
個人事業と一口に言っても、その事業規模は様々です。
実際には、年間数百万円規模の売上げの個人事業がほとんどでしょうから、わざわざ会計ソフトを利用しなくとも、確定申告を済ませている人も多いかもしれません。
しかし中には、年間数億円の売上げがある個人事業まであります。そういった場合には必ず会計ソフトは必要となりますから、一律に「個人事業主であれば、確定申告はこうすべき」などという答えは無いのかもしれませんね。
また、これまで会計ソフトを利用せずに申告をしていた人からすれば、「そもそも会計ソフトなんて必要なの?」と考える方もいるかもしれません。
そこでこの記事では、「多くの人は、実際にどのようにして確定申告を行っているのか?」という事や、「そもそも個人事業に会計ソフトは必要なのか?」という事に触れながら、個人事業におススメの会計ソフトについてお伝えしていこうと思います。
目次
ほとんどの小規模事業者は、「エクセル」か「手書き」で対応
まず実際問題として、ほとんどの小規模事業者の方々は、「エクセル」か「手書き」で売上げと経費を管理しているのが現実かと思います。
これに関しては、実際のデータを基にした記事もありますから、よろしければそちらも併せてご覧ください。
副業を行っている人や、個人事業主の方々は、年末を迎えると「あぁ、今年も一年終わったなぁ~」と思うと同時に、「もうすぐ確定申告の季節だな・・・」なんて、憂鬱になるかもしれませんね。 基本的に確定申告は、前年の1月1日から1 …
従業員もおらず社員は自分一人だけ、いるとしても配偶者に経理を任せているといった個人事業の方のほとんどが、この「エクセル等による管理」で帳簿を作成しているのではないでしょうか。
そして、エクセルで集計したデータを手書きで確定申告書に転記して申告をするか、もしくは、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」というサイトでデータを入力し、それを印刷して郵送、もしくは「e-Tax」で電子申告するかのどちらかで対応していると思います。
大まかな流れとしては、下図のようなイメージでしょう。
会計ソフトの購入はお金がかかりますし、「出来るだけ費用を抑えたい」というのであれば、こうしたエクセル方式の方が費用も掛からず便利かもしれません。
ただし、様々な状況により個人事業主の方は、いつかこの「エクセル方式」から脱皮せざるを得ない日がやってきます。
個人事業主が会計ソフトを必要とする理由
では、どのような状況になると、エクセル方式から会計ソフトによる入力に移行しなくてはならないかという事ですね。
その理由について、それぞれ見ていきましょう。
事業規模の拡大
まず一番の大きな理由は「事業規模の拡大」という事。
以下にも様々な理由を挙げていますが、結局は、この事業規模が拡大する事が根底にあると言えます。
事業を続けている限り、その規模が拡大する事は、多くの個人事業主の方にとって嬉しい事だと思います。しかしそれに伴い、売上げも経費も増加する事となり、そのデータ入力も膨大な作業となります。
ここで、例えばアナタが現在、ネットで商品を販売しているとしましょう。
商品1個あたり10,000円で販売していて、これまではそれが年間500個売れていましたので、年間売上げは500万円でした。しかし、メディアか何かであなたの商品が取り上げられ、爆発的に売り上げが増加し、今年は5,000個も販売する事が出来ました。
嬉しい話ではありますが、売上データの入力時間で考えると、単純にこれまでの10倍に増える訳です。
ただし、これだけでは終わりません。売上げも増えるという事は、仕入れなどにかかった経費も増えますよね。という事は、それ以上の入力作業が必要となり、いずれエクセルだけでの管理では限界を感じる事になるはずです。
従業員の増加
次の理由が「従業員の増加」です。
上記の例でいくと、これまで年間500個の商品を販売するには、あなた一人で梱包や発送に対応できていたかもしれません。しかし、それが10倍となると、従業員を雇い入れない事には到底追い付かなくなるでしょう。
せっかくのチャンスは逃したくありませんから、そこでアナタは従業員を雇う事にします。その結果、作業は楽になりましたが、ここで問題が生じます。
それは「給与計算や各種保険の計算」が必要になるという事です。
一人や二人ならエクセルでも対応できるかもしれませんが、人数が多くなればなるほど、専用のソフトがないと対応できません。特に、社会保険関係などは、締め日の関係など複雑な要素が多く絡んできます。
大抵の場合、従業員を雇い入れるのであれば会計ソフトを購入し、それに付随した給与ソフトなどを購入する事になるでしょう。
