会計事務所の集客方法は、事務所規模や専門性で使い分けるべき

会計事務所の集客と言えば、昔から「紹介」という手法が最もスタンダードであり、これは現在においても主たる方法として利用されています。

しかし、税理士業界の広告規制が緩和されたこともあり、近年では様々な手法を用いて集客に励んでいる事務所も増えています。

特にここ数年は、インターネット技術の進化もあって、これまでには無かった集客方法も出現していますから、会計業界にとっては嬉しい話ですよね。

昔であれば税理士が独立する際、ある程度の「お土産」を持たせてもらえましたが、最近ではこういった事はほとんど無く、そのため独立を躊躇する税理士も増えているようでしたが、こうした集客ツールを上手に活用する事で、独立直後の税理士でも早期に事業を安定化させることが可能となっています。

とは言え、全ての税理士が集客に成功している訳ではなく、昔に比べて会計事務所はかなり二極化の傾向が強まりつつあるようです。その理由は様々ですが、その一つに「集客ツールの選定を見誤っている」という事が挙げられるでしょう。

「事務所規模」によって選択すべき集客手法は異なりますし、「どういった顧客をターゲットとするか」という専門性によっても工夫が必要となってきます。要は、自分に合った集客方法を利用しない限り、いつまで経っても的外れな集客を行う事となり、思うように業績を伸ばすことができないのです。

そこでこの記事では、会計事務所の集客においてどのような手法があり、それをどのように使い分けしていくべきかなどについて考えてみたいと思います。

従来からある集客の方法

まずは、会計業界に従来からある集客の方法について見ていきましょう。

従来からある方法といっても少し基準が曖昧ですから、税理士の広告規制が緩和された平成13年以降、つまりここ20年くらいに活用されている手法といえば分かり易いでしょうか。

従来からある集客の方法
  1. 紹介の依頼(クライアント、他士業などに対して)
  2. 金融機関への営業
  3. 保険会社への営業(代理店契約も含む)
  4. 異業種交流会などへの参加
  5. セミナーの開催
  6. ハガキ、DMの配布

会計事務所の人であれば、上記のいずれかを一度は試したことがあることでしょう。どれもある程度の集客効果を見込めますから、現在でも利用している人もいると思います。

しかし、どれも一長一短あり、利用の仕方によっては想定した通りの集客に繋がらないと感じている人もいるかもしれませんね。

それではそれぞれについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

紹介の依頼

まずは「紹介の依頼」についてから。

これは冒頭でもお伝えしましたが、会計事務所においては一番オーソドックスな集客方法であり、これで事務所を大きくした税理士の方も多いかと思います。

しかし、便利で効果がある反面、それなりのデメリットがあるというのも事実です。その理由がこちら。

紹介の依頼によるデメリット
  • しがらみが多い
  • クライアントが似たような業種に偏ってしまう
  • そもそも「営業が苦手」という人には向いていない

まず「しがらみが多い」とありますが、これを実感している人はかなり多いのではないでしょうか。仮に紹介してもらえたとしても、自身が「このクライアントの依頼は断りたいな」と思っていても、それをなかなか口に出せないという欠点があります。また「安くしてあげてね」などと言われれば、不本意であってもそれに従わなければいけない事もあるでしょう。

ですから、余程その紹介者が信用できる相手であるか、「経営を安定させるために、ここは仕方がない」と割り切らない限り、この紹介の依頼による集客は難しい部分があります。

また「似たような業種に偏ってしまう」とありますが、やはり人間というのは「類は友を呼ぶ」というだけあって、その友人も同じような業種を営んでいる場合が多いかと思います。

建設業なら建設業を営んでいる友人を紹介される事が多いですし、飲食業なら飲食業を営んでいる友人を紹介される事が必然的に多くなってくるでしょう。もちろん、仮に「飲食業に特化した会計事務所」を目指しているのなら、むしろこうした紹介は好都合ですが、往々にして自分の意図していない業種のクライアントばかりになっている会計事務所も数多く見かけます。

そして最後に「そもそも営業が苦手という人には向いていない」とありますが、営業が苦手な人というのは、意外とこの「お客さんを紹介してください」という一言が言い出しにくいという特徴があります。

そもそも営業が苦手であれば事業上は少し困りものですが、他の方法もありますから、無理をしてまでこうした紹介の依頼をする必要もないと言えるでしょう。

ポイント

  • 紹介は便利な反面、様々な点で我慢しなくてはいけない可能性がある。
  • 似たような業種に偏る傾向があるが、特化型の会計事務所であればむしろ好都合。
  • 営業が苦手な人は、他の集客方法にした方が良い。

