事業とされます。

労働保険 保険関係成立届

  • 書類の内容:労働保険が適用される会社の概要を届け出る書類
  • 提出期限 :労働関係が成立した日の翌日から10日以内
  • 添付書類 :登記簿謄本の原本、建物等を賃借している場合はその賃貸借契約書
  • 提出先  :事業所の地域を管轄する労働基準監督署
  • 雛形   :厚生労働省HP

労働保険概算保険料申告書

  • 書類の内容:労働保険の概算額を申告する際に提出する書類
  • 提出期限 :労働関係が成立した日から50日以内
  • 添付書類 :なし
  • 提出先  :事業所の地域を管轄する労働基準監督署
  • 雛形   :厚生労働省HP

※この他、常時10人以上の従業員を使用する場合や、従業員に時間外労働をさせる場合にも別途書類を提出する必要があります。また、添付書類に関しては、状況によって求められる内容が異なりますから、労働基準監督署などに直接問い合わせるようにしましょう。

「ハローワーク」に提出する書類(従業員を雇った場合)

そして最後が、公共職業安定所(ハローワーク)に提出する書類ですが、こちらも従業員を雇った場合に限られますから、当面従業員を雇う予定のない会社であれば必要ありません。

こちらは「雇用保険」に関連する書類となります。

雇用保険適用事業所設置届

  • 書類の内容:雇用保険の適用事業所となった事を届け出る書類
  • 提出期限 :適用事業所となった日の翌日から10日以内
  • 添付書類 :登記簿謄本の原本、労働保険保険関係成立届の控え、法人設立届出書、事業所の賃貸借契約書など
  • 提出先  :ハローワーク
  • 雛形   :ハローワークHP
  • 備考   :労働保険保険関係成立届とは、労働基準監督署に提出したものですから、先に監督署に申請しておく必要があります。また、法人設立届出書とは税務署に申請したものです

雇用保険被保険者資格取得届

  • 書類の内容:雇用保険の被保険者についての届出です
  • 提出期限 :加入対象者を雇い入れた日の翌月の10日まで
  • 添付書類 :労働者名簿、賃金台帳、出勤簿又はタイムカードなど
  • 提出先  :ハローワーク
  • 雛形   :ハローワークHP
  • 備考   :その他、場合によって必要となる書類がありますから、詳しくはハローワークのホームページにてご確認ください

まとめ

このように、法人設立後にはかなり多くの書類を提出しなくてはならず、実は設立後の方が忙しくなるという事がご理解頂けたかと思います。

ここまで読んで「やっぱり、自分一人じゃ無理だな」と思った方は、税理士などの専門家に依頼する事をお勧めします。

ただし、社会保険や労働保険の申請代行は社会保険労務士の独占業務となるため、これらを税理士に依頼する事は出来ませんが、どこの税理士事務所も大抵は社労士と提携しているため、税理士事務所に依頼すればその辺は柔軟に対応してくれるでしょう。

税理士を探したいという人は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。

 

 

また、クラウド会計ソフト会社が提供する「法人設立ツール」を利用すれば、上記でお伝えした全ての書類とまではいきませんが、最低限必要となる書類の作成も可能となり、しかも利用料は無料となっていますから、「少しでも費用を抑えたい」という人は、こうしたツールを利用するのも良いでしょう。

法人設立ツールについて詳しくは、こちらの記事も参考にしてみて下さい。