
一般的に『士業』と聞けば、まず最初に弁護士や税理士を想像する人が多い事でしょう。
ただ、士業とはよく使われる言葉ではあるのですが、正確に士業の意味などについて理解している人は少ないかもしれません。
そこでこの記事では、士業という言葉の意味や由来、そして種類などについてお伝えしようと思います。
目次
認知度の高い士業
世の中には、数多くの〇〇士と呼ばれる資格が存在します。士業とは簡単に言えば、この「〇〇士」と名の付く資格を取得し、それぞれに与えられた業務について独占的に取り扱えるという職種を総称した言葉となっています。
ただし、中には「名称独占」という士業もありますから、全ての士業について独占的な業務がある訳ではありませんのでご注意ください。
ここで、日本において認知度の高い士業を幾つかご紹介しておきます。
まずは、一般的に広く知られている士業の代表格がこちら。
- 弁護士
- 司法書士
- 弁理士
- 税理士
- 社会保険労務士
- 行政書士
- 土地家屋調査士
- 海事代理士
「海事代理士」などは聞きなれない士業かもしれませんが、一般的に上記8つの士業を総称して、「8士業」などと呼ぶこともあり、難関資格として知られています。
また、上記以外の士業として有名なのがこちら。
- 公認会計士
- 中小企業診断士
- 一級建築士
- 宅建士
こちらも難関資格ばかりですから、敢えて8士業と区別する必要性もないかと思います。
士業の由来は「サムライ業」?
ここで、稀に弁護士や税理士などの士業の事務所HPなどで、「〇〇士はサムライ業です」なんて文言を目にする事があるかもしれません。
傍から見ると、「だから何?」と思うかもしれませんね。
使い古された感もあるこの言葉ですが、要は〇〇士の「士」の部分が、武士の「士」と同じだという事を言いたいわけです。
確かに、この士業の「士」の部分の由来は諸説あり、その中のひとつに、「士業のような専門的職能資格の多くは、古く、サムライと呼ばれる武士の多くが身に付けていた」などというものもあるようですから、理屈としてはまぁ分からなくもありません。
考えようによっては、江戸時代から明治期にかけての教育水準からすれば、高度な知識を要する資格というものは、武士のような階級でなければ習得できなかったのでしょう。
しかしこれは結果論であり、士業という名称の由来としては、真実味に欠けるところがあります。
言葉の意味として本質的に理解するのであれば、「博士」「修士」という言葉があるように、士と名の付く人というのは、特別の資格・技術を身に付けた人と解す方が正確だといえるでしょうね。
「士業」と「師業」の違い
ここで、士業と同じように「高度な知識を要する資格」という意味で、「師業」という言葉を思い浮かぶ人もいるかと思います。
代表的な師業としては、
- 医師
- 歯科医師
- 獣医師
- 看護師
- 薬剤師
などが挙げられます。
「師」という言葉の持つ本来の意味としては、「導く人」「手本となる人」「先生」というものですので、教師や牧師などという言葉にも使われますね。
広義の意味では、医師なども「特別な資格・技術を身に付けた人」ですが、医療系の資格においては、全てこの「師」という漢字を用いていることが分かります。
ただし、現実的に「師業」という言葉はありませんので、実際には士業と師業の違いというのはあまり考える必要がないと言えるでしょう。
とは言え、絵師や仏師なども「師」という漢字を使用することから、これらとの区別において「士師業」などと呼ぶことも稀にあります。
士業の特殊性
これまでに列挙してきたような一般的に認知されている士業というのは、国家試験に合格し、所定の実務経験などを経て初めて開業する(名乗る)ことが出来るようになります(例外あり)。
その業務における一番の特殊性を挙げるとすれば、「業務独占資格」をそれぞれ与えられているという事にあるでしょう(中には例外的に、その士業の名称を使用する事のみを認められている「名称独占資格」というものもあります)。
例えば司法書士であれば、法人や不動産などの登記代理の手続きにおいて、これらの業務を独占的に取扱う事が出来ると「法律によって」認められています。
ですから、仮にアナタが税理士だとして、「お客さんから頼まれたし、これくらい簡単だから」と、これらの手続きを取り扱ってしまうと、司法書士法によって罰せられることになります。
逆に、税理士の独占業務である「税務代理」などを無資格者が行えば、その人は税理士法によって罰せられるという訳です。
このように、各士業ともそれぞれの法律によって業務範囲を守られていますが、法律の本来の考え方としては、「国民の利益保護」を目的としているので、税理士などの士業の仕事を保全するために規制している訳ではありません。
要は、「素人に頼んでしまったばかりに、損害を被ってしまった・・・」などという事態を起こさないようにするための法律です。
しかし、これを取り違え、「〇〇の業務は〇〇士のものだ」と、士業間同士で争いが起きる事もままあります。
彼らも建前としては「国民の利益のため」などと言いますが、「我々の業務を奪うな」といった本音が透けて見える事も・・・。
法解釈も大切ですが、本来の目的から外れた争いは、出来れば避けてほしいところですね。
士業は各団体に所属することが登録要件になる
難しい国家試験に合格し、晴れて士業への道が開かれるわけですが、実はこれだけでは士業として活動することが出来ません。
ほとんどの士業は、それぞれの団体(税理士であれば税理士会)に登録することで、ようやく活動を許されるのです。
例えばアナタが税理士試験に合格し、大阪で事務所を開設しようと考えています。となるとアナタは、大阪税理士会に登録しなければならないという事です。
ちなみに、大阪に事務所を構え、顧客が東京にいる場合でも問題はありません。
こうした各団体に所属するためには、士業によっても異なりますが、登録費用と各団体への会費が必要となります。
一度登録してしまえば、それ以後登録費用がかかる事はありませんが(事務所のブロック単位の異動では必要な場合もあり)、どの士業も毎年一定額の年会費を支払う必要があります(例えば税理士であれば年会費として、毎年10万円程度)。
決して安くはありませんが、各団体ともに研修なども定期的に開催しており、法改正や制度改正などにも素早く対応できるようにバックアップしてくれます。
まとめ
上記以外にも、それぞれの士業ごとに特殊性はありますが、「士業全体」としては大まかに以上のような内容として捉えて頂ければと思います。
これ以外にも「各士業ごとの登録者数」などについて詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてみて下さい。
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