金融機関への営業

次が「金融機関への営業」について。

ここ数年は減ってきているようですが、10年以上前などは、名刺を携えて銀行へ営業をかけている税理士も結構見かけました。

この手法は現在も効果は無いとは言い切れませんが、よほどの事が無い限りは、銀行マンから「何かあったら連絡しますね」と言われて終わりというのがオチでしょう。

銀行側も商売ですから、自行にとってメリットがないのであれば、わざわざ名も知れない会計事務所にクライアントを紹介する可能性も少ないと言えます。ただし、規模の大きな会計事務所の場合、「クライアントに地主が多い」「優良顧客が多い」となれば、むしろ銀行側から接触してきて「セミナーを一緒にやりませんか?」などと持ち掛けてくる事もありますから、これは「事務所規模やクライアントの質による」といったところでしょう。

金融機関などによっては、会計事務所に対して「無担保融資」などを手掛けているところもありますから、お互い持ちつ持たれつと言ったところでしょうか。

相続税の特化型事務所であれば、金融機関とタッグを組むメリットはあると言えるでしょう。

ポイント

  • 金融機関にとってよほどのメリットが無い限り、あまり期待しないほうが良い。
  • 地域でも大手の会計事務所であれば、金融機関側から営業をかけてくる。
  • 相続税の特化型事務所であれば、一緒にセミナーを開催するという手段も考えられる。

保険会社への営業

そして次が「保険会社への営業」について。

こちらも10年位前まで、積極的に取り組んでいた税理士の方も多かったように感じます。

しかし、ここ数年の金融庁や保険業界の動きを見ていると、一時期よりもいわゆる「節税保険」への締め付けが厳しくなっているという理由もあり、近年ではあまり効果の期待できない集客方法となっていると感じます。

もちろん、かといって全く節税保険が無くなったかと言えばそんな事もありませんから、集客の選択肢として「無くはない」といったところでしょう。ただししつこいようですが、昔ほど効果はあまり期待できないという事です。

また、保険会社の営業職員というのは様々な人がおり、中にはかなりクセの強い人もいますから、割り切ってそういった人とも付き合えるのなら良いですが、そういった事が苦手であれば、あまりお勧めできない選択肢とも言えます。

ポイント

  • 昔ほど効果は期待できない。
  • 保険業界の人間は、クセが強い人が多い。

異業種交流会などへの参加

次が、「異業種交流会などへ参加する」という方法について。

これは当サイト管理人としては、個人的に一番おススメしない手法ですが、中には異業種交流会で知り合った人から紹介を受けたなどと言う人もいますから、一概にやめたほうが良いとも言い切れません。

とは言え、こうした会に参加すると、間違いなく営業メールや営業電話が増えますから、「あぁ、世の中にはこんな営業をする人がいるんだな」といった具合に、多少、営業における勉強になるかとは思います。

あくまで「経験」する分には構わないと思いますが、こうした異業種交流会に過度の期待はしないほうが良いでしょう。

異業種交流会について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。

 

セミナーの開催

そして次が「セミナーの開催」をして集客する方法について。

この手法は、やり方さえ間違わなければかなりの集客が見込めますし、その後の契約へも結び付きやすい方法だと言えます。

特に、ハウスメーカーや金融機関などと共同開催する「相続対策セミナー」で、一時期かなり集客していた会計事務所も多かったかもしれません。とは言え共同開催となると前述したように、ある程度その地域でも有名な事務所でなければ声はかからないでしょう。

また、自分が集まってもらいたいと考えているお客さんの属性と、実際にセミナーで集まってきたお客さんの属性などがズレているようであれば、逆に開催しないほうが良いという場合もあります。

こちらも独立したてであったり、小規模な会計事務所には少しハードルの高い集客方法なのかもしれません。

ただし、特化型事務所として専門性を打ち出したい人には、工夫次第でまだまだ効果のある手法だとも言えます。とは言え、大手事務所が既に行っているようなセミナーを開催するだけでは効果も少なく、例えば勤務医向けの「開業セミナー」であったり、大家向けの「固定資産税還付セミナー」などと、ある程度ひねりを効かせる必要があります。

ポイント

  • セミナー開催に向いているのは、どちらかというと「中規模事務所」以上が向いている。
  • 独立したての税理士にはハードルが高い。
  • ただし、工夫を凝らせばまだまだ集客効果が期待できる。

