
基本的に、会社員の方などが副業を始めると、ほとんど多くの場合「確定申告」が必要となります。稀に確定申告が不要となる場合もありますが、それらは例外中の例外と考えて間違いないでしょう。
確定申告が不要な条件などについて詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてみて下さい。
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実際問題、これまで確定申告と縁のなかった人からすれば、正直、何から手を付ければ良いのかすらわからないかもしれないでしょう。また、こういった方々の疑問として、「会計ソフトを利用したほうがいいのだろうか?」などと考える事もあるようです。
そこでこの記事では、実際のところ副業の確定申告において「会計ソフトは必要なのか?」について考えてみたいと思います。
目次
大抵の場合「必要ない」
まず結論から言うと、「大抵の場合は、副業の確定申告に会計ソフトは必要ない」と言えます。
その理由は様々ですが、一番の理由としては「副業の確定申告においては、複式簿記まで求められることが少ない」事が挙げられます。
所得税の申告には様々な所得の種類(給与所得や一時所得など)がありますが、基本的に副業の確定申告となると、事業所得か雑所得での申告となり、その内ほとんどの方が「雑所得」での申告となります。
インターネット上でよく「青色申告はお得」などという表現を見かけます。確かにその通りなのですが、この青色申告をするとなると、複式簿記による記帳が必要となるため会計ソフトが必要となります(例外あり)。
しかし、青色申告が認められるには「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のいずれかである必要があるので、副業の方のほとんどが「雑所得」で申告する事を考えると、会計ソフトの必要性はあまりないと言えるでしょう。
また、青色申告で確定申告している人でも、10万円控除で申請している場合は複式簿記を求められないので、こちらも会計ソフトまでは必要ないかもしれません。
簡単なイメージとしては、以下の図のようになります。
青色申告と白色申告の違いや、55万円控除などの要件については、こちらの記事も参考にしてみて下さい。
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しかし、最低限「エクセルデータ」は作成したい
とは言え、確定申告の作成時には、最低限のデータ整理は必要となります。その年に発生した「売上」や「経費」が分からなくては、正しく申告することが出来ません。
基本的に雑所得での申告の場合は、帳簿の保管義務はありませんから、「細かくデータ整理までする必要はないんじゃないの?」なんて言う人もいるかもしれませんね。副業の場合はほぼ雑所得となり、帳簿の保管義務もない、となれば「データを作成するしないは本人次第」と言ったところでしょうか。
ただ、将来的に「えーっと、あの時のデータは・・・」なんて事になれば、かなりの時間を浪費する事になります。
どうせ確定申告時に、データ整理で時間を取られるのですから、そのついでにエクセルデータくらい作成しておいた方が、後々役に立つこともあるでしょう。
会計ソフトが必要となる人は?
以上から考えると、副業の確定申告において「会計ソフトが必要となる人」とは、青色申告を選択していて、かつ55万円控除もしくは65万円控除の適用を受ける人だけのように思えます。
ただ、現状は必要としないにしても、将来的に考えた場合必要となってくる人もいると思いますので、ここでいくつか例をご紹介しておきます。
雑所得以外で申告している人
まず、雑所得以外で申告している人。
その中でも「事業所得」「不動産所得」「山林所得」で申告している人がメインとなります。
先ほど「雑所得において、帳簿の保存義務は無い」とお伝えしましたが、上記の所得であれば、青色・白色問わず、必ず帳簿等の保管義務が生じます。
イメージとしては、下図のようになります。
また、帳簿等の保存義務期間の詳しい内容は以下の通り。
【保存期間7年】
- 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳などの帳簿
- 損益計算書、貸借対照表などの決算関係書類
- 領収書、預金通帳、借用証などの書類(※)
【保存期間5年】