内製化の限界
とは言っても、エクセルの得意な人からすれば、マクロを使用したりして複雑な計算にも対応しているかもしれません。しかし、それも一定規模になるとやはり限界が訪れます。
その一番の理由が「消費税」だと言えるでしょう。
基本的に消費税は、前々年度の売上額が1,000万円未満であれば納税しなくて良いとされています(細かい条件有り)。しかし、前述した例であれば、売上げが5,000万円となるので、いずれ消費税の納税に対する計算もしなくてはなりません。
特に消費税は度々改正があるので、素人の判断だけでは対応しきれません。
もちろん、この規模になれば税理士に頼むことになるでしょうが、会計ソフトを利用しない事には正確な税額の計算は難しいでしょう。
その他、青色申告特別控除など
現在、個人事業の確定申告をする上で、様々な控除がある事はご存知かと思います。その中でも金額の高い控除枠が「青色申告特別控除」だと言えるでしょう。
現在、10万円控除と65万円控除の2種類があり、出来れば65万円控除を選択したいところです(2020年度分の確定申告から変更有り)。
しかし、この65万円控除を受けるための要件は様々あり、その代表的なものとして「複式簿記での記帳」「貸借対照表の添付」というものが挙げられます。
細かく説明すると長くなりますので、詳細な内容については省略しますが、これらをクリアするには会計ソフトを利用しないと難しいと言えます。詳しくは下記の記事を参考にしてみて下さい。
個人事業主として起業や独立をした場合や、副業を開始して一定の収入がある場合などは、必ず確定申告をしなくてはなりませんが、これまで会社員として働いてきた方であれば、そのほとんどが年末調整だけで済んでいた可能性が高いため、「 …
所得額に応じて、10万円控除と65万円控除の節税金額は異なりますが、場合によっては10万円ほど税額が変わることもあるので、会計ソフトが年額30,000程度のものが多い事を考えれば、かなりお得だと言えるでしょう。
個人事業主向け「おススメ会計ソフト3選」
以上を踏まえて、個人事業主向けの「おススメ会計ソフト3選」をご紹介します。
世の中には、ここでご紹介する会計ソフト以外にも沢山ありますので、「他も知りたい」という方は、経理の仕事をするなら、知っておきたい「会計ソフト」の記事もご覧になってみて下さい。
弥生会計
出典:弥生会計
まずは弥生会計から。
弥生会計の一番の利点は、何と言っても「使いやすい、簡単」という点です。
このため、業務ソフトとして20年間売上げNo.1の実績を誇っています(全国の主要家電量販店、パソコン専門店、ネットショップで実売統計による)。
また、会計事務所業界でも高いシェアを占めているため、どんな税理士でも対応しやすいという利点もあります。インストール版とクラウド版の両ラインナップがありますが、現在はインストール版の方が販売数が多いようです。
- 使いやすさから、売上げNo.1
- ほとんどの税理士事務所で導入されているから安心
- インストール版とクラウド版のどちらかを選択できる
- サポートが充実(プランによっては、確定申告の相談や仕訳の相談も可能)
- バックアップ機能が充実していて安心
弥生会計ソフトの比較
とは言っても、弥生会計の会計ソフトは多くの種類があるので、一体どれを選んだらよいか迷ってしまうかもしれません。
そこで、個人事業で使える会計ソフトを比較してみます。まずはインストール版から。
【インストール版】 | ![]() | ![]() |
---|---|---|
ソフト名称 | やよいの青色申告 | 弥生会計 |
無料体験版 | 有り(30日間) | 有り(30日間) |
Mac対応 | 無し | 無し |
電話・メールサポート | 初年度最大15ヶ月無料 | 初年度最大15ヶ月無料 |
ベーシックプラン価格 | 12,000円(税抜き) | 39,800円(税抜き) |
トータルプラン価格 | 20,000円(税抜き) | 49,300円(税抜き) |
ここで注意点として、各ソフト共に、Windowsにしか対応していない為、Macユーザーであれば利用できなくなっています。ですから、Macユーザーは必然的にOSを選ばないクラウド版を選択する事になります。
上記の「ベーシックプラン」と「トータルプラン」の違いとしては、前述した「サポート(確定申告や仕訳の相談など)」を受けれるか受けれないかの違いとなっています。
会計初心者の方であれば、出来ればこうしたサポートを受けられるトータルプランを選んだほうが良いと言えます。また、個人事業主であれば、よほどの事が無い限り弥生会計を利用するまでもないでしょう。