ハガキ・DMの配布

そして最後が、「ハガキ・DMの配布」を利用した集客方法について。これに、地域情報誌などの利用も加えても良いかもしれません。

最近ではアナログな手法として敬遠されがちなこれらの手法ですが、こちらも使い方次第ではまだまだ利用価値があると言えます。

多くの場合、「お金ばかりかかって、効果があまり実感できない」といった声も聞こえてきますが、そういった人は、例えば「ターゲットを絞れていない」「的外れな場所に配布している」「広告の内容に誰も魅力を感じない」など、根本的な部分でミスをしている事が多いように感じます。

例えばアナタが相続税の申告を得意としていて、集客のためにDMを送るとすれば、東京都内であればどの地域を重点的に攻めるでしょうか?ここで「お金持ちが多いから港区」と考えるのも良いですが、それだけでは少し物足りませんよね。

相続は相続でも、例えば事業承継を絡めたいのであれば「中小企業の多い大田区」も視野に入れるべきでしょうし、生産緑地の問題に強いのであれば「世田谷区」なども重視すべきでしょう。

要は、一口に「DMを送る」と言っても、そこに戦略が無い限りは送るだけムダだという事です。実際、この手法で現在も結果を出し続けている会計事務所もあるのですから、この「ハガキ・DMの配布」という手法は、利用の仕方によってかなりの効果を期待できると言えます。

ポイント

  • やり方さえ間違えなければ、現在も効果のある手法。
  • しかしその分、かなりの工夫が必要となる。

ここ10年程度で広がってきた集客方法

このように、従来からある手法でも使い方次第では現在でも十分利用価値があるといえるのですが、どうしても「独立したて」であったり「小規模事務所」である場合には、前述したように少し不利な面があるというのは否定できません。

そうした会計事務所向けに、ここ10年ほどで広がってきた手法というのがこちら。

ここ10年程度で広がってきた集客方法
  1. ホームページ、ブログによる集客
  2. 税理士紹介会社を利用した集客

それでは、こちらについてもそれぞれ見ていきましょう。

ホームページ、ブログによる集客

まずは、「ホームページ、ブログによる集客」についてから。

この手法は、他の業界においては既に活用されていた手法ですが、税理士業界においては、ここ10年ほどで多くの方が利用するようになったと感じます。

自分の顔写真を載せたり、報酬体系を掲載したりと、各会計事務所とも様々な工夫を凝らしており、ホームページやブログを経由しての業務の依頼が増えたという事務所も多い事でしょう。

お金もそれほどかかりませんし、工夫次第ではかなりの集客を見込めますが、これはこれでそれなりのデメリットも存在します。

まず、ホームページなどはGoogleなどのいわゆる「検索エンジン」の影響を強く受ける事になり、グーグルに評価されなければ上位に表示される事はありません。上位に表示されなければ誰もそのページには訪れませんから、この「上位表示させるための対策」というのが重要となってきます。

インターネットを検索すると、グーグルから評価されるためのSEO対策や、サイトの作り方の工夫などについて様々な事が書かれていますが、仮にどのような対策をしたとしても、やはりある程度の期間は必要となるため、このホームページ・ブログを活用した集客というのは、開始してから結果が出るまでかなりの期間を要する事になるのです。

つまり、「即効性が無い」という訳ですね。

また、無料の問い合わせも少なからず発生しますから、多少煩わしい部分もあるかと思います。この辺について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。

 

税理士紹介会社を利用した集客

次が、「税理士紹介会社を利用した集客」について。

会計事務所の方ならご存知だと思いますが、多くの事務所はこの税理士紹介会社を利用することを敬遠します。その理由は様々でしょうが、何よりも「手数料が高すぎる」というのが一番の理由でしょう。

紹介会社によっても異なりますが、クライアントから得た顧問料や決算料の合計額の50%~70%もの手数料を、しかも「前払い」で徴収されますから、会計事務所からしたら「顧客は増やしたいけど、金額が高すぎる」というのが本音でしょう。

税理士の中には、「税理士紹介会社なんか利用しちゃいけない」などと言っている人もいますが、実際にこれを利用する事で早期に事業を安定させる税理士もいますから、一概に悪い方法だとも言い切れません。

特に、独立したての場合は前述した「従来からある集客方法」もあまり効果が見込めませんので、背に腹は代えられないというのも現実だと言えます。

要は、この税理士紹介会社を使うか使わないかというのは「本人次第」だと言えますから、上手く活用できると考えれば利用すべきですし、自分には向いていないというのであれば違う方法を選択すれば良いだけの話だと言えます。

ポイント

  • 手数料が高いため、多くの税理士が敬遠しがち。
  • しかし、実績を出している税理士もいるというのも事実。
  • 独立したての場合には、思い切って利用するのも一つの選択