- 上記以外の書類(請求書、見積書、契約書など)
※前々年分の所得が300万円以下の場合は、5年となります。
【保存期間7年】
- 収入金額や必要経費を記載した帳簿
【保存期間5年】
- 業務に関して作成した上記以外の帳簿
- 決算に関して作成した書類
- 業務に関して作成し、又は受領した領収書、請求書などの書類
上記を見ると、仮に白色申告で申告していたとしても、事業所得などでの申告であれば、例えば「収入金額や必要経費を記載した帳簿」などは7年の保存期間が必要となります。
この「収入金額や必要経費を記載した帳簿」というのは、簡単に言えば副業における「売上」と「経費」が記載されているデータという事です。
ちなみに、この帳簿は紙に印刷して保存する必要があり、データによる保存の場合は、あらかじめ所轄の税務署長の承認を受ける必要があります。つまり、エクセルでも何でも構わないのですが、何かしらのデータを作成し、基本的にはそれを印刷したものを保存する義務があるという事です。
こういった事を考えると、最初から会計ソフトで確定申告の処理をしておけば、様々な帳票を簡単に印刷できるため、あれこれと考える必要が無く便利だといえます。
将来的に「独立開業」を目指している人
次が「将来的に独立開業を目指している人」。
こういった人の場合、初めは雑所得で申告していたとしても、徐々に事業規模が大きくなるにつれて、「事業所得での申告」⇒「青色申告」という具合にステップアップする事になるでしょう。
そうなると、やはり会計ソフトの利用は必須になってきますが、途中から慌てて会計ソフトを利用し始めるよりも、最初から計画的に利用していたほうが後々便利だといえます。
事業を経営する上で経理はとても重要だといえますから、先を見据えて最初から会計ソフトの導入を検討したほうが良いでしょう。
副業におススメの会計ソフト
以上から考えると、副業の確定申告をする人にとっては、会計ソフトはほとんど必要が無いとは言え、一部の人にとっては必要であることが理解できたかと思います。
そこで、そうした人のために、副業の確定申告において「おススメの会計ソフト」をご紹介しておきます。
白色申告向け
出典:弥生
世の中には様々な確定申告ソフトがありますが、白色申告で会計ソフトを選ぶなら、「やよいの白色申告 オンライン」を選択すれば、まず間違いありません。
このソフトの特徴としては以下の通り。
- 利用料金が無料(フリープランのみ)
- レシートや領収書をスキャンで取込み
- 銀行明細なども取り込んで「自動仕訳」
- 取込んだデータで自動帳簿作成
- クラウドだから、Macにも対応
このやよいの白色申告 オンラインの一番の特徴は、レシートや領収書をスマホアプリで撮影するだけで、自動でデータを読み込んでくれるという事。そして何よりも、フリープランで契約すれば、無料で利用できるというところも見逃せません。
無料の会計ソフトは他に沢山ありますが、機能性から考えても白色申告の場合は、このソフトを選択しておけば間違いありません。
またこの「やよいの白色申告オンライン」は、クラウド型会計ソフトとなっていますが、中には「クラウド?ちょっと不安だなぁ」とインストール型の会計ソフトを選択する人もいると思います。しかし、インストール版の会計ソフトの多くは、Macに対応していない事がほとんどですが、こちらはブラウザ上で利用するため、OSの種類を選ばないという利点もあります。
事業が拡大した結果、「青色申告に挑戦したいな」と思っても、同じシリーズの「やよいの青色申告 オンライン」に簡単にデータ移行が出来るため、将来的に長く利用できるという利点もあります。
青色申告向け
青色申告向けとなると、ほぼ全てのソフトが有料となり、種類も多くなりますので、一律に「これだけ選んでおけばいい」というソフトは無いといえます。
基本的には自分の好きなソフトを利用すれば良いと思いますが、詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみて下さい。
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まとめ
多くの場合「会計ソフト」と聞けば、「確定申告ぐらいにしか利用しないでしょ?」と考える人が多いようです。しかし、日々の売上管理であったり、利益の管理など、会計ソフトで出来る事はたくさんあります。
副業と言えども経営として捉えるなら、こうした会計ソフトを利用する意義は大いにあると言えるでしょう。