インストール版のおススメとしては、「やよいの青色申告トータルプラン」が一番かと思います。
それでは次に、クラウド版を比較してみます。
【クラウド版】 | ![]() | ![]() | ![]() |
---|---|---|---|
ソフト名称 | やよいの白色申告オンライン | やよいの青色申告オンライン | 弥生会計オンライン |
無料体験版 | ― | 有り(2ヶ月間) | 有り(2ヶ月間) |
Mac対応 | OK | OK | OK |
電話・メールサポート | 初年度最大14ヶ月無料 | 初年度最大14ヶ月無料 | 初年度最大14ヶ月無料 |
セルフプラン価格 | フリープラン無料 | 初年度無料(翌年以降8,000円) | 26,000円(税抜き) |
ベーシックプラン価格 | 初年度4,000円(翌年以降8,000円) | 初年度6,000円(翌年以降12,000円) | 30,000円(税抜き) |
クラウド版という事は、インターネットのブラウザ上で利用できますから、OSの種類を選びません。ですから、Macユーザーは、必然的にこのクラウド版を選択する事になります。
白色申告のフリープランであれば、ずっと無料で利用できますが、控除などの様々な特典を利用する事を考えるなら、青色申告オンラインを利用するしかありません。
また、ほとんどの個人事業主の方であれば、弥生会計までの機能は必要ありませんので、一番のおススメは「やよいの青色申告ベーシックプラン」だと言えるでしょう。
弥生会計の付属機能ソフト
弥生会計の利点は、会計機能だけでなく、事業運営に必要となる周辺ソフトが充実している事にもあります。
ソフトの数としては、インストール版の方が充実していますが、クラウド版においても少しずつ機能を増やしている段階です。これらは全て会計ソフトと連携しているので、これまでエクセルで行っていた作業を大幅に削減する事が出来ます。
【ソフト一覧】
ソフト種類 | インストール版 | クラウド版 |
---|---|---|
給与計算 | やよいの給与明細オンライン | |
販売管理 (見積・納品・請求書) | MISOCA | |
顧客管理 | やよいの顧客管理21 | ― |
マネーフォワード
出典:マネーフォワード
お次がマネーフォワードです。
近年、急激に利用者を増やしているクラウド型会計ソフトですが、その筆頭格がこのマネーフォワードと言って良いでしょう。
マネーフォワードの利点としては、何と言っても「会計業界を熟知した機能づくり」にあります。この為、多くの税理士がマネーフォワードを導入するようになり、クライアントにも勧める事が多いです。
シェアとしては、弥生会計には及びませんが、クラウド型会計ソフトとしては、No.2の会計ソフトとなっています。
- クラウド型会計ソフト売上げ、No.2
- 多くの税理士事務所で導入され始めている
- 自動作成機能(データ取り込み後の自動仕訳)が優れている
- 他ソフトと連携しやすく、汎用性が高い
マネーフォワード会計ソフトの比較
基本的に、マネーフォワードの会計ソフトを個人事業主の方が利用するとなると、ちょっと変わった仕組みとなっています。
というのも、会計ソフトである「クラウド確定申告」を利用できるだけでなく、「クラウド請求書
」「クラウド経費
」「クラウド給与
」「クラウドマイナンバー
」といった、マネーフォワードが提供するサービスも全て利用する事が出来るからです。
ただし、利用人数などに制限があり、事業規模によってプランを選ぶ必要があります。
そこで、それぞれのプランについて比較してみましょう。
パーソナルミニ | パーソナル | パーソナルプラス | |
---|---|---|---|
確定申告電話サポート | 無し | 無し | 有り |
クラウド請求書 | 一部利用可能 | 全て利用可能 | 全て利用可能 |
クラウド経費 | 最低限の機能利用 | 最低限の機能利用 | 最低限の機能利用 |
クラウド給与 | 5名分まで基本料金内 | 5名分まで基本料金内 | 5名分まで基本料金内 |
クラウドマイナンバー | 5名分まで基本料金内 | 5名分まで基本料金内 | 5名分まで基本料金内 |
無料トライアル | 有り(1ヶ月) | 有り(1ヶ月) | 有り(1ヶ月) |
月額基本料金 | 980円(税抜き) | 1,280円(税抜き) | ― |
年額基本料金 | 9,600円(税抜き) | 11,760円(税抜き) | 35,760円(税抜き) |
料金プランのページはこちら。
上記を見ると、パーソナルミニとパーソナルの違いは、「クラウド請求書の機能の差」という事であり、請求書作成が多い方は、パーソナルを選んだほうが便利でしょう。
また、パーソナルとパーソナルプラスの違いは、「電話サポートの有無」ですから、顧問税理士がいる方であれば、パーソナルプラスを選択するまでもないと思います(また、パーソナルとパーソナルミニでもメールとチャットでの質問は受け付けてくれます)。
もちろん、事業規模によって選択肢も変わるでしょうが、当サイトのお勧めとしては、「クラウド確定申告パーソナル年額契約」だと言えます。
マネーフォワードの付属サービス
このように、「クラウド確定申告」を契約するだけで、同時に多くのソフトを利用できるマネーフォワードですが、これ以外にも個人向けの便利なサービスが有ります。
日々進化しているマネーフォワードですが、ここで現時点(2021年1月)における付属サービスについてご紹介します。
個人から法人成りする際、スムーズに設立できる便利な機能
マネーフォワードのソフトを利用する事で、銀行とのやり取りが不要
タイムカードが不要となり、幅広い働き方をサポート
社会保険手続きに必要な書類作成や、提出書類の電子申請に対応
上記のサービスは、マネーフォワードのサービス利用者であれば、全て無料で利用する事が出来ます(もちろん、金利などは別です)。
この他にも、便利な機能がたくさんある為、ドンドン利用者が増えているのにも頷けます。
freee(フリー)
出典:freee
そして最後がfreee(フリー)です。
このfreeeもマネーフォワードと同じく、クラウド型会計ソフトとして有名で、シェアとしては、マネーフォワードに続く3位となっています(2018年時点)。
機能開発では断トツの評判で、このfreeeを好んで利用する税理士も数多くいます。
- 個人向けクラウド型会計ソフトシェア、No.3(2018年時点)
- 個人向け開業ツールなどの機能が充実
- 上場企業にも対応できる機能の高さ
- プランによっては、税務調査にも対応してくれる
freee(フリー)の会計ソフト比較
freeeもマネーフォワードと同じく、加入プランを選ぶ契約となっています。
基本的には、確定申告ソフトを取り込む事で請求書の作成まではできますが、給与関係などは改めてそれぞれのサービスを申し込む事になります。
それぞれのプラン内容は、以下の通り。
スタータープラン | スタンダードプラン | プレミアムプラン | |
---|---|---|---|
確定申告電話サポート | 無し | 無し | 有り |
メール・チャットサポート | 有り | 有り(優先) | 有り(優先) |
消費税の申告 | × | 〇 | 〇 |
請求書作成 | 〇 | 〇 | 〇 |
税務調査サポート | × | × | 〇 |
無料トライアル | 有り(1ヶ月) | 有り(1ヶ月) | 有り(1ヶ月) |
月払い基本料金 | 1,180円(税抜) | 2,380円(税抜) | ― |
年払い基本料金 | 11,760円(税抜) | 23,760円(税抜) | 39,800円(税抜) |
料金プランのページはこちら。
上記を見ると、消費税の申告が必要な場合は、スタンダードプラン以上に加入しなくてはいけない事がわかります。金額的に、他のクラウド会計ソフトよりも少し高めとなっています。
ただし、freeeのみにある特別なサービスとして、「税務調査サポート」というものがあります。
これは、仮に税務調査があった場合に、
- 税務調査の際、希望がある場合は、freeeが無料で税理士を紹介
- 税務調査にかかる税理士費用を上限50万円まで補償
という対応をしてくれますから、いざという時に安心できます(プレミアムプランのみ)。
とは言え、すでに顧問税理士がいる場合は必要ありませんので、当サイトとしては「スタンダードプラン」をお勧めします。
freee(フリー)の付属サービス
freee(フリー)もマネーフォワードと同じように、給与計算などのサービスが充実しています。しかし残念ながら、基本プランに含まれていない為、それぞれ個別に契約する必要があります。
ここで、会計ソフト以外の付属サービスについてご紹介しましょう。
個人事業の開業届は、書類自体そんなに難しいものではありませんが、「全く初めて」という人には難しく思えるかもしれません。
「まずは副業から・・・」と考えている人ならば、開業に必要な書類が簡単に作成できる「開業freee」は便利なサービスだと言えるでしょう。
まとめ
如何でしたでしょうか。
どのソフトも一長一短ありますが、価格もそれほど高くありませんので、個人事業にはピッタリの会計ソフトだと言えます。また、どのソフトも年々機能を追加しているので、ドンドン使いやすくなっています。
エクセル管理も良いですが、いずれは会計ソフトを検討してみては如何でしょうか?