ここ数年で新しく登場した集客方法

そして最後が、ここ数年で新しく出始めた集客方法について。

冒頭でもお伝えしたように、最近ではインターネット技術の進化により、様々な会計事務所向けの集客サービスが登場しています。いわゆる「ネット集客」とはなりますが、全般的に低価格で利用できるものが多く、特に「独立したて」「小規模事務所」などには使い易いサービスだと言えるでしょう。

その代表となるのがこちら。

ここ数年で新しく登場した集客方法
  • 「スキルシェアサービス」や「クラウドソーシング」といった方法
  • 依頼者と専門家を繋ぐ「マッチングサービス」という方法

それではこれらについても、それぞれ見ていきましょう。

スキルシェア、クラウドソーシング

まずは、スキルシェアサービスやクラウドソーシングを利用した方法についてから。

スキルシェアとは、専門家がサイト上で「私はこんな事が得意ですよ」と登録し、それに興味を持った人が、そのサイト上で専門家のスキルを購入するというサービスとなります。簡単に言えば「スキルのフリーマーケット」と言えば分かり易いでしょうか。

これに対してクラウドソーシングとは、「crowd(群衆)」「sourcing(業務委託)」をかけ合わせた造語となっており、要はサイト上で「不特定多数(群衆)」に対して「業務委託」を行う事が出来るサービスとなります。

どちらもサイト上において仕事の発注・受注を行う事に変わりはありませんから、似たようなサービスと考えて頂いても構いません。

どのサービスを利用しても手数料としては20%~30%程度となりますから、税理士紹介会社を利用するよりはかなりお得だと言えますよね。ただし、単発の発注が多いため、顧問契約などの長期業務の受注を考えている場合には少し使いづらいかもしれません。ですから閑散期であったり、独立直後で仕事が無い場合に使い易いサービスだと言えます。

こちらのサービスについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみて下さい。

 

 

ポイント

  • サービスの手数料がかなり安い。
  • 閑散期や独立直後には助かるサービス。
  • ただし、長期契約の獲得にはあまり向かない。

マッチングサービス

そして次が、マッチングサービスについて。

こうしたマッチングサービスも、サイト上で専門家と依頼者を繋ぐという点では、厳密に言えば前述したクラウドソーシングなどと似たようなものですが、大きな違いとして「長期契約が多い」という点が挙げられます。

このマッチングサービスとして最近有名なのが「ミツモア」というサービスであり、このミツモアにおいては「顧問契約の依頼」が結構あり、長期契約を狙う人にとってはおススメのサービスだと言えます。

また、手数料もかなり安くなっていますから、特に独立直後の方は注目すべきサービスだと言えるでしょう。このミツモアについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみて下さい。

 

 

ポイント

  • 手数料が安い。
  • 長期契約の案件が多い。
  • 顧客の選別が出来る。

事業規模別で考えると、どういった集客方法を選択すべきか

これまで様々な集客方法について見てきましたが、その全てがどの事業規模でも利用可能となる訳ではなく、やはりそれぞれの規模に合った方法があるという事がお分かり頂けたかと思います。

会計事務所には様々な規模がありますが、当サイトとしては以下のようにスタッフの人数によって会計事務所を区分けしています。

会計事務所の規模
  • 一人税理士事務所 - スタッフを雇わず、税理士1人で運営
  • 零細事務所    - 所長含め、事務所全体で5名未満
  • 小規模事務所   - 5名~15名程度
  • 中規模事務所   - 15名~40名程度
  • 中堅事務所    - 40名~100名程度
  • 大規模事務所   - 100名超

そこで、上記の事務所規模において、これまで紹介してきた集客方法のどれが利用しやすいのかについても見てみましょう。

一人事務所零細事務所小規模事務所中規模事務所中堅事務所大規模事務所
紹介の依頼
金融機関へ営業
保険会社へ営業
異業種交流会
セミナーの開催
ハガキ・DM
HP・ブログ
税理士紹介会社
スキルシェア等
マッチングサービス

 

あくまで当サイトの判断となりますが、それほど的外れとも言えないのではないでしょうか。もちろん、その事務所の専門性などによっては判断の分かれるところもありますし、工夫次第ではどの規模でも成果を得られる場合もありますから何とも言えませんが、概ね事業規模によって集客を使い分けるべきであるという事はご理解頂けたかと思います。

集客を検討する際には、「ウチの事務所規模だと、どの集客方法が向いているのかな?」と、参考程度に見てもらえばと